親友とリゼロの世界に飛ばされたお話   作:ノラン

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タイトルが全てを物語ってるシリーズ第二弾。早くも二回目。

書き溜めがあるのでしばらくはのんびり更新のタグが役立たずになりそうです。


双子姉妹と惚けるハヤト、冷静抜け殻のテン

 

 

 

「……ったく、ベアトリスの奴。照れたくせにその反撃としてこれはやりすぎだろ」

 

 

書庫から強制的に追い出されたハヤト。彼は目眩のする頭を軽く振った。あんな風に吹き飛ばされたのなんて初めてだから、瞬間だけ死んだかと思ったが。

 

どうやら手加減はしてくれたらしい。落下地点にクッションでも敷かれてたのか尻から床に着地しても痛くなかった。

 

 

「……えっと、あなたがハヤト?」

 

「お? そうだが何かーー」

 

 

気持ちを落ち着かせるハヤトがため息をつく中、彼の真横から声がかかった。それは、ハヤトも聞いたことのある声で。反応して声の方向を向いてみれば、そこにはエミリアがいた。

 

突然だったため、流石に思考の停滞は許したが今回はすぐに回復。この世界がリゼロの世界だと把握しているから「やっぱりか」と全てを受け入れる。

 

対して、エミリアはというと。微妙な表情をしていた。なぜなのか。その理由を探ろうとして、

 

 

「重い! ハヤト! 退け!」

 

「おぉ!? テンじゃねぇか。会いたかったぜ。つかお前が下敷きになってたのか。悪い悪い」

 

 

まさかの再会を果たした二人。一度目は茂みの中からハヤトが出てきて、二度目は扉の中からハヤトが吹き飛んできた。その再会の仕方が今のところ全部衝撃的なものなのが不思議だ。

 

立ち上がるハヤトは、自分が受けるはずだった衝撃を全て吸収し。見事に下敷きになったテンの手を引っ張り上げる。

 

服についた埃を取るなどの動作をしながらテンはそのままエミリアへと視線を移し、

 

 

「とりあえず紹介するね。エミリア、コイツは話してたカンザキ・ハヤト。ハヤト、この人はエミリアだよ」

 

「紹介に預かった、カンザキ・ハヤトだ。よろしくな、エミリア」

 

「うん。テンに言われちゃったけど、私はエミリア。家名はないわ。よろしくね、ハヤト」

 

 

間に入るテンが二人の名前をお互いに伝え、便乗するように二人も自己紹介し合う。微笑むエミリアにドキッとするハヤトだが、テンに背中を叩かれて意識を舞い戻らされた。

 

テンの場合は、既にエミリアと少し仲良さそうな感じがあったから不思議に思うハヤトだが。そのまま続けてテンは言葉を紡いだ。

 

 

「あのさ、エミリア。俺とハヤトの服、できれば返してほしいんだけど。俺らハヤトが寝てた部屋で待ってるからさ。頼める?」

 

「色々と聞きたいこともあるけど。分かった。レムとラムに伝えてくるから。良い子にして待ってるのよ?」

 

「そんな子どもじゃないんだから」

 

 

軽快に軽口を叩き合い、二人が微笑みあった後。エミリアは背を向けて去って行く。その満足そうな後ろ姿とやりとりに、やはり違和感をハヤトは抱いた。

 

彼がどのくらい前に目覚めていたのかは定かではないが、今の様子からして三十分も経ってないだろう。にも関わらず、距離の詰め方というかなんというか、少しは動揺してもいいはず。

 

自分は状況を理解するまでに三分間は使ったのだから。あんなに馴れ馴れしくエミリアと接せられているテンが不思議でしかたない。

 

 

「さてさて、ハヤト。エミリアも居なくなったからやっとお前と落ち着いて話せるわけだ」

 

 

そんなことを思うハヤトにテンは振り返った。腰に手を当てて「ふぅ」と詰まっていた息を吐き出すと、

 

 

「状況確認といこうか」

 

 

 

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

その後、二人はハヤトが寝ていた部屋に約束どうり入り。そこで、今までの状況確認をしていた。

 

異世界召喚されてからここまで怒涛の連続。

 

森の中に飛ばされたかと思ったら竜に追いかけ回され、目が覚めたと思ったらテンはエミリアと、ハヤトはベアトリスと。それぞれがこの世界が何の世界かを知るきっかけとなる人物と出会った。

