親友とリゼロの世界に飛ばされたお話   作:ノラン

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今回、テンがメインのお話となります。タイトルの通り、頭の中で考えまくる回です。






すーぱー思考たいむ

 

 

時間は進んで昼過ぎ。

 

各々が各々の仕事に打ち込む中、ここにも一人。厨房にて夕食の下準備を行なっている男がいた。何も考えずに手に取った野菜を均等に切り分ける姿からは何も思わせず。

 

ただ、「野菜を切る」ということだけを熟す機械のように見えている。事実、目の位置を変えずに手だけを動かす様は無心そのもの。

 

この仕事を始めてからあと少しで二ヶ月経つが、なかなかにその姿も板についてきた。最初は不恰好さが目立っていたけど、今はなんの詰まりもない誰が見ても「慣れてる」と言えるだろう。

 

無意識下でも手が勝手に動く、包丁捌きのスキルがそこまで上達した結果か。

 

そんな環境に一人でいるものだから。色々と考え出してしまうのが彼ーーテンである。

 

 

「ーーーー」

 

 

静かな環境で一人。淡々と流れ作業を行う彼は、外から見れば何も考えずに仕事に打ち込む機械のように見えるが。内側では思考回路が加熱されてフル回転している真っ最中。

 

ハヤトと違い、普段からのほほーんとした態度を一貫するテンは周りから「何考えてるのか分からない不気味なやつ、というか考えてるの?」と思われがちだが、彼は割と考えすぎちゃう人。

 

割り切ることはズバッと割り切るが、そうでないことはずっと引きずる性格。割り切っても割り切れないものはもっと引きずる面倒な性格。そんな彼が今その頭の中で考えていること。

 

 それは、

 

 

 ーーあの時の力はなんだったのだろうか。

 

 

昨日のことだ。魔獣の森にて、魔獣の包囲網を抜け出して崖側へと全力疾走していた時に感じていたこと。自分の体が普段の何十倍にも軽くなるような錯覚を起こし、力が漲っていたような不思議な感覚。

 

その自分の身に起きた不可思議な力の正体を彼は探っていた。探り、見つけ出し、それを自由自在に操れれば今よりも飛躍的に強くなれるかもしれない、と。

 

 

 ーー思い出せ。あの時の感覚を鮮明に。

 

 

全身が熱せられるように燃え上がるような高揚感。まるで、熱が体内を循環しているような歪な感覚。それと同時にのしかかった唐突な疲労感。しかし身体はアクラを使用したハヤトのように動ける。

 

何をどうしたらあのようになって、ハヤトのように動けるのか。

 

彼の場合はアクラという魔法を使用してることを前提とした事だから。それと重ねるとして、似たような魔法を自分も無意識のうちに使っていたことになる。

 

 

 ーーハヤトと類似する魔法。身体能力強化なら陽属性系統のものが妥当。いや、適性が自分にはないからその選択肢はない。

 

 

風呂場で彼と話し合った時には何も分からずじまい。何かしらの方法で身体能力が強化されているとしか仮定付けられなかったことに内心舌打ち。

 

彼ならば有力な何かを掴んでると思った自分も自分だが、彼は本能的な人間。仮に掴めていたとしても言葉にするのも困難なはず。無理やりやらせたら擬音のオンパレード。

 

 

 ーー知識云々ではお手上げ。なら、あの時の記憶をより鮮明に思い出す。きっとそこに答えはある。

 

 

記憶の引き出しを手当たり次第に開ける。正直な話、戦っていた時の記憶はその殆どが曖昧なもの。死に物狂いだったから仕方ないと言えるが、今に限ってはそれが何よりも恨めしい。

 

心に余裕があればもう少しは記憶処理もできて、手当たり次第に記憶の引き出しを開けることもなかったろうに。

 

 

 ーー俺は何をしていた? 何を感じた? 何を見た? 何と戦っていた? 何の武器で戦っていた? 何を考えていた? 

