転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

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78話:武闘大会本戦・一日目

 開国祭・二日目の朝。

 

 昨夜の宴席で飲み過ぎ、智慧之王による「痛覚無効」の弱体化で頭痛に苦しみながら衣装部屋に近づくと、室内から鈍い音が鳴る。慌てて中へ入ると、テクトが壁に向かって立っていた。

 

 テクトの顔の正面のかべ壁にはヒビが入っており、ずつきでもしていたことが容易に察せられた。

 

 明らかな異常事態に智慧之王も「痛覚無効」の出力を戻し、リムルの思考もクリアになる。

 

「テクト、なんかあったのか?」

 

「大丈夫、個人的に抱えていた問題は解決したから……ただ、ちょっと危ないところだったってだけ」

 

「よくわかんないけど、無理はするなよ?」

 

「うん、わかってる」

 

 要領を得ないが話すつもりはないということは伝わり、リムルは昨夜の宴席でガゼルやエラルドと相談したことを話す。

 

 両替には二人とも前向きに検討してもらえているようで、成果としては上々といえた。

 

 宣伝のため来賓にも解放していた九十五層の会員制の店では来賓も景気よく金を使っていたようなので、それも十分に足しになると思われた。

 

 そんなことを話す間もテクトは壁を見つめており、時折再び頭突きの音を響かせるという奇行を繰り広げていたが、やはり何も言うことはないのだった。

 

 

 

 本日の催しは武闘大会の本戦である。

 

 完成したばかりの闘技場は全ての席を客で埋め尽くし、なお外には客が存在していた。

 

 中央には正方形の石畳の舞台が用意されており、これは物理・魔法両面で保護されている。

 

 また、客席との間には結界が二重で敷設され、最悪の場合は「誓約之王(ウリエル)」による防御も予定されていた。

 

 後方の客が舞台の様子を確認できるようスクリーンも配置されており、これは外壁にも配置されているため外の客も観戦できるようになっていた。

 

 外部の人間もいるためいつもと違い二柱が並んで座り、リムルがなんとなく違和感を感じていると、八人の選手が並び、紹介が始まった。

 

 アナウンスをするのはソーカ。

 

 隠密である彼女が目立つのはどうなのかという疑問もあったが、顔が割れている者がいたほうが都合がいい場合もあるらしかった。

 

 最初にスクリーンに映し出されたのは金髪の青年。

 

 妙に緊張した様子の青年を指し、ソーカが紹介を始める。

 

『最初に紹介するのは、一番人気のこの人でーす!! 昨日の第一試合の覇者、その名は、勇者、マ~サ~ユ~キーッ!! その華麗な剣技を見たものはいない。何故ならば、その剣が抜かれたその時には、相手は既に死んでいるからだ!!』

 

 マサユキの実力は予選ではわからなかったらしい。

 

 予選のバトルロイヤルにおいて同じブロックの参加者に仲間がいたらしく、彼らが敵を全員倒してマサユキへ勝利を譲ったため、本人は剣を抜くどころかほとんど動かず終わったとのことだった。

 

『圧倒的強さで名を馳せて、若くして“勇者”を名乗るマサユキだが、今日は一体どんな試合を見せてくれるのかーッ!? その甘いマスクに見惚れる者が後を絶たず、その目で見つめられて落ちない者はいないという! マ~サ~ユ~キーッ!! 今日、本戦でその勇姿を見られる者は、幸運を噛み締めろ──ッ!』

 

 ソーカの声に続き、観客から歓声が上がる。

 

 その人気ぶりに実際に会って目にした妙に落ち着かない立ち振る舞いから実力を疑うリムルは懐疑的だったが、頬杖をついて観察していたテクトが視線を外さないのを見て、何かあるのかと注目する。

 

 続いたのは“狂狼”のジンライという男。

 

 装備の質は悪いが歴戦の勇士という風体で、Aランクに届かない程度というように見えた。

 

 三人目は“流麗なる剣闘士”ガイという男。

 

 二つ名の通り美しい剣技を誇る剣士らしく、肉体的にはジンライには及ばないが、技量次第ではAランクと考えられる。

 

