たまには五千文字程度のお話を書いてみようかなと思いました。
………まぁ、思っただけなんですがね。いつも通りです。目が疲れない程度に読んでください。
「……お?」
テンとレムの抱擁。これから見る機会が増えそうな糖分過多な絵面を視界に収める面々の中から一人、不意にハヤトの喉が小さく唸る。
何かに気づいたようなニュアンスの声。テンに甘えるレムと、それを見つめるエミリア以外の人間がその声に気付くと一斉に視線を飛ばすが、当の本人の視線は寄りかかっていた壁のすぐ横にある扉に注がれていた。
釣られて見る。特になんの変哲もない扉だ。別段、凝視するまでもない扉だ。しかし、ハヤト的には何かを感じ取ることができたようで。
「ったく、仕方ねぇやつだな」
常に屋敷のどこかしらから流れてくる感覚に楽しそうに笑うと、ハヤトは体を動かす。不意に生じた違和感——ベアトリスの領域が放つ言い表しようのない温もりを感じ取ったのだ。
なんの予兆もなく、予感もなく、気配もなく。それこそ瞬間移動したように現れた。
自分の真横の扉と繋ぐあたり、「早く開けるがいいかしら」とでも言いたそうな雰囲気がひしひしと伝わってくる。
そこまで来てくれたのなら自分から出てきてくれればいいものを、相変わらずツンデレで可愛らしいやつだ。
「もしかして……、ベアトリス様?」
「そうだな。いる」
「へぇ。やっぱり分かるんだ。すごいね、ハヤト」
「何がすごいのか分からんが、パックに言われると実感が湧いてくるな」
レムが「もっと、ぎゅーー!ってしてください」と、喉をごろごろ鳴らしながらテンに甘えているのを聞きつつ、ハヤトは背に受けた声に対して軽く返した。
レムに対してテンは「せめて人目は考えよっか」と言ったが。それでも抱きしめてあげるあたり、なんだかんだ押しに弱く、甘すぎる男だということが分かる。
その二人を、エミリアが無言で見つめていることなど誰も知らない。
そんな、ヤンデレムを着々と静めるテンはさておき。ハヤトは扉の取っ手に手を掛けると、
「ベーアートーリースぅ。そこに隠れてねぇで俺たちの会話に混ざろうぜ!」
勢いよく扉を開ける。優しく開けるとつまらないから敢えて勢いよく。そのままの勢いで部屋から連れ出すのが一連の流れ。
押し開いた視界に映り込んだのは、壁一面を本で埋め尽くされた世界。目に優しい色合いの本棚がいくつも並べ立てられたそれは、正しく本の森。図書館よりも本があるのではなかろうか。
その世界を背景にしているのが、ハヤトの目の前にいるクリーム色のドリルロリことベアトリス。相変わらずのドリルツインテールは健在で、フリル付きの紅色ドレスに身を包んだ彼女は準備万端だったらしい。
目の前にいた。扉を開けた瞬間、まるで、ずっとそこに待機していたような立ち姿の彼女の存在があった。
いつもなら奥の三脚に腰掛けながら本を読んで、「また来たかしら」と言いながら手をふりふりと振ってくるのに。今回に限って彼女は扉の目の前に。
寝起きか。それとも演技か。眠たげにあくびをする彼女はじわりと浮かんだ涙を拭いながら、
「朝っぱらから騒々しい奴らかしら。お前は特に」
「いや、わざわざ俺の真横に来ておいてその発言はおかしいだろ」
「別に。ベティーはただ、目を覚ました
「寂しいなら、そう言えばいいのに」
「そんなわけないかしら!」
ツンとした澄まし顔のベアトリスは、そう言いながらハヤトの真横を通り過ぎる。発言に対する返しの速さと声量の大きさが彼女の本音を語っていることに、彼女自身は気付いているだろうか。
とりあえず。その髪に自分が贈り物として渡した薔薇の髪飾りが飾られていることは後で指摘してやるとして、彼は「そーかよ」と適当に笑いながら扉を閉めた。
ほのぼのとした世界の住民として新たに加わったベアトリス。彼女は目的のテンの前までつかつかと歩いていくと、
「体の具合はどうかしら。一応、お前の体を治癒してやった身として、必要最低限の健康診断くらいはしてやるのよ」
「アフターケアが行き届いてる……。お陰様でこうして生きてます。本当にありがとう。体の節々と重傷を負った場所が痛むし。なんなら、血が足りないとかなんとかで少し歩くだけでフラつくけど、元気だよ」
「それのどこに元気の要素があるのよ。ベティーはお前の元気の基準を疑うかしら。……その様子だと、自分の現状は理解してるように見えるのよ」
「まぁ、大体は理解してる」と、ベアトリスに顔だけ向けるテンは軽く頷く。自分の現状はラムから聞かされたし、なにより身をもって実感している。改めて聞く必要などない——そういった意味合いでの頷き。
