転生時の要望が違う形で受け取られた件   作:篠白 春夏秋冬

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82話:開国祭の清算

 祭りも終わり、帰途につく来客が街道を埋め尽くしていた。

 

 混雑しつつも詰まることなく移動することができていることを確認し、テクト達は大会議室へと向かう。

 

 会議室では外からでもわかるほどの諍いが起きていた。

 

 支払いは必ずするというミョルマイルに小売商達が詰め寄り、それをミョルマイルの友人の大店の商人が宥めていた。

 

 ドワーフ金貨以外の支払いなど信用ならぬと騒ぐ小売商に商人とは別の声がかかる。

 

「まあまあ皆の者、少しは落ち着いたらどうかね? このワタシ、ガストン国王の代理たるミューゼがついておるのだ、如何に魔の国の者でもその方達への支払いを踏み倒しはすまい。のう、ミョルマイルとやら。相違ないな?」

 

「はっ、ミューゼ公爵様! その通りで御座います。ですが」

 

「ならば早々に、この者達を安心させてやって欲しい。西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウェスト)の定める国際法に則って、速やかなる支払いをして、ね」

 

 ガストン王国はイングラシアに隣接する商業国家である。大国というわけではないが公爵となると大貴族である。

 

 そんな大貴族ではあるがミューゼは紳士的に交渉を行っていた。

 

 ミョルマイルは魔王の代理として権限は与えられているが、職位も地位もない平民の食客である。

 

 にも関わらず名前を覚えて自ら対応するというのは最上級の扱いであると言えた。

 

「お、お待ち下さいませ、ミューゼ公爵様。最初の契約時には、慣例通りの支払い方法で良いとなっておりました。慣例というのは申すまでもなく」

 

「ミョルマイルよ、そんな瑣末なことなど、ワタシの知ったことではないのだよ。商人にとってもそうだろうが、国と国の付き合いに於いても、信用というのが一番大事なのだ。信用というのは、お互いが約束を守る事で生まれる。そうだな?」

 

「仰る通りで御座います。ですが」

 

「黙りたまえ! この者達は、貴殿達を信用して取引を行った。その信用を踏みにじるつもりなどないのだろう?」

 

「勿論で御座います。ですが当方にも事情が御座いまして」

 

「フフッ、なるほどなるほど、そういう事か。ミョルマイルよ、その方の悩みの解決法だが、幸いにしてワタシに心当たりがあるのだ。そこのリグルド殿も同伴で構わぬ故、少し個別で話せぬか?」

 

「ど、どういう意味で御座いましょうか?」

 

 話を聞く限り、ミューゼがトカゲの尻尾で間違いはなさそうである。ミョルマイルも気付いているはずだが自然に狼狽して見せることに実況と本業ではやはり違いが出るものだと、テクトは妙な感心をしていた。

 

 とはいえこれ以上話を聞く必要はなさそうだと判断し、テクトが視線を送るとディアブロが扉を開け放った。

 

「それには及ばないな」

 

 そう言いながらテクトとリムルが並んで扉をくぐる。その後ろからベニマルとシオン、最後にディアブロが続き、静かに扉を閉める。

 

「待たせたか? それにしても、少し騒がしいぞ」

 

 威圧するように商人たちを一瞥するベニマルに商人達は静まり返り青ざめる。

 

 交渉はリグルド達に任せ、わざわざ足を運ぶことはないだろうと考えていたところに魔王が二柱とも現れたことで混乱しているようだった。

 

「魔王両陛下のお成りである。頭を下げよ」

 

「構わんよ、リグルド。俺達はここに権威や暴力を振りかざしに来たわけではない」

 

 魔王の登場に頭を下げるように睨むリグルドを鷹揚に制し、テクトは会議室を見回す。

 

 その間に気を降り直したのか、ミューゼは柔和な表情で挨拶をし始めた。

 

「これはこれは、魔王両陛下に於きましては、ご機嫌麗しいようで、重畳で御座います。ご挨拶が遅れまして、誠に申し訳御座いません」

 

「ガストン王国のミューゼ公爵か。何故ここに? 貴殿に用事はないだろう」

 