 

 

ひたすらに疑問を投げかける。その時のことを呼び起こすためにピースを一つずつ丁寧にはめていく。自分の身に起こっていた全てを把握するために必要なことを全て思い出す。

 

 

 ーーひとつひとつ、丁寧に整理しよう。

 

 

まず、何をしていた? 魔獣から逃げるために崖に向かって走っていた。ただ生き残るためにひたすら足を回し続けていた。それ以外にない。

 

何を感じた? これはついさっきも考えたことと似通っている部分だ。高揚感、体が軽くなったような錯覚、思い返せば魔獣を蹴りひとつでぶっ飛ばしていたこともあったか。

 

あとは、「ハヤトを守らなくては」という思いがあった気もする。大規模な魔法を使うために集中している彼に爪一本たりとも触れさせないように意地でも守り通す。

 

何を見た? 森、魔獣、ハヤト。この三つの他に検討はつかない。視覚的な条件で発動する魔法だと仮定すると、この三つが揃わなければ自分は強くなれないことになるか。

 

何と戦っていた? 魔獣一択。

 

なんの武器で戦っていた? 刀、魔法、素人もいいところなアマチュア体術。

 

ここまでの情報を簡潔にまとめると。あの高揚感を得た時は、魔獣の群れから必死に逃げている最中、視界に広がるのは森、魔獣、ハヤト。刀と魔法と体術の三つで応戦していた。

 

 

 ーーそういえば、そうだったか。

 

 

ピースの完成に釣られて、曖昧だった記憶が鮮明に思い出されていく。脳裏に過るのは地獄のような映像だ。断片的な画像ではなく、五感に加えて第六感によって得られた情報を詰め込んだ答えを見つけ出すための記憶。

 

森で目を覚まし、魔獣と戦い、大規模な風魔法を使い、大群に囲まれ、崖上に逃げ、最後の最後に力を振り絞って森から抜け出した。

 

思い出された記憶の中で、自分がその状態だった瞬間を探る。高揚感に身を包まれていた時は複数回あったはず。その共通点がおそらく答えだ。

 

 

 ーー崖に走ってる時と、最後の時だったかな。

 

 

見つけ出した瞬間はその二つだった。一つは先程からずっと考えていた場面と。もう一つはもう少しで森から脱出できるかもしれないと発覚した場面。最後の力を振り絞った時だ。

 

なら、その二つの場面の共通点を見つけ出すことに思考を切り替える。記憶は思い出した、次は共通点。

 

しかし共通点と言えど、命懸けで戦っていたことに変わりはないため。共通していない部分などないと言えなくもない。

 

 

 ーーじゃあ、そうでない時との相違点は?

 

 

その二つの場面で不思議な力が発揮されたのなら、それ以外の場面と比べれば少しは絞りやすくなるかどうか。共通することがあまりにも多すぎるからなるべく絞りたい。

 

相違点。同じ戦っている時なのに、力が働いた時と働かない時があるのはなぜなのか。そこになんの違いがあるというのか。

 

 

 ーーそもそも、あの力は何を素としていたのか。

 

 

ふと、そんな疑問が浮上してきたことで意識をそちらに向けた。

 

単純、魔法。その力以外にありえない。物理的に身体能力を強化することは不可能なら、そう考えるのが妥当だろう。

 

異世界召喚された身、もしかしたら土壇場で覚醒したかーー。などの考え方はしない。今更そんな甘い考えに縋っても意味なんてないのだから。

 

ともかく。魔法を素として強化されたことを前提に考えると、考えていたことに説明がつかないことが判明した。

 

 

 ーー同じ魔法を使ってるのに、なんで力が働く時とそうでない時があるのか。

 

 

戦っている時は常に魔法を使用していた。ならば常に強化されてなければおかしい。時と場合によって強化するか否かが決まってくるなど神の悪戯としか思えない。

 

しかし、そうでないのならどうして。なんの違いが自分の体を強化したのか。

 

 

 ーー考え方の違いとか、意識の違い。とか?