本当は体を向けて話したいが、胸元のレムが動いてくれそうにない。ちゃんと頭を下げて感謝を伝えたいが、それもできそうにない。
一体、この子はいつまで抱きしめれば満足してくれるのか。そろそろ普通の光景として溶け込んできたが、完全に自分の世界に入られると色々と困ってしまうテンだった。
しかし、「なら、ベティーが伝えることは何もないのよ。異常があれば伝えるがいいかしら」と言いながらテンに背を向けるベアトリスは、その光景には特に触れることはない。
やることやってさっさと帰る雰囲気が漂う彼女は、この場にパックがいるにも関わらず、禁車庫と繋いだ扉へと一直線だ。
そんな後ろ姿に。テンの体を気遣ってわざわざ見舞いに来てくれたのか。それだけのために、この場に訪れたのかと思う面々。
彼女自身もそう語っていたが、まさか本当にそれだけなのか。だとすれば、彼女の優しい一面が大っぴらに曝け出されている貴重な瞬間として、この場にいる全員の記憶に保存されることになる。
尤も、それだけで部屋に戻らせるわけがない人間がここに一人いるため、彼女がそのまま帰れるわけがないが。
「ちょっと待てや、ベアトリス」
「なにかしら」
扉の取っ手を掴んだベアトリス。そのまま扉を押し開くはずの手は、しかし横から伸びた手に手首を軽く掴まれたことよって止められる。
当然、ハヤトだ。止めることが当たり前である彼は迷いの一切感じられない態度で彼女の帰宅を拒み。止められたベアトリスもまた、止められるのを分かっていたような態度。
止めたハヤト。止められたベアトリス。二人にとって慣れ親しんだ両者の視線が至近距離で交差すると、ハヤトはニヤリと口角を釣り上げ、
「せっかく来たんだから少し話してけよ。ほら、俺らがここで話してんの聞いてて寂しかったんだろ? なら、会話に混ざれ」
「お前達と話すことなんてないし、寂しくなんてこれっぽっちも思ってない、勘違いも甚だしいかしら。あったとしても、くだらん世間話に付き合ってやる義理はないかしら。仲良しごっこはお前達だけで勝手にやるのよ」
いつも通りの面倒な絡み方。ハヤトという青年はベアトリスという幼女を見つけたら取り敢えず絡む性格が故に、その姿勢は基本的に変わらない。
因みに、これをテンにやると「え、無理」の一言でバッサリ拒絶される。
一人でいると『話しかけてくんなオーラ』を無意識に全開にする彼は、基本的に誰にも近寄られない。父親から引き継いだ目つきの悪さも相まって尚のこと近寄られない。
しかし、ウザそうな声色のベアトリスはそうでもなかった。
テンと違って、声とは裏腹に嫌そうな雰囲気が感じられないのだ。出会ったばかりの頃は滲み出ていた『話しかけてくんなオーラ』が、今は全然感じられず。見上げる目つきは鋭さこそあるものの、刺さるものではない。
掴まれた手も振り解こうと腕をぶんぶんしているが。本人が本気で嫌がって振り解くつもりなら、とっくに解かれている。そうじゃないのは、嫌がっていないことの裏返しだろう。
素直なくせに、素直じゃないベアトリス。可愛らしい矛盾を抱えた彼女をハヤトは理解すると、思わず「ふっ」と溢れる笑みの一端を口から漏らし、
「ほぉ、そうくるか。ならいいぜ。ここは一つ、お前を中心に会話を広げてやるよ。そうしたら会話に参加せざる負えなくなる」
不穏な発言が飛び出したことに、ベアトリスのまつ毛がピクリと反応する。
あのまま止めてくれなかったら少し——ほんのちょっぴりだけ寂しく感じなくもなかった彼女は「ベティーを中心に?」と、嬉しく思う心を真顔で隠し、困惑げに語尾を上げた。
会話に混ざらせるつもりが、自分を起点にそれを始めようとする彼の意気込み。なにを話すのか、少なくとも自分が全く予想もしないことを話すことだけは分かる。
この男はそういう男だ。ただ、何を話すのかまでは聞くまでは不明が故、彼女は聞く姿勢をとり、
「あの夜みたく、俺のこと『ハヤト』って、名前で呼んでくれてもいいんだぜ?」
「なーーっ!」
どきん! と。
その声が心を貫くと、一度だけ胸が大きく高鳴ったと同時にベアトリスがハヤトの頭の高さまで飛び上がる。一度、たった一度の衝撃が心の動揺となって全身に波紋して意図せずに爆発、跳躍として形になった。
一度だけにも関わらず爆発したのは、彼女にとってそれが凄まじく衝撃的だったことの他にない。
自分でも驚く跳躍にベアトリスの視線が一気に高くなると、瞬間的に映るのは堂々とした表情のハヤト。だがしかし彼女は今、その裏側に爆笑するハヤトの存在を感覚的に理解した。