「実はですな、今回初めてこの国と取引した者共がおりまして、自分達の正当な権利を蔑ろにされたと、ワタシに泣きついてまいったのです。我が国の民を守るのも貴族としての務めでして、失礼だとは思い申しましたが、こうして仲裁に参ったしだいです」

 

「ほう? ミョルマイルの話では予算は十分に足りると聞く。にも関わらず支払いが滞るとはどういうことだ?」

 

「ハッ、それはですね、この者達がドワーフ金貨による支払いしか認めぬと」

 

 テクトに視線に恐縮した様子でミョルマイルが答えようとする。それを遮ったのはミューゼだった。

 

「それは当然の話ではないか。ミョルマイルよ、お主もブルムンド王国に所属する正規の商人であったのなら、商業に関する国際法くらい熟知しておろう! 自由組合のような杜撰な者共と違い、この者共が信ずるはドワーフ金貨のみなのだ」

 

 ミューゼは声を荒げるでもなく商人達の肩を持つ。

 

 一見するとミューゼは善意の第三者という構図である。

 

「そうか。この一角に各国の記者が集まっていると聞き、何事かと思ったが、瑣末事だったな」

 

「ですからテクト様、今回の対応も俺に任せて下されば」

 

 ベニマルの威圧するような態度に商人にも怯えの色が刺す。

 

 それを宥めたのはリムルだった。

 

「まあまあベニマル。話を聞いてみれば、商人さん達が心配するのもわからなくもないさ」

 

「ですが、リムル様。俺は疑問に思うのですが、ドワーフ金貨じゃなくとも古代金貨ならある。それが駄目なら、我が国の特産品を、代金分だけ仕入れてもいいと思うのですよ。何故、それが不服なのか?」

 

「俺もそう思うが、商人たちにも事情があるのだろうさ」

 

 二人が話すのを聞きながらミューゼをこっそりと観察すると、話しかける機会を伺っていた。

 

 それに気付いていないかのようにミョルマイルが提案する。

 

「それで、どうでしょう? ここは我が国を信頼して、ベニマル様が申されておるように、証書、もしくは現物による支払いに応じてはもらえませんか?」

 

 この提案が穏便に済ませる事ができるかの分水嶺。

 

 といっても商人達にとってである。

 

 商人達の答えは否。

 

 信用はできぬ。ドワーフ金貨での支払いをと一方的にまくし立て始めた。

 

 その様子を見て一瞬嗤うとミューゼが進み出た。

 

「どうでしょう。もしもお困りのことがあるのでしたら、このワタシ、ミューゼめに相談してはもらえませぬか? これも何かの縁ですし、ワタシも御二人のお役に」

 

「必要ないな。入れ」

 

 ミューゼの言葉を遮りテクトが声をかけると、ゲルドが入室する。その手には山積みの金貨を載せた盆があった。

 

 金貨を見て会議室がざわめきに包まれる。

 

 ミューゼの顔色は悪く、先程までの柔和な表情は見る影もなかった。

 

「支払い、でしたな。宜しい。ドワーフ金貨にて、支払いに応じましょう」

 

 リグルドの宣言に水を打ったように静まり返る。

 

 まず声を上げたのはミューゼだった。

 

「お、お待ちを、お待ち下さいテクト陛下!?」

 

「何だ?」

 

 慌てた様子のミューゼにテクトは冷たく応じる。

 

 ミューゼは反応の冷淡さにも構わず必死な形相で続ける。

 

「こ、これは全てドワーフ金貨なのですか? 贋金は完全なるルール違反ですぞ!?」

 

「ほう? どうあってもこちらを信じないと? そこまで言うのなら、鑑定でもしてみたらどうだ」

 

「そ、そういうわけでは……」

 

 テクトの言葉にたじろいだミューゼに代わり、一人の商人が鑑定を申し出る。

 

 本来であれば咎められて然るべきな行動だが、この場はスルーを選択する。

 

 そこにシュナが扉の向こうから声をかけた。

 

「テクト様、記者の方々が、交渉の様子を記事にしたいと申しております。どういたしましょう?」

 

 シュナを通して伺いを立てている記者達はディアブロによって集められた者達である。商人にまぎれている記者もいるが、それはミューゼの手の者であるため、すり替えや結果の偽装を避けるため、指示をしたタイミングで入室させる手筈を整えていたのだった。