 そして、四人目と五人目。

 

 牛頭族(ゴズ)馬頭族(メズ)の長が並んでいた。

 

 ここにいる理由だが、何がどう伝わったのか優勝者が四天王に任ぜられるという噂が広まり、予選に多くの魔物が参加していたのだという。

 

 そんな中彼らは揃って勝ち進んだというわけだった。

 

 また、迷宮のボスを任せる魔物が名無しというのはいかがなものかという話になり、それぞれゴズール、メズールという名がつけられている。

 

 それによりゴズールは牛鬼族(ギュウキ)に、メズールは馬鬼族(バキ)に進化し、智慧之王による実験の結果それぞれ「超速再生」と「魔力妨害」を獲得し、二体の得意分野が定められた。

 

 また、智慧之王の実験はそれだけにとどまらず、ユニークスキル「限定者(サダメルモノ)」を両方が獲得している。

 

 その権能は自分の周囲に独自ルールを強制する空間を作り出すというもの。ただし簡単に抵抗でき、効果を通すにはそれなりに実力差が必要となるようだった。

 

 彼らは勝手に賭けをしており、勝った方が四天王、負けた方が五十階層のボスということにしているらしい。

 

 彼らのどちらかが迷宮の主となることも含めて紹介されるが、まだ迷宮については詳しいことが判明していない観客にはよくわからない話だったようだ。

 

 そして六人目。

 

 彼を確認した瞬間、魔王二柱の頬は引きつった。

 

『続いて、昨日凄まじい強さを見せた、謎の覆面男の登場だあーッ!! 正体不明の獅子覆面(ライオンマスク)は、果たして正義の味方か悪魔の使者か!? 果たして今日は、どのような戦いぶりを魅せてくれるのか!?』

 

「なあ、テクト……」

 

「まず間違いないね。多分ミリムが送り込んだんだと思うけど……何も聞いてない」

 

「というか、ディアブロのやつ、昨日の予選参加者は『問題にならぬ者ばかり』とか言ってなかったか?」

 

「一応味方側だからじゃない? 戦って負ける気もないんだろうけど」

 

 二柱で六人目の正体について話していると、ソーカが懐から紙を取り出す。

 

 内容は匿名のメッセージらしく「ワタシの代わりに頑張るのだぞ! わかっているだろうが、正体がバレるのだけは阻止するのだ! それでは、健闘を祈る!」とのことだった。

 

 ちなみに獅子覆面を送り込んだと思しき匿名人物(ミリム)は現在迷宮で遊んでいる。

 

 様々な罠を張り巡らせている最中だが、予定ではそこまで深く挑戦者が進むことはないので大半は徒労に終わることになる。だからといって楽しんでいるところをわざわざ呼びつける理由もないので放置しているのだった。

 

『さてここからは、真の強者の登場です。魔国連邦の誇る幹部達―その内の二名が、今大会に出場してくださいます。その実力は一騎当千、優勝すれば両魔王陛下の"四天王"としての地位が約束されている!』

 

 まず差されたのはゴブタ。

 

 左右を獅子覆面とゲルドに挟まれているため小柄な体躯がより頼りなく見えるが、本人の腰が引けているのも理由かもしれない。

 

『まず最初の一人は、ゴ~ブ~タァ~ッ!! ニヒルなマスクに憧れる者も多いエリート戦士! 天才の名をほしいままにする若き戦士長。今回はどのような戦いぶりを魅せてくれるのでしょう!?』

 

 ソーカの紹介にゴブタが青ざめる。

 

 本人からすれば気づけば大舞台に立たされ、下手をすれば魔王クラスと戦う羽目になるのだから仕方がないようにも思える。

 

 しかし今更どうすることもできないので誰も助けることはなかった。

 

『前座は終わり、最後に紹介するのは真打ちです! 猪人族の救世主、ゲルド殿ォーッ!! 鉄壁の守りを誇る魔国連邦の守護神でもあります!!』

 

 ゲルドはゴブタと違い種族をまとめる幹部であるためかソーカも口調を改めつつ紹介する。

 

