ひねくれた少年の家に、綺麗なお姉さんが転がり込んでくる話です(欲望を開放)

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N/R戦で10000ポイント(お得な真似)を溜めたので初投稿です


磁石のように

 人が限界を感じるのは、果たしていつ頃が適当なのか? 

 

『アソコのお子さん。5歳でもうだいの大人とデュエルができるんですってよ』

 

 幼稚園、小学校。少しの才能、成長速度の違いは様々だろう。

 少なくともその自他ともに認められた天才少年、主力(しゅりょく)くん(11歳)にいまだその経験はない。

 

 生まれながらにしてのデュエリスト。むしろ生まれる前から胎教で教え込まれていたとも噂されるその男の子は、義務教育なんて知ったことないとばかりに親から与えられた一室で今日も自由を満喫していた。

 

 ……奴らが来るまでは。

 

「……はぁ。まぁ~だ逃げるか」

 

 サーバーの熱気のひとかけらも感じ取れないとは思えない。多量のモニターとキーボード、機器のあちこちから怪しげな光が発された部屋。

 世に言う「ハッカーがいそうな部屋」を体現したような光景で彼は一人、悪態をついていた。

 

 視線の先、モニターには建物と建物の間を走って飛んで転んで逃げる男が多方向からの視点で映っていた。

 ……他半分のモニターにはバラエティやらニュース番組やら、統一性のない映像が流れている。

 

『はぁっ、はぁ……! 追ってくんじゃねぇー!!』

 

「じゃあ逃げんなっての」

 

 それが何を意味してるのかといえば、少年にとって獲物……以前の暇つぶしにもならない雑魚。

 時折視線を外し手元のドリンクに手を伸ばす程度には男は気を抜かれている。

 

「……あっ、忘れてた」

 

 ふと画面の表示を見て間抜けた声を出し、少年はコードを打鍵する。

 突如として画面に映る男の周囲に赤い光が広がり、スピーカーからはサイレンが鳴り響く。

 

「はい、フォースセキリティです。抵抗せず捕まりなさーい」

 

『今更かよ!? 人のこと追っかけ続けて今更鳴らすのかよ!」

 

「うるさい、セキリティのアバターである以上鳴らす意味なんてほぼないんだよ」

 

 ただこれをすると、暇な追っかけっこも終わってしまうから、つい忘れたくなる。心の内を飲み下し、少年はキーボードの打鍵を止めない。

 

 少年はずっと操作をしている。何をか、と言えば、

 

『……けっ、似合わねーガキの声。今時はセキリティも人手不足か?』

 

 画面の向こう側の男。彼を背中側から映したモニターに、黒と金を基調とした背の高い男が現れる。

 パトランプに近いランタンを腰からぶら下げて、帽子を深く深く被って表情どころか肌ひとつも見えない。少年とは少しも似ていない体格。

 

「そちらこそ。17歳におっさんのアバターは似合ってないんじゃない?」

 

『なっ!?』

 

 それが、モニターの向こう側の彼の姿。

 

 ──LINK VRAINS(リンク ブレインズ)と呼ばれる、街一つと同等の大きさのVR空間。

 

『おまっ、おまえ! 警察のくせに人のデータ盗み見しやがったな!?』

 

「別にこっちは民間だし、そもそもアバターの見た目以外偽装も何もしてないんじゃ公開情報みたいなもんでしょ」

 

 他にもこんなのがあるよと少年はキーボードを叩く。

 

 男……いや不良高校生の身辺情報だ。

 通う高校、住んでいるアパート、よく行くお店につい最近違法に落としたゲーム。

 なんなら顔写真も見せてあげようか。そう言えば不良高校生は激昂する他ない。

 

「っ、ざっけんな!! たかがゲーム一つダウンロードしたからってそこまでされなきゃならねぇんだ! 