 

 記者も交えた鑑定結果は本物。

 

 複数人での鑑定となったことで鑑定を申し出た者も工作はできず、事実を報告するしかなかった。

 

「もう代金の心配もなかろう。支払いを済ませてやれ」

 

 テクトの命に応じて支払いが開始される。

 

 記者達の監視もあってごねる者もなく、滞りなく契約は履行された。

 

「ハ、ハハハ、流石はテクト陛下ですね。まさかこれほどのドワーフ金貨を、一体どのようにして集めたのやら……」

 

 引きつった顔で言うミューゼの前には未だに金貨が山積みにされていた。予定とはまったく違う光景に商人達も戸惑っていた。

 

 そんな中、鑑定を申し出た商人が声を上げる。

 

「まあ、私共としましては、国際法を守っていただけるのなら文句は御座いません。これからもご贔屓にして下さればと」

 

「それも、必要ないな」

 

 商人の言葉を遮ったテクトに魔国連邦の者も含めぎょっとした表情を向ける。

 

「そ、それはどういう……」

 

「取引は恙無く終了した。それで終わりだと言っている」

 

 絞り出すような声にテクトは断言する。

 

 これに驚かなかったのはリムルとディアブロだけだった。

 

「仰っている意味がわかりかねます……」

 

「ど、どういうつもりだ? 金さえ払ってくれるなら、俺達もアンタ達を信じられるんだが?」

 

「私共が小売だからと下に見ておられるのか? 行商なくして、国同士の付き合いもままならぬのですぞ!?」

 

 理解が追いついたのか商人達が叫び始める。

 

「お前達、この国の王の一人であらせられるテクト様に対し、無礼が過ぎますよ?」

 

 彼らを威圧するシオンを手を上げて諌めるとテクトは嗤いながら告げる。

 

「信じられる? 下に見ている? 君達がそれを言うのか? 魔物だからと人類国家との融和を望んでいるからと下手に出るだろうと考えていた諸君がか?」

 

 テクトの物言いに商人達が絶句する。黙り込んだ商人達の表情をざっと眺めてから続ける。

 

「こちらはミョルマイルが()()を訴え、物々交換や古代金貨での支払いも提案した。それらを拒否し、()()のあるドワーフ金貨での支払いを求めたのはお前達だ」

 

 ことさらに「信用」という単語を強調しつつ告げられた言葉に商人達の顔色は悪くなっていく。

 

「貴様等が信用出来る相手としか取引をしたくないように、俺達もまた、信用出来ると思える相手としか取引をしようとは思わない。だから、貴様等が魔国連邦で商売をすることは一切認めない。罪を犯した訳では無いため入国禁止とはいかないが、商業許可など降りることはないと心得ろ」

 

 そこでテクトは一人の商人を指さした。

 

「ヴルスト商会、商品は加工肉。取引金額は金貨二枚」

 

 指された商人が間の抜けた声を上げた。その意味を理解する前にテクトの指は別の商人を指す。

 

「ルヴァー商会、商品は穀物。取引金額は金貨五枚」

 

 テクトは商人の返事を待つことなく次々に指し、商会名、商品、取引金額を並べ立てていく。

 

 意図を悟った者から蒼白となり、震える者も出始める。

 

 テクトは一切妖気を放っていなかった。

 

 全て把握されていることを示し、決定に抵抗の余地はないのだと知らしめるためのパフォーマンスだった。

 

 商人全員が理解を示したところでテクトは手を下ろす。

 

 名を呼ばれなかった者も自分は大丈夫だと楽観視するものはいないようだった。

 

「そ、そんな横暴が許されるものか!! この者達は国際法に基づく正当な権利を主張しただけで」

 

 叫んだのはミューゼ。誰よりも青ざめ膝も震えていたが、それでも声を上げたのは状況の改善を望んでいるからだろう。

 

 声を視線で遮るとテクトが呆れ気味に口を開く。

 

「勘違いしているようだが、魔国連邦はまだ、西方諸国評議会に加入していない。加入を視野に入れてはいるが、できないならできないで問題はないのだよ。何故なら、この地が巨大経済圏の中心となるのは、確定した事実だからだ。その下地を、利に聡い者であれば感じているだろう」