 

たったこれだけでも精神的に疲れるものがある。

だから頭の中を今一度整理する必要があるのだ。

 

 だがその前に、

 

 

「テン、まずは言わせてくれ。お前がここに居てくれて良かった。竜を退けられたのもお前のお陰だ。本当にありがとう」

 

「何言ってんの、お互い様でしょ。俺も一緒に異世界召喚されたのがお前で良かったよ。気の合う親友がいれば少しは精神的に楽になる」

 

 

寝台に腰掛けるハヤトと、窓に寄りかかるテンが拳を合わせる。所謂、男だけにしか許されない友情の証のようなものだ。その行為には意味など特にないが、こうすると不思議と頬が釣り上がる。

 

お前が居て本当に良かった。それはハヤトもテンも同じ。異世界という現実とはかけ離れた世界にたった一人、召喚されたならば精神的に押し潰されていたことか。それにお互いが居たから竜を退けられた。

 

こうして話し相手がいる事も理由だ。誰にも信用されない、できない中で唯一心の許せる相手が一人近くにいるのとそうでないのとでは天と地の差が簡単に生まれる。

 

その差は大きすぎる。一人ぼっちでこんな場所に連れてこられたら、なんて考えたくもない。

 

 

「でも、なんで召喚されたのがお前と俺なんだろうね。つーかさ、俺は外に出た時にあの森に飛ばされたんだけど。お前は?」

 

「俺か? 目が覚めたらそこにいたぜ。寝てる最中に勝手に飛ばされたんだろうよ。お陰で素足で走る羽目になったが」

 

「目が覚めたら? おまえ、また昼まで寝てたのかよ。そんなんだから夜遅くまで起きてる羽目になるんだよ?」

 

「バイトが忙しかったんだよ」

 

 

働かされまくったバイトに苦笑するハヤト。その苦労を想像して便乗するテンが苦笑い。「どんまい」と一声かける彼は一息ついて少し考える。本当になんで自分達が異世界召喚されたのか。

 

主人公にありがちな特徴があるわけでもないし、そもそもアニメの世界に連れてこられるなんて意味不明だ。前にも言ったが、もっと実用的な人間はそこら中にいる。

 

 

「……やっぱ、分からん。なんで俺とお前が異世界召喚されたんだろうね」

 

「俺も考えたが、分からん。つか、今は別に考える必要はねぇと思うぜ。そんな事よりももっと大切なことがあるだろ」

 

 

寝台の上で胡座をかくハヤトが首を傾げながら話題の転換。自然と彼の話を聞く体制をとるテンにハヤトは人差し指をピンと立て、言った。

 

 

「俺達が召喚された異世界。それがリゼロの世界だったってことだよ。お前も薄々勘づいてんだろ? エミリアと仲良さげだったしよ」

 

 

同調を求めるようなハヤトの仕草にテンは軽く頷きながら、自分だけではなかったかといった具合で鼻を鳴らす。どうやらハヤトも誰かと邂逅していたらしい。

 

二人ともここの世界がなんの世界なのか把握済み。ならば話は早い。いちいち説明をする必要がなくなった。

 

 

「なんでかなぁ。どうしてよりにもよってリゼロの世界に召喚されるのかなぁ。いずれバケモノと会うかもしれないとか。もっとマシな世界あっただろ」

 

「なんでだよ、良かったじゃねぇか。お前はレム推しなんだろ? なら猛アタックして恋人関係になればいいじゃんか」

 

 

憂鬱そうに天井を見ながら呟くテンだがハヤトは変わらずの能天気。物事を深く考えるテンとは違い、正反対のハヤトは物事を浅く考えるため、難しいことを簡単に言うものだから思わずイラっときてしまう。

 

鼻で笑うことでそれを発散するテンは、視線を天井から清々しいまでの笑みを浮かべるハヤトに移し「アホか」と繋げて、

 

 

「推し=好きってわけじゃないだろ。確かに、そうなれたら嬉しいけど。俺なんかじゃ釣り合うわけないよ。会えただけでも充分満足できる」

 

「男らしくねぇなー。頑張れよ」

 

 

呆れるように首を横に振るハヤト。テンはこういう人間だと改めて再確認した。自己否定、自己否定、自己嫌悪、自己嫌悪。その言葉を何回重ねても彼は足りないほどに自分のことを低く見ている。