 

 

魔法は想像力。ロズワールがそう言っていたことを思い出した。彼の言うことが正しいなら、魔法を使う時の意識の違い、もしくは考え方の違いが影響を及ぼしていると言えるが。

 

考え方一つでそこまで変わるだろうか。結局は同じ魔法を使うことに変わりはなく、そこに辿り着くまでの過程が違うだけで。結果は同じ。

 

でも一応。あの時の自分はどんな風に魔法を使用していたか。よく考えてみる。

 

あの時は確か、全身にマナを循環させてマナの回転を早く。ゲートからマナを取り出して魔法として形にするまでの時間をもっと短くとか考えていた覚えがある。

 

マナの回転率を上げるとか、酷使してきたゲートの力を見せる時だとか。そんなイメージで魔法を使用していた。

 

 

「マナを、全身に循環させる……?」

 

 

考えもしなかったことが一つの答えとしてたった今、明らかになったような。そんな爽快感を得て考えていたことが思わず口に出た。

 

そうだ、そうだった。よくよく考えてみれば共通点はそこだ。魔法を使うためにマナの回転率を上げようとして、全身にマナを循環、漲らせるようなことをしていた。

 

あの時は必死の思いだったから深く考えなかったけど。今になって冷静に考えてみれば、もしかしたらそれが原因となってあのような力が発揮できたのかもしれない。

 

ハヤトのアクラもそうだ。外に働きかけていたマナを体内で循環するような。熱が身体中を一つの流れとして回り続けるような。そんな風にやればと彼に提案していた。

 

 

「言われてみれば確かにそうかも。魔法以外では考えられないし。なら、それで確定…なのか?」

 

 

あり得なくもない仮説が立ったことを区切りに、テンの思考タイムは静かに終わった。色々と情報を整理したせいで頭が痛い、糖分を欲している。

 

が、得られたことは大きい。昨日のことを綺麗に整理することができたし、何より不思議な力の正体のヒント、もしくは答えに辿り着くことができた。

 

どのくらい考えていたのか。そんなことを思うテンはふと、まな板の上を見るとそこには細かすぎてもはや粒状になっている一つの野菜。考えすぎていたせいで一つの野菜を切り刻んでしまった。

 

ここまで細かくするに少なくとも五分はかかる。となれば思考タイムは少なく見積もっても五分間は続いていたということで。

 

 

「…こいつは、サラダにでも混ぜておこう」

 

 

ごめん、野菜。と心の中で謝るテンはそれをサラダに使う野菜が入っているボウルに無言で入れた。

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

場所はロズワール邸最上階、中央の主の部屋である。

 

仕事がひと段落したテンはそこに訪れていた。理由は簡単、部屋の主であるロズワールに考えに考えていたことの答えを教えてもらうためだ。

 

宮廷筆頭魔導師、魔法に関しての超エリートがこの屋敷にはいるのだから。色々と考えるよりも直接聞いたほうが早いだろう。

 

部屋の扉をノック。引き入れてくれたロズワールが「君が部屋の扉を叩く日がくるとはねぇ」と感慨深そうに言っていたのは無視。「聞きたいことがあります」と繋げて一から順を追って説明すれば出てきた答えは、

 

 

「それは、流法かもしれないねーぇ」

 

「りゅうほう?」

 

 

顎に手を当てるロズワールはそう言った。流法とは聞きなれない単語だ。言葉の意味が分からないと首を傾げるテンに彼は人差し指をピンと立て、

 

 

「流法ーーマナを扱う戦闘技法の一つだ。魔法と異なるマナの使い方を模索した技術体系の一種。とでも言った方が分かりやすいかねぇ」

 

「魔法とはまた違うマナの使い方……」

 

 

言われたことは復唱するテンが「なるほど」と小さく呟いて頷く。これで自分の立てた仮説が立証されたことになる。マナを全身に循環させるように、マナを魔法とは違う使い方で活用する方法。

 

自分が無意識にしていたことは偶然にもそれに類似するものがあるらしく。

 

 

「防御、攻撃。ありとあらゆる動作にマナによる力を加えることで一時的に強化することができる。言っちゃえば、ハヤト君ご愛用のアクラと全く同じようなもの」

 

「身体能力の向上ってことか。取り入れたマナを身近な動きに活用する、みたいな」

 

「大凡はそんなところだねぇ。その様子だと大体の検討はついていたのかい?」

 

 

背もたれが軋み、机に手を置くロズワールが興味ありげにまつ毛をピクリと反応させた。普段から何考えてるか分からない彼のことだ、その内側を知れるチャンスだとばかりにロズワールは食いつく。