 

 開国祭での様々な催しや、それ以前のファルムスの滅亡、天帝エルメシア自らの国交樹立の宣言など他国では実現不可能な事象。

 

 それらから生じる様々な期待がテクトの言葉を裏付けていた。

 

「西方諸国評議会とは対等な関係を築きたいとは考えている。だが、こちらの頭を押さえつけようとするのを受け入れることはない。自由組合を通せば付き合いをするには十分なのだからな」

 

「わ、わかりました。それではワタシが、評議会との橋渡し役を担いましょう。どうやら悲しい誤解が生じたようですが、ワタシはテクト陛下のお役に立ちたいと願っているのです」

 

 食い下がるミューゼにテクトは少し考えると視線を合わせ、質問する。

 

「どうやって?」

 

「そ、それは、まず本国に戻り、書簡を」

 

「ああ、そうではない。貴様がどのような権限でもってそれを為すのかと聞いているんだ」

 

「は?」

 

 何を言っているのかわからない様子のミューゼにテクトは笑顔で語りかける。

 

「すでにこの場には記者が揃っている。貴様の手が及ばぬ第三者が。彼らは起きた事柄を周囲に喧伝するのが仕事だ。それも伝わりやすく、興味の引きやすい内容で。新興国の開国祭の裏側で商人達と支払いを巡る攻防があった事実などこれ以上ないネタだろう」

 

 ミューゼは目を泳がせ、何か言葉を発しようと口を開いたり閉じたりを繰り返す。しかし、漏れるのはかすれた吐息だけだった。

 

「魔国連邦の願いを突っぱねドワーフ金貨での支払いにしか応じぬ商人達。何故か関係ないはずなのに、商人たちを取りまとめる大貴族。さて、そんな内容の記事を読んだ者はどのような感想を抱くだろうか」

 

 ミューゼの身体の震えは大きくなり、顔色は土気色などすでに通り過ぎている。目も痙攣を繰り返し、明らかに異常な状態だった。

 

 そんなミューゼへテクトは囁くように告げる。

 

「商人を使い、陰謀を巡らせ、それが派手に失敗した。商業国家たる本国を貶めかねない結果をもたらした人物はどうなるだろうな?」

 

「ぅ、あぁ……」

 

「さて、改めて聞こう。どうやって西方諸国評議会との橋渡し役を担うのだね? 君の、どの権限で」

 

 そう言ってテクトが離れると同時にミューゼが膝から崩れ落ちる。放心した様子にテクトは冷めた視線を向けつつ周囲に聞こえるように話す。

 

「貴様が下に見ていたミョルマイルには俺もリムルも全幅の信頼を置いている。魔国連邦の財務も任せる程にな。貴様よりは―いや、比べるのも烏滸がましいほどに役に立っているよ」

 

 魂の抜けたようなミューゼと絶望の表情を浮かべる商人達。

 

 彼らと対象的に記者は生き生きとした表情で交渉の記録を取っていた。

 

 その様子に満足そうな笑みを浮かべると。テクトはミョルマイルへ向き直った。

 

「後は任せるぞ」

 

「お任せ下され、テクト陛下」

 

 恭しく畏まるミョルマイルの肩を叩き、リムルが「頼んだよ、ミョルマイル君」と囁く。

 

 内心を伺わせることなく計算高い目でミューゼや商人を見やるミョルマイルを背後にテクトとリムルは幹部を連れて会議室を退出する。

 

「それでは無事に、滞りなく取引が終了しました。それでは皆様、お引き取りを」

 

 扉を通しても聞こえるミョルマイルの重々しい声が事実上の終了宣言としてひびくのだった。

 

 

 

 後処理をミョルマイルに任せた後、リムル達と別れ庵に戻ってきていたテクトはこの後の会議に向けて思惑を巡らせる。

 

 そこにシュナがカイジンを伴って訪れた。

 

「旦那、ドルドのやつから預かってきたぜ」

 

 そう言ってカイジンは箱を差し出す。

 

 それほど厚くない箱を少し開けて覗き込み、中身の出来を確認すると満足そうに笑った。

 

