我ら琴葉三兄妹。今日も今日とて、この荒涼とした世界を歩き往く。

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タイトルの読み方は「ことのはきょうだいおろかもの」

設定もまだ未完成の思案中の新作の外伝みたいな作品。まぁ肩の力を抜いて読んで頂ければ。

また非公式の琴葉姉妹の兄なるものが登場します。それが大丈夫な方以外はブラバ推奨でございます。


琴葉兄妹愚者

 くそくだらねぇ毎日にもささやかなスパイスがあるだけで人生はより複雑で面白いものになる。

 

 特にこの俺琴葉翡翠は強く感じている。二人の愚妹とこの荒涼とした世界を歩く毎日はとても幸福で楽しいってもんさ。

 

「兄ちゃん、まだ起きとったんか」

 

 声のするほうに振り返って見れば愛しき愚妹の赤いほうがそこに目を擦りながらたっていた。

 

「どうしたんだよ茜ちゃん。こんな時間に起きて」

 

 時計をみてみればもう3時かというところ。夢中で日記をつけていたらとんでもない夜更けである。明日は朝一で出かける用事があるというのに全くもってうっかりしていたものである。

 

「うちはもう寝るけど、兄ちゃんもはよねぇやぁ」

 

 そんなことを言って赤い方はとっとと寝床に帰っていった。

 

 そんなわけでおれはどうしたものかと考える。こんな時間である。寝なければ体はもたないが、かと言って今寝てしまえば明日起きられる気がしない。

 

 幸か不幸か明日は電車での移動である。仕様がないから今宵はこのまま明日の準備をしておいたほうがいいだろう。

 

 そう考えたおれはさっそく紅茶を沸かし長い夜を楽しむ準備を始めた。

 

 ただ基本的にこういうことは一人でやっていては大抵飽きるものだ。だから諸々の準備が終わり、静かに読書をし始めて十分ほどだろうか。ふと気がむき、妹たちの寝顔でも拝んでやろうと二人の寝顔を眺めているうちに寝落ちてしまい二人に叩き起こされるというだせぇ朝をむかえたうえに、終始ウトウトしていたせいで電車を一本逃しそうになるという失態を犯す羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 人生というものはどんなにくそくだらねぇものでも一人ではないということはとても重要だと思う。それがただ二人の兄と姉とくれば尚更だろう。

 

 その日私たちは、滞在している街の電車を利用することにしていた。

 

 のだが

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

「あぁ、大丈夫だ、問題ない」

 

 そんなことを言ってはいるが足元はおぼついてない。姉から聞いた話によればこの愚兄は昨晩は深夜三時まで起きていたらしい。どうせこの兄貴のことである。今更寝るのも面倒とかなんとか言ってそのまま起きていたに違いない。

 

 そのうえ今日目が覚めた時には目の前にこの男の寝顔が飛び込んで来たのだからびっくり仰天とでも言ってやろうか。このビックブラザーは何を考えているのかいまいち読めなくて叶わない。

 

「もう、そんな足取りで大丈夫なわけないやろ。ほら肩貸し」

 

 ビックシスターはそういうと兄の体を支えた。ほぼタッチの差か。ちょっとだけ私の決断が遅かったか。

 

 実際あの兄貴からは女の子みたいないい匂いが無性にしてくる。故に合法的に兄吸いを敢行するのであればこういうタイミングしかないのだが、姉は私のそんな変態じみた趣味を知ってか知らずか私が兄に触れないようにしてくる。

 

 とはいえその程度のことで腹をたてる私ではない。だがしかし、姉は姉で妹吸いしてくるのであるのだから私の兄吸いを咎めてくるのはいささか不公平ではないかと異議申し立てをしたいくらいだ。

 

 なんて仕様もないことを考えていたら列車が到着したらしい。

 

 わたしは兄を吸うという目的が達せなかったことのみを心残りとし、まァ今後だってそんな機会くらいはあるだろと思って二人について電車に乗ることにした。

 

 そして席について数分でこの愚兄はまた眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人生において唯一無二のパートナーを探すのは確かに筋の通った行いであろう。しかし、さりとてウチにとってはこのくそ兄貴とくそ妹以外のやつと一緒におるなんてことを考えることはできへんのやろう。

