転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

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69話:羨ましいか?

 会談を兼ねているということもあり、謁見の間には急遽席が用意されていた。

 

 テクトの対面にはモミジが座っており、不遜な態度で魔王二柱を見ている。

 

 そして、堂々と挨拶の口上を述べる。

 

「魔王リムル、並びに魔王テクトよ、はじめまして。私は鼻長族(テング)の長の代理として参ったモミジと申します。以後、お見知りおき下さいませ」

 

「ご丁寧にどうも。俺がテクト、こっちがリムルだ。基本的には平和主義者でね。困った事があるなら頼ってくれていいぞ」

 

「そのような気遣いは不要です。この度はジュラの大森林の掌握、本当に見事でした。貴方様方をこの森の支配者と認め、良き隣人となれることを期待します。ただし、我等への干渉は認めません」

 

 幹部も揃う場で言い切るモミジにシオンが僅かに反応したが、何も言うことなく収める。

 

 モミジについて詳しく話したのは昨夜話した四人だけなのでシオンは事情を知らないのだが、それでも矛を収めた事にテクトは成長を嬉しく思いつつモミジを観察する。

 

 一見すると堂々として見えるが、里で見た時と比較し、呼吸は浅く、視線は落ち着かない。

 

 経験も少なく若くして長の代理をしていることによる気負いもあるのだろうが、それ以上に見え隠れする警戒にテクトは内心で首をひねる。

 

「そちらの意向は理解した。こちらとしては過度な干渉を行うつもりはない。遣わしたベニマルも説明したと思うが、クシャ山脈の麓を通る街道を作りたいだけだ。それと確認するが、すでに山岳地帯に移住している猪人族(ハイオーク)の権利は認めてくれるのか?」

 

「ええ、それは問題ありません。山の恵みに対しての権利は主張しないし、鉱石に関しても好きにすればいい。実際、我々には不要なモノですから。我々は干渉を嫌う、ただそれだけです」

 

 猪人族の移住した山岳地帯はジュラの大森林の領域に入ってはいる。とはいえ山の一部なので何かしら反対があるかと思ったが、モミジは問題視していなかった。

 

 猪人族のことが警戒の理由かとテクトは考えていたが空振りに終わり、何が問題なのかわからなくなったため、リムルはストレートに聞くことにした。

 

「あのさ、何を警戒しているのか知らないけど、俺達は本当に君たちと争うつもりはないよ?」

 

「それを信じろと?」

 

「うん。そもそも、俺達に領土的野心があると、何か疑わしき根拠でもあるのかな?」

 

 リムルの質問にモミジの視線が魔王二柱を探るような視線に変わる。そして、吐き捨てるように告げる。

 

「貴女達も、あの狡猾な鳥女のフレイと、仲良くつるんでいるじゃない。我が領土への野心を持つ、何よりの証拠だわ!」

 

「タァーイムッ!」

 

「タイムって何よ⁉」

 

「タイムはタイムだよ。ちょっと相談するから待っててね、って意味!」

 

 そこまでまくしたてると幹部達を集めて話し始める。

 

 モミジは文句を言っているが、状況の把握が先決だと全員が聞こえない振りをして円陣を組んでいた。

 

「どう思う?」

 

「フルブロシアはクシャ山脈とつながっているから長鼻族と諍いが会ってもおかしくないけど、攻める理由に心当たりって浮かばないよ」

 

 リムルの疑問にテクトが答える。

 

 実際に目にしたテクトからして、クシャ山脈というよりはテングの里に特筆した点はなく、わざわざ攻め入る理由はないと考えられる。それはベニマルも同感らしく、頷いていた。

 

「噂を聞いたことが御座います。フレイは、高さを好むと。天空女王(スカイクイーン)の二つ名が示す通りに、誰よりも高き場所に都を移そうとしていたのでは?」

 

「でも、里は洞窟の先の異空間だよ? 空とは無縁な場所だと思うけど」

 

 ハクロウの言葉にテクトが反論し、全員が思案顔で黙り込む。

 

 そこに突っ込んだのはモミジだった。

 

「だーかーらぁ、私を無視するなぁ‼」

 

「のわっ⁉」

 