その爆弾発言。恐らく、否、絶対にハヤトは狙ってやったに違いない。お陰様で、自分だけでなく周囲の人間までも震撼させている。
「名前で呼んだの? 呼んだのか。ベアトリスが? ベアトリスが。ハヤトを? ハヤトを。名前で? 名前で。………マジで?」
「マジだ」
「マジか」
自問に自問を、自答に自答を重ねたテン。彼はハヤトが投下した爆弾発言の処理に至ると、驚くように目を見開く。
その頬が若干笑っているのは、ベアトリスの反応が不覚にも面白かったからだ。
「へぇ。ベティーが他の人を名前で呼ぶにゃんてね。彼女になにしたの? ハヤト」
「精霊とはいえ、ついに幼女に手を出したか……。脳筋の性癖には薄々勘づいてはいたけど、今になって隠しきれない分が露出したのね。二度とラムに近づかないでちょうだい」
「すげぇ。ついに名前で呼んでもらえるまでに仲良くなったんだ。なるほど。ハヤトのヒロインはベアトリスだったか。じゃあ、推しのフェルトは諦めな。未来の幼女使い」
パックがからからと笑い。ラムの視線が絶対零度になり。テンが甘えが加速し出したレムの頭を撫でながら半笑い。
彼の波が周囲に伝わると、テンに喉をごろごろ鳴らして甘えるレムと、絡む二人を見つめるエミリアを除き、程度の差こそあれど残った三人が驚いた。
三人中三人が、ハヤトがベアトリスに手を出したと断定しているが、屋敷の人間にとってはこれが正常の反応だ。ベアトリスの性格を知っているなら尚更。
基本、ベアトリスは他人の名前を呼ぶことは無い。
ほとんど、ではなく、無い。一度たりとも他人の名前を呼ぶことは無い。代わりとして彼女なりの呼び方で形容していることが多く。そのせいでテンが「イカれ男」と言われるようになったが。
ともかく。そのベアトリスが、他人の名前を決して呼ばないベアトリスが、ハヤトの名を呼んだと。元々から仲良しなのは周知のことだったが、どうやら自分達の知らない間に変化があったらしく。
「ちがっ……あれは——」
「なんだよその刺さる言い方。別にいいじゃねぇか。なんだかんだ、ようやくベアトリスが俺に心を開いてくれた証拠なんだしよ。あれは素直に嬉しかったぜ」
手首を掴んで離さないハヤトの手を支えにバランスを整えながら着地するベアトリス。動揺をこれ以上悟らせぬよう、とりあえず否定を挟もうと彼女は即座に声を上げるが、ハヤトの声に上書きされる。
意図的に上書きしたのではない。話し出すタイミングが偶然重なったのだ。——重なったことが彼女にとっては最高で最悪だったのかもしれない。
なぜなら。無自覚に、無意識に、ベアトリスの出鼻を挫いたハヤトはその勢いのまま、あの夜のことを楽しげに語り始めたのだから。
「あの夜。俺がドラゴンと戦ってる時に助けに来てくれてよ。そん時にベアトリスのやつ、何があったのかは知らねぇが。俺のことを、ハヤト、って名前で呼んでくれてさ」
「ーー! お、おおお前! あ、あ、ああんまりべらべら喋るんじゃないかしら!」
記憶を思い出すようなハヤトが血の夜、その時にあった出来事を話し始めた途端。目の前の男が何を話しているのか瞬時に理解し、頬を紅潮させたベアトリスの背筋が一直線に伸びる。
直後から開始されるのは、ハヤトの手を無理やり解いた彼女による照れ隠しを含んだ可愛らしい抵抗だ。「あれはちょっと、雰囲気に呑まれてただけなのよ!」と彼の服を握り、ぐわんぐわんと揺らしている。
果たして、その発言がハヤトが語った事実を肯定していると彼女は知っているだろうか。
淡々とした様子で否定すれば、まだ打ち消せた可能性はあったものを。掻き乱され、動揺を露わにする彼女の心は事実を否定することも一瞬にして忘れたらしい。
「可愛かったぜ。お前達にも見せてやりたかった。深くまで話すと流石に可哀想だから話さねぇけど、あのベアトリスは可愛かった。可愛い以外の言葉が見つからねぇな。可愛いの極みってやつだな」
「だ、だだ、だ、だまる、黙るかしら! その口を今すぐに閉じるのよ!」
服を掴んでぐらぐら揺らし。かと思えば握りしめた拳で腹をポカポカ叩き。背伸びをして手を伸ばしては物理的に口を塞ごうとし。ありとあらゆる手段でハヤトの口を塞ぐべく奮闘するベアトリス。
が、残念な事に全て受け流されている。揺らされようが、叩かれようが、塞ごうとしようが、ニヤニヤ笑うハヤトには通用しない。
魔法において規格外な力を保有する彼女だとしても物理的な力は幼女のそれに過ぎず。寧ろ、子ども並みの力で頑張る姿に、より煽りたくなるのがハヤトという男。
