男には勝ちたい存在がいた。

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初投稿の勢い任せの作品です。ゆるい目で頭空っぽにして読んでください。


真剣で武神に挑みます!!

 

 

 

「若獅子タッグマッチトーナメント優勝者は!御剣刀夜と椎名京ペアーー!!」

 

司会者の掛け声と共に観客の歓声が闘った熱気にも負けず優勝者たちを包み込む。

 

「ありがとう。椎名さん、君とタッグじゃないと勝てなかったかもしれない。」

 

「…ん、私は大和の優勝を阻止できれば良かっただけ、これからモモ先輩に挑むんでしょ?せいぜい頑張ってね。」

 

彼女はまるで挑む事が烏滸がましいかのような言い方で言葉を残し決勝相手だった大和の元に駆け寄っていく。

 

「ハハ、誰も僕が勝つ事に期待して無いのかもね。」

 

男は誰に言うでもなく俯きながら呟く。

司会者が男に語りかける。

 

「優勝者には武神に挑む権利がありますが、どうしますか?」

 

マイクを通して会場に響き渡る声、観客が、司会者が、いやここにいる誰もが期待の眼差しで男を見る。聞きたい言葉はただ一つだけ。そして誰よりもその言葉を待っている最強の美少女が一人。

 

川神百代

 

四天王の一人にして武神。武の頂点の一人。はち切れんばかりの笑顔で男を見つめている。

 

「もちろん。挑みます。いや、こうじゃないな。」

 

「宣戦布告だ!!川神百代!!あなたに敗北を渡しにきた!!」

 

ステージを中心に地響きのように振動し静止、そして反響する様に観客の歓声が返ってくる。

会場中に響き渡る声と共に実況席にいた美少女がステージに降りてくる。

 

 

「あぁ!待っていたぞ!御剣刀夜!!!早く死合おう!!!」

 

「ええ!是非とも!」

 

 

川神鉄心らがステージを直しステージを覆う結界を張り直し、観客席側にも結界を張る。

決戦の舞台は整った。

 

「それではエキシビションマッチ、御剣刀夜VS武神、川神百代

 

          始め!!!!   」

 

 

男は立ったまま動かない。だが、少女が目にも止まらぬスピードで男との距離をゼロにする。

 

 

「まずは小手調べだ!川神流、無双正拳突き!!」

 

一般人ならこれで終わる拳。ある一定の武人でもこれで終わってしまう様な威力が込められた正拳突き。だからこそ……

 

 

「舐めてるのか……」

 

 

 

武装顕現  雷刃  ホノイカヅチ  

 

 

「雷切」

 

 

攻撃を仕掛けていたはずの百代がすれ違った瞬間突然倒れた。男は何もしてない様に見えた。

それは、ある程度の者しか見えない不可視のカウンター。

大和は隣にいる眼のいい京に聞く。京もそれに答える。

 

 

「京、何が起こったんだ?」

 

「…ごめん、私にも分からなかった。」

 

「抜刀術です。モモ先輩の正拳突きに合わせて脇腹から肩にかけて斬ったんです。」

 

近くにいた由紀江が大和や京の疑問に答える。たが、不思議な事に男は刀を持ってない。正確には刀身のない鍔までの刀モドキを持っているに過ぎない。

 

 

「斬るってあの刀身のない刀でか!?どうやって!?」

 

「斬る瞬間に一瞬ですが紫色の刀身が見えました。気で刀身を作って斬ってるんだと思います。」

 

「おいおい!そんなの人間業じゃねーよ…」

 

 

ガタイのいいガクトが由紀江にくってかかるが由紀江は見たことを言ってるだけで全て本当のことだ。

気で刀身を作ると聞いてワン子が言う。

 

 

「気で作るってじーちゃんみたいな武神顕現みたいな?」

 

「それに近い物だと思います。」

 

 

由紀江はステージから目を離さず答える。 

 

ステージでは百代が立ち上がり、身体に違和感がないか軽いストレッチをしながらキズを回復していく。

 

 

「それが噂の瞬間回復ですか。ズルイたらありゃしない。」

 

「別にズルじゃないしー。しっかし、驚いたなーあの一瞬で刀を作って斬ってくるんだもんな、しかも雷付きで」

 

「それが僕の闘い方でウチの剣術ですから。【武装顕現】これがあなたに敗北を届ける刃です。」

 

 

回復する百代に苦笑いしながら話しかけ、百代は知らずのうちに手加減していたとは言え綺麗に斬り伏せられたことに驚きを表す。

まるで、今の一瞬の攻防が戯れだったかの様に二人は話し続ける。

 

 

「そんなに強いなら始めから言えよー。」

 

「別に強さは誇りに思えど見せびらかすものじゃないですから。」

 

「なんだとー、それだとワタシがまるで見せびらかしてるみたいな言い方じゃないか!」

 

「そうは言ってませんよ。たまたまです。」

 

二人は和気あいあいと話をしているが観客は鎮まりかえっている。何故なら話していながらでも二人の闘気が膨れ上がっていくのを肌で感じ取っているからだ。

 

 

「そろそろ再開しましょうか。今度はこちらから行かせて貰います。」

 

「おう!」

 

 

武装顕現  炎刃  ヒノカグツチ 二ノ型  双炎龍刃

 

 

鍔から緋色の刀身が顕現し炎を宿しながら百代に縦、横、袈裟斬り、逆袈裟斬り色々な角度の連撃を放っていく。

百代も時には紙一重でかわし、時には気でまとった拳で弾くが少しずつ擦り傷や炎のダメージが蓄積されていく。それでも刀夜の連撃は終わらない。

 

 

武装顕現  水刃  アメノミクマリ  一ノ型  一閃蓮華

 

 

刀身が蒼く染まり水の様な刀が顕現する。

刀夜は距離をとり、圧縮された水の刃で百代に休む暇を与えない。

刀を振るい、無数の水の刃を浴びせ続ける。

 

 

川神流  人間爆弾!!

