親友とリゼロの世界に飛ばされたお話   作:ノラン

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必要か必要ないかで考えたら必要ないお話。そんなこと言われてしまったらこの物語自体要らないようなものですけどね。とっとと原作入れやボケって、書きながら思ってます。





この人、ど偉い人だ!

 

 

 

カチャカチャと鉄が擦れる音を立てながら身を鎧に包んだ四人の人達がレムの後から続く。腰の鞘に差しているのは下半身程の剣ーー兵士の剣的な扱いのものだろう。

 

それだけの情報でもあの人達が王都の兵士だということは分かる。ここに来る途中、見回りをしているそれも見たテン達からすれば頭で考えるまでもない。感覚的に分かった。

 

詰所から出て数秒もしないうちに自分達の待つ竜車へと帰ってきたレムにテンは手を軽く振ると、

 

 

「おかえり、レム」

 

「ただいま戻りました、テン君。お待たせして申し訳ありません」

 

 

丁寧に頭を下げるレム。テン達からすればわちゃわちゃしていたため時間的なストレスは皆無だが。レム的には待たせた判定になっていたのか、彼女は声の調子を少し落としていた。

 

そんな自分に厳しめなレムに「へーきだよ」と声をかけるテンは視線を彼女からその後方、兵士と思わしき人達に向ける。視線を受けた人達は姿勢を正し、一人の人物が一歩前に踏み出ると、

 

 

「我々は王都ルグニカの王国兵士だ。そこの少女から事情は聞いている。とんだ災難だったようだが、無事で何より…。無事、とは言い難いか?」

 

 

鎧の内側から聞こえてきたのは女性の声だった。むさ苦しい面子しかいないと勝手に想像していたが、張りのある声のそれは女性の声帯から発せられる音。

 

声を聞いたハヤトのまつ毛が予想外とばかりにピクリと反応し、表には出さなかったものの内心では驚いているテンの二人。初めて話す兵士が女性だとは意外なものだった。

 

 

「コレ見たら無事とは言えませんよね。まぁでも生きてるだけマシだと思ってますので、あまり触れない方向でお願いします」

 

「そうか…。君がいいなら構わないが」

 

 

痛ましげに声を下げる女性がテンの右腕の骨折(相棒の余波)を見て首を傾げる動作。顔も鎧で隠れているからどこを見ているかも怪しいが、取り敢えずテンはハヤトが「ギクっ」となってるのを横目に苦笑いで返した。

 

それをどう受け取ったか、女性は盗賊が転がっている竜車ーーその客車を指差すと「早速で申し訳ないが」と言葉を繋げて、

 

 

「君達が拘束した盗賊団を確認したい。中を見せてもらってもいいだろうか?」

 

「だってさ。どうなの、ラム」

 

「えぇ、構わないわ」

 

 

長話するつもりもないらしいのか本題を切り出した女性に気持ちを切り替えるテンは首をラムへと回して問いかける。

 

断る理由もない。一つ返事で許可を出したラムは地面にいるハヤトを見下すように見ると、

 

 

「出番よ、脳筋。全て運び出しなさい」

「俺かよ。面倒くせぇな。やるけど」

 

 

自分は決して御者台から動こうとしないラムからの指示に怠そうに肩を回したハヤト。そこは全員で運び出すのかと思ったが自分一人にその役割が押しつけられた。

 

テンもーーとは思うが。生憎と、片腕が折れた人間が客車の扉からガタイのいい男を運び出すのはきっと難しい。だから彼はブツブツ言いながらも客車の扉を開けて中へ。

 

しばらくして運び出される、というよりも投げ出されるのは白目を向いている盗賊団。手足を凍らされた無造作に硬い地面に転がるそれが一人、二人、三人と扉の手前に増えていく。

 

 

「たった二人で、この人数を?」

「そんなバカな。やはり信じられん」

「あの巨大な剣を背負っていた男ならば。いや、しかしもう一人の男が……」

 

 

びっくり箱のように中から放り投げ出され続ける盗賊団の数を見て、困惑の声を上げている兵士の人達。しかし、女性の兵士だけは腕を組んで男の山が完成していく光景を黙って見ている。

 

レムとラムは戦力外と思われているのか、中には「たった二人で」と言う者もいた。二人で倒した事実は間違ってはいないが、男二人よりも強い女二人が戦力外なわけがない。

 

寧ろ、レム一人で簡単に片付くのを敢えて選択肢から除外した結果だ。

 