 

 

 見立てでは駅からは三十分はかかるかというところのホテルを借りていたわけでウトウト兄貴のせいで三十分前にホテルをでるなんてことになったわけやったけども、焦ったおかげか電車のくる十分前に来ることができたのはもはや僥倖と言うべきか否か。

 

 ただ余裕ができたというのは隙があるということでもある。性懲りも無く夜更かしをしよった愚兄は足元フラフラ、さっきから欠伸もとまらへん、隙だらけのれむれむくんになりよった。

 

 そしてそんな隙を晒しよると必ずと言っていいほどウチの愚妹は兄貴にひっつこうとしやがる。そんなことが起きる前にウチは妹と兄貴の間にわって入りクソ兄の体を支える。

 

 どうやらウチの妹は重度のブラコンらしく、いっつもビックブラザーにベタベタひっつきよる。

 

 まぁウチもどがつくほどのシスコンやから人のことは言えへんねんけどな。

 

 実際ウチかてこの愚妹に抱きついたり、手を繋いだり、首筋を吸って妹からしか摂取できない成分を摂取したりとまぁ少々どころかとんでもない変態姉であるという自覚くらいはあるもんや。

 

 そんな妹は兄貴のことが好きらしい。そしてウチはそんな妹のことが愛しくてたまらんらしいから困りもので。

 

 肝心のアニキと言えばウチと妹、双方に平等に愛を向けてきよるから質が悪い。

 

 ウチら三兄妹、固く強い絆と愛情で結ばれているはずやのに肝心の想いはみぃんな並行線なのはなんでなんやろな。

 

 そうこうしているうちに電車がやってきよった。そして車内でアニキを席に座らした途端そのまま寝入ってしもうた。

 

 全く。夜更かしなんぞするもんやないぞクソアニキ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西から東まで、大ビルが立ち並ぶ超大型都市通称ビッグシティ。その大都市外周を回る大型列車円環線。その列車にはここ最近とある噂がながれていた。

 

 とけ雪の怪。

 

 突如として車内に雪が降り始め振り積もった雪と同時に人が溶けてゆくという噂がネット上に出回っていた。

 

 ウチらはそんな噂を検証するためにわざわざこの大都市の大列車にやってきたわけやけど……

 

 このクソアニキは大胆にも眠りやがった。今日は特にこの検証を行うにピッタリの日や言うのに。

 

 とはいえ状況は整っとる。そろそろ始まるはずや。

 

「ねぇねぇお姉ちゃん」

 

 考え事をしとったウチの横に座っとったウチの可愛い妹ちゃんがなにかはなしかけてきた。

 

「どしたん葵ちゃん 」

 

「お兄ちゃんのこと起こさなくていいの? そろそろでしょ? 」

 

 と、どうやら妹ちゃんは大好きなアニキのことを気にしとるらしい。ようできた妹や思うけどそれはいまやないで。

 

「ええのええの。夜更かししとったんはアニキ自身の意思なんや。むしろこの程度のことはウチら二人でやってしまえばええんよ」

 

 なんてゆーとるけどどっちかって言えば妹と二人きりになれるチャンスをものにしたいっていう下心のほうが強かったりする。そもそも双子の片割れであるウチよりもこんな愚兄のほうがいいなんて許せへんよなぁ。

 

 まァそれにわざわざ起こす必要もなし。クソアニキに頼らなやっていけへんほどウチらもヤワじゃ……

 

「来たな」

 

「うん、来たね」

 

 唐突に車内に降り始める雪。その異様な光景に車内はザワつき始めない。

 

 そんなものは当たり前や。この雪はウチらにしか見えてないからや。だが決してウチらだけにしかみえてないわけやない。

 

 他にもみえとるやつはおるやろうがただ一部だけや。

 

「かなりハイペースだね」

 

 この雪が降り積もり溶け始めれば人も溶けてしまう。

 

 だから今のうちに原因を見つけなければいけない。

 

 そうそうゆーてなかったけどこの怪異が起きる条件は三つ。

 

 一つ、曇り空で雲の量が大体七か八くらいの雲量であること。

 

