転生先はヘイト買いまくりのバンドリ世界でした 作:クローズ
さて、俺の帰り道は端的に言ってしまえば地獄である。
行く先々、見える先々に店、店、店。
そして、ここがバンドリの世界であれば、その店にいるのは大体女性である。
だから、何もしてないのにいやそうな目線を向けられる。
......俺、ほんとに何したかなぁ。
いや、思い当たる節がないから心当たりもクソもないんだけど。
ともあれ、俺の
「おい」
後ろから不機嫌な声が聞こえた。
わざわざ声をかけて気分がいするならほっとけばいいのに。
「......どうしたの、市ヶ谷さん」
「お前、昼飯の時ずっと見てただろ」
「あぁ、みてたよ。それが何か?」
別に見るだけなら犯罪にならない。
そんなんで豚箱に突っ込まれるんだったら、今頃世の中の9割の男が捕まっているはずだ。
「みんなよ。気持ち悪いから」
「なんで君の意見で俺の目線固定をしなきゃいけないんだ?」
突っぱねてはみるが、初めてネームドキャラに声を掛けられている事実に涙が出そうだ。
それにもう少し会話していたい。
初めてのエンカウントなんだ、無駄にしてはいけない。
「お前の目線が気持ち悪いって、皆言ってるの知らねーの?」
「聞いたことないなぁ。君の妄想じゃない?」
知ってる。
言われてるのは存じてますよ市ヶ谷さん。
「は!?妄想じゃねえし!ちゃんと皆言ってるし!」
「必死になりすぎじゃない?あと口調変わりすぎ。普段の優等生モードは捨ててきたの?」
顔を赤くさせながら罵倒してくる市ヶ谷。
別に痛くもかゆくもない。
むしろバンドリに名前が載ってるキャラに声を掛けられているのが幸せでそれどころじゃない。
「し、知らねーかんな!お前が嫌われてんの丁寧に教えてやったのに突っぱねるお前が悪いんだからな!!」
「はいはい。ご忠告感謝するよ。有咲ちゃん」
「死ね!」
特大の暴言を口にして市ヶ谷は去っていった。
その場にしばし立ち尽くして、何事もなかったかのように歩き出す。
そして、
「くくっ......」
意図せず喉の奥から気持ち悪い笑いが出た。
おっといけない。
あくまで俺はバンドリキャラと仲良くしたいだけなんだ。
まぁ、その手段の一つに、脅迫があるだけ。
家に帰って、念のため部屋のドアを閉め、イヤホンを挿して音の確認をする。
俺が声を掛けられてから、市ヶ谷の『死ね!』まで、きちんと録音されていた。
「......これ、全部録音してたって言ったら、どうなるかな」
仮にも学校では優等生で通っている市ヶ谷有咲。
そんな人がこんな暴言を言うなんて、絶対にありえないと認めないだろう。
しかも、本人も認めないという最悪の事態にもなりえる。
まぁ、言ってないなんて言わないでしょ、だって優等生だよ?
「さて、どうやって仲良くなるかなぁ......ポピパと、ね」
......今、もし鏡を見せられたら、きっと俺の顔は、ひどく歪んでいるだろう。
あれ、ちょっと不穏?