ハヤトが見た目から強そうだと思われるのは初対面の人間でも同じなようで、反対に自分が舐められているような発言があったのをテンは耳に留めた。気にする心はない、軽く聞き流す。

 

そうこうしているうちにも、ハヤトは次々と盗賊を外へと放り投げていき。最後、ハヤトの手で完膚なきまでに叩きのめしたリーダーと思わしき大柄な男を外に出した時、兵士達に明らかな動揺が走った。

 

女性も例外ではない。驚きの声を鎧の内側で反響させた彼女は途端に頭に装備していた兜を外し、広くなった視界で光景を捉えはじめた。

 

 

「……これは驚いた」

 

「なんかあったんですか?」

 

 

口元が緩んで溢れた言葉にテンが反応すれば、口角を釣り上げた女性は「何かも何もない」と楽しそうに腕を組んで、

 

 

「あの大柄な男、名はグレム・ラッカート。最近王都を中心に被害を拡大しつつある厄介な男でね。我々も数週間前に捜索隊を王都中に派遣したんだが」

 

「簡単には見つからなかったと」

 

「姿を眩ませるのが得意なようでね。その被害も窃盗や暴行、更には女性への強姦、殺人ときた。被害者の声を聞く度、流石の私も腹が立って仕方なかったんだ」

 

「なるほど。それは大変でしたね」

 

 

地面に転がるグレムを睨みながら淡々と語る女性だが、瞳の奥に宿る真っ赤な感情をテンは察した。「やっと見つけた」とでも声が聞こえてきそうな勢いで炎が燃えている。

 

ハヤトに近しい感覚。彼女も正義感が強いのだろう、女性ということもあって被害に遭われた女性の声も直接聞いていたはずだ。なら尚更、大柄な男改めグレムに向ける鋭い感情は勢いを増して。

 

王都の兵士は皆んなこんな人達なのだろうか、と思うテン。彼の隣に一仕事終えたハヤトが立ち並び「これで全部だぜ」と誇るように胸を張ると、

 

 

「数は全部で十二人、俺とテンが片っ端から返り討ちにしてやったから。あとは兵士のお前達がなんとかしてくれ」

 

「ありがとう、そうさせてもらうよ」

 

 

「中に運べ」と女性が後ろの三人に声を出せば、「了解しました!」と返事して、二人で一人を運んでいく一人が余る運び方で丁寧に一人一人中へと運び入れていく。

 

外から見ても効率の良い運び方ではないと分かるそれに「脳筋、テンテン」とラムは相変わらず御者台の上から二人を見下ろしながら声をかけ、

 

 

「中に運びなさい」

 

「えぇ、俺も!? 骨折れてるんだけど」

「断るぞ。運び出すので疲れたんだ」

 

「関わったんだから、最後まで付き合いなさい。それが道理というものよ」

 

「巻き込まれた、の方が正しい気が……」

 

 

上から指示ばかり出す横暴なお嬢様には、ため息しか出てこないテンとハヤト。しかし、なんだかんだ従ってしまうのが二人。甘い男達である。

 

別に対した苦労でもないと、「はぁーい」と声を揃える二人は渋々といった形で盗賊の山から、ハヤトは両肩に担ぐように二人を、テンは足を持って引きずるように一人を運び始める。

 

対称的すぎる運び方に思わず「ふっ」と息をこぼす女性はラムへと視線を向けると、

 

 

「良い部下を持ったな。私にも分けて欲しいものだよ」

 

「過分な評価ですね。あの二人はまだ半人前にも至らない下っ端なので」

 

「「部下って部分は否定しろよ!」」

 

 

一往復済ませた二人がちょうど真横を通りかかった時の会話だったために横から言葉を挟まれたラム。苦笑いする女性に対しては言葉を発さず、彼女は心の中で「ハッ」と二人を笑い流した。

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

数分後の話。淡々と作業をする兵士三人と男二人の力があれば十二人程度など簡単に運び終わらせることができた。

 

途中、力尽きたテンが「レムぅ、手伝ってぇ」と情けなく助けを求めれば「お任せください!」と嬉しそうに返事したレムが、彼の引きずる一人を腕の力だけで持ち上げて運ぶなどのこともあったが。

 

ともかく作業は終了。そして現在、初めのように女性とその後ろに並ぶ三人とテン達は向き合っていた。

 

 