 二つ、オレンジジュースを車内に持ち込んでいること。

 

 三つ、冷え症であることや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私たち兄妹はなんの因果か全員冷え症なんだよね。なんの因果か……

 

 奇妙な繋がりもあったものででもだからこそこの三人でこうやって調査にくることもできた。

 

 まァお兄ちゃんは寝ちゃってるんだけどさ。

 

 徐に立ち上がったお姉ちゃんは元凶をこの怪異の原因を探す。

 

 同じ車両に乗っているであろうそれを探すために温度計を取り出す。

 

 私も姉に続く。今回の事件、元凶を見つけるのは簡単だ。車内でもっとも温度の低い場所を探せばいい。

 

 ただそれは体感では感じえないあくまで数値の上でしか認識することができない上にコンマ000の小さな温度の違いが一瞬だけ、ほんの一瞬だけだ。だからビッグシスターは見逃さない。

 

 唐突に姉さんは目を見開きグイッと後ろを振り向く。その目の先には目深に帽子を被った男が座っていた。

 

「なぁ、そこのアンタ。少し話を……」

 

 瞬きをする。一回。ただその一回の瞬きのあいだに帽子の男は変わっていた。

 

 白い体躯の獅子のような顔の人型の怪物。

 

「ガァァァァァァァ! 」

 

 雄叫びと共にマイシスターに飛びかかる。姉も武器の鎌、機巧鎌を取り出し攻撃を防ぐ。

 

 狭い車内。乗客たちも我先にと別車両へ逃げ出す。わたしは人の波に飲まれないようにしながら天井にあけたポータルを通って屋根の上にでる。

 

 お姉ちゃんもそれに気づいて怪人を押さえ込みながらポータルを通って外にでる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋根の上にでると同時に怪人を蹴飛ばす。こいつの目的自体は大して意味がない。

 

 こいつの行動は所詮本能からの行為でしかないからや。理性を失い自分の能力を制御も出来なくなった出来損ない。百氷怪人ブリザイオン。こいつを狩るために今日ウチらはここにおる。

 

「いくで、葵」

 

「OKだよ、お姉ちゃん」

 

 二人同時に駆け出す。ウチの鎌と葵の手甲鉤 機巧爪が怪人の白い体躯を切り裂かんと向かっていく。

 

 もちろん初撃はとめられるやろう。けどなそのための両手装備の機巧爪や。ウチはそのまま後ろに後退しリトルシスターは左拳を思い切り相手の腹に突き刺す。

 

「ウガァァァァ」

 

 そんな呻き声をあげる隙をウチは決して見逃さへん。攻撃と同時に後ろにさがるマイシスターと入れ替わるようにウチは前に飛び出る。そして懐に飛び込み鎌を思い切り振り抜……

 

「お姉ちゃん危ない! 」

 

 そんな声が聞こえて来なければ、間違いなくウチは死んどったやろ。

 

 咄嗟にウチは飛び上がる。それと同時にやっこさんはエネルギー弾をウチがさっきまでおったところにぶっぱなしてきよった。

 

 けど、愛する妹の呼びかけのおかげでなんとか直撃は免れた。

 

 そう、直撃は……

 

 咄嗟に飛び退くと同時に着弾したエネルギーはそのままウチがたっとった場所を凍てつかせ、氷の柱がそのままウチの足にウチの足にまとわりつく。

 

 ウチはそれを察してすぐさま鎌で氷を打ち砕いた。けど、ウチが足元に気をとられとぉあいだに怪人は近づいてきて思いきりけれ飛ばしてきやがった。

 

 ウチはそのまま吹っ飛んで受け身も取れずに倒れ込む。

 

「お姉ちゃん! 」

 

 吹っ飛ばされる。また怪人が急接近しよる。速い、速い速い。葵ちゃんの位置からじゃウチを助けには入れん。それに脚が凍って上手くたてん。くそぅここまでか……

 

 そうやって観念したウチと怪人の間にわって入るように上空から影がおちてきた。

 

「な……アニキ! 」

 

「やぁ茜ちゃん、おはよう」

 

 イヤにねっとりとした口調でアニキはそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な……アニキ……起きとったんやったらはよこんかい! 」

