「よーしお前ら集合だぞー」
プールサイドにガチムチ先生の声が響く。ホモってはっきりわかんだね。
入学してから少しが経過した今、ついに今日はプールの授業らしい。
「早速だが、準備体操をしたら実力を測る。泳いでもらうぞ」
「先生、俺泳ぎたくありません!」
肉だるま先生が指示を飛ばすのに対し、早速俺は反抗する。当然であった。
何故か今の俺は水着を着ているが、これは到底許されたことではない。当然授業前に見学を求めたが、正当な理由を言えと言われ、だるいです!といったらガン無視を決め込まれた。??あり得ないな。
「俺が担当するからには、必ず夏までに泳げるようにしてやるぞ。安心しろ」
「??いや別に俺泳げないなんて言ってな……」
「──そうはいかん。今は苦手でもいいが、克服はしてもらう。泳げるようになっておけば、あとで必ず役に立つ。必ず、な」
ダメだこいつ早くなんとかしないと。
会話不可能なあたり頭がイカれているとしか考えられないが、このまま反抗するのがめんどくなった俺は喋るのをやめ、プールサイドに寝そべることにした。
「さて、準備体操するぞ」
は?いやだが?だるすぎる。
決意を固めた俺は綾小路に話しかける。
「俺の代わりに頼むわ!」
「?何をだ?」
全く、理解力がない奴だ。やれやれ。
困惑してそうな綾小路を置いて、とりあえず俺は寝ることにした。俺は目を閉じて1秒で寝れる。のび太超えも余裕。
──次に目をあけた時、すでに準備運動は終わっていた。
「これから男女別で50m、競走してもらう。1位になった生徒には俺から5000ポイントをプレゼントしよう。とりあえず先に女子だ。さあやるぞ」
へー。どうでもよ。
俺は再び目を閉じた。
──次に目を覚ました時、俺の目の前には肌色の何かが……っておいこれケツじゃね!?やばいやばいやばい犯される!!
「誰か助けてくれ!!」
俺は目を仰向けで寝っ転がったまま大声を出す。
「突然叫んでどうしたんだ?」
「……その声はまさか、」
「そうだ。あやのこう──」「須藤か!このクソホモ野郎が!俺に二度ケツを向けるなよ!」
ああん!?誰か呼びやがったか!!?
そんな声が遠くから聞こえた気がするが、多分気のせいだろう。
「何を言ってるんだ突然。オレは綾小路だ。ケツってなんの話だ?」
「はっ、そうやって騙そうったってそうは行かない。このカクレホモジリが。」
「なんだその不名誉なあだ名は……普通に目をあけて確認して欲しいんだが……」
仕方がないので恐る恐る目をあけてみるとそこには…………ケツ…‥に見えるくらい見事な腹筋があった。
いや、結構マジでえぐい。
「……おいおい堕ちたもんだな綾小路さんよ、怠惰マスターとしてその体は許されないんじゃないすかね」
「だからオレは怠惰マスターなんかじゃない」
疲れたようにそういう綾小路は怠惰マスターそのものに見える。
恥ずかしがらなくたっていいのに。恥ずかしいとかいう感情を浮かべるなんて、ただただ面倒なだけだろう。
「…‥しかし綾小路くん、あなた何かスポーツをやっていたの?」
「ああ、やっていたさ。ふっ、まあ昔の話だがな」
「誰なのあなたは。今すぐに失せなさい」
「はい……」
あ、ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
俺はただ突然会話に参加してきた不届きものとの場を和ませようと冗談を言っただけなのだが、なぜか逆に俺が不届きもの扱いされて殺されかけた。
な… 何を言ってるのか わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった…
堀北‥恐ろしい女だ。
「それより天羽、もうそろそろお前の番だぞ。向こうに並ばなくていいのか?」
恐怖に震える俺に、綾小路が話を逸らすように告げる。
俺はそれに応えるように口を開き──
「……ねえ、どうしてこの男は口を開いたり閉じたりしているのかしら」
「……もしかして、何かを伝えようとしてるんじゃないか?」
やるな、綾小路。流石怠惰への道を歩むもの。
それに比べ堀北は……はっ、お話にもならな──
「…‥確かに、コンパスで刺してって言ってるような気がするわね」
──っは?やめてくださいなんでもしますから!!
とか考えてる間にもおそらく今堀北の脳内には103の煩悩と破壊の策略が生まれ続けていることだろう。やばい、面倒だが流石に阻止しないと!!
「ちげーよ、綾小路に早く向こうまで運べって言ってるんだよ。なんで伝わんないんだよ綾小路……まったく、お前みたいなのがいるからこの国は……」
「……オレ日本代表じゃない……はぁ……」
短い付き合いだが、俺に対して何をしても無駄なことを知っている綾小路は面倒臭そうにしながらも俺の背中に手を当てて持ち上げ歩き始める。お姫様抱っこである。
当然、俺は無言だ。面倒な水泳をこなさなければいけない、その事実だけでこれから流刑地に向かう囚人の気分にさせられる。収容所だけは嫌だ!!特にアウシュヴィッツ。
「……天羽は泳ぐの得意なのか?」
辛い気持ちでいっぱいなこの俺に愚かにも話しかけてくる綾小路。
面倒なので空いている手でサムズアップしてみる。
「……おぉ、正直想像がつかないが……」
あ?
「……コンビニから走って帰った時も運動神経が良いとは思えなかったし、意外だな……」
カッチーン。
「ああん!????てめえみとけよ!!!!目ん玉えぐれるほど驚かせてやるよ!!このホモ風情が!!」
「ちょ、おいどうしたんだ急に……びっくりしただろ。あと、今は多様性の時代だぞ」
「嘘つけお前普通に無表情じゃねえか!!バカが!多様性?怠惰な俺を認めないこの世にそんなもんはねー!」
はぁ、はぁ、くそ、俺に無駄な労力使わせやがって。許せない。
「……悪い、よくわからないが何かやっちゃったんだな?」
飄々と済ました顔でそんなことを言ってくる綾小路。
なんだよ綾小路裏切るのか?お前がまさか怠惰の道を歩むものではなくなろう系主人公だったなんて……隠れた才能でオレTUEEEEEとか絶対あっちゃダメだからな。
「…………………まあいい、せいぜい指を咥えて見てるがいい」
俺の自信のある顔つきに何かを感じ取ったのか、綾小路は熱い眼差しを──やっぱりホモじゃないか。
──そんなこんなで綾小路に無事列まで運んでもらった俺は今、プールの中にいた。
はっきり言ってクソ寒いしすぐに帰りたい。スタートと同時に全身の力を抜いて溺れたふりをしてそのままサボりたい。
だが、だが!!!!綾小路は俺に許されないことをした。なんて残虐な男なのか。そして実際にはどうか知らないが、どうせ堀北も俺を舐めていることだろう。ほら、今だってプールサイドでコンパスのような目つきで俺を見ている……こわっ…。
見せてやる、俺の真の力…‥そしてこれが終わった俺、しばらくはゆっくり休むんだ……!
「準備はいいな?よーい」
全員がプールに入ったことを確認した先生が合図の準備をする。
──ピーッと合図の笛の音が響き、俺含め全員がスタートを切った!!
綾小路、堀北、行くぜ、俺の泳ぎ見てろよ!!ほら、もっと加速するぞ──
◆
俺は、保健室にいた。
ガチ受験の最中なのでガチで投稿頻度低いですすんません。休憩中に暇つぶしでちょくちょく書いてます。