彼の眼下には、つい先ほどパックに秘密を暴露されたエミリアと全く同じ様子のベアトリス。
あたふたして、口をぱくぱくさせながら、焦ったような表情で、頬を赤くして、語る口を止めようと幼いながらに背伸びまでして必死になって。
なるほど、これは揶揄いたくもなる。不意にもエミリアを揶揄っていたテンとパックの気持ちを理解すると彼はベアトリスの頭に軽く手を添え、
「なんでだよ。別に嘘じゃねぇし。お前、可愛かったぞ」
「かわっ……! そういう問題じゃないかしら!」
「じゃあどういう問題なんだ?」
「それは………、問題は問題なのよ!」
一瞬。頭に手を添えられたベアトリスが「ぁ」と小さく声を溢して自分の時を止めるも刹那で抜け出し、添えられた手を暴れる両腕で大きく振り払いながら吐き散らす。
そこでエミリアのように甘えないところ、この子はやっぱりツンデレなんだなぁとハヤトは思った。逆に甘えてくる方が違和感に感じてしまう。
今まさにテンに甘えるレムのようなベアトリス——想像しただけで違和感の塊だ。それはそれで全然良いと思うが、今の自分と彼女の関係的にそっちの方がやりやすい。
故に、彼の対応は一貫している。照れ隠しをするベアトリスを永遠に煽るという対応を。何が問題なのか分かっていても、けれど知らないフリ。
「問題は問題、って言われてもねぇ………。んーー。分からんなぁ」
「あ、うそかしら! その顔は嘘ついてる顔かしら! 今、嘘ついてるに違いないのよ!」
「知らんなぁ」
「とぼけるんじゃないかしらーー!」
ーー自分達は一体、なにを見せられているのか
目の前のやりとりに、ずっとテンに甘えるレムと、それを無言で見続けるエミリア以外の人間——パックとラムとテンの三人が全く同じことを考えた。
揶揄うハヤトと揶揄われるベアトリスという。いつも通りの絵面だが、いつにも増してイチャついていることが少しばかり異様に感じていたり。
なんとなく、ハヤトに対するベアトリスの雰囲気が柔らかくなっている気がする。あの夜に何かしら心境の変化でもあったのだろうか、どことなく彼女の表情がスッキリしているようにも感じた。
「あの二人って、あんなに仲良かったっけ?」
「相性がいいのは前から知っていたけど、あれはラムも初見だわ。ベアトリス様も脳筋も、それを隠せるような器用な事はできないだろうし。あの二人はあの二人で、あの夜に何かしらあったようね」
「ベティーが楽しそうなら、ボクはなんでもいいかにゃぁ。彼女、今までずっと寂しそうだったから。ボクと遊んでるときも時々、悲しそうな表情をする時があってね」
「今は大丈夫そうだけど」と。そう言ったパックがふと思い、現在進行形で黙り続けているエミリアを見る。映ったのは、紫紺の瞳を瞬きさせる愛娘がテンとレムを無言で見つめている光景。
それを見て何を思ったのか、パックは小さく吐息。厳密には、愛娘がテンに甘えるレムを見つめている光景を視界に収めると、彼はゆるゆると首を横に振った。
それが何を意味するかは、彼のみぞ知る。その意味が明らかになる瞬間は、運命のみぞ知る。
「そうだな……。特に可愛かったのは、背負った時に———」
「いい加減に黙るかしらぁ!」
「うげぁ!?」
そんな時、揶揄われていたベアトリスの羞恥心がついに破裂。実力行使に出た彼女が発した風圧に等しい魔法の壁がハヤトの体を殴りつけ、決して軽くない彼がぶっ飛ぶ。
ただぶっ飛ぶだけならまだしも、運が悪かった。吹き飛ぶハヤトの向かう先は壁——その手前、直線上にテンの姿。加え、彼の胸にはレムがいる。
このままでは色々と惨事を招きそうな予感に、テンの行動は迅速だった。数々の経験で鍛え上げられた判断力と瞬発力が活きると、咄嗟にレムの体をラムへと押し飛ばす。
唐突なそれに自分の世界からレムが帰還するが、その頃には既に事は終わっていた。
その結果として、
「へぶっ!」
「どわーー!」
弾丸の如く打ち放たれたハヤトがテンに激突。当然、衝撃を散らす術もない二人は勢いに流されて壁へと激突。
どん!という音が確かな振動と共に空間に鈍く鳴り響くと、
「はぐぅ………ッ!!」
歯を食いしばるテンが、全身に燃え広がった灼熱の激痛に苦痛の声を悲痛に上げる。更には、壁にぶつかった事で世界に齎された『反発する力』に対抗しきれず、跳ね返る体が床に力無く倒れた。
波が、衝撃の波が体の中で縦横無尽に暴れ散らかしている感覚。大波となって押し寄せるそれらが水飛沫を立てて弾ける度に、疲弊した肉体が悲鳴を上げて激痛に蝕まれる。