 

自分なんか、自分なんかと自信のカケラもない姿はハヤト自身もどうにかしてやりたいと思うのだが、こればかりはどうにもならない。彼自身が変わりたいと思わなければ変わることはないのだ。

 

その気持ちを促進することができる唯一の方法が『誰かを好きになること』なのだが。生憎とテンはこんな性格。好きになったとしても自己完結して勝手に終わる。

 

 ーーかわいいなぁ。で俺は止まるから。

 

前にそんなことをテンは言っていた。どんなに可愛い子を見たとしても好きにはならないのが彼の不思議なところ。コイツ、性欲あるのかよと本気で疑った事もあるくらいだ。

 

 

「まっ。実際に会えば好きになるかもな。そうなればお前の捻くれた性格も少しは改善されるだろうしよ」

 

「冗談でしょ。それに、レムにはもうその相手はいるから。俺が入る隙なんてないよ」

 

 

後頭部に両手を回し、ハヤトの言葉をのらりくらりで避けるテンの情けない発言。まだそんなこと言ってるのかと心底思うハヤトだが、今はどうにもならないかと放置した。

 

本当ならばそのねじ曲がった性格は叩き直してやりたいところだが、また別の機会にでも取っておくことに。その時までに彼の性格もマシになっていると嬉しいと願うハヤトだった。

 

 と、

 

 

「お客様、お客様。レムが薄汚れていた布切れを持ってきましたわ」

「お客様、お客様。ラムが血に濡れていた雑巾を持ってきましたわ」

 

 

噂をすればなんとやら。その双子姉妹が二人の前に現れた。予想していたがいつ来るか不明だったために、突然の訪問となったメイド姉妹に硬直したハヤト。

 

対してテンは、全てが一周回って冷静になってしまったが故に全てを受け入れる『もう、なんでもいいや人間』に心を切り替えていた。いわゆる抜け殻状態である。

 

ノックし、ドアを開き、入室。

 

身長はおおよそ百五十センチ真ん中ぐらい。大きな瞳に桃色の唇、彫の浅い顔立ちは幼さと愛らしさを感じさせる。瓜二つの幼さを纏う容姿は、世の男どもをヒーヒー言わせることか。

 

声からしても間違えのないその二人。

 

 

「どうかさないましたか、お客様?」

「お頭がどうかなさいましたか、お客様?」

 

「うん、なんでもないです。気にしないで」

 

 

キョトンとした顔で首を傾げる双子姉妹。練習でもしたのかと聞きたくなるくらいに息のあった動作に空笑いするテンが硬直したハヤトの頭を軽く叩き、意識を帰還させる。

 

ハッとした様子のハヤト。その二人の姿を見た。見て、思ったことを率直に言ってしまった。

 

 

「…おいおい。メイド服がこれほどまでに破壊力のあるものだったとか、知らなかった。実際に見てると中々だな」

 

 

黒を基調としたエプロンドレスに、頭の上に乗せたホワイトプリム。メイド服としてオーソドックスなクラシックスタイルに身を包む、双子の美少女。

 

これぞ、萌えの極み言えるそれに気持ち悪い笑みをハヤトにしては珍しく浮かべた。流石の彼もテンの冷静抜け殻状態にはなれなかったらしく、心の声が表情と口からダダ漏れだ。

 

それゆえに、双子姉妹からの冷たい視線は逃れられない。

 

「大変ですわ。今、お客様の頭の中で卑猥な辱めを受けています、姉様が」

「大変だわ。今、お客様の頭の中で恥辱の限りを受けているのよ。レムが」

 

「待て待て、そんな事はねぇぞ。ただちょっと心の声が声に出てしまっただけで何もそんな事思っていたわけではなくてだな」

 

 

必死に弁解するハヤト。しかし、双子姉妹にそんな言葉が届くはずもなく。

 

 

「姉様姉様、お客様ったら初めて見る女性のことをいやらしい目で見てくる困った方でしたわ」

「レムレム、お客様ったら自覚できないくらいに性欲を抑えきれないド変態だった」

 

「だー! 違うって言ってんだろ!? これじゃ俺が完全に悪役じゃねぇか!?」

 

 

