転生先はヘイト買いまくりのバンドリ世界でした 作:クローズ
さて、俺の立てた仮説というのを言ってなかった気がするから言っておこう。
まず、嫌われた俺がいる世界が「表」の世界。
そして、好かれすぎる俺がいる世界が「裏」の世界。
双方に相違点はない。
強いて言うならネームドキャラの好感度だけだが、それは俺の問題なので置いておく。
当然俺のほぼ唯一と言っていい友人は表にも裏にもいて、どちらでも良き友人なので、そこも含めて相違点はない。
表から裏、また裏から表に飛ぶ方法ははっきりとはしないが、共通してこうだと思うというのは「嫌われている/好かれすぎていることに嫌気がさす」こと。
簡単に言ってしまえば、「なんで俺がこんなことにならなきゃいけないんだ」と思うこと。
最初に裏に来た時、俺は市ヶ谷さんの暴言を録音していた。
それを使い、市ヶ谷さんに迫って無理やり好かれようとした。
それは、暗に言い換えれば「嫌われたくない」ということになる。
そして、裏から表に戻ってきたとき、俺は録音データはおろか、すべてのデータを消した。
故にそれは、「好かれることが嫌になった」ということになる。
とりあえず、これで移動方法は説明した。
次は、なぜ家に帰ると
俺は、表と裏に、一人ずつ存在する。
嫌われることに慣れ、それを許容した俺が表の俺、それができなかったのが裏の俺、というわけだ。
正直、裏の俺が裏の世界にいるままなのはよく分からない。
それで、現状の整理だ。
今、俺は......失礼、「表」の俺は、裏世界にいる。
けれど、裏世界の俺は相変わらずここにいるままだ。
で、あの時「助けてくれ」と語りかけてきたのは、きっと裏の俺だ。
追いかけまわされても、まだなお好かれているという事実を投げ出さない、ある意味では俺より肝が据わっている俺。
けれど、だとしたらどうして「助けてくれ」と言ったのだろうか。
もしかして......だとしたら、急いだ方が良いかもしれない。
裏の俺が裏にいるままってことは、逆に考えれば裏から表にいけない事情があるということ。
このままだと、俺が
「はぁっ......ここ、だよな」
自分の記憶を頼りにたどり着いた一軒の家。
外見も同じ、俺の家。
玄関は閉まってると踏んで、自分の部屋の窓からの侵入を試みる。
......防犯意識の欠片もないから、窓は開けっぱなんだ。
だって、誰も3階から侵入しようと思わないでしょ?
「頼むから起きててくれよ......!」
侵入するとは言ったが、いきなり入るのはなんか違う気がする。
だって相手俺だし。
一縷の望みを込めて窓をノック。
カーテンが開いて、開けた本人と目が合う。
俺だった。
少なくとも、外見は。
俺はジェスチャーで窓を開けてくれるよう頼んだ。
すると、同一人物ということもあってすぐ伝わり、窓が開いた。
「よ。助けに来たぜ」
「......俺が、呼んだのか?」
「無意識かよ。直近で「助けてくれ」って言った記憶は?」
「......あ、Roseliaに追っかけ回されてる時に、言った気がする」
「だとしたら、それに呼ばれたかな」
お互いがお互いを自分と認識し、とりあえず現状の確認は終わった。
「お互いの事情は分かるな?」
「うん、なんとなくは。俺がヤンデレで、君が嫌われ属性でしょ?」
「めちゃくちゃ語弊しかないけどそれであってる」
「なら、やることは一つだよね?」
「......お前、怖くねえの?」
「......ちょっとだけ」
俺たちの考えてることは、非常に危険で、ともすれば二度と俺たちがこの世界に存在できなくなってしまうこと。
つまり、死。
この命を終わらせること。
それで、この運命が変わるならとか、俺たちは思ってる。
「でも、ちょっとは躊躇うよな。こういうの」
「うん。せっかく好きな世界に転生できたのにね」
「特典はクソだがな」
「それは同意、これだもんね」
向こうの俺が見せてきた紙には、『裏:同性からの好感度が少し下がる代わりに、異性からの好感度が大きく上がる』と書かれていた。
これでようやく、表と裏、両方の特典が分かった。
ま、わかった時が遅すぎたけど。
「お前さ、こういうのもあれだが、無事だったんだな」
「え?」
「いや、
「あぁ......まぁ、ね。最期ぐらい、嫌われてる俺と話してみたかったんだ」
「お前そんな力あったのか......」
我ながら感心してしまう。
まぁ、好かれすぎている俺をこっちに呼んだら、精神崩壊待ったなしだろうが。
「よし、そろそろやるか」
「そう、だね」
「......次はまともな世界に生まれ変わりたいもんだけどな」
「はは。わからないよ?好きな世界に行けたのに、そこでの扱いがひどいからって自死を選ぶ愚か者には、次なんてないかもね」
「敗者にふさわしいエンディングってか?ははっ、それはおもしれえ」
ひとしきり笑ってすっきりした。
思えば、自分が転生した理由は通り魔に刺された死んだからで、それで好きな世界に飛んできたんだ。
ほんとに突拍子もなかったし、今聞いても訳が分からないんだけど、それはこの際どうでもいい。
俺たちがこの世界に来たことにより異変を起こしたのなら、俺たちがいなくなってデバッグした方が良い。
それで元に戻るなら。
俺はこの世界が好きだ。
だからこそ、俺という異変でここを壊したくない。
だから、終わらせる。
ま、正直、女の子に怒られるの、別に嫌じゃなかったし。
あとは、嫌われてるってこと、だいぶ慣れてたし。
でも、願わくば。
「「もうちょっと、俺にやさしい世界に......」」
体を宙に投げだす。
地面は生憎柔らかそうな草だけど単純に3階から落ちてるからね、しかも頭から。
どっかで一戸建ての3階は12mはあるって聞いたな。
単純に10m分の加速度をつけて頭打つって考えたら......
あぁ、考えるのやめよ。
これから死ぬのに、頭が痛くなりそうだ。
「「さよなら、みんな」」
わずかな衝撃の後、俺たちは意識を失った。
あんま自殺っていうをこういうネタにしない方が良いんだろうけど、どうしてもやらんとあかんしなぁって
あ、そろそろ終わりますね