 てめぇ……覚悟しやがれ!」

 

 振り上げた腕は暴力へとつながる……訳ではない。手首のあたりにつけられた装置が起動すればあっという間にデュエルディスクへと変形する。

 つまるところがカードゲーム、デュエルモンスターズでぶちのめす。そう言うことだ。

 

「素直に捕まれば楽なのにさぁ」

 

『はっ! 舐めてんじゃねぇよガキ、俺はクラスじゃ一番デュエルが強いんだぜ。ママに泣きつく準備をしておいた方がいいぜ』

 

 安い挑発一つ、少年の眉を震わせた。

 先ほどよりも強くキーを叩き、画面には【Duel Mode standby】と表示される。

 それと同時に少年のアバターが構えた。

 

 VRの空間にデュエリストが二人、お互いのやりたいことがあるならば、それがぶつかり合うと言うならばこれしかない。

 一対一の真剣バトル、カードによる殴り合い。

 

『「決闘(デュエル)!」』

 

「3ターンで終わらせる」

 

 少年の小さな意気込みは、男に聞こえることはなかった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

「はいはいお兄さん、履歴書見せて」

「そっちの弟君もね」

 

 時はほんの少し遡る。

 とあるカフェで二体ニの戦いが繰り広げられていた。

 四人組はテーブルに座り、片や偉そうに、片ややる気は十分と姿勢をキープ。

 

「はっはい、よろしくお願いします!」

「お願いします!」

 

 対照的なのはそれだけではない。二人組はそれぞれ

 女性と男性、

 私服とスーツ、

 スマートさと暑苦しさ、

 

 まさに水と油のように周りの客からは見えて、

 ただ奇しくも髪の色だけは二人組はとても似ていた。

 

 紅色の髪をした女性が、つまらなそうに履歴書を隣の女性に渡す。

 赤色の髪のマッチョに視線を投げかける。

 

「じゃあ早速だけど、なんでウチな訳? 住み込みの家政婦なんて他にもあるでしょ。あと、男性がこの業界来るのは珍しいと思うんだけど?」

 

「それは……っ、今回のご家庭はご両親がほぼご不在で、男の子が一人ということで……男である自分達の方が接しやすいだろうと思いまして……あっ、住み込みなのも今自分たちが定住する場所があればと」

 

 男の子が相手で家に住めて給料も良くて何かダメな点なんて何もないだろう? 逆に聞き返したいところを赤髪の男は我慢した。

 紅色の女性はこの返答に対してまるで何も聞こえなかったように「あっ、そうなんですね〜」と流す。

 

「……一応言っておくけど、今回の事情とかはわかってる?」

 

 次はお前の番だぞ、そう紅色の女性が蒼色の女性の肩を肩で突っつく。

 至極面倒そうに、蒼髪の女性は尋ねた。

 

 今度は青髪の弟が答える。やや兄よりは細身で背の高い、比較的賢そうな声色で。

 

「はい、それはもちろん。今やこの街を語るに不可欠な存在"LINK VRAINS"を運営する"SOLテクノロジー社"。彼らと協力しVR空間の運用管理、そして無法者に対処する企業"F-セキリティ"の社長夫妻のご自宅の掃除から始まって一切の家事を、と

 将来は社長間違いなしの才覚を既に持つ息子さんがいるとか……」

 

 下調べなど朝飯前だ。青髪は言外に胸を張った。

 それを見ることもなく、履歴書に何か書き込みながら女性は「うーんそうそうー」と相槌を打つ。

 

「……」

 

 これはなんだか、評価が低い。と言うか期待されてない? 