 

 正直起きてくるとは思ってなかったから予想外やった。

 

 肝心のアニキは槍武器 機巧槍で怪人の攻撃を受け止めつつ

 

「今ちょうど起きたんでね、悪いね 」

 

 なんて軽口を叩きながら怪人を蹴飛ばした。

 

「お姉ちゃん大丈夫」

 

「おう、大丈夫やで」

 

「全く、相手の能力も把握せずに突っ込んだらダメだろ」

 

「うっさいわ、さっきまで寝とった癖に」

 

「んだコラ」

 

「まぁまぁ二人とも、今は目の前の敵に集中」

 

 それもそうや、クソ獅子めやってくれよって。

 

「てか茜ちゃん大丈夫? たてる? 」

 

「アホ言え、そのための機巧鎌やろがい」

 

「それもそっか……よし琴葉三兄妹、いくぞ!」

 

 さァ反撃開始の雄叫びと共にアニキは槍を溜めてる途中の怪人のエネルギーに向けて投げつけた。

 

 アニキが槍を投げると同時に葵ちゃんは駆け出しウチも鎌のジェットブースターを起動し敵に追いすがる。

 

 槍がエネルギーに直撃し、相手が怯んだところでウチの鎌とマイシスターの爪が怪人の顔面に直撃する。

 

 そしてさらに追撃とばかりに下から振り抜いた鎌と左爪が怪人の腹部を貫く。

 

 そしてウチらが後ろに下がると時にクソ兄は槍を思いきり怪人の頭部に叩きつけ、槍の反対側で相手の胸を打った。

 

 怪人はよろめいたが胸を押さえつつビッグブラザーを爪で引っ掻こうとするが間一髪で避けられる。

 

「あと一息やね」

 

「ああそうだな」

 

 アニキはそう言ってすぅと息を吸うと

 

「機巧槍、機能解放」

 

 と宣言した。

 

 機能解放。それは機巧武器の必殺技発動のコード。機巧武器のエネルギーと各種機能を解放して一撃必中の大技を撃つ。

 

 アニキは敵にむけて槍を構えそして、

 

必槍撃(ひっそうげき)不刺の槍(ささずのやり)!  」

 

 そう言うと駆け出し、槍からジェットが吹き出す。アニキの槍は敵を刺す槍に非ず。アニキの槍の先端が怪人の胸に当たると同時に槍の先端からは超高周波の超音波が発生し相手の心臓が止まるまで音波を心臓に直でぶつけ続ける。

 

「ハァァァァァァァァァ! 」

 

「ウガァァァァァァァ! 」

 

 二人の男の呻きが響あう。そして、ぐったりとして動かなくなった怪人を軽く持ち上げたアニキはそのまま電車の屋根の上から投げ捨てる。

 

 投げ捨てられた怪人は塵となって消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いも終わりウチらは街をあとにしていた。が今ウチはアニキにおぶられていた。

 

「いいなぁ、お兄ちゃんにおんぶしてもらえて」

 

「うっさいわ、ウチも足が凍ってさえなければアニキにおぶってもらわんでええんじゃ」

 

 そう、あのとき凍らされた足の氷を溶かしたはええが足は凍傷でまともに動かんかった。

 

「まぁまぁ、水無瀬先生がいい薬用意してくれてるから次の街まで我慢我慢」

 

「うっさい、ウチ寝るからな」

 

 そう言うウチは顔をアニキの背に埋める。こいつめっちゃいい匂いするな、クソ悔しい。

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん」

 

 不意に妹ちゃんがウチらを呼びかける。

 

「どうしたの(ん)?」

 

「これからも三人で旅していこうね」

 

 ああそんなん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―何処かの街にて―

 

 二人の少年少女がビルの屋上で駄弁っていた。

 

 少女は兄に問う。

 

「兄ちゃん、次はどこにいこか」

 

 少年は妹にこたえる。

 

「お前のいきたいところならどこへでも」

 

 少女はにへらっと笑った。

 

 少年はクスクスと言いながら妹を愛おしそうに撫でた。

 

「じゃあ行こか」

 

 そして二人は歩きだす。この荒涼とした世界を生き抜くために……

 


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