「改めて、私はテルマ・ティールス。王国兵士の副兵士長を務めている者だ。盗賊団確保への協力、兵士長に代わり、王国兵士を代表して感謝する」

 

 

自己紹介と感謝の意、クールビューティーな雰囲気を纏うボーイッシュな金髪の女性はそう言って手を差し出したが。

 

お相手が王国兵士の、それも副兵士長だと知って明らかに驚いているテンとハヤトはそれどころではなかった。

 

指示を出すあたり、そこそこの位はあるのかと予想していたテンだったが。まさかの上から二番目に偉い人。

 

この広大な王都を守る兵士を束ねる王国兵士の副兵長、どれだけ位が高いかなど考えるまでもない。まさかの、ど偉い人だ。

 

 

「……あ。ほら、ハヤト」

 

「あ? おう。丁寧にありがとうな」

 

 

予想外なことに気を取られていたテンがハヤトの肩を軽く叩き、促されるようにハヤトは手を差し出して握手。動揺を見せながらも彼は胸を張って笑みを浮かべながら握られた手を握り返した。

 

目の前の挨拶を見ながらテンは、こういう場面はやはりハヤトは役に立つと内心思う。絵面的に彼の方が合っている感があり、どちらかと言えばハヤトの方が人前に立っていて違和感がない。

 

が、女性改めテルマはハヤトとの握手を終えると今度はテンへと手を向け、

 

 

「君にも、感謝するよ」

 

「あぁ…。どうも」

 

 

向けられた手を握るテンは数回頭を下げる。胸を張りながらのハヤトとはいつも通りの真逆な対応に、後ろで見ていたレムとラムが口元に手を添えて小さく笑う気配を感じながらテンは手を離した。

 

テンとハヤトとのやり取りを終えたテルマは顎に手を当て「にしても」と興味深そうに目を細めて二人のことをまじまじと見つめた。

 

 

「あの人数をたった二人で、か」

 

「なんだ、疑ってんのか?」

 

 

自分達の初陣、初勝利を疑いの眼差しで問うテルマにハヤトが噛み付く。不意にテルマは後ろに構える三人の兵士に「下がれ」と指示を出せば一つ返事で彼らは詰所へと帰っていった。

 

それが何を意味するのか。声の後ろから若干の威圧が顔を覗かせたハヤトは睨むような目つきで彼女のことを見るが、それを抑えるように「当然でしょうに」とテンが横から声を挟んだ。

 

 

「単純に考えても、十二に対して二で勝つなんて信じてもらえると思う? 相手が兵士さんを困らせてる連中なら尚更。俺たちみたいなのが「倒しましたー」って言っても小馬鹿にされるだけだよ」

 

「だが、実際に倒したろ。お前は手下を、俺はグレムとかいう親玉を。アイツらの身体に刻まれた傷跡が動かぬ証拠だ」

 

「そりゃそうだけどさ。考えてみてよ、実力がここの人達に認められてるならその印象が前に出て信用されるかもだけど、俺達みたいなその辺にいそうな男二人が倒したって言ったらお前は信じるの? ガタイの良い集団十二人を倒したって」

 

「確かにお前の言う通りだと思うさ。けど、俺たちは倒した。その事実だけは絶対に曲げるわけにはいかねぇよ」

 

 

自分の実力に自信のあるハヤトと自信のないテンの意見衝突。口喧嘩に発展していないのは互いの意見を尊重した上で自身の意見をぶつけているからだろう。

 

基本的にハヤトは誰かに影響を受けて事実を偽る人間ではない。相手が信じなくとも事実なのだから胸を張って言い張り続け、信じさせる。

 

それとは反対に、テンは信じてもらえないならそれでも良いと思う人間。別に気にしなければ良いだけの話だと彼は軽く受け流す。

 

信じさせると、信じなくてもいいの二つの対立。普段から真反対な二人の性格が色濃く浮き出たそれ。

 

 

「口を挟む様で申し訳ないが」

 

 

と、不意にテルマが横から二人の間に言葉を挟んだ。通り抜けた言葉に視線を向ける二人に彼女は言葉を続け、

 

 

「疑いをかけた私が言うのも筋違いかもしれないが。君達二人を"その辺にいる男"という枠組みに入れるのは少し違うと思うぞ」

 

「……と、言うと?」

 

 

二本指で二人のことを別々に指差すテルマは首を傾けている男達に「ふっ」と笑い、

 

 

「まず、一般人が武器を装備するか?」

 

