転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

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76話:大事の前の小事

 この日予定されていた催しも終わり、自由時間となった。

 

 来賓にはそれぞれ案内役を付けているため、各々が興味を惹かれた場所へと向かうのを尻目に、テクトとリムルは「狡知之神(ロキ)」で人間達の目から隠れながら談笑していた。

 

「そういえば、いつの間に楽器の練習なんてしてたんだ?」

 

「昔取った杵柄ってやつかな。子供の頃に習っていたんだ。せっかくだから驚かせようと思ってさ」

 

 そうして話しているとリグルドに連れられたアルノーとバッカスが緊張した面持ちでやってきた。

 

 そのまま小声で「ちょっと話したいことが」と告げる聖騎士に重大そうな気配を感じ取った二柱は、ベニマルとシオンを連れて彼らの案内に従い迎賓館の一室へと移動した。

 

 部屋で待っていたのはルミナスだった。足を組んで座るメイド姿の彼女の白い脚とそれを包む黒いガーターストッキングに思わずテクトが視線を移し、リムルに後頭部をしばかれる。

 

 その間にアルノーとバッカスがルミナスの背後で直立不動に立つと、リムル達が椅子へと移動する間もなく話しが始まった。

 

「さて、貴様達とは不可侵条約を締結しておる訳だが……足りぬな」

 

「足りないって何が?」

 

 性急に話を進めるルミナスに苦笑しつつ、いつも通りに座りながらテクトが問うとルミナスは逆に呆れ顔をする。

 

「そんなもの、決まっておろう。交流が、じゃ! 相互に干渉しないという条約では、互いの交流ができぬであろう?」

 

「国家としてできないだけで個人なら問題ないし、そもそも国家間の交流にはまだ早いと思うけど?」

 

 テクトの言葉通り、既に個人による行き来―特に商人等による交易等は行われ始めている。

 

 しかし、単純に距離が離れすぎているため国家間での交流は難しい面がある。そうでなくとも最近教義に関して大きく解釈を変えたルベリオスと魔国連邦が密に接するのはまだ早いというのがテクトの考えであったが、ルミナスの考えとは違うらしい。

 

「察しの悪いヤツめ。交流といえば、文化であろう? 正直、貴様達を見縊っておったわ。我がルベリオスが保護しておる人間共は、芸術関連の才能に乏しい。故に、そこまで期待しておらなんだが、先程の演奏は見事であった。特にテクトよ。貴様のソロには聞き惚れたぞ。あれほどのことができるのなら、先の宴でも披露すれば良かったのじゃ……話がそれたな。吸血鬼族(ヴァンパイア)にも、芸術に通じる者がいる。古き音楽を継承しつつ新たな創作にも励んでおるのだが、最近マンネリでな。貴様達との交流は、良き刺激となるだろう」

 

「そういうことなら、断る理由はないかな。距離が遠いから頻繁にとはいかないけど、スケジュールの調整をするよ」

 

「うむ。それではそのように、話を進めるとしよう」

 

 演奏を褒められ上機嫌なテクトの承諾にルミナスも満足そうに頷き話がまとまる。それと同時に老齢の執事が紅茶を差し出した。

 

 スライム状態のリムルがそのままカップに口をつけられるのか判断しかねたのか、テクトの前に並ぶカップの片方にはストローが付いていた。

 

 テクト達が気遣いに感心しつつ魔国連邦ではあまり見ない銘柄の紅茶を楽しんでいると、手続きを老齢の執事―ギュンターへと任せたルミナスが思い出したように告げる。

 

「そういえば、技術発表の際に実践がどうこうと言っておったが、何かするつもりだったのか?」

 

「あぁ、あれ? えぇっと……シオン、それ取って」

 

 テクトはルミナスの言葉に首を巡らせると、シオンに観葉植物の鉢を持ってこさせる。それに手をかざしてその周囲に結界を張った。

 

「ちょっと時間がかかるから、何か話題でもない?」

 

「? まあ良いか。内容も中々面白かったな。偶然による着眼も侮れぬものよ。妾の配下にも研究好きの変わり者がおる故、組ませたら面白くなりそうじゃな」

 

「変わり者?」

 

 不思議そうなテクトにルミナスが得意げに説明する。

 