 

そんな粘着質な視線を前から後ろへと受け流すテンは「まぁ」と手を振って頷き、

 

 

「理解が早いのは否定はしない。ここに来るまでに色々と考えてたから、なんとなくそんな感じなのかなーくらいに思ってただけ」

 

 

のほほーんとした態度のテンが適当に返した言葉にロズワールは「ほぅ」とだけ。その意味深な吐息にどんな感情が含まれてるのかなんて本人にしか分からない。

 

依然として品定めするようなねっとりとした視線は向けられ続けているし、自分のことを真正面から見てないような寒気もする。ロズワールと話していると一回はこのような感覚に陥ってしまう。

 

テンは咳払いでそれを誤魔化すと、

 

 

「それで? 流法について分かることは教えてほしいんだけどさ。なんかある?」

 

「あまり使う人間は少ないからねぇ。当然、このわーぁたしも使うことはない」

 

 

才能に溢れているからねぇ。と自慢するように強調するロズワールをテンは鼻で笑う。そんなこととっくに知っている。ハヤトと違ってあまりその辺の言葉には反応を示すことはなかった。

 

「そうですね」と流したテンは「あれぇ?」と出鼻を挫かれたように笑うロズワールに話を戻した。彼のおふざけに付き合う気など無いのだ。

 

今の彼の言葉を要約するならば、

 

 

「つまり、何も言えないってこと?」

 

「何も。というわけではないとも。少なからず言えることはある」

 

 

もったえぶるロズワールに顰めっ面が浮き出てきたテン。彼の人間らしい反応に満足げに頷いたロズワールは不意に悩むような素振りを見せた。

 

今度はなにかとテンは疑問に思うが、そんな疑問を解消するようにロズワールは口を開いた。

 

 

「流法は、魔法と比較して才能に左右される部分の少ない技術ーーただ、鍛錬の量だけが物をいう分野であり、実戦で使いこなすには血のにじむようなそれが必要だよ」

 

「努力した分だけ力になるってこと?」

 

「うーん、そうとも言えるねぇ。テン君の場合はゲートの質が他よりも整っていることも加味して、努力した分だけ強くなることに直結すると言える。今の君には丁度いいんじゃないかい?」

 

 

実践で使いこなすには血の滲むような努力が必要不可欠だと聞いて心の中でテンはため息。そんな簡単にできることじゃないとは想像していたが、思ったよりも過酷そうな道のり。

 

才能に左右されないからこそ、やった分だけ自分に返ってくる。つまり、やらなければいつまで経っても力はついてこないということ。

 

尤も、ため息をつきつつも頑張ろうとテンはこの瞬間決めていた。折角見つけたハヤトと同じように動ける手段、逃すなど持った得ない。やれることは多い方が良いに決まっている。

 

それに、血の滲むような努力には魔法の習得で慣れた。死にそうになるまで努力することにはもう抵抗なんてない。もちろん、そのせいで怒られてきたが。

 

そういう意味合いでのロズワールの皮肉にテンは「はっ」と笑うと、

 

 

「皮肉ですか、それ。今まで俺が死にそうになるまで鍛錬して怒られたことに対しての」

 

「どう受け取るかはテン君次第。皮肉と受け取るか、褒め言葉と受け取るか。尤も、皮肉と判断した時点で君の中での受け取り方は分かっちゃう」

 

 

嵌められたテン。自分の口から皮肉と言った時点でそれはもう皮肉。自分のことを読み当てられたテンはやりづらそうな表情を浮かべるばかりで。

 

対してロズワールは不敵に口角を釣り上げていた。ただ、もう一人とは違い異質な存在として見ている彼の事を徐々に掌握していくような優越感に浸る。こういう場面ではロズワールの方が何枚も上手だった。

 

 

「…別になんでもいい」

 

「ほーぅ。その言葉で片付けるとはねーぇ」

 

 

少しは感情的に返してくれる事を期待していたロズワールだったが、彼の期待は易々と裏切られた。ハヤトならばこういう時、必ず面白い答えを返してくれるというのに。

 

