狂った世界とその日常   作:電磁パルス砲

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あけましておめでとうございます
遅いけど新年初更新です


バグはとても面倒なものである

「お前ら、ほんと問題しか起こさないな……」

 

目の前にいる奴の起こした惨状に、溜息を吐いてがりがりと頭をひっかく。

 

俺は今、非常に苛ついている。

理由は簡単。

 

こいつ、フリーズさせやがった。

 

普通なら再起動するなどして済む話だが、ここじゃそうはいかない。

何せこの世界はPCなどにつながっていない、孤立した世界なのだ。簡単に言えば電気もガスも何も無い田舎のような状態だ。

アプリとしての俺達、管理人は普通、インストールされた媒体に頼り切っている存在。基本的な処理もそっちが担うので、その分俺達の仕事も楽になる。本来ならそれが普通らしい。

 

しかし、その補助がない。その為多少は自動で処理されるものの、ほぼすべての負担が管理人側に来る。

その結果が普段の激務だ。独立した理由としては、このゲーム自体が媒体から削除されたことがかかわっていると考えている。二周目がなぜ発生したのかはいまだ不明だが……話を戻そう。

 

フリーズはゲームの進行にかかわる重大な事故である。絶対に復元しなければいけない。

そして頼ることのできる媒体がないので、すべて管理人が手作業で再起動と運営の処理を行わなければならない。

 

つまり。

すべてのデータを復元し、バグをつぶし、重なりまくった処理を読み込んで再起動させるという死ぬほどめんどくさい作業をやれということ。

おめでとう、徹夜確定である。この処理を2人でとか死ねというのか。

エナドリはしばらく買い足していなかったが足りるだろうか。少し心配である。

 

実はこうやって話している今も、脳内で並列で作業を進めている。疲労からか頭が二つに割れ、更に四つに裂けるような痛みがあるが、常に続けていればもはやそんな痛みにも慣れた。

たとえ頭蓋が割れて黒い汁がだらだらと流れ出したとしても死ぬことはできないし、この世界には救いも何も訪れない。管理人が居なくなった後にあるのは終焉だけだ。黒く飲み込まれる世界は何度見てもなれないし、もう見たくもない。逃げてはいけない。ずっと先もこれまでのようにはいかないから。

だから何の心配もない。大丈夫だ。うん、大丈夫。たすけてつらいよ

 

とりあえずデータ復元に失敗した際、進行不能にならない最低限の二人は保護のため取り出したのだが。

取り出したのがやっぱりというかなんというか、あれ()バグ(日向)だった。

奏はまあ主人公だからいいとしても、何故フリーズの原因が釣れるんだ。運命?運命なのか?もしくは愛の力?ふざけんじゃねえ。

……まぁシナリオ内でもかなり絡む相棒キャラだし、当然と言えば当然か。性格があれだから除外したかったが、変化する世界とは言えどシナリオには逆らえなかったらしい。

 

はぁ。

さんざん愚痴を連ねてきたが、そろそろ現実を見よう。

 

眼前にそびえ立つ、黒いグリッチを纏う3m程の巨体。

下半身はふさふさとした茶色の毛に覆われ丸く、そこから蜘蛛のような足が6本。そして、人間の目が不規則にいくつか付いていた。

青いジャージの裾は黒く変色し、胴体には大小さまざまな黒い水玉模様が密集して浮き出ている。まるで蓮コラだ。

上半身には蝶の羽が切り張りしたような不自然な形でくっつき、妖精のようなかわいさは流石に感じられない。

ぐるぐると黒く渦巻く赤い眼球はやけに大きくなり、右目からは木の根っこのようなものが飛び出していた。

 

今回、日向はこんなキメラのような姿で現れた。……うん、なぜそうなる??

