前回のチャンミで追込ウララが2位を取ったので記念にと、ゴルウラ師弟コンビは流行ってほしい。
デビューをしてから様々なレースで功績を上げているウマ娘、ゴールドシップ
最後尾から上がってくるその脚力と予想の斜め上をいく破天荒さは観客を魅了してやまない。
今回、上司からの指示で新人記者の私が取材を行う事になったのだ。
本来であれば自分のような新人に菊花賞を制したG1ウマ娘とそのトレーナーの取材など任される事は無いのだがこうして任された以上は出来る限りやり遂げようと思う。
「今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
見た目からするに自分から少し上くらいだろうか、ゴールドシップのトレーナーに挨拶をする。
「来ていただいて申し訳ないのですが、現在ゴールドシップは新人と一緒にトレーニング中でして、終わるまでは遠くで見ていただくとありがたいです」
「分かりました」
新人とは誰だろう、そう思いながら練習場についていくと、ターフではなくその端にあるスペースでゴールドシップが小柄なウマ娘と向き合っていた。
確か彼女の名前はハルウララ、メイクデビューはまだではあるが模擬レースでは毎回最下位という結果のウマ娘である。
成績は芳しく無いが楽しそうに走る姿が印象に残っていたので覚えていた。
「トレーナーさん、今2人は何を?」
「賢さトレーニングの一環でカードゲームをしています」
「カードゲーム?」
トレーニングでカードゲームとはどういう事だろう、とりあえず2人の様子を見る。
見つめ合う2人、最初に動いたのはゴールドシップだった。
「5メガネ!!!!!」
メガネを5個並べるゴールドシップ。
「なんの〜‼︎わりばし‼︎‼︎」
右ポケットから割り箸を取り出し、ゴールドシップに見せるハルウララ。
「な…フェイントだと‼︎⁉︎じゃあこの明太子は使えない‼︎‼︎」
「そしてウーロン茶で私のコンボは完成だよ!」
缶のウーロン茶を出すハルウララ。
「しまった暗黒コンボか‼︎‼︎仕方ない‼︎ここで雑巾を発動だーーー‼︎‼︎」
「ええっ!!!2枚も‼︎?ゴルシちゃんすっごーい‼︎」
ゴールドシップが懐から取り出した雑巾2枚に驚愕するハルウララ。
「うっらら〜♪」
「アイルトンセーナー!!!」
勢いよくすれ違った後、しばしの沈黙が流れる。
「ありゃりゃ、私の五目半負けだ〜!」
「フチなしのメガネだったらアタシがヤバかった…」
ゴールドシップの辛勝ではあるが決着がついたと思われる光景を見て一言。
「全然わからん…」
「ああ、説明がまだでしたね。確かに賢さトレーニングというとレース運びや馬場を読むなどの座学を行うのが普通ですが、あえてカードゲームにする事でデッキを考え、戦いの展開力、何より勝負にとって運も必要ですからそれをドローで手繰り寄せるとかいった…」
先程までしていなかったサングラスを装着しながらゴールドシップのトレーナーは話を続ける。
「そういうのではなくて何をしているかって聞いているんです、そもそもカード使ってないですし」
「キバハゲデュエルです」
「キバ…?」
聞いた事の無い単語に思考が止まる。
「まさかご存知ない?」
「知りませんよ」
えっ何こいつ知らないの?みたいな顔でこっちを見るゴールドシップのトレーナー、この瞬間私は理解した、なぜ新人の自分が取材を任された事を。
誰もやりたくなかったから自分にまわってきた、それだけの事であった。
「いやー、良いバトルだったぜ」
「うん、またやろうね!」
そうこうしているうちにゴールドシップとハルウララがトレーナーの元へやってきた。
「おっ、トレーナーじゃん!…ん?誰だこいつ」
「この人は月間ティンクルの記者さんだ、ゴールドシップの取材に来てくれたんだ」
「こ、こんにちは!」
トレーナーに紹介されたので2人に挨拶をする。
「ふーん」
「こんにちは、初めまして!」
興味なさげなゴールドシップと元気よく挨拶をするハルウララ。
先程の光景を見ていると純真無垢なこの娘が奇人変人の2人組と一緒にいて染まっていると思うと少し…かなり心配になってくる。
「とと…ゴールドシップさん!早速取材を…」
「悪りぃな、ゴルシちゃんこれからデュエルの後始末しなきゃなんねんだわ!」
炊飯器を担ぐゴールドシップ。
よく見ると後ろでは先程のデュエル?で使われた明太子がお皿ごとテーブルの上に置かれ、ウーロン茶の缶が複数並んでいた。
「ご飯はまだか?」
「もうお腹ぺこぺこです!」
どこから現れたか、オグリキャップとスペシャルウィークが座って待っている。
「米はここだぜ!さあおあがりよ!」
そのまま4人とも明太子ご飯を食べ始める。
なんて自由な集団なんだ、こんなのでレースに勝てるのか?いや実際に菊花賞を勝っていた。
トレーナーは自信ありげに頷いてるし、もう帰りたくなってきた。
その後は何とか取材は終えたが、次はやりたくないと思う。
しかし自分の思いとは裏腹に見事取材をやり遂げた事で上司からゴールドシップ担当として任命される私なのであった。
その後ハルウララはメイクデビューで最後方からの脅威的な追込を見せ、初の1着を飾る。
その際に小さな舌をチロチロと出しながら走っていたのは謎である。
ゴールドシップは宝塚記念での大幅な出遅れをし、15着となった。