 吸血鬼族は耳長族(エルフ)を超える長い寿命と不死性を持つ種族である。上位個体になると食事も必要なくなり、人間の生命生気(ライフエナジー)を僅かに奪うだけで生命維持が可能となる生体ピラミッドの頂点たる種族といえる。

 

 しかし、そんな彼らにも弱点はあり、太陽光を浴びると消滅してしまう。

 

 そんな重大な弱点がある吸血鬼族だが、ルミナス配下の王国で貴族階級に属する者の中には太陽光を克服した者達がいるらしい。彼らは“超克者”と呼ばれ、どのような場所でも活動可能なのだという。

 

 弱点のなくなった“超克者”達は暇を持て余し、趣味で様々なモノを好き勝手に作っているそうだ。

 

 競うようにゲテモノを開発し、ルミナスの寵愛を求めるという。

 

「正直言って、鬱陶しいのじゃ。もっとマシなものを開発せよと命じてはおるが、固定観念に囚われすぎておるのか、アヤツ等は進歩というものを知らぬ。故にここの者共の発想力が刺激になればと思うのじゃが?」

 

 そう言って流し目を贈るルミナスを見て、テクトはわずかに思考へふける。

 

「それって、何か問題が起きたらシバいていい感じ?」

 

「アヤツ等の固まりきった頭をほぐすなら、叩き直すくらいでちょうどよかろう。流石に殺すのは……いや、貴様なら無用な心配であったな」

 

 テクトの言葉に一応注意をしようとしたルミナスだったが、「魂の牢獄(ソウルテイカー)」を思い出して取りやめる。

 

 死なないのだから問題なしとするルミナスにテクトが苦笑していると、ルミナスは紅茶を口にして薄く笑んだ。

 

「では、頼んだぞ。とはいえ、タダでとは言わん。貴様達に“信仰と恩寵の秘奥”を授けてやろう」

 

「それって、どういう?」

 

「何、簡単なものじゃ。貴様達を信じる者が、貴様達の力の一部を行使出来るようになる、という技じゃよ」

 

 思わず内容を尋ねるリムルにルミナスはニンマリと邪悪に嗤って告げる。

 

 配下に伝えるべきではなさそうな話をしはじめたことにリムルは慌てるが、いつの間にやら空間断絶によって三柱のみが会話出来るようになっていた。

 

 そうして伝えられた“信仰と恩寵の秘奥”とは、簡単に言えば神聖魔法の原理そのものだった。信仰対象の“名”を媒体とすることで術者が魔法を行使可能になるという秘術である。

 

 これにより魔物達にも神聖魔法が使えるようになる者が増えることになるということで、想像以上の報酬にリムルは驚いていた。

 

「俺達としては嬉しいけど、本当に良かったのか?」

 

「構わんよ。どうせ貴様達なら、数年もせずに自力で真理を悟ったであろうからな。情報とは、価値が高い内に利用するものぞ?」

 

 ルミナスの言葉を聞き、智慧之王(ラファエル)が悔しそうな雰囲気になる。

 

 それはルミナスの言葉を肯定するものであり、研究発表や霊子の情報を突き詰めた先にある真理を智慧之王が完成させる前に対価として使用したということだった。

 

「なるほど、でも、おかげでその数年分は得した訳だし、ありがたいよ。それと、俺もルミナスには話があったんだよ」

 

「話じゃと?」

 

「ほら、七曜の件で死にかけた時、助けてくれたじゃん? その時お礼をしてなかったな、と」

 

 言われて思い出したのかルミナスは面白そうに笑う。

 

 一方でリムルがテクトの膝の上で僅かに震える。

 

 膝の上での異変に気づくことなく、テクトは懐から取り出した封筒をルミナスの手元へと滑らせる。

 

 封筒には筆記体で「Tekstur」と書かれており、それを見たルミナスが感心したような顔をする。

 

「察してるとは思うけど、俺のブランドなんだよね。そんなわけで、融通を聞かせるのは案外簡単なんだ。中身は二着分の引換券。待ち時間を作ってるのは演出の面もあるから、そんなに待たせないよ。なにせ製糸から縫製までメイドイン俺だからね」

 

 「Tekstur」という「質感」を意味するノルウェー語を冠したこのブランドはブルムンドやイングラシアの王侯貴族の間で広まり始めた服飾系の新興商会である。

 