 テクトの耳元まで寄ったモミジの声にテクトが悲鳴を上げる。

 

 これでは無視しきれぬと着席し直すと、考えるのが面倒になったテクトは率直に問うことにした。

 

「聞きたいんだが、フレイは長鼻族の支配領域に領土的な野心を持っていたのか?」

 

「はあ? 何を馬鹿なことを」

 

 テクトの問に呆れた声を出したモミジだったが、幹部たちも理解していない様子を見て本当に何も知らないのだと悟ったのか説明を始める。

 

 モミジ曰く。

 

 フレイが狙っていたのは、サリオンの首都である神樹に抱かれた都市(エルミン・サリオン)であるらしい。

 

 噂通り領土の豊かさよりも高さを求め、侵攻していたようだが、大国であるサリオンの軍勢はフレイの軍勢を上回っていた。

 

 地の利があるサリオンの軍ではあるが、有翼族(ハーピィ)の得意とする空中戦では分が悪く、戦力は互角であった。

 

 そこで、神樹を諦めきれないフレイが目をつけたのが長鼻族だったのだ。彼等を支配下に置き、サリオン攻略の戦力に加えようと企んでいたが、誇り高い長鼻族はそう簡単には従わなかった。

 

 サリオンも長鼻族のこの行動は織り込み済みであり、両者が争った後の漁夫の利を狙うことにしたらしい。

 

 フレイもサリオンの狙いに気づき、迂闊に動けなくなったことで、歪な三竦みの関係が出来上がったのだ。

 

 そうして睨み合っている最中、魔国連邦とクレイマンの戦争が勃発し、カリオンとフレイがミリムの配下に納まり、強大な勢力が誕生した。

 

 更に魔国連邦がジュラの大森林を掌握し、三つの勢力に囲まれたことで、今後の身の振り方を議論する日々だったという。

 

 そんな折に現れたのがベニマルであり、そこに案内として連れていたアルビスがいた事で、複数の魔王からの無言の圧力だと受け取られたのである。

 

「ゲルド、フレイの様子はどうだ?」

 

 ゲルドはミリムを中心とした新体制の王都建造の責任者であり、フレイもそこに様々な注文をつけていた。

 

 そのため、魔国連邦で最もフレイと連絡をとっているのはゲルドであったのだ。

 

「ハッ、フレイ様はですね、リムル様の設計にとても満足しておられました。そして、あの無口なミルド殿とも簡単に意思疎通して、かなり詳細に打ち合わせに参加なさっておいででした」

 

「ということは、国内のことに集中していて、外部にどうこうするつもりはなさそうだな」

 

「そうですな……ある意味では外部に意識を向けていますが」

 

「何かあったのか?」

 

「いえ、その……ここ最近、ミリム様の姿が見えないらしく……色々と勉強を教える立場にあるフレイ様が目を離した隙に、どこかへ出かけてしまわれたらしく……」

 

「もしかして、ヤバイ?」

 

「以前から勉強の時間に何処かへ出かけていたらしく、フレイ様はミリム様を探し出すことに集中していらっしゃるかと愚考いたします」

 

 ゲルドの報告を受け、テクトの頬に冷や汗が流れる。

 

 ミリムの今の居場所を知っている上、彼女が迷宮を訪れる以前から勉強から逃げていたと知り、その片棒を担いでいたことを理解して僅かに震えていた。

 

 テクトの震えに合わせプルプル震えるリムルも含め、事情を察した幹部たちがすっとテクトから目をそらす中、モミジは絶句していた。

 

 種族存亡の危機と警戒していた相手がいつの間にやら方針転換していて、それを知らずに決死の覚悟でいたと知ったのだから、現実逃避もしたくなるだろう。

 

「ま、まあ、事情はわかった。俺達としてはそちらの勘違いだとわかってもらえたのなら、それでいいよ」

 

「まさか、私の思い込みだったなんて……お母様からは、それは考えすぎだと言われていたのですが……」

 

 プルプルと震えるリムルの言葉に現実へと帰還したモミジは呆然と呟くと崩れ落ちる。

 

