狂った世界とその日常   作:電磁パルス砲

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好奇心の塊な修也君の話。


好奇心は狂気をも制す

機械の光に照らされ、二人の人影が対峙していた。

ノイズがじりじりと走り、黒い触手のような物が這いずり回る。

互いに得意とする得物を構えた彼らからは、溢れんばかりの殺気が流れ出していた。

 

まさに一触即発。

 

少しでも音がすれば、命を奪い合う死闘が行われそうな雰囲気の中。

 

―――ふと、重い金属が落ちる音と共に、片方の殺気が消えうせた。

 

その音の発生源である修也は剣を落とし、完全に隙だらけの状態でだらりと腕を伸ばしている。

 

「……何の真似だ?」

 

意図が全く読み取れなかった。

日向が警戒を解かないまま問う。無理もない、先ほどまでと打って変わって、ましてや今すぐにでも戦闘が始まりそうな、そんな状況で上の空になった相手には警戒もするだろう。

何かの罠にはめるための作戦か、とも深読みしてしまう。

 

そんな風に頭をフル回転させている日向を見ているかもわからない虚ろな目で、彼は言った。

 

「さっき言った“僕の日向にしか興味がない”という言葉を取り消そう……君は僕が知っている日向と同じ存在なんだよね……?」

「?、あぁ、まぁ……そうとも、言えるな……」

 

そうは聞かれても、自分はそのことをあまり、というか全くと言っていいほどに知らない。管理人なら知っているだろうか、とほんの少し考えた。

煮え切らない返答をした日向に対し、修也は怒りもせず淡々と言葉を繋げる。

 

「と、いうことは。僕にとっての被検体はこちらの日向に他ならないが、君も同じ存在というのなら彼と似た結果が出るかもしれない。つまり君は僕側における彼の代わりになる、ということではないか?そう思ったんだよ」

「……???」

 

突如並べられたわけのわからない理論を告げられ、全く理解ができない彼は首を傾げた。被検体?代わり??何もかもがわからない。返答に困っていれば、一歩、二歩とゆっくりとした足取りで彼は踏み出し、遂には日向の肩をがしりと掴む。

 

息を荒くした彼の、色々な感情が闇鍋のように混ざり合い、吸い込まれるような瞳を半強制的に直視してしまう。

その瞬間、依り代とする彼の身体にはない心臓を握られたような気がして、かひゅ、と息が詰まった。

 

「僕はね、一度興味が湧いたら止められないような人間なんだ……早く、もうすぐにでも付き合ってくれないか?記憶は共有するのか、感覚はどうなる、そもそもどうやって今動いているか……あぁ、気になる事が多過ぎる……!」

「え、お、おぅ……」

 

そうまくしたてるように言葉を吐き出し、縋りつく。体の内に渦巻く知識欲を発散しきれていない彼を見て、日向は珍しく恐怖を感じた。

自分よりヤバい人を見ると不思議と冷静になれる、あの現象。

それがここでは起こっていた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の勢いに押され結局、日向は彼の言う『検証』に付き合うことになった。

 

「うぅ、動けねぇ……」

「仕方ないでしょ~、君が暴れて検証結果が台無しになったら嫌だからね。ホントは手錠とか足かせとか欲しいんだけ、ど……うん、いい出来だ」

 

椅子にロープで雑に縛り付けられ、全く身動きが取れなくなった日向が呻く。それを横目に理由を答えつつ、修也は検証に使うであろう器具を創り出していた。

 

「さぁ、始めようか」

 

――笑顔を浮かべる彼の手にある、怪しく光るあののこぎりは幻覚だ。日向はそう自分に言い聞かせたようだが、それは全くの無意味であった。

 

「おい待て!それ、何に使うんだ!?」

「えぇっ、わからないのかい?しょうがないなぁ……」

 

縛られながらも慌ただしくもがいて聞く彼に、もう目的を理解していると思い込んでいた修也は少し落胆したように話し始める。

 

「君の身体ってさぁ、今人ではなくなっているだろう?これはね、君の脚を切り落としてまたくっつくか、それとも新しく生えてくるのか……それを調べたいんだ」

 

その瞬間、こいつとは関わってはいけない、と日向は直感的に思った。

常人では思いつかないような歪んだ好奇心を前にして、背に冷たい汗が伝うのを感じる。こいつは自分の知識のためならば人も殺す、そんな人間なのだと理解した。

 