 販路としてはミョルマイルの持っているものを利用しており、緻密で立体的な刺繍が人気をじわじわと伸ばしている。

 

 その値段はとても高額であり、物によってはハンカチ一枚で金貨が必要となったりするのだが、看板商品はオートクチュールである。

 

 デザインによっては金貨十枚でもきかなくなるという超高額ブランドだが、それなりに注文がかかっている。更に先程のテクトの言葉通り制作におけるコストがかからず、経費が店舗の少人数の人件費のみなのでほぼ丸儲けとなっていた。

 

 それを販路の使用料も兼ねてミョルマイルと分けているため結構な勢いでテクトの預金額が増えていっており、ここからラミリスへの補償分や開国祭でヴェルドラの屋台に派遣されているスタッフのボーナスも支払われる予定となっている。

 

 金銭事情はさておき、デザインに関してはこの場で決めるわけにはいかないため、ひとまずチケットを渡してそれ以外の話を詰めていく。

 

 そうして、近い内に楽団を夜想宮庭(ナイトガーデン)へと派遣することに決まり、その帰りに超克者達の研究員を連れ帰る事になった。

 

 その際にデザインの詳細を打ち合わせる予定となった。

 

「よ~し、できた」

 

 話も尽きたところでテクトが鉢の周囲の結界を解除する。

 

 そういえば何かしていたと思い出しながらリムルとルミナスがテクトの手元を覗き込む。

 

 そこには先程と見た目は変わらない観葉植物があった。

 

「これがなんだというのじゃ?」

 

「ふふふ、これこそ技術発表会の実践―突然変異だよ」

 

「何か変わったか?」

 

「ただ見るんじゃなく、よく観てみてよ」

 

 得意げなテクトを訝しみつつ観葉植物を解析鑑定すると、起きていた事実に気づき、瞠目する。

 

 テクトの手元にあったのはヒポクテ草だったのだ。

 

 原理としては先の技術発表会で説明された通り、結界の中で出力任せに植物を魔素で覆っていたのである。補足すると単に魔素を浴びせるだけでなく、糸で組織内に直接魔素を送り込んでいたりする。

 

 そのため理解はできたのだが納得はできず、二柱とも軽く引いていた。

 

 これは披露しなくて正解だったとリムルとルミナスの意見が一致したところで空間断絶が解除され、何事もなかったかのよう雑談を再開する。

 

 内容は演奏についての感想が主であり、最終的にルミナスのおねだりでテクトが一曲奏でる事になった。

 

「やはりいい音じゃな。ところで、貴様達が招いた来賓共の中に、少し不快な気配を纏った者共がおったが、気付いておるのだろうな?」

 

 演奏も終わり満足そうに頷くルミナスが何でも無いことのように話す。僅かに考えたリムルだったが、言葉の意味に思い至り、頷き返した

 

「ああ。二人、かな?」

 

「ふむ。腑抜けて油断しておらぬなら、それで良い。九樹魔王(ユグド・イルミル)の名を貶めぬよう、せいぜい心掛けるが良かろう」

 

 その言葉を最後に会談も終わる。

 

 サックスをしまったテクトがリムルを抱え、部屋を後にするのだった。

 

 

 

 会談を終えた後の夕食ではテクトはミリムの指名で世話を焼く事になり、殺気にも似た気配とミッドレイからの視線でなんとも言えない気持ちになりつつ、落ち着かない時間を過ごす羽目になった。

 

 その後、テクトに任せきりにして何も知らないまま研究発表を行わせていたことをヒナタとユウキに責められたと落ち込むリムルを宥めつつ会議室に入ると、既にミョルマイル以外は揃っていた。

 

 待つ間にリムルが企画内容を話題に上げつつ主役となっていた面々をねぎらっていると、青褪めた顔でふらふらとしながらミョルマイルが入室した。

 

「ど、どうもお待たせ致しました」

 

 ミョルマイルの様子にただならぬ様子を感じたものの、一旦落ち着くのを待つ。

 

 一息吐いたミョルマイルが話すことには、資金不足とのことだった。

 

 その原因は小売商人達の支払い要求への対応であり、先程まで対応に追われていたという。

 

 予算額からは問題のないはずの支払いで苦慮しているというミョルマイルに事情を聞くと、どうやら金額の問題ではないらしかった。

 