 勘違いの原因は長鼻族が俗世に無関心で、世情に疎いのが理由ではあるが、自分達と敵対し三竦みとなっている勢力と面していない方面が他の勢力と仲良くしている魔王に支配されれば全方位を敵勢力に囲まれたと考えてもおかしくはなく、誰も攻める気分にはならなかった。

 

 勘違いが解けた後はスムーズに進んだ。

 

 モミジが沈黙したことで若武者の一人が協定の確認をしていく。

 

 まず、トンネルに関しては保留となった。

 

 安全性を証明しなければ着工は認められないとのこと。長鼻族にとっては未知の技術であり、場合によっては周囲の環境を破壊する可能性がある以上、簡単に許可を出すことはできないということだ。

 

 とはいえトンネルを通すかは未定であり、それを利用する列車も開発が終わっていないので先の話である。

 

 そして、長鼻族との関係について。

 

 長鼻族が不干渉を希望していたのは魔国連邦からの侵略を警戒していたからである。その後階が解けた今、両者とも交流を厭う理由はなく、協力し合うことで話は纏まった。

 

「と、これで終わりかな?」

 

「はい。我等にとって有意義な交渉を認めて下さり、感謝いたします」

 

 未だにプルプルと震えるリムルの言葉に若武者が丁寧にお辞儀する。

 

 テクトの緊張も解けてきたのか静まり始める震えにリムルはホッと息を吐きつつ、昨夜話し合った内容についてどう切り出そうかと考えていると、若武者が封書を取り出した。

 

「それと、こちらを。我等が主たるカエデ様より、魔王陛下への書状で御座います。

 

 そう言って差し出された封書をリグルドが受け取り、シュナが開封して読み上げ始める。

 

 最初は難しい言葉で挨拶が述べられ、色々とご機嫌伺いらしき内容が続いたが、徐々に言葉が崩れ始める。それに伴い、シュナの表情が困惑に彩られた。

 

「何か色々こじらせてるし、誤解もあるようだけど、娘を宜しくお願いしますね。それとあの子、ベニマル殿を振り向かせるとか豪語していたので、本人も悪い気は」

 

「ちょ、ちょっとお母様ぁ──ッ⁉」

 

 突如としてモミジは飛び跳ね、シュナの手から書状をひったくった。

 

 本来であればありうべからざる行為ではあるが、実の母からの正式な書状に紛れさせた羞恥プレイに、誰も何も言えなかった。

 

「や、やっぱり二通ある⁉ 大雑把すぎよ、お母様……」

 

 モミジはそう呻くと机へと突っ伏した。

 

 長鼻族が慰めているが効果はなく、書状を投げ出して耳をふさぐモミジへとハクロウが歩み寄るとシュナの読んでいた書状の続きを読み始めた。

 

「「あの娘は力だけは大きいのですが、技量はまだまだです。儂の兄弟子として、そしてあの子の父として―剣鬼ハクロウ殿の手で教え導き、鍛えてやって下さい。―愛する旦那様へ、カエデより」か。アヤツめ、まだワシを好いてくれておったとは、な。フフッ、長生きは、してみるものよ」

 

 そう言って笑うハクロウの声を聞き、モミジは顔をあげる。どうやら完全には耳をふさいでいなかったらしい。

 

「お、お父様、なのですか?」

 

「そうじゃ。ワシがそなたの父、ハクロウじゃよ」

 

「お、お父様―ッ‼」

 

 ハクロウによく似た黒い瞳を潤ませ、モミジはハクロウへと抱きついた。

 

 父の存在もあり、完全に警戒を解いたモミジはハクロウの言葉を疑うことなく聞き入れ始めた。

 

「モミジよ、ワシの修行は厳しいぞ」

 

「はい」

 

「じゃが、それを見事に乗り越え、若の心を射止めてみせよ!」

 

「はい‼」

 

「おい、ハクロウ」

 

 妙な方向に向かい始めたため思わず声をかけるが、二人の世界に入った父娘に他者の言葉は届かず、ベニマルがうなだれる。

 

 それを見て、テクトがくつくつと笑い始めた。

 

「ベニマル。アルビスより伝言だ」

 

「……何ですか?」

 