 あまりの態度に兄弟はやや不安になる。

 

 すかさず兄は口を開いた。

 

「自分達は鍛えているのでお子さんに万が一がないように、たとえ不審者が群れを成して来たとしても問題ありません!」

「更にネットの知識もある程度備えておりますので、決してご不便をおかけすることはないかと!」

 

 弟も続いた。

 

「あっあと家事も当然! 地元でも結構評判で」

「得意料理はパスタで! 自慢じゃないんですがこんなあだ名が」

 

「「カルボナーラの戦士!!」」

 

「うん、不採用♪」

「お帰りはアチラでーす」

 

 女性たちはにべもなく切り捨てた。

 思わず岩石族の如く二人は固まる。

 

「そもそも男なら男が世話すればいいと思ってるんじゃ大事なご子息は預けられませんね」

 

「ぬぅっ!!」

 

「あと筋肉すぎて悪影響がありそうです」

 

 薄紅のサングラスを整えて、女性は兄を打ち砕く。

 兄は泣いた。

 

「ここカフェって共用スペースなのに、依頼人の情報喋りすぎ。悪い人が聞いてたらどうするの?」

 

「えっ!?」

 

「あとちょっと理的に振る舞ってるけど、筋肉がうざったい」

 

 薄蒼のメガネをあえてつけ、色眼鏡で弟を揺さぶり落とす。

 弟は泣いた。

 

「「今回はご縁がなかったということで、気をつけてお帰りください」」

 

 兄弟は泣いた。

 あと気がつけば四人分のコーヒーの代金を払わされていた。

 面接の際は足代が出ると聞いていたのに、なにも貰えず帰された。

 

 都会は怖い、二人はその日浮かんだ言葉はもはやそれしかなかったと言う。

 

 

 

 

 

「……まんまと騙されていったなーあの二人」

「まあカルボナーラじゃ無理だね」

 

 二人が悲しみの声をあげ去っていったあと、女性二人は笑いを堪えていた。

 二人に奢らせたコーヒーを口に含み、顔を顰めた後に砂糖とミルクを多量に投下する。

 

「いやーまさか迷い込んだ場所で、'たまたま住み込みのバイトの面接を受ける予定の二人組を見つける'、なんて運が良すぎているね」

 

 紅色の女性が調子に乗った声で手に持った端末を触っている。

 歴史、辞書、最近のニュースにSNS。何のこともないように一瞬で大量の情報に目を通していく。

 途中、カワイイ動物だったりファッションの画像に手を止めているのは気のせいか。

 

「……はい、印刷完了。ある程度の技術水準はあるみたいだし、なんとかなりそ」

 

 蒼色の女性が気苦労はもう嫌だと両肩を回し、首を二度三度傾ける。

 手に持っていた端末から履歴書が排出されて、一枚を相方に渡す。

 

 内容は名前と顔写真以外、ほとんど先ほどのカルボナーラ兄弟のもの。やたらと優秀な経歴は有効利用されていた。

 

「……で、受かる確率は?」

「10割、形式だけの面接だったみたい」

 

 それはつまらない。また名演技が光るところだったのにーとその気もないのに紅は文句を言った。

 そうこうしているうちに、カフェの扉の鈴が鳴る。視線を一つ、そちらに向ければ男性が一人。息も切れ切れに入店して来た。

 

 彼は慌てて店の中を見渡し……スーツを着ている二人を見つけると慌てて駆け寄って、

 

「──申し訳ない、急にナビがおかしくなってね。……ええと、赤と青の髪が目印と聞いたけど……あれ、女性の方?」

 

「はい、そうですが……? あぁ失礼、もしや何か行き違いがあったご様子で。始めまして、私は逸帯(いっつい) リィラと言います」

「他に何か間違いがあったら困るので、こちらをどうぞ。経歴書です。

 ワタシは逸帯(いっつい) キスキルって言います」

 

 二人の女性に、首を傾げながらも挨拶をした。

 

 

 

 

 

 

 

 




見切り発車です


~キャラ一覧~

・赤髪の男
フリーターモンスター
25歳/地属性/戦士族 攻1000/守500
コンビプレーが得意だと常々言うが、それは弟相手のみで実際は単独行動のほうが好きな戦士。強いフリーター力を発し、どんな面接にも逃げられない。


・青髪の男
フリーターモンスター
24歳/地属性/戦士族 攻500/守1000
コンビプレーが得意だと常々言うが、それは兄相手のみで実際は単独行動のほうが好きな戦士。兄より引き締まった筋肉はピッチピチのスーツにやさしい。

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