レムと一緒に前に飛び跳ねればこうはならなかった。とは、灼熱にじりじりと身を焦がされながらもテンが後悔したこと。
自分よりも大切な人の身を一番に案じる性格が、こんな場面に裏目に出た。
レムの代わりに自分を犠牲にしてどうする。それじゃ、体は守れても心は守れないと身をもって知ったはずだろう。経験したはずだろう。この形では元も子もない。
「いたい……うぅ……。はやとの、ばかやろぉ。おま、まじ、あとでおれと、ステゴロな。ぼっこぼこに……っ、してやんよ」
「俺のせいじゃねぇ。あれはベアトリスのせいだ」
「んなわけ……あるか。おまえのせいだぁ」
構えていなかった激痛にテンが悶絶しかけ、大慌てでレムとエミリアが駆け寄る中、同じく地に伏せていたハヤトは元気そうだ。本気で痛そうに表情を歪めるテンとは対照的に、痛みの余波も長くは続かなかった。
「どこが痛いですか!?」とレムが聞き。鎮痛として治癒魔法をエミリアが施し。その手を止めるテンが「だいじょーぶ、すぐに治るよ。それ以上、俺を介護するな。悲しくなってくる」と二人に軽く手を振る。
そんな三人を横目にハヤトは膝立ち。テンが本気で痛がった事で雰囲気が良くない方向に進み出したことを察した彼は、無理矢理にでもその雰囲気を戻そうと顔を上げた。
それに、ここで引いたら男が廃る。ここまでやられたのだから、いっそのこと、とことん揶揄ってやろうじゃないかと。
真横で「うぉぉぉ」と、打ち上げられた魚のように身悶えるテンの事情を完全に無視した謎の対抗心から、ハヤトは痛みを堪えると苦し紛れにニヤリと笑い、
「あとよ。その髪飾り、付けてくれてるんだな。嬉しいぜ」
「え……。ぁ、た……たまたまかしら! 偶々、いつも付けてる髪飾りが近くになかったから、付けてやってるだけなのよ!」
テンの様子に流石のベアトリスも「やってしまった」感のある雰囲気を漂わせていたが、その一言で霧散。一時は忘れかけていた羞恥心が思い出されたように膨れ上がると、彼女は頭に手をやる。
手を当てた場所。そこは、普段は彼女の手の平に収まるほどの小さなクラウン型の髪飾りが飾られている場所。
しかし、今回はハヤトが贈ったヘアピン型の薔薇の髪飾りが飾られていることを手に当たる感触で彼女は理解。否、思い出した。
勿論、意図的にである。普段付けてるのよりもこれが気に入ったから。紅色のそれが気に入ったから。なにより、ハヤトが自分のために贈ってくれたから。好き好んで飾っているのだ。
ただ、あくまで自分一人の時だけに飾るつもりだった。理由としては、ハヤトに見られるとなんとなく恥ずかしいというもの。幼稚だが、見られたくないものは見られたくないのだから仕方ないだろう。
故に、それを悟らせんとする彼女が発覚した事実を誤魔化さないわけがなかった。ハヤトに見られた彼女は気付いてから慌てて外すと、髪飾りを持った手を背中に隠し、
「別に、ベティーが好き好んで飾ってるわけじゃないかしら! 変な方向に勘違いすんじゃないのよ!」
「はいはい。可愛い可愛い」
「むーー!! もういいかしら! 世間話はこれぐらいで十分なのよ! ベティーは部屋に戻るかしら! あとイカれ男、さっきのはちょっとだけ悪かったかしら!」
ハヤトの対応によって色々と暴かれたベアトリス。声の大きさでのみが自分の動揺を抑え込む手段となると彼女はテンに謝罪を添え、我慢の限界とばかりにハヤトに背を向ける。
もういい、十分だ。叫び過ぎて喉も痛いし、体が信じられない程に照ってきた。さっさと部屋に帰って落ち着きたい。ハヤトの前から一刻も早く姿を消したい。
早く部屋に戻りたい一心の無我夢中なベアトリス。彼女は自分の真後ろにある扉、禁書庫に繋がる扉を勢いよく押し開き、
「ーーーあ」
見えたのは見慣れた本の森ではなく、ただの一室であったことに彼女は自分のミスに刹那で気づく。ムキになって開いたその扉は自分が禁書庫と繋いだ扉とは別の扉で、本命はその右隣の扉だった。
精神を乱され、目の前のことに意識を囚われていたことによる致命的なミス。別に気にすることでもないそれは、今だけは絶対に犯してはならないミス。
本来ならば部屋の番人として間違えることなどあり得ない。彼女自身の領域なのだから百発百中が当たり前——外すということはつまり、彼女の精神が乱されていることに他ならず。
今回の場合、それはハヤトに自分の動揺を大々的に知らせてしまったことに直結するのだ。
現に。あり得ないミスに固まったベアトリスに、ハヤトは思わず吹き出し、
「お前それ、素でやってんのか。だとしたら面白すぎるぞ」