 口の端を上げたテクトに嫌な予感を感じ取ったベニマルは嫌そうに視線を向ける。

 

 周囲の視線を集めたテクトはわざとらしく咳払いし何度か声の様子を確かめると口を開く。

 

「ベニマル様、私は覚悟を決めました。モミジ様に勝利して正妻の座を射止めるつもりですが、最悪の場合でも、側室という手が御座いますわね。諦めませんので、お覚悟して下さいませ」

 

 とアルビスそっくりの声音で告げる。

 

 人形を扱う中で培われた無駄に洗練された無駄のない無駄な技術であるが、それによってまるでアルビスがその場にいるような臨場感が生まれ、謁見の間は騒然とする。

 

 そして当のベニマルは、沈黙していた。

 

 戦闘では的確に素早く判断を下すベニマルが完全に沈黙する光景にテクトが再び笑みを漏らすと、幹部たちの会話が聞こえてくる。

 

「流石はベニマル殿、人気者だな。我輩の妹の部下もベニマル殿を狙っておったそうだが、アルビス殿やモミジ殿が相手では、少々厳しいであろうな」

 

「トーカの話か? いや、トーカだけではなくサイカもだったな」

 

「そうそう。もっともその二人はソーカに遠慮してソウエイ殿を諦めたそうですぞ?」

 

「何を馬鹿なことを」

 

「いやいや、本当の話です」

 

「つまり、ハーレムっすか? 羨ましいっすね!」

 

「羨ましいか?」

 

「テクト様は別っすよ……」

 

 コソコソと話していたガビルとソウエイにゴブタが参加し、テクトも混じる。

 

 ミリムがテクトに惚れているのは魔国連邦では周知の事実である。

 

 その上でシュナを選んだことも知られており、幹部たちにはまだ知らぬ強者がいる(ヴェルザード)のことも朧気ながら伝わっている。

 

 故にテクトのシチュエーションを羨む者はいてもテクトを羨む者はいないのである。

 

「羨ましいかどうかを置いておくとして、ベニマルはああ見えて奥手だし、女性の扱いは得意ではない。硬派を気取っているが、本人は困惑しているのではないか?」

 

 テクトの参加に微妙な空気になったのを切り替えるようにソウエイが話す。そこにゲルドが加わった。

 

「だが、オレはいい話だと思う。ベニマル殿の男振りなら、町の女性達が憧れるのも当然だろう。アルビス殿は三獣士筆頭という実力者、そしてモミジ殿はハクロウ殿の娘のようだし、どちらであれ申し分あるまい。オレも見習わなければな」

 

「ゲルドはそもそも女より仕事って方向によってるから現状なだけで、真面目な仕事人なだけあってモテると思うよ。大量の仕事を押し付けてる側が言うのは違うと思うけど」

 

「そのような事は……むしろありがたいぐらいです」

 

 テクトの言葉にゲルドは恐縮し、頭を下げる。

 

 実際にゲルドは猪人族以外の女性からの人気も高く、その気になればあっさりとうまくいきそうな状態だった。

 

 それを知ってか知らずかガビルが愚痴り始める。

 

「ゲルド殿はいいですよ。トーカ達は先程行った通り、我輩に見向きもせぬし……我輩を慕う部下は何故か男ばかり……」

 

「出会いがないという事だな。その気持ちは少しわかるぞ」

 

「いやいや、我輩の職場には、女性のドワーフの薬師達がおるのです。なので、出会いはあるのですが」

 

「それなら問題ないではないか」

 

「それが大ありでしてな。あの者達が言うには『トカゲって、生理的に無理!』だそうで、我輩、全然人気がないのですよ……」

 

「そうですか」

 

「それなのに、ナンソウやホクソウには、食事の誘いだとか森でのデートだとか、頻繁に誘いをかけておるようなのです! 我輩、それが悔しくて」

 

「そ、それは何と言ってよいか……」

 

 ゲルドが思わず言葉に詰まり、テクトも顔を覆う。

 

 そんな二人にガビルは話を続ける。

 

「ええ……。なので我輩も人の姿になって見ようかと考えておりまして。親父殿も渋い感じに変化しておりましたし、これは我輩もチャンスがあるのでは、と!」

 