 まず、予算額として換算しているクレイマンの城から得た財宝やファルムスからの賠償金として得た星金貨は支払いには使えない。

 

 前者は価値こそあるが、そもそも通貨ではない。財宝の中には金貨もあるが、正式な通貨とは認められていないため拒否されればそれまでとなる。

 

 後者は金額として大きすぎ、小売商人への支払いには使えない。

 

 しかし予算には問題ないため最初こそ金貨での支払いに応じていたミョルマイルだったのだが、その頻度に疑問を抱いたのだが、気付いたときには国庫から金貨はほとんどなくなっていた。

 

 既に引き受けてしまった支払いのためミョルマイルの私財も使い、落ち着いたところで懇意にしていた商人に事情の説明を求めると、ここ最近で新たに取引を始めた小売商人達は共通通貨での支払いしか認めぬと言い出したらしい。

 

 国家間の取引であれば商品での相殺や証文による後払いも可能だが、新規の取引相手であり信用に欠ける魔国連邦では証文という手段は取れなかった。

 

 そのため即金での支払いしかないということはミョルマイルも理解しており、取引に関しては慎重に行っていた。

 

 ミョルマイルは大口の取引によって星金貨を崩したり、懇意にしていた大店の店主達との取引なら融通は利かせてもらえたりするという考えだった。

 

 しかし、小売商人達は取引での支払いは共通通貨でしか認めないという強硬な姿勢であったため懇意にしている商人もどうすることもできず、現状に至っていた。

 

「ミョルマイル、俺の預金を使っても駄目だったのか?」

 

「いえ、最悪の場合は事後承諾という手も考えておりましたが、今回は先に事態が落ち着いたので手はつけておりません。ですが……」

 

「まぁ、誰かしらが仕掛けてきてるのは確かだな。西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウェスト)が定める国際ルールでは、支払いはドワーフ王国で製造された金貨で行うこととされている。小売商人達の要求は正当なものだが、それを果たせぬとなれば、信用の失墜は免れない、と」

 

 テクトの言葉に皆が悩ましげな顔になる。

 

 作意の影はあれど、状況は魔国連邦が国際ルールを無視しようとしている、というのが事実となる。

 

 西方諸国評議会への参加を考えるのであれば、強硬に魔国連邦側のルールを押し付けるのは反発を招くため良案とは言えない。

 

 また、小売商に一斉に行動させる根回しでき、ミョルマイルも正体を探れていない相手が魔国連邦の評判を落とすことだけとは考えづらかった。

 

「こちらのルールを押し付ける訳にはいかないのですね?」

 

 声を上げたのはシオン。詳しい説明をしていないにもかかわらず、現状を把握していることに感心しつつ、リムルが答えた。

 

「ああ。なかなか賢くなったな、シオン。こちらのルールを押し付けると、西側諸国で仲間と認めてもらえなくなる可能性がある。人間達とも仲良くしたいと考えている俺達にとって、それは何よりも避けなければならない事態な訳だ」

 

「ですが、御二人の構想では、サリオン、ブルムンド、ドワルゴン、ファルムス―じゃなくて、ファルメナス、そして、魔王ミリム様の魔王領。これらの国々で共栄圏を作り上げるのですよね? その中心にテンペストを置く以上、我々を無視する方が損失が大きくなるのでは?」

 

 シオンが的を得た発言をしたことでリムルは驚愕する。

 

 それに答えたのはディアブロだった。

 

「クフフフフ、流石は第一秘書シオン殿です。貴女の発言は正しい」

 

「だろう? だったら何故、我々の邪魔をしようというのだ? 無視はできないのならば、協力して心証を良くする方が得ではないか?」

 

 会話を聞き、シオンが適当に言っているのではなく、十分な理解の元で発言したことがわかり、テクトは成長に感涙してそっと目尻を拭う。

 

 テクトの気持ちはわかるもののやや大げさに思える反応にリムルが苦笑しているうちにディアブロとシオンの話は進んでいく。

 

「人というのは、実に不思議な生き物です。協力しなければ生きていけぬ癖に、仲間内で上下関係を決めたがる。そして、二つ以上の集団が隣接した場合、どちらが上に立つかでまた揉めるのです。弱くて憐れな者達は、自らの権益を損なう事を非常に恐れているのでしょう。そして今回の場合は」