「おいおい……えらく猟奇的だな、そんなことして、こいつの脚が再生しなかったらどうする気だ」

「……()()()()()、僕には関係ないだろう?」

 

そんなこと。

そう、軽々しく彼は言った。

 

その言葉を聞き、日向は抵抗する気も失せたようにため息をつく。もうこいつに何言っても仕方がない、どうでもいい。

……だが、自分は今体を借りているのである。脚を切られるのが自分であれば、どうせ巻き戻ることだろうし、諦めて了承した。しかし、この体には別の持ち主が居る。その人の了承もなしに、体の一部を失うのはいかがなものかと思ったのだ。

 

それに何より、自分が痛い目に合うのは嫌だし、他の人が被害にあうのも嫌だった。

 

「お前なぁ……もういい、こっちから条件を出す。切断とか、この体に影響があるのはナシだ。いいな?」

「……はぁ、前の君は素直に従ってくれたんだけどなぁ……まぁいいや。この興味は今度に回すとして、今日の僕は君の要求を飲むとしよう」

 

そう言って不満げにのこぎりを投げ捨てれば、それはヘドロのような黒い液体になって溶けた。

案外、要求はすんなり受け入れられた。

その事実に少し驚いている日向を置いて、修也は悩みつつも次の案を出す。

 

「痛くないものか……うん、そのフィルムのような物を触らせてもらえないかな?勿論傷つけるような真似はしないよ」

 

……まあそれくらいなら、と日向は渋々了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分。

 

ぐったりと背もたれにもたれかかり、震えながら彼は了承を出したことを酷く後悔した。

 

この数分で起こったこと。

これ(フィルム)は触感があり、触られると物凄くくすぐったい。それを日向は全く知らなかった。

そんなことは知らず、遠慮なくべたべたと触ってくる修也。

 

しかも彼、撫でテクが異様に高い。

 

もし自分が動物だったならば、それまで持っていた人間への警戒心を捨て、この人物の元へ足繫く通うことだろう……そう思えるほど、癖になるというか、中毒性の高いものだった。

 

それを無自覚に発動させ、この体の急所であろう部分をずっと撫でてくる。ぶつぶつと何かを呟きながら日向のほうを見向きもせず、ずっと。

 

開始直後にすぐ陥落して、力が抜け切ってうまくしゃべれない。その状態のままずっと触り続けられくたくたになった日向が制止するも、修也はやめる気がなかった。

 

結果、日向は溶けた。いろいろと。

 

「いっ、た……やめろ、って……ぉれ、いったよな……?」

「ごめんごめん、聞こえなかったよ。集中し過ぎちゃったなぁ」

 

ぐったりとしながら薄く目を開け確認するも、修也は困ったように笑い頭を搔くだけだ。

 

一応縄はほどかれ動けるようにはなっているが、もうそんな気も起きない。

正直もう終われ、と疲れ切った彼は心の底から思っていた。

 

「よし、それじゃあ今度はこれの検証行ってみようか!」

 

――修也の背後で黒い触手がうねり、絡みつく。

 

これ、とは。まさか、と冷や汗が流れる。

 

「この触手がどれだけ精密に動くか……試させてもらうよ」

 

やだ、と掠れた声が出た気がする。

そんなことも考えられないまま、思考はぐずぐずに溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「っ、は」

 

真っ黒になった意識が浮上し、目を開ける。気がつけばそこは自室だった。

多分、あれが始まってからいつの間にか気絶して、意識が強制的に戻ってきたのだろう。

 

――ちなみにあれ、とは触手までも駆使したくすぐり、もとい検証である。元からのテクニックもあり、即座にでろでろにされた。

……エロいことはまったくもってしていない、とこの際言っておこう。

 

管理人には申し訳ないことをした、とベットに座ったまま頭を抱える。

守ろうとしてこの結果、とはあまりにも滑稽だ。

 

もし彼らに記憶が残っていなかったら、この事は絶対に秘密にしよう。

 

日向はそう決心し、近いうちにもう一回だけあれを体験したい、とも思った。




修也
すでに消えた世界の主人公。
ヒナタの体は冷たかったのが意外な収穫で、調子に乗っていじくりまわしたら気絶した為不思議に思った。
触手は如月のフィルムが汚染され、変化したもの。

日向
一度体験してからというもの、妙にもどかしくなり管理人側へ意識を飛ばすことが多くなった。
すっかり虜(または中毒)になってしまっている。

修也の異常なほどのテクニックは、依り代である如月譲り。
どちらも本気でやると触手プレイ状態となる。
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