「いいね。今度改めて訪ねるけど、ドルドに礼を言っておいてくれ。急に進めて悪かったって」

 

「そう気にすることでもねえと思うがな。まあ、伝えとくぜ」

 

「あぁ、頼む。それと、ありがとな」

 

 テクトの礼に軽く手を上げてカイジンは帰っていく。

 

 残されたシュナへとテクトは箱を差し出した。

 

「ラッピングでもするべきなのかもしれないけど、せっかく連れてきてくれたわけだしね」

 

 箱にはいつの間にやらリボンが結ばれていたが、それ以上の装飾はない。

 

 唐突に差し出された箱にシュナは困惑していた。

 

「頂いても宜しいのでしょうか?」

 

「勿論。受け取ってもらう為に用意したんだ」

 

 微笑むテクトからおずおずと箱を受け取り開くと、中にはブレスレットとネックレスが入っていた。

 

「きれい……」

 

 ブレスレットは継ぎ目のないシンプルなものに精緻な薔薇の彫刻が五つ施されていた。そのためやや幅広に感じるが、重さはさほどではなく日常的に着用していても問題なさそうに感じた。

 

 ネックレスは細いチェーンに六つの薔薇のブーケのようなチャームが飾られており、目立ちにくい大きさのためこちらも日常的に着用することができるようになっていた。

 

「何か贈りたいとは思ってたんだ。でも、イングラシアだといいものが見つからなくて。それで、クロベエやドルドに頼んでいたんだ」

 

 工房に顔を出し、ベースとなった金属の精製や打ち合わせを行っていた。その折に研究所にも立ち寄り、研究への協力をしていたのだ。

 

「ブレスレットは利き腕とは逆にするのがいいらしいよ。ネックレスは単純に贈りたかっただけだけど」

 

 そう言うとアクセサリーを見つめるシュナから箱を取り上げ、ブレスレットを手にする。

 

 意図を察したシュナが手を差し出すと、ブレスレットはサイズを変えながら手首へと嵌る。

 

 手をすぼめるまでもなく嵌ったブレスレットにシュナが驚いている間に、テクトはネックレスを手にシュナの背後へまわる。

 

 調整することなくピッタリな位置にチャームがくるのを見て、テクトは頷いた。

 

「前世での話だけど、花言葉っていうのがあってね。薔薇は数によって変わるんだ。ブレスレットの五本で「あなたに出会えて本当によかった」。ネックレスの六本で「あなたに夢中」。合わせて十一本で「最愛」。今の俺の気持ちを表すには最適だと判断した」

 

 テクトの解説を聞き、姿見で確認していたシュナが一瞬で真っ赤になった。

 

 その様子にテクトは得意げに笑うと正面に回り、軽く抱き寄せてから口づけする。

 

 テクトは当初、軽く触れるだけで済ませるつもりだったが、結局抑えがきかずしばらくの間ベッタリと密着したまま過ごすのだった。

 

 

 

「おーい、戻ったぜ」

 

「戻っただか、どうだった?」

 

「満足そうだったぜ。今頃はイチャイチャしてんじゃねえか?」

 

「ならよかっただ。それにしても、不思議な金属に仕上がっただな」

 

「全くだ。基本真っ白の旦那の影響を受けてるのに、なんでこんな仕上がりになるのかね?」

 

「ものがものだけに粗末に扱えないから、今のところあのアクセサリーとリムル様の刀ぐらいにしか使ってないだ。今度テクト様の鎌を鍛え直すのに使ってみるだか?」

 

「どうだろうな……あの鎌はテクトの旦那同様真っ白だし、こんな()()もの使って大丈夫か?」

 

「本人に聞いてみるしかないだか……」

 

「まあ、今考えてもしかたねえか。仕事も終わって、旦那方から酒ももらったし、まずは呑むか!」

 

 

 


 

 次回「虚飾と強欲(それぞれ)の標的」

 

 

 

 薔薇の本数別の花言葉

 

 五本:「あなたに出会えて本当によかった」

 

 六本:「あなたに夢中」

 

 十一本:「最愛」

 

 黒い薔薇の花言葉

 

「永遠の愛」「あなたはあくまで私のもの」

 

 




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