 

テクスチャバグの応用だろうが……それにしても限度というものがあるだろう。

今は6本の足を器用に折りたたんで座り、冷や汗をだらだらと流しながらやばいことになった、とばかりに大きな目をそらしている。

 

【挿絵表示】

 

そして俺は目が逸らされるたび、ニコニコと笑いながらその方向へ移動して目線を合わせている。

飛べる力とは本当に便利だ。この力があれば数メートルの身長差なんてないに等しい。

 

「あ、あノ、管理人……これハちがクて……」

「日向君」

 

こちらはとてもやさしい笑みを浮かべているというのに、何をそんなに怯えることがあるのだろうか。

一周回って冷えてきた目を合わせ、震えている彼に語りかける。

 

「ゆっくりと、事情を聞かせてくれるかい?」

「……ハい」

 

祈るように黒い手を胸の前で握り、縮こまっている目の前の異形。

彼には怒りに満ちた、どす黒いオーラが見えていた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

彼からの話をまとめるとこうだ。

 

奏が誘拐された。

焦りで座標特定に手間取ってしまい、ワープで彼のもとへ行くのが遅れた。

何とか彼のもとにたどり着いたのだが。

 

奏は複数人の人間に押さえつけられ、服を脱がされていた。

そして、服を脱がしていたやつらが奏の肌に触れ、同じく日向の逆鱗にも触れた。

 

で、怒り狂って気づいたらこの姿になっていたそうだ。

映像を確認したが、勿論誘拐してた人たちはぐちゃぐちゃに裂かれた肉塊になっていた。本当にこいつは奏に関するときだけ殺意が高い。

 

 

……はてさて、これは褒めるべきなのか怒るべきなのか。

ああ見えて奏は心弱いとこあるし……いや、待て。前強姦されたいとか言っていた気がする。あいつは普通に喜びそうだ。

……俺のメンタルが救われたのでノーカンにしようか。

 

「うん。まぁ今回は見逃してやる」

「……よカったァ、奏に近ヅクなとか言わレてたラ切り刻んでタぞ」

 

彼はなにもされないと知って安心したのか、大きく息を吐く。

安堵の後に物騒なものが聞こえた気がするが、たぶん気のせいだろう。

 

ちなみに奏はというと、日向の背中辺りで眠っている。

正確に言えば蜘蛛のような下半身の上で寝ている。考えてみれば、ふわふわの茶色い毛が気持ちよさそうだ。あまり寝れてないのでうらやましい。

彼が異形形態を見て怖がらないように、と奏が日向に気づく前に眠らせたそうだ。

起きたら友達がかなり気持ち悪いタイプの異形になってるとか、むしろそっちのほうが怖い。下手したら一生のトラウマものである。

 

 

今回のフリーズは、十中八九日向の変異が原因だろう。

彼の現在のデータを確認したところ、10体以上のナイトメアが彼と同じ座標に重なった状態で処理されていた。その中には死神もあった。まじで殺す気満々だ。

あまり動かないのであれば問題はないようだが、本来現実世界に存在できないナイトメアを無理やり召喚して融合したうえ、誘拐犯を対処するためにめちゃめちゃアクロバティックに動き回った結果、処理が追い付かずフリーズしたらしい。

 

下手すればクラッシュもあり得る。……やっぱり早く修正しなくては。

 

「ナぁ、管理人……もどレナいんだが」

「……は?」

 

「元の姿二戻れなイ」

 

おい冗談だろ?冗談であってくれよ。もう仕事増やすなよクソバグ野郎。

 

普段は一体との合体のため簡単に戻れるようだが、今回は10以上。合体は容易でも解除の難易度は段違いだ。……というかいつも合体してたの?初耳なんだけど?

記録にも映っていないとなると隠蔽的な何かとか、こっちの認識をバグらせてきているのかもしれない。こいつなら結構簡単にやってきそうで怖い。

 

ちなみに今回の解除には約一週間ほどかかるらしい。

 

一週間。いっしゅうかん。

世界が復旧できれば、主人公と重要人物不在による崩壊を防ぐためすぐ彼らを戻す必要がある。

確実に分離は間に合わないだろう。

 

分離できるまでの間、このでかい負荷が世界に居座り続けるというのか。いつ影響を及ぼすかもわからない爆弾のようなものが。

 

………………。

 

やっぱり、こいつ一回殴っておこうか。




日向
もはや不定形の怪物のようなバグった存在。
その後一週間鏡の中の世界でじっとしてたら治った。

如月
精神ぎりぎりの管理人。
どれだけ辛くても新入りに負荷は与えられないので頑張りすぎている。
結局殴んなかった。

もうすぐバレンタインです。
如月の誕生日です。おめでとう。
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