「うるさいのよ。お前、あとで覚えてやがるがいいかしら!」
今度こそ正解の扉を引き当てると、口を大きく開いて豪快に高笑いするハヤトにそう捨て台詞を残して、ベアトリスは扉の奥へと消える。直後、ハヤトは扉の奥に存在していた気配が一瞬にして消えたことを感じ取った。
扉を閉めた瞬間に渡ったのだろう。そこで逃げに徹するあたり彼女らしい。
ハヤトが揶揄い、ベアトリスが逃げるという、いつも通りの光景。稀に逆の立場になることもあったり。
「ひっさびさに揶揄いまくったな。元気そうでなによりだ」
腹に軽く手を添えるハヤトが呼吸を整えながら立ち上がる。まさか扉を間違われるとは思わなかった彼は、笑いすぎて死ぬところだった。
あの硬直したベアトリスの後ろ姿は絶対に忘れられない。大慌てで髪飾りを背中に隠していた姿も忘れられない。自分の口を塞ごうと必死になっていた姿も忘れられない。
「全部忘れられねぇな、こりゃ」
大きく吐息し、ハヤトは笑いの余韻を全て解き放つ。こうでもして無理やり気持ちを切り替えないとまた笑いそうになる。思い出すだけでもアウトだ。
壁が振動するほどの強さで扉を閉めた彼女は今頃、自身の領域内で暴れ回っているだろう。あれほど揶揄いに揶揄いを重ねられたのだ、様々な方向で感情が爆発しているはず。
尤も。その揶揄いは百パーセント、ハヤトの本音だが。敢えて伝える必要もない。ベアトリスもよく分かっているはずだ。分かっているからこそ、あんなに動揺してくれたのだと思う。
可愛いやつだと思う。本当に。
「おい」
次に会ったとき、一体どんな表情で自分のことを見てくるのか思い描くハヤトだが。そんな彼の心臓を背中から突き抜けた低い声が一直線に貫通する。
直感で分かった、これは怒っている声だ。腹からではなく喉から出しているそれは唸り声に近く、短い低音なのにも関わらず心臓が一度だけ戦慄に強く跳ね上がる。
振り向くハヤトに声の主——痛みの余韻が引き、立ち上がったテンは彼を睨みつけるように目を細めると、
「痛かったんだけど」
「
「いいよ。怒るのも面倒だし」
「優しいな」
やれやれ、と。
仕方なさそうに首を横に小さく振るテンは数秒間だけ瞑目。見逃してやるという意味合いのそれを終えて目が開かれると、目つきから鋭さは消えていた。
案外、声とは裏腹に怒ってないらしい。否、怒る気力が今のテンにはないのだ。肉体的な衝撃を受けたことによって完治期間が延長された予感に、自然とため息が出てくる。
レム然り、エミリア然り、今回の件然り。
自分という人間が今、どれだけ弱っているか本当にちゃんと把握してくれているのだろうかとテンは杞憂し、この調子だと命がいくつあっても足りない気がしてきた。
「おやおやぁ? なぁにやら騒がしいと思って来てみれば、随分と久しい光景があるじゃなーぁいか」
自身の身を案じたテンの目が静かに遠くを見つめ出す中、その場にいた全員の間を気の抜けた声が通り抜ける。特徴的な口調、なによりも声からして誰かなんて判断するまでもない。
反射的に全員の視線が向けられた方向にいるのは見慣れたメイクで不気味な笑みを浮かべている道化、ロズワールだ。
ほのぼのとした空間に足を踏み入れるのには一足遅かった彼は、「おはようございます、ロズワール様」と揃った動きで腰を折るメイド姉妹二人に「おはよう。レム。ラム」と軽く手を振ると、
「やぁっとお目覚めかい、テン君」
「はい。やっとお目覚めらしいです。ご迷惑とご心配をおかけしましたが、なんとか生きてます」
「心配は否定しなぁいけど、別に迷惑だなんて思う心はないさ。君が無事ならそれで満足だよん」
この場にきて一番初めに目に止まったテンに歩み寄るロズワール。
相変わらずほのぼのとした様子で結構なことだと思いながら彼は、テンの顔をまじまじと見つめると、
「随分と私たちのことを待たせてくれたものだねぇ。教え子が眠りにつき、君のいない日々は私にとってはとても寂しいものだったよ」
「え……やだ、むり」
「どうしてそうなるんだい?」
ロズワールのねっとりとした声に人間的な拒絶反応を起こしたテンが目の前のニヤけ面から物理的に距離をとり、「キツいです」と呟きながら両腕で身体を抱くとラムの背中へ。
ロズワールの視線を受けてラムが嫌がるわけがないと判断した彼は身を屈め、彼女を盾にした。
自分の心を上手いこと利用されたラムはメイドとしての表情は変えぬまま、閉じた口の中で小さく「チッ」と舌打ちし、