「護身用とか」

 

「とても護身用には見えないな」

 

 

腰に差した刀の鞘と背中に背負う大剣の鞘を見ればそれが護身用ではないことは誰が見ても分かる。明らかに戦闘に使用するための刃渡だ。

 

 

「次に、そっちの男は外から見ても屈強なことは判断できる。君の方は外からでは判断しかねるが」

 

「テンも強ぇからな。コイツは外からだと実力が判断しにくい奴なんだ」

 

「知っている。だから、"外からでは"と言ったんだ」

 

 

喧嘩を売ったらまず返り討ちに合いそうな見た目なのがハヤト。テンが彼の隣にいると、彼の体型もあってか少し弱く見える。が、テルマは彼が弱い者ではないことくらい見抜いていた。

 

 

「最後。私はこれでも副兵士長だ、数々の兵士を見てきた産物か、人を見る目には自信があってね。慧眼とまでいかなくとも感覚で個の力量は見極められる」

 

「じゃあ、なんで俺達のことを疑うんだよ。お前なら俺達のこと見れば分かるだろ」

 

「お前って…。見れば分かるって…」

 

 

自信満々なハヤトの言葉に小さく呟くテンはそれよりも小さなため息を溢した。実力に自信しかないハヤトの発言は色々とおかしいとしかテンには思えず。

 

しかし、流石の副兵士長。やはりこのパターンの人間は人を見る目には自信があるらしい。ありがちな特徴を持ちながらもその特徴を遺憾なく発揮する彼女は噛み付くハヤトに息をこぼすと、

 

 

「立場上、名も知らぬ男達の話をそう簡単に信じる態度を見せるわけにもいかないだろう。後ろに部下が控えていれば尚更ね」

 

「どういうことだ?」

 

「だからさっきあの人達を下がらせたのか」

 

 

イマイチ言葉の意味を理解し切れないハヤトと納得のいったように頷くテン。

 

頭の上に浮かべた疑問符が増えていく感覚にハヤトは首をかしげるばかりだが、そんな彼を置いてテンとテルマの話を進んでいく。

 

 

「つまり、元から信じてたってこと?」

 

「あの男達のやられ様を見た時点で君達の言葉は信じていたよ。それに、そこの少女…レム女史から詳細は既に聞いている。それはもう、事細かく説明してくれたよ」

 

「レムが?」

 

 

そう言って首を後ろに向ければ自分の真後ろにレムが立っていたことにテンは気付く。気配を消していたのか、自分が気づけていなかったのか。肩を軽く跳ねさせて驚くテンに「はい」とレムは頷くと、

 

 

「貴族街への通行許可申請を済ませるときに一緒に伝えましたので、ご安心ください。テン君とハヤト君の疑いはレムが晴らしておきました」

 

「グレムはそこの君が。手下は君が打倒したと。我々が疑う度にそれら全てを論破されてしまってね。それでも部下達は認め切れていなかったが」

 

 

苦笑いするテルマとテンに胸を張るレム。目が明後日の方向を向いているテルマを見ると、レムが一体どんな論破の仕方をしたのかと気になるところ。

 

もしかして、遅れた理由はそれなのかと思うテンだが。もしそうなら逆に帰ってくるのが早すぎると思う。僅か数分で通行許可申請を申し出て、ついでに盗賊の一件及び疑い晴らしを済ませたと。

 

 

「レム。お前、完璧すぎないか」

 

「えっ。そんな、完璧だなんて。レムはただ」

 

「冗談抜きで。物事が円滑に進んでたのはレムが裏で頑張ってくれてたからなのかな。ありがとう」

 

 

メイドーーというか人として完璧すぎるレムの対応の早さに素直に感謝したテンが身体の向きを変えて笑いかけると、レムは頬を赤らめる。今度は彼女がクルリと後ろを向き、テンの視線から逃れた。

 

お礼を言っただけで目を逸らされたテンは不思議そうにレムの名前を呼んでいたが、

 

 

「じゃあなんだ。お前は俺たちのことを信じてくれてるのか?」

 

「そう言ってるだろう。あの男達の意識が覚めたら時期に取り調べが始まる。君達の功績が明るみになるのも時間の問題だと思うよ」

 

 

背中で交わされるやりとりに耳を傾ければハヤトとテルマが話していた。が、それよりもレムに振り返ったことで御者台の上で「早くしなさい」とでも言ってきそうなラムとテンは目が合う。