やはり、彼は他とは少し違う。自身のことを客観視しすぎているような気がロズワールにはしていた。自分に向けられる感情をそこまで真面目に捉えていない。

 

自分などどうでもいい、そもそも興味すらない。さも、赤の他人かのように。

 

先程よりも興味津々といった具合でテンのことを見つめるロズワール。恐ろしいことに彼の視線はテンから一秒たりとも離れていない。ずっと、彼のことを見ている。

 

それを向けられれば寒気が限界を超えてくるテンはロズワールに一礼。背を向けると、

 

 

「聞きたいことは聞けた。後は自分でなんとかしてみるよ。ありがとうございました」

 

 

そう言って足早に退散していく。この空間、というよりもロズワールと二人だけで話している空気の中にあまり長くいれそうにない。ただでさえ、ロズワールは危険人物として常に警戒してるのに。

 

その人と閉鎖的な空間で一対一で話すなど。これが最初で最後だと願うばかりだった。

 

 

「ーー君は一体、何者なんだ」

 

「は?」

 

 

ドアノブに手をかけた時、不意にロズワールの言葉が鼓膜を激しく叩く。藪から棒にかけられた言葉に心臓が大きく跳ね上がり、反射的に声がこぼれた。

 

振り返ってみればそこにはロズワールがいて。いや元からロズワールはそこにいた。けど、ロズワールがロズワールのように見えない。

 

考えていて何を言ってるのか自分自身で分からなくなる。けれど、テンには今のロズワールはロズワールには見えないのだ。理由は分からない。

 

オッドアイが細められ、テンの瞳を一直線に射抜き、態度を急変させたロズワールにテンは何も言えない。

 

言葉の意味を理解するのに思考の停滞を許した彼は言葉が口から失われた。なんの脈絡もない言葉にここまで動揺するのは、自分の中で脈絡のない言葉だと思ってないからだろうか。

 

 

空白の君(・・・・)がいる未来は、どんな景色が広がっているのだろうか。ーー私には、分からない」

 

 

続けられる言葉にテンは動揺を隠すために奥歯を噛み締める。言っていることは理解不能、だけど確実に踏み込んではいけない領域のことを言ってるのは理解できた。

 

語るように話すロズワール。テンのことを見るその瞳の奥に、テンではない何かを見ているような。今までに見たことがない異質なものを見ているような。そんな雰囲気を彼は纏っていた。

 

 

「なにをーー」

 

「もういいよ、下がりなさい。引き止めてしまって悪かったね」

 

 

テンがやっとの思いで絞り出した声に重なるのはロズワールからの退出命令。「下がりなさい」と言われれば使用人であるテンは下がらざるおえない。

 

だから彼はもう一度腰を折り、

 

 

「…失礼しました」

 

 

全ての感傷をそこに捨てて、その言葉を最後に無言で部屋から退出した。

 

 

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 

「ソラノ・テン、か」

 

 

彼が出て行った後、ロズワールは一人でにその名を呟いた。誰もいなくなった空間、自分一人しか存在することを許されない時間。

 

何を思ったか、彼は懐からとある本を取り出すと徐にそれを開く。本の中にはこの世界の言葉で様々な事柄が指し示してあった。それは未来か、或いは運命か。

 

中にはハヤトの名前も書いてある。カンザキ・ハヤト、と。彼の名前が至る所に、あたかもつい最近になって書き足されたかのように決まっていたことが上書きされて。

 

その隣。カンザキ・ハヤトと書かれた隣にそれはあった。否、あったという表現の仕方は少しおかしいかもしれない。

 

 なぜならーー、

 

 

「ソラノ・テンーー空白の存在。君は本当に何者なんだ」

 

 

カンザキ・ハヤト。その名前の隣にいるはず名前。そこだけが空白に染まっていたのだから。

 

 

 

 

 







最後に少しだけ不穏な気配……。ですが、それを回収するのは原作が始まってからなので、今は「なに言ってんだコイツ?」程度に受け取ってください。

流放に関しては、原作において少しだけ触れられています。ですが曖昧な情報しか出てないため、身体能力強化は二次創作に許された妄想による能力ですので正しいかは分かりません。



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