「ラムを盾にするなんていい度胸……いえ、それ以前にロズワール様のお言葉を無碍に扱うなんて万死に値するわよ。いつからテンテンはそんなに偉くなったの? ………………今回は譲ってあげるけど」
長い沈黙の末。テンだけに聞こえる声量で最後にそう付け足すと、私怨と私欲がうまい具合に打ち消し合う。テンが浴びるはずのロズワールの視線を全身に浴びてご満悦な彼女は、胸を張った。
ただ、その裏で一つ。
ーーこれはラムを盾にした罰。甘んじて受けるがいいわ
ーーこいつ、踵で踏みやがって
打ち消すことができなかった僅かな分が『踵で足先ぐりぐりの刑』として、静かにテンに実行されていたことは、ここに書き記しておく。
▲▽▲▽▲▽▲
ようやく全員揃った、ロズワール邸の温かなほのぼの。テンとハヤトの損失が招き入れた悲劇は二人によって跡形もなく消し飛ばされ、住民の顔に光が戻ったと言える。
しかしその空間は、ロズワールが「はぁい。あんまり長居してると時間がなくなっちゃうから、そろそろ個々の予定に取り掛かること」と手をパチンと叩いたことで終わった。
使用人は朝食の準備を、エミリアは朝の日課を、パックはその付き添いを。各々の仕事に取り掛かるべくせっせと移動する人たちは一旦解散となっている。
が、テンは違った。まだ身体機能が回復し切っていない彼は「仕事はせず、自室で静かにしていたまえ」とロズワールに言い渡され、使用人のお仕事をお休みすることに。
反対する者は誰一人としていなかった。寧ろ、「動かれた方が面倒になる」というのが共通の意見ということもあり、彼の「やれるよ!」という幼い反発は封じられたのである。
——そして、現在。場所は、三階から降りて二階、西棟の廊下。
「くそぉ。部屋でじっとしてろ、って……そんな事、言うことないじゃん」
「仕方のないことではあると思いますよ。今のテンくんの体を顧みれば、当然の判断です」
ぐちぐちと小言を呟くテンと、その隣を幸せそうに微笑みながら歩くレム。自室へと戻るテンが途中で倒れないように、レムが付き添っている形だ。
隣を歩く彼女が彼の右腕に自分の両腕を絡ませ、添え木としての役割を果たしていることは言うまでもない。
「いいですか、テンくん。お部屋に入ったら、中でじっとしていてくださいね。朝食のご用意が整い次第、お迎えにあがりますので、それまでは一歩たりとも扉を潜ることは禁止です」
「そこまで言わなくても——」
「禁止です」
「でもさ——」
「禁止です」
「レ——」
「禁止です」
禁止です、と。
それだけを言い連ねるレムは一切譲らない。テンが言葉を挟む気配を察知する度に押さえつけ、なにがなんでも彼を部屋から出すことを受諾せず、いっそのこと一生監禁してやろうかとすら考える。
その勢いにテンは押し黙った。見上げる双眼に迷いの色はなく、これ以上反抗すると規制の程度が酷くなると考えた彼は口を閉じる。
それに彼は、こうなったレムは引いてくれないことを知っている。今までにも一つの言葉を連呼する彼女はたくさん見て来たが、その殆どが引き下がらなかったことを記憶している。
絶対に、譲らないのだ。
「分かりました、分かりましたよ。部屋で静かにしてればいいんでしょ。静かにしてれば」
そんなことを考えている間に目的の自室に到達。現状を理解したテンが、若干の投げやり感を見せ始めながら扉の取っ手を捻る。
扉を開けた彼の視界に一番初め映ったのは、乱雑に剥がされた布団。普段は起きるのと一緒にたたみ、窓から干すのだが、ド深夜に起きた自分にはその余裕もなかった。
寝起き直後の自分の荒れ様を無音で物語っているそれを横目にすると、レムが腕から離れたのを気にしつつ部屋の中へと入る。後方、彼女が
部屋まで来てしまえば、あとは特にすることもないテン。「布団でも干すかぁ」と、手を上げて体を大きく伸ばしながら独り言を溢す彼は、とりあえずここまで送ってくれたレムに感謝を言おうと振り返ろうとして、
「………ん?」
不意に聞こえた異質な音に疑問符を含ませて喉を低く鳴らす。上げた手をだらりと下ろして脱力する彼は、鼓膜の中で弾け飛んだ一つの音に該当する音はなんだろうかと本能的に記憶を探った。
聞こえたのは『カチャ』という、何かが閉まる音。
具合的には——おそらく鍵。鍵が閉まる音。ドアノブに付いているつまみが捻られて、扉に鍵がかけられる時に聞こえる音だと、記憶を探ったテンは思う。
なぜその音が聞こえたか。答えは明白、扉に設置されたつまみ式の鍵が閉められたからだ。
では、どうしてその音が今————、
ーーその件も含めて、あとでお話しがあります。……逃げないでくださいね?