 さり気なくゴブタ以前の選手も前座といい切ったことに魔王二柱が苦笑していると、紹介も締めに入った。

 

『さーて、それではこれで、八名の選手が出揃いました! 一体誰が優勝するのか、運命の時は間もなくでーす!!』

 

 紹介が終われば次はリムルからの挨拶となる。

 

 リムルが立ち上がると同時にテクトが指を鳴らし、舞台までの転移門を作る。

 

 演習のための落雷とともに現れた大きな門とそこから現れたリムルに観客が歓声を上げた。

 

『さて、諸君。今日の試合に勝ち抜き、明日の決勝で勝利すれば、我が国での栄光を授けよう』

 

 簡単な挨拶に続き、選手それぞれに声をかける。

 

 優勝の暁にはマサユキへは魔王への挑戦権、ジンライへはマサユキの援護に徹するという宣言を受け武具類の授与を約束する。

 

 それを聞いていたガイがリムルへの挑戦を偉そうに希望し、傲慢不遜な態度に苛つくディアブロを動かさないために面倒ではあるものの挑戦を受けることを約束した。

 

 続くゴズールとメズールには迷宮のボスとなる自覚を持つように伝え、両者とも堅苦しく応じる。

 

 獅子覆面には適当に応対し、ゴブタの困惑には耳を貸さずに激励する。

 

 最後にゲルドへ真面目に激励して挨拶は終わった。

 

 リムルも席に戻り、組み合わせのくじへと移る。

 

 本戦はトーナメント方式で三位決定戦はない。

 

 開国祭二日目は準決勝までを行い、決勝を三日目に控えていた。

 

 くじの結果は以下の通り

 

 第一試合 ゴズールVSメズール

 

 第二試合 “勇者”マサユキVS“狂狼”ジンライ

 

 第三試合 “流麗なる剣闘士”ガイVSゴブタ

 

 第四試合 ゲルドVS獅子覆面

 

 不正がバレれば信用を築くのが難しくなるため、くじの内容を操作することをしなかったが、結果としてマサユキに有利な組み合わせとなった。

 

 一回戦は戦わずに済み、準決勝は拮抗した実力での戦いで消耗しきった相手となる。

 

 逆ブロックでは獅子覆面も含めた強者同士の戦いであり、手の内を隠したまま勝ち上がることは不可能に近い。

 

 四天王の座を目指すという名目がある以上、不戦敗という選択肢は取れないためゴブタとゲルドは真面目に戦わざるを得ず、内容次第だが消耗を翌日まで引きずる可能性もある。

 

 マサユキ側の不正を疑いたくなる結果だが、ディアブロが見逃すとは思えないためリムルは納得がいかないながらも試合見守ることにするのだった。

 

 第一試合はまさしく力と技術を競う戦いだった。

 

 互いに盾を構え、ゴズールは斧を、メズールは槍を構え、百年の戦争での経験から互角の勝負を繰り広げる。

 

 観客も激しい戦いに熱狂し、歓声を上げていた。

 

 試合開始から二十分が経過したとき、唐突に事態が動く。

 

 ゴズールが武器である大斧を投擲したのだ。

 

 メズールはその一撃を左腕を犠牲にして受け、回避の隙を伺っていたゴズールへ詰め寄ると、槍による連撃を見舞う。

 

 このまま決着かと思われたが、「超速再生」で回復しながらゴズールが反撃し、カウンターによって逆にメズールを沈める。

 

 物理攻撃がメインの戦いだったことで再生能力の差が勝負の要点になり、相性の重要性が明らかとなった試合だった。

 

 第二試合はジンライが不戦敗を宣言し、すぐに終わった。

 

 何故か舞台中央で握手する両者―というよりもマサユキに喝采が贈られ、なんとなくリムルには納得できなかった。

 

 第三試合―試合開始直後から一方的な展開となった。

 

 ソーカの合図とともにガイの速攻が決まるが、装備の差でゴブタはかろうじて無傷で終わる。

 

 もとよりやる気にかけていたゴブタは食らいつくのではなく上手いこと場外負けを狙っていたのだが、ガイがそれを阻みながら追いかけ回す。

 