 

「ふむ。御二人が築く共栄圏が、評議会の立場を脅かすと心配しているのだな?」

 

「正解です」

 

 自身の説明を引き継いだベニマルにディアブロは満足そうに頷く。

 

 話を聞いて幹部たちにも理解が広がり、憤る者も出始める。

 

 それを見て、ディアブロは楽しそうに嗤った。

 

「実に滑稽。自らの分を弁えず、リムル様とテクト様の慈愛を受け入れぬ愚かな支配層など、滅ぼしてしまえばいいでしょう」

 

「フフッ、第二秘書もそう思うか?」

 

「素敵な発案ね。盛大にもてなしてあげないといけないわね」

 

「却下だ」

 

 過激な発想をするディアブロに同調したのはシオンとテスタロッサ。直後にテクトに諌められ、残念そうに肩を落とした。

 

「全く……ミョルマイル、落ち着いたということは支払いには今暫く猶予ができたのだろう? 期限はいつだ?」

 

「はい。彼らも祭りを楽しんでくれているようで、この開国祭が終わる翌日まで待つ、とのことです。ワシの知人達も掛け合ってくれたのですが、彼らからはそれだけの期日しか譲歩を引き出せませんでした」

 

 開国祭は三日で本日は初日。そのため、支払期日は三日後ということになる。つまり丸二日は金策に使えるということである。

 

 そこまで考えてテクトはフッと嗤った

 

「十分だ。それだけ時間があるなら正攻法で跳ね返してやれるさ」

 

「多めの金塊で支払うとかじゃ駄目なのか?」

 

「駄目だな。それではこちらが侮られる。無理難題を吹っ掛ければ、損をしてでも取り繕う国であると、奴らは認識するだろう。となれば、今後の取引にも大きな影響が出る。少なくとも対等な相手と思わず、面従腹背とでもいうように表面上は笑顔で接し、裏では嘲る姿が目に浮かぶ」

 

 リムルの質問にテクトは頬杖をつきながら答える。

 

 それを裏付けるようにミョルマイルが深く頷いたのを見て、リムル達も納得したようだった。

 

「そういうわけで、金策についてだが、まぁ明日いっぱい使っていこう」

 

 テクトの言葉に皆が表情を引き締めた。

 

「ガビル、ベスターを通じてガゼル王へ連絡を。星金貨を両替できないか確認を取ってくれ」

 

「承知!」

 

「リグルドはブルムンド王に連絡を。両替とまではいかずとも、星金貨を担保にできうる限り金貨を貸し付けてもらえないか交渉を頼む」

 

「おまかせください!」

 

「ソウエイにはエレンの捜索を頼む。エラルド公と交渉するには彼女が適任だからな」

 

「なるほど、お任せを」

 

「後はできるだけ稼いでいこう。祭りでは財布の紐も緩む。ミョルマイル、俺の方の在庫も放出していってくれ」

 

「わかりました。頑張って攻勢を仕掛けて見せますぞ!」

 

 指示を出したそれぞれが力強く頷いたのを見て、他の幹部も頷く。士気も十分とみて、テクトは締めに入った。

 

「うまくいかずとも心配する必要はない。西方諸国評議会のルールでは正当だろうが、ここは俺達の国で、今現在評議会は関係ない。こちらのルールを通すことにも正当性は十分にある。気負わずにやってくれ!」

 

 その言葉に全員が諾と答えるのにテクトが頷きを返す。

 

「では、今日は解散!! お疲れ!!」

 

 リムルの宣言でもって報告会は終わりを告げ、心労の溜まっているであろうミョルマイルを夜店へと連れていくことに決まる。

 

 その脇でテクトは煤けた雰囲気でリムルと話していた。

 

「じゃぁ、この後は宜しく……もし俺が帰らなかったら、さっきの感じでね」

 

「お前なら大丈夫だって。ちゃんと帰って来るって信じてるからな!」

 

「……ありがと。頑張るよ」

 

「おう!」

 

 暗い雰囲気のテクトにリムルが明るく返したことで、テクトも僅かに持ち直した。

 

 そうして軽くリムルを撫でるとテクトは立ち上がり会議室を後にする。頬を軽く叩き前を向くと、同行者と共に転移するのだった。

 


 

 次回「修羅場、再び」




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