ふと、先ほどのレムの発言が脳裏を過る。
「ーーーー」
瞬間、テンは察した。
戦慄に跳ねる鼓動の悲鳴、恐怖に凍りついた呼吸の絶望、焦燥に停止した思考の悟り、それらが同時に訪れたことを感じながらテンは察した。
音の意味も、レムがついて来た真意も、現在の状況も——それらを、背中に突き刺さるドス黒いオーラを始まりとしてテンは察した。
それらが勝手に導き出した数十秒後の未来絵図にテンは生唾を飲み込む。これまでの戦闘で状況把握能力が自然に鍛えられたことが皮肉にも仇となり、彼はこれから起こる未来を察した。
察し。察し。察し。三度に及ぶ察しを終えると、テンは諦めるように息を溢して振り返る。ここでゆっくり振り返ると余計に怖くなるから思いっきり。
戸惑い、躊躇う必要などない。鍵は閉められているのだ、足掻いても逃げられない。もはや自分の未来など確定したようなもの。
ならば、甘んじて受け止めるしかない。
「テンくん。いくつか、確認したいことがあるのですが」
「はい。なんでしょうか」
覚悟を決めたテンの眼前にはレム——ヤンデレムの姿。瞳のハイライトがゆっくり落ち、心なしか声のトーンが下がり、口角を上げてうっすらと笑みを浮かべた少女。
『ヤンデレ』という言葉をそのまま体現したような様相。軽く握りしめられた拳に鋭く光る包丁を幻視させる彼女は、当然のようにテンの胸に顔を埋めると、
「テンくんから
スンスンと鼻を鳴らすレムはそう言うと、テンの胸に添えた両手を服を握りつぶすようにくしゃりと握りしめる。
覚悟としていても勢いに負けたテン。言葉を失った彼が後ろに下がるのを追いかけるレムは一歩、また一歩と歩み始め、
「どうして、
言い。
後退するテンの体を制御するレムが彼に悟られぬように軌道を変えると、このまま進めば二人が寝台に倒れ込むように仕向け。
「どうして、
言い。
そのまま押し倒す気のレムはテンの体を一歩ずつ、一歩ずつ後方へと押し進め、自分の体から逃げられないように彼の両肩を両手で掴み。
「どうして、
言い。
爪を立てるレムは、戦慄に引き攣るテンの顔を無感情で無色な表情で見つめながら、寝台の存在に気づかぬまま後退したテンが膝裏に当たる感触に体勢を崩したタイミングを見計らい。
「どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして——どうして、レムだけを見てくれないのですか?」
押し倒し、膝を折るように背中から寝台に倒れ込んだテンの体に覆い被さり、レムは問う。
二人だけの空間。扉の鍵は閉め、外の世界とは切り離された二人っきりの世界で。
レムは問う。
「どうして、エミリア様とあんな事をしていたのですか? テンくん」
「…………理由、ねぇ」
寝台の上で覆い被さられたテン。膝に跨られて完全にマウントを取られた彼は、今にも飛びかかって来そうな気配を漂わせるレムを見ながら、
「精神的な…………治療。めんたるけあ」
「なんですって?」
言葉と共にレムの顔がゆっくりと近づく。近づいて、近づいて、近づいて、お互いの吐息が絡み合う距離にまで近づくと、彼女の熱っぽく色っぽい吐息がテンの唇を舐めた。
事実を言っただけでこの有り様。確かに、頭を撫でる行為に至ったのは完全に自分の落ち度だが、傷付いたエミリアの心を癒すために仕方なかったと思えなくもない。
が、レムにはそんなことなど眼中にない。
まさか、このままキスでもしてくるのではとテンに思わせている彼女の頭にあるのは『テンが自分以外の女の頭を撫でた事』と『テンの体から自分以外の女の匂いがする事』という二つの事実のみ。
故に、テンは潔かった。無駄な抵抗をやめた彼は、レムが「ふふ」と妖しく笑うのを耳にしながら、
「まぁ、あれだね。もうなにを言っても無駄だと思うから潔く素直に謝るよ、うん」
すぅ。と、大きく息を吸い込み、
「すいませんでしたぁ!」
「有罪です! レム色に染め上げますーー!」
「おまっ、そんな言葉どっから持っ———」
緊張していた部屋の空気がテンの声によって破壊されると、均衡の崩れたレムが獲物に飛びかかった。
独占欲の強い自分という恋人がありながら、他の女とあんな事をするとどうなるのか——テンの体に教え込むレムの暴走は止まることを知らない。
この後、エミリアの匂いが消えるまでめちゃくちゃに甘えられたテン。
彼は無事、レム色に染め上げられたとさ。
お し ま い(大嘘)
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雷の鳴る夜に
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(ソラノ・)レムの幸せに溢れた日々
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お酒少女達には勝てない
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恋人っぽいこと
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ありふれて、ほのぼのとした一日