 ゴブタは致命的となる剣はきっちりと受け、逃げ回っていた。

 

 まるでゴブタを嬲りものにするかのようなガイの態度に面白くないものを感じたリムルは立ち上がった。

 

「ゴブタ、気合だ! 根性見せて、そいつに勝ってみせろ! そしたら小遣いアップだ! それに、もしも優勝したら、お前の欲しがっていた新型の釣り竿をやるぞ!!」

 

「マジっすか!? それなら、奥の手を見せるっすよ!!」

 

 リムルの声にやる気になったゴブタが召喚術の行使を始める。

 

 相棒たる星狼族(スターウルフ)を呼び出し、「同一化」によって対抗するつもりだったゴブタだったが、その前に決着した。

 

 舞台に現れたのは星狼族ではなく召喚に割り込んだランガだったのだ。

 

 数が増えても大した脅威ではないと高をくくっていたガイはランガの突撃に対処しきれず、そのまま体当たりを受け気絶する。

 

 召喚術はルールの範囲内なので、本人は困惑していたが、ゴブタの勝利も問題なく受け入れられた。

 

 ランガの参戦方法にフェルが不満そうにしていたため、テクトは分身を使ってのグルーミングでなだめることになった。

 

 第四試合―ゲルドと獅子覆面の試合は後世まで語り継がれるような名勝負となった。

 

 両足を地につけ防御を固めながら反撃を行い重戦車のようにジリジリと攻めるゲルドに対し、獅子覆面は四方八方から多彩な攻撃を繰り返していた。

 

 魔素量では獅子覆面に軍配が上がるものの、防御に徹するゲルドを崩すことはできない。

 

 ゲルドの攻撃は間合いを開けて攻撃する獅子覆面には当たらず、膠着状態が続いていた。

 

 そうしておよそ五十分の間、観客を熱狂の渦に引き込みながら一進一退の攻防が続く。

 

「俺様を相手にして、よくぞここまで持ちこたえたもんだぜ。褒めてやる」

 

「フ、フフッ、こ、光栄です。偉大なる貴方から、そのような言葉を頂けるとは」

 

「世辞は、よせ。それよりも、一つ聞くぞ?」

 

「何なりと」

 

「お前は何故、能力(スキル)を使わない?」

 

「知れた事です。それは貴方が、本来の姿を見せぬからですな」

 

「ふふっ、ふはははは! この俺様を偉大と言いながら、本気で勝ちを狙っていたか。面白い。本気の姿を見せる訳にはいかねーが、本気の技は見せてやろう!」

 

 獅子覆面の問いはリムル達も感じていた疑問だった。

 

 獅子覆面―カリオンは「獣身化」を使用した姿が本来の戦闘力を十全に発揮できる姿である。

 

 それを知っているからこそ、ゲルドも「守護者(マモルモノ)」と「美食者(ミタスモノ)」を使うことなく身一つで戦っていたのだ。

 

 ゲルドの意思を知り、匿名のメッセージもあるため全力は出せないが、少しは本気を見せる気になったようだった。

 

「いくぜ?」

 

「応ッ!!」

 

 カリオンから金色の妖気が一瞬だけ立ち上り、それが右拳へと収束する。

 

 残像を引きながら繰り出された拳はゲルドの両腕を弾き、その奥―急所である水月へと叩き込まれる。凄まじい衝撃と轟音の後、ゲルドは一歩よろめきながら下がった。

 

「お見事―どうやらこのオレも、ここまでのようです」

 

 ゲルドは敗北を認めつつも膝を屈することはせず、自分の足で場外へと向かう。

 

 ふらつく身体をディアブロが支え、ソーカが獅子覆面の勝利を宣言する。

 

 目礼を交わす二人を万雷の拍手と大歓声が称賛しているのを見て、リムルは拍手を贈りながらもやはり第二試合の光景はおかしいのだとおもうのだった。

 

 一度休憩を挟み準決勝第一試合。

 

 消耗の激しいゴズールとマサユキが向かい合っていた。

 

 選手には回復薬の支給がされているので外傷は残っていないが、魔素の消耗は大きくゴズールには不利な勝負となる。

 