手を取り合って部屋の隅に逃げる双子姉妹。ベッドから飛び出し、生まれた誤解をどうにかこうにか解こうとするハヤト。

 

その混沌とした光景に、テンは置いてけぼりだ。相変わらずのハヤトの環境適応能力の高さには舌を巻くばかり。出会って数秒で、もうあの二人と自然に話せてるなど。なんて恐ろしい親友か。

 

前の世界、ハヤトはテンよりも遥かに異性との関係が多かったようだし。彼女関係もあるとかないとか。テンとはかけ離れた、谷を挟んだ一つ向こうの存在だ。

 

そのスキルがここでも活かされているのかと思うと、自分の情けなさに泣きたくなってくるテンである。

 

 

「お客様、お客様。先程から心ここに在らずですがどうかなさいましたか?」

「お客様、お客様。先程から魂が抜けたような腑抜けた顔を無様に晒していますがどうかなさいましたか?」

 

「その大半はお前ら三人のせいだよ。一人取り残された俺の身にもなってみやがれ」

 

 

そんなことを考えていたら、双子姉妹が手の届く距離まで詰めていていた。思わず、声がつっかえるのを我慢したテン。彼はその後ろの方でニヤニヤしているハヤトに目を細める。

 

テンは怒らせたら怖い。そのことを知っているハヤトは彼から視線を外し、自分は関係ないアピールの体制。そんな彼にため息一つでテンは気持ちを切り替えると、

 

 

「取り敢えず、服。返してくれない? あと、今の時刻を教えてくれるかな」

 

 

「お客様の御洋服はレムが、あちらの変態さん(お客様)の御洋服は姉様が。そして、今は陽日の七時ですのよ、お客様」

 

「ご丁寧にどうもね。あと、ハヤトに対する意識の変え方、ごまかし切れてないからね」

 

 

レムから服を受け取るテンが後方で行われているハヤトとラムのやりとりを横目に彼女にお礼の言葉をかけ、レムもお辞儀で対応。

 

その礼儀正しさに自分の態度が恥ずかしくなってくる。原作とアニメでだいたい知っているが画面の中で見るのと実際に見るのでは感じ方が違いすぎた。

 

それに、この状況にちゃんと話せている自分がすごいと思う。一周回った自分は最強なのかとテンは錯覚した。

 

 

「だーかーらー! 俺はそんな変態じゃねえっての!? 何度言ったら伝わるのかな!?」

 

「お戯れはよしてください、お客様」

 

 

鼓膜を刺激するハヤトの声に、煩がるように顔を顰めるテンはそうして考えていたことを一度シャットアウト。ハヤトの服を掴むとグッと引き寄せ、

 

 

「ほら、ハヤトもそこまで勢いに乗らないでね。そろそろ煩いから怒るよ?」

 

「納得いかねぇ」

 

 

二人と話してテンションが上がったのか知らないがうるさいハヤトを鎮めるテン。

 

彼は衣服を持って目配せすると、着替えの意図を察した二人がいそいそと部屋を出ていく。ラムが先に出て、その次にレムの姿が扉の向こうに消える寸前。彼女が振り返り、

 

 

「お食事のご用意ができましたら、お声をおかけしますので。ここにいて下さい」

 

 

ぱたん。とそれだけ言い残して扉を閉めた。

 

部屋の中に残され、とりあえず服を着替える二人。患者衣を適当に脱いで、適当に畳んで、適当な場所に置いて、着替え完了。

 

そうしてあらかた着替えを済ませた二人はこの部屋で待ってろと言われたから。特にする事もなく適当に話していることにした。

 

 

「……お前、それ完全にパジャマだろ」

 

「あ? 仕方ねぇだろ。寝てたんだから」

 

 

窓を開け、窓枠に座るテンがハヤトの服装を上から下まで見て苦笑い。上は無地の半袖Tシャツに、下はジャージという靴すら履いてない彼の服装は完全に寝巻きのそれ以外になかった。

 

聞けば、ハヤトは寝ている時にこの世界に召喚されたんだとか。ベッドで寝ていたはずが、次に起きたら土の冷たい感触と草の匂い。視界に広がる森。相当混乱したらしい。

 

その点で比べればテンはまだ良かったと言える。私服に着替えて、運動しようとしていたところに召喚されたのだから。少なくとも動ける格好だ。

 