「下らん。お前は行動を起こしていないではないか」

 

 ソウエイの容赦ない一言でガビルが硬直する。

 

「い、いや、それはその通りですが、しかし」

 

「ソウエイさんの言う通りっすよ! 自分もドワーフのお姉さん達が話してるのを聞いたっすけど、『ガザット君って格好いいよね?』『わかる?』『あの寡黙なトコが素敵!』『ボクのペットのトカゲみたいで、可愛い』なんて言っていて、ガビルさんの部下をベタ褒めしてたっす。なので、見た目の問題じゃないと思うっすよ?」

 

 ガビルはソウエイの言葉に言い募ろうとしたが、割って入ったゴブタの言葉に今度こそ絶句した。

 

 ガザットはガビルの部下で、飛竜衆に所属する寡黙な槍使いだ。不器用なので研究には関わらず、護衛の任務にあたっている。

 

 彼の顔はガビル同様に蜥蜴に近い見た目であり、ガビルの人相を元にした言い訳が封じられていた。

 

 落ち込むガビルにソウエイがトドメを差しにかかる。

 

「それに、女とは案外簡単に靡くものだぞ?」

 

「な、何ですと‼」

 

「この前の女騎士など、何を勘違いしたのか俺に関心があるようだからな」

 

「確か、リティスだったっけ? 何したのさ」

 

「興味深い話である!」

 

「あれ、テクト様も興味あるんっすか?」

 

 ソウエイの話に会話をしていた全員が食いつき、ソウエイへと視線を送る。

 

 すでにパートナー(シュナ)がいるテクトが食いついたことにゴブタが意外そうにするのにテクトはなんでもないかのように話し始める。

 

「まあね。今は忙しいけど、落ち着いたらシュナで実s」

 

 テクトの言葉は最後まで続かず、顔面から地面に激突する。

 

 その後頭部からは煙が上がっており、背後には顔を真っ赤にしたシュナが拳を振り切った状態で立っていた。

 

 シュナの様子にこれ以上は不味いと全員が元の位置に戻り、真面目な顔を作る。シュナからの拳を十二分に受け取り気絶したテクトはリムルが引き上げて椅子に座らせ、頬をひっぱたいて意識を戻すと真面目に考えることになった。

 

 とはいえ、結局は当人のことなのでベニマルへと視線が集まることになる。

 

「ベニマル、お前としてはどう思っているんだ?」

 

「そうですね、まだ早いというのが本音ですが、これだけは言えます。伴侶は一人で十分ですよ。そもそも、俺達のように上位魔人となった者は、子を生すのも簡単ではありませんし。多数の伴侶に子種をばら撒き争わせる者もいるようですが、そういうのは趣味じゃない。なので、側室は不要です」

 

「じゃあ、ハーレムはナシだな。まあ、適応外の奴もいるけど」

 

「意気地なしでスミマセン……」

 

 ベニマルがきっぱりといい切ったことで、「基本的には一夫多妻は無し。未亡人が増えたり、当人同士でやむにやまれぬ事情がある場合を除く」ということで結論付けられ、これで終わりかと思ったが、問題はここからだった。

 

「わかりました。アルビスさんの挑戦を受けて、ベニマル様の妻の座を獲得してみせます‼」

 

「テクト様、よろしいのですか?」

 

「え? ああ、いいんじゃないの? 直接戦闘とかなら問題だけど、好きな人に振り向いてもらえるように努力するとかなら。まぁ、相手が嫌がっているなら取り締まるのも視野にいれる必要はあると思うけど」

 

 そう言うとテクトは嘆息し、苦い顔でこめかみを抑えた。

 

 その後、モミジの宣言が伝わり、アルビスが形振り構わぬ攻勢を仕掛けるようになる。

 

 モミジもそれに応じて対抗し、更に他のベニマルを慕う女性達も参戦していった。

 

 この日以降、魔物の国では惚れた相手を実力で認めさせるという風習が生まれる。

 

 自由戦闘恋愛主義(ラブアンドバトル)の幕開けとなった。

 

 尚、テクトはその後数日、泣きを見る羽目になる。

 


 

 次回「勇者について」




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