 

 

無数の水の刃が爆風によってかき消される。百代のやったことは単純、無数の刃を自分事吹き飛ばして、余りある気で瞬間回復で完治。

 

攻防が切り替わる。

 

 

川神流  無双正拳突き 乱打!!

 

 

刀夜に降り注ぐ拳の雨、紙一重でかわし、かわしかわしかわし刀で弾きまたかわし、永遠に続くと思える乱打の中で刀夜は確信する。

 

(武神のエンジンが掛かってきている。)

 

最初の一撃は明らかに手加減された物だった。それが刀夜には悔しくてたまらなかった。まだ自分は認めてもらえてないのか、まだ自分は肩を並べられていないのか、不甲斐ない!不甲斐ない!!自分が不甲斐ない!!!

だがそれが、闘ってる最中百代の拳が強く、速くより鋭くなってきている。武神が自分に本気を出してきてくれている事に刀夜は歓喜していた。

それが緩みとなり、鳩尾に一発良い拳を貰ってしまう。そしてステージ端まで飛ばされてしまう。

 

「ゴフッ」

 

「闘ってる最中に考えごとか!?」

 

 

吹っ飛んでる刀夜に追いつきもう一発入れようとする百代だが、

 

 

武装顕現  雷刃  ホノイカヅチ  雷切

 

 

体勢が不十分だが刀夜の業の中で最速を誇る雷切と百代の正拳突きが交差する。百代は雷切の威力で、刀夜は体勢が不十分だった事と正拳突きの威力で互いに吹き飛ばされる。

 

 

「ハハッ 楽しいなぁ!お前もそうだろう!?刀夜!!」

 

「そうですね! 楽しくて仕方ない!!」

 

二人は起き上がり互いに笑う。無邪気な子供のような笑顔となる。

 

次は百代が仕掛ける。

 

 

「これはどう対処する!?」 

 

 

川神流   星砕き!!!

 

 

武神の真剣の気の塊が刀夜に向かって一直線に飛んでくる。

 

 

「武神からの挑戦だ!真っ向から斬る!!」

 

鍔から黒い刀身が伸びてくる。

 

武装顕現

 

     雷刃+炎刃+水刃

 

 

          武刃    タケミカヅチ   

 

 

武刃に型はない。黒刀が刀夜の最高の業で今出せる最強の業。

 

 

 

「ハ嗚呼アアアアァァァア!!!!!」

 

 

星殺しと黒刀がぶつかり合いそして………

 

………斬れた。

 

瞬間、強大な気と気のぶつかり合いでステージ全体が爆ぜた。

 

ステージの端から端まで煙が覆う。

 

 

「決着は!?決着はどうなったんだ!?」 

 

 

誰ともなく、観客席から声がする。

次第に煙が晴れていき、二人の影が現れる。まだ、二人とも立った状態で睨み合っている。

刀夜は黒刀を構え、百代は川神流の構えをとっている。まだ闘いは終わっていない。

 

どちらともなく詰め寄る。斬りかかり、かわし殴り、弾きまた斬りかかる。蹴り、受け斬り続ける。

 

百代の身体も刀夜の身体もボロボロだ。全体的な被弾率は百代が多い。何故か、基礎をサボっていたツケがここにきて回ってきたのだ。瞬間回復ももう使えない、刀夜の武装顕現の特徴は刀身に性質を宿す事。それは気で練られたもので相手を斬ると相手の気を乱す性質もある。それによって百夜は大業が出せなくなっていた。

一方の刀夜も、満身創痍で回復業もなければ気の総量は百代と比べるまでもない。黒刀を維持してるだけで精一杯の状態だ。

 

それでも尚闘う。何故? 楽しいからだ!お互い張り合う相手が居らず未だ本気という本気で闘った事がなかった!故に片方が倒れるまで闘うのが本望!!!

 

 

「ハァァァア!」

 

「アァァァア!」

 

 

拳と黒刀が交わる。その度に爆発の様な音と共に両者に傷をつけていく。

二人は終始笑顔で死合っている。

 

「が、頑張れー!!」

 

「負けるなー!!」

 

二人の闘気に呑まれていた観客達が声援を送り始める。

 

「武神に勝っちまえーーー!!」

 

「モモ先輩まけないでー!」

 

 

二人は聞こえていないが徐々に大きくなり始める声援。それは、二人にとっての終焉の合図でもあった。

 

 

 

「ずっと死合いしてたいですがそろそろお互いに体力の限界そうですね…」

 

「刀夜くんはもうバテちゃったのかにゃん?って言うほど私にも余裕はないがな」

 

「今なら武刃の技が出来そうです。互いに最後の業になりそうですね。」

 

「そうだな。私もありったけを込めてお前と言う漢にぶつかろう!」

 

 

 

 

 

武装顕現 武刃 タケミカヅチ

 

 

川神流 禁ジ手 

 

 

 

 

 

【天叢雲!!!!!】

 

【星殺し!!!!!】

 

 

 

 

 

大きな爆発と共にステージの結界が砕け散り、爆風が観客席まで押し寄せる。煙が二人の姿を隠すがすぐに晴れていく。そこに立っているのは…………………

 



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