転生先はヘイト買いまくりのバンドリ世界でした 作:クローズ
学校に向かう足取りがいつもより重い。
嫌われていると分かっているし、それはもう慣れたが。
「あんな光景見せられちゃ、なぁ」
一時的にとはいえ好感度が上がった状態を見せられてしまっては、それを再び求めてしまうのは人間の性だろう。
違法なものを体内に入れるときって、こういう気分なのだろうか?
悪いことをしている自覚があるのに、それを快感と感じてやめられない。
......体験すると非常に危険なことだ。
ともかく、それはそれとして、だ。
教室にいなきゃいけない時間帯には普通に間に合うが、少しだけ急ぐ。
特にそうしなきゃいけないと思った理由はないが。
「お、未来。今日は遅かったな」
「あ......うん。ちょっと寝付けなくてね」
「あぁ、あるよなそういう時」
友人と会話をしながら周りの様子を窺う。
まぁ、ここに目立った変化がないのは知っている。
なんてったってネームドキャラがいないから。
俺の好感度対象はあくまでネームドキャラだけであって、それがいないこのクラスには効果は出ない。
......はず、なんだが。
「なぁ、未来。めっちゃ見られてない?」
「奇遇だな、俺もそう思った」
視線が多い気がする。
しかもなんか冷たい。
いつか感じた氷川先輩の目線のようで......
いや、待て。
なぜそんな疑問が浮かぶ?
それはつい昨日、話したばかりだ。
ヤンデレとメンヘラは嫌いだと突き放して......
だとしたら、なぜ俺は『いつか』などと言ったんだ?
昨日だと分かっていれば、昨日と言ったはずだ。
......どうやら記憶の混濁が起きているらしい。
「どうした未来?顔色すごいぞ?」
「あぁ、悪い......やっぱ徹夜ってよくないな」
「寝付けないからって徹夜はダメだろ......とりあえず、寝るか?」
「あぁ、そうする......」
自分の席に座り、そのまま彼に起こされるまで、泥のように眠った。
クラス内だけでも、視線は十分に感じたけれど。
扉の向こう、本来教室から見えない所から、粘つくような冷たい視線を感じながら、意識を落とした。
「はぁ......やっぱ頭回んないわ」
「よく言うよ、6限の問題全問正解だったじゃねえか」
「得意な範囲だったんだよ」
そんな軽口を言い合いながら、友人と帰路を共にする。
彼はバスケットボール部に所属しているのだが、今日はたまたま練習がないらしい。
それなら一緒に帰ろうと(提案したのは彼だが)いう訳で、一緒に帰っている。
「じゃ、俺こっちだから、じゃあな未来」
「あぁ、また明日......じゃねえや、また月曜」
「おう!ちゃんと寝ろよ!」
「わかったよ」
彼と別れ、一人で歩く。
『............て...!』
「......?」
何か聞こえて、立ち止まって辺りを見回すが、誰一人として声をあげたような様子は見えない。
気のせいかと思い、再び歩き出した瞬間に、頭痛が走った。
「なん、だ......!?」
『............けて、くれ......!』
「誰、だ!」
『助けて、くれ!』
それが聞こえた瞬間、俺の意識は暗転した。