 

待つのも待たされるのも嫌い、しかし待たすのは嫌いではないラムはこの状況が嫌らしい。目は口ほどに物を言うとはまさにこのことか、親指で客車を指差せば「早くしなさい」の意思表示は確定した。

 

ハヤトの声から圧が無くなった感覚に内心ホッとするテンは、ラムからの無言の指示を受け取るとクルリと回れ右。テルマの向き合う彼は手を軽く叩いて意識を自分に集めると、

 

 

「じゃあ、そろそろ良いですかね? まだ済ませなきゃいけない用事が残ってるので」

 

「そうだったな。長話してしまってすまなかった」

 

「いえ。お気になさらず」

 

 

テンが話の流れを一刀両断、はっとする様子のハヤトもここに来た目的が頭から抜けていたらしい。今回の目的地は近衛騎士団の詰所、衛兵の詰所はあくまで通過点だ。

 

場の空気を切り替えたテン。彼は「それじゃ」とハヤトの肩を叩くと早々に会話を切り上げる気配を漂わせるが、それを察したテルマが「待ってくれ」と二人を呼び止めると、

 

 

「最後に一つ、君達の名を教えてほしい。深い意味はない、単に私が聞きたいんだ」

 

 

姿勢を正し、真っ直ぐな声でテルマ・ティールスが名前を聞いてきた。「どうする?」と言いたげにテンが顔をハヤトに向ければ「そりゃもちろん」と頷くハヤトは自身の胸に拳を当て、

 

 

「カンザキ・ハヤト。それが俺の名だ」

 

「ロズワール・L・メイザース辺境伯が使用人、ソラノ・テンと申します。隣の男も同様です」

 

 

ハヤトに続いて礼儀正しくお辞儀で名を名乗ったのはテン。密かに練習しておいた定型分をその前半に持ってきた彼は使用人としての身分を明かした。

 

二人の名と身分を聞いたテルマが「使用人にしては物騒な物を携えているな」と言葉を投げかけるが、テンは適当に笑い。ハヤトは「まぁ、そのうち違和感もなくなるよ」と言葉を返し。

 

両者の反応を受け取ったテルマは「ふっ」と頬に笑みを浮かべると、

 

 

「カンザキ・ハヤト。ソラノ・テン。その名は覚えておくとするよ」

 

「ヤベェよ、ハヤト。まだ会ってから数分も経ってないのに副兵士長に名前を覚えられたぞ、俺達」

 

「別に良いじゃねぇの。また盗賊に襲われたら届けに来るから、そん時はよろしくな」

 

「それ以前に、襲われることがないように願ってる」

 

 

王都の兵士、それも副兵士長に名前を覚えられることがどれだけのことか。イマイチ実感は湧いてこない二人だが、王都で一番初めに関係を築いたのがその人だという事に関してはきっと意味があるはず。

 

ハヤトの盗賊に襲われることを前提とした話の進め方に苦笑いする彼女は「さて」と言葉を続け、

 

 

「それでは、私も仕事に戻る。君達も自身の役目を全うするように」

 

「はい。ありがとうございました」

「おう。またな」

 

 

頭に兜を被るテルマはそうして身体の向きを変えると詰所へと帰っていく。まさか、あの兜の下にあんなクールビューティーが隠れているとは誰も想像できないだろう。

 

歩く後ろ姿すらもどこか威厳のあるものだった。ただ歩いているだけで彼らにそう思わせるとは、どこぞの変態魔導師とは大違いだ。

 

 

「……さて。俺らもいくよ」

「ういー」

 

 

後方でレムが御者台に乗ったのを確認したテンがラムの目配せに軽く頷いて竜車へと足を進め、追いかけるハヤトが小走りで後を追いかける。

 

こんな場所で思わぬ人と関係を築くことになるとは思わなかった二人だが、これもまた偶然の巡り合わせ。

 

巡り合う機会を不本意にも与えてくれた盗賊には軽く感謝することにして、彼らは客車の屋根に飛び乗るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、いつまで屋根に座ってるつもり?」

 

「ずっと」

 

「流れで飛び乗ったけど、今はその必要もないか。降りるぞ」

 

「ずっと乗ってる」

 

「いいから。おら、降りるぞ」

 

 

 






しれっと登場した副団長、テルマ・ティールス。この人は二次創作特有のオリキャラというやつです。原作には登場しません。五秒で思いつきました。

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