 そのため少しでも時間を稼ぐためか、ゴズールはマイクを受け取ると話し始めた。

 

『リムル陛下に喧嘩を売った勇者ってのは、アンタだな? 身の程を知らないってのは憐れだな?』

 

 いきなりの挑発だが、マサユキは引きつったような笑みを浮かべるとソーカへと手を差し出す。

 

『フッ。君の戦いぶり、とても見事だった』

 

『お、おうよ』

 

 僅かに震える手にマイクが渡り始まった称賛にゴズールは出鼻をくじかれたようだった。

 

 そこからはマサユキの独壇場だった。

 

 万全でないゴズールに勝利しても感動はないため、ゴズールが守護する迷宮にて互いに万全の状態での戦いを望むかのように話す。

 

 消耗を見抜かれたゴズールは豪快に笑うとマサユキの提案を受け入れ棄権を宣言した。

 

 舞台上で握手をする二人に観客は大興奮であり、マサユキの器の大きさを褒める声や、それを見抜いたゴズールを称える声が闘技場を埋め尽くし、リムルは納得がいかなかった。

 

 しかし、決勝で戦う相手はゴブタとカリオンの試合の勝者であり、どちらも口先で勝負を下りる理由はない。

 

 そのため実力を計る機会はあるため決勝に期待することにするのだった。

 

 そして、準決勝第二試合。

 

 この日の最終戦はゴブタと獅子覆面の試合である。

 

 本人の力量差を見れば勝敗は決しているように見える試合だが、ゴブタは最初からランガを喚んでいた。

 

「今日のオイラは一味違うっすよ!」

 

「笑わせるなよ、小僧。悪い事は言わねーから、さっさと棄権」

 

「ランガさん、お願いするっす!」

 

「うむ、心得た!!」

 

 試合開始直後、カリオンの提案を蹴り、ゴブタ達が仕掛ける。

 

 奇襲に近い攻撃だったが、カリオンの反撃にゴブタはランガから振り落とされ逃げ回る。

 

 一瞬の攻勢から這々の体となる無様な姿に観客は爆笑するなか、ゴブタがいなくなったことで身軽になったランガが仕掛ける。

 

 素早い動きに上空へ逃れたカリオンの練った闘気による乱れ撃ちにランガは場外へと逃れる。

 

 限られた空間で逃げる相手を追い詰めるつもりであったカリオンは肩透かしを食らい隙を見せるが、それは致命的だった。

 

 直後再び召喚されたランガが突進した。

 

 カリオンにとって実力から警戒すべきはランガではあるが、あくまで選手はゴブタ。

 

 召喚獣が場外に出ようと再度召喚しようと問題はなく、認識の差が隙を産んでしまったのだ。

 

 思いがけない攻撃だったが、カリオンは間合いを見極め反撃を思考に入れた回避を選択する。

 

 この行動が試合の流れを決定づけることになった。

 

 回避の直後からカリオンの動きが目に見えて鈍る。

 

 顔に当てた両手からは素肌が見え隠れしており、よく見れば覆面が破れていた。

 

 そう、ゴブタの狙いは最初から覆面を剥ぎ取ることだったのだ。

 

 匿名のメッセージに従い顔を守る獅子覆面にゴブタとランガが一方的に攻撃する。

 

 実力で勝る相手の縛りを利用して攻める姿に観客からクレームが飛ぶが、ゴブタは堂々と言い返す。

 

「ごちゃごちゃウルサイっすよ!! 世の中、勝ったものが正義っす。リムル様だって、そう言ってたっすから!!」

 

 最終的に怒り心頭といった様子のカリオンが自ら場外へと出て決着する。

 

 大番狂わせに会場が熱狂した。

 

 ゴブタの行動も悪役(ヒール)レスラーのような人気を獲得したのか根っから批判するような様子ではなく満足気な反応だった。

 

 テクトはヴェルザードとデートとなったためその日の晩餐の席には出なかったが、行く先々で武闘大会の話がされており、決勝への期待が高まっていることを感じさせるのだった。

 


 

 次回「金勘定」




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