 

「お前は……。華のない服装だな」

 

「見苦しいぞ。私服に華もたせてどうすんだ」

 

 

自分の服装にとやかく言われた仕返しとして、テンの服装に難癖をつけようと顔を顰めるハヤトが絞り出した仕返しに、テンが鼻で笑う。

 

テンの服装は至って普通。紺色のポロシャツにデニムパンツ。黒の靴下とスニーカーを履けばその辺にいそうな人間の完成。世間一般の私服の範囲に収まる服装。

 

 

「ポロシャツって。もっと他になかったのか?」

 

「いいじゃん、動きやすいんだから。ジャージで外出るよりはマシだと思う。バイトの時にもよく使ってるし」

 

 

二人の年齢は同じく十八歳。現役の大学生であるおしゃれにも気を使う年齢。私服にもワンポイントやらピアスやら何やらを個性として飾る人が多い中。テンの私服にはその欠片もない。

 

普通of the普通。飾りっ気のない見ていてつまらない格好だった。

 

二人して私服の感想を交換したところで、テンはハヤトの足元に視線をやり、

 

 

「靴はここの人に貸してもらえよ?」

 

「そうするしかねぇな」

 

 

生憎様、寝ている時に召喚されたハヤトは靴も靴下も履いてない素足状態。見たところ、屋敷の中でも靴は履いている海外スタイルだから素足の方が逆に違和感がある。

 

尤も、貸し出してくれるとも思えないけれど。

 

 

「てか、なにお前ナチュラルに窓枠に座ってんだよ。自然すぎて流してたわ。見てて怖いからやめておけよ」

 

「そう? 別に気にすることじゃないでしょ」

 

 

話している最中、ふとした瞬間に気づくハヤトが困るように息を溢す。正面、自然な流れで窓枠に座るテンの姿に彼は気が気でない。そのままゆっくりと身体を後ろに倒すものだから本当に怖い。

 

その危なげな動作に「気をつけろよな?」と一声かけるハヤトに「へーきへーき」と余裕そうな声を出しながら再度、身を乗り出す。

 

 

「わわ、高校の四階よりも高い。楽しい」

「お前マジで頭イカれてんな」

 

 

二人は同じ高校が故、テンが最上階の窓から身を乗り出すのもクラスで何度も見かけている。本人曰く「暑いから」だそうだが、限度というものがあるのを彼は知らないようで。

 

それをさも絶叫アトラクション感覚で日常的にやるのも恐ろしいところ。命綱があるなら少しは頷けるが、それも無し。体勢を後ろに倒し、転落すれば命はまず助からない。

 

もっと恐いのは、窓の外側。つまり部屋の外に足を出して座ることが偶にある。本人は楽しそうにしているが見ている側が落ち着かない。なぜ、怖くないのかと聞けば。「怖くないからだよ」と意味不明な回答が返ってくる始末。

 

そのようなものは怖いのを楽しむ人が殆どだが。彼は希少種。本気で怖がっていない。先生が声を裏返して止めていた記憶がハヤトにはあった。

 

 

「マジで、気をつけろよ?」

「分かってるよ。気をつけます」

 

 

念のため、テンの隣に寄りかかるハヤト。もし落ちそうになったら引き摺り下ろす。そんな呆気なく死なれるわけにはいかない。

 

過度な心配をされたテン。そんなに心配しなくてもいいのにとは口には出さず、親の心子知らず的な捉え方を勝手に頭の中でしていた。

 

 

「ハヤト。これからの事なんだけどーー」

 

「お客様。お食事のご用意ができましたのでご案内を」

 

「おっし。テン、行こうぜー」

 

 

テンがハヤトにこれから先のことについて話を切り出した時だ。扉が開き、レムからの呼び出しに彼はタイミングが悪いと言わんばかりに顔を顰める。

 

ハヤトもワクワク気味について行ってしまうものだから、テンもついて行くしかなかった。本当は食卓に着く前に話し合っておきたかったのだが。

 

まぁ仕方ない。彼はそう思いハヤトの背中を追いかけた。

 





終わり方が下手くそだったかも。お話の切り方にいつも困るんですよね。

お気に入りにしてくださっている方が……? まだ発展途上の小説を読んでくださって本当にありがとうございます。私の小説が暇つぶしになれてたら嬉しいです。

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