大喜君がバドミントンに本気になるのを早くしてみた   作:もう何も辛くない

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はい、何をトチ狂っちゃったのか書いちゃいました。
アオのハコ良いですよね。ヒロイン二人可愛いし、てか主人公が可愛いし。
そんな主人公を応援すべくこの作品でちょこっとスペック上げちゃいます。

…本当にちょこっとなのか我ながら疑わしいですが。

それとあらすじにもありますが私バドミントンはさっぱりです。
早速この話から試合の描写がありますが、描写をする際少しバドミントンについて調べはしましたがマジで不安しかありません。
なので、おかしな所があったら()()()教えてください。こう、掌を歩く蟻を触る時のような優しさでお願いします。雑に扱うと潰れます。

それでは、覚悟が出来た方はどうぞ。


切っ掛け

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 切っ掛けは、一人の女子生徒が涙を流しながらシュート練習をしている姿を目撃した事だった。

 その生徒が所属していたバスケ部がギリギリの所で全国出場を逃したと後で聞き、涙を流していた理由には合点がいった。

 それと同時に、俺は衝撃を受けた。試合に負けて、たとえその試合が全国に出れるか否かを決めるものだとしても、負けて涙を流す程悔しくて、だというのに前を向こうとしているその姿に衝撃を受けた。

 

 ─────俺も

 

 そう思った。

 続けているスポーツは違えど、俺も()()()()()()()本気でバドミントンに向き合ってみたいと。その先にある景色を─────()()()()見ている景色を俺も見てみたいと、そう思ったんだ。

 

 思い立ったが吉日、その日から俺の練習に対する態度が変わった。

 今までも別にサボっていたつもりはなかったけれど、本気の度合いというか、そういうのが変わった気がするというのは友達の話。

 

 まず、正直な話俺はそこまでバドミントンが強くない。県大会に出て、一回勝てれば御の字といった程度だ。

 それよりも上を目指すためにはどうすればいいか。上─────全国を見据えてどう練習すればいいのか。

 

 色々と考えた結果、真っ先に取り組んだのはプレイ中の目の使い方を変える事だった。

 今までプレイ中の俺の視線は漠然と相手の方を見る、といった感じ。相手がシャトルが打ってきたらシャトルを注視して、という視線の使い方をまるっきり変えた。

 

 勿論シャトルは見る。ただ、それよりもシャトルを打つ前の相手の動き。体の向き、ラケットの面、相手の目線、そういった所から相手がシャトルを打ってくる方向を予測できるのではないかと考えた俺は早速部活で練習、実践。

 なお、いきなり上手くいく筈もなく最初は今まで試合で殆ど負けた事がない相手にもボコボコにされた。

 

 手応えをつかみ始めたのはいつだっただろう。ぶっちゃけた話、相手の動きをよく見ても打ってくるコースなんて分かりようがなかった。

 ただ、相手が万全な体勢ではない場合─────無理な体勢で打たせればコースを限定できる事に気が付いてからは世界が変わった気がした。

 

 前に羽根を落として相手がそれを拾うしかなかった場合は勿論スマッシュなんて打てっこない。となれば相手もまた前に落とすか後ろへとロブを上げるか。

 ここまで限定できればコースを予測する事は可能だった。ラケットの面、テイクバック、相手の視線からフェイントかドロップかを読める。

 

 問題は相手をどうやって無理な体勢にまで追い込むか。それはもう、コントロールを磨くしか俺には選択肢がなかった。

 御世辞にも俺は良い体格ではないし、飛びぬけたスマッシュとか打てないし。だからコントロールを磨いた。

 

 上に行けば行くほど俺と同じような選手が出てくる。相手を追い詰めコースを限定し、自分に楽なペースを作れる選手が多くなってくる。

 思えば、今年の県大会の上の方まで行った選手の動きはまさにそんな感じだった気がする。

 

 そこまで考え至った時、このままでいいのかと疑念が過った。だって俺がしている事は要するに、その人達がとっくに通り過ぎていったものなのだから。

 その人達が持っていない、俺だけの何かを習得しなければ、今まで費やしてきた()()()()()が圧倒的に少ない俺には勝ち目なんてない。

 

 結論として、俺は当初に定めた目の使い方とコントロールを徹底的に極める事にした。

 相手の動きを追い詰め、打ってくるコースを限定させるためのコントロールと相手が打ってくるコースを予測するための目。

 当然、その他にも俺には足りないものは多すぎる。基礎体力、フットワーク、その他諸々。

 この一年間、徹底的に体を苛め抜いた。それこそ一度、両親とじいちゃんに真面目に心配される程に。

 

 そうして練習を重ねて、自分が強くなっていく手応えを感じながら日々を過ごし、今俺は─────

 

「大喜ー!ここ一本とるぞ!」

 

「まだまだ!一本取って追いつこう!」

 

 関東大会5位6位決定戦。要するに全国大会代表決定戦の舞台に俺は立っていた。

 いや、たかだか一年でここまで来るとは我ながら思っていなかった。でも、この舞台に立つまで今までやって来た事が間違いではなかったと自信になる毎に、試合を熟す中で更にプレイが洗練されていく感覚を感じながら、いつの間にか俺はこの場所に立っていた。

 

 ゲームカウント1-1、スコア19-20で相手のマッチポイント。ここを取られたら俺は負ける。

 先程、二点差から一点差に追い詰めるポイントを取った俺からのサービス。

 

 優しく前に落としたサービスを相手が拾い、相手もまたネット際に落としてくる。

 右足を前に出し、シャトルの落下位置を見極めてから相手の立ち位置を確認。相手は前方に落とされても後方に上げられても対応できる位置に立っている。

 ネット際のこの位置、まだ無理する段階でもない。俺もプッシュで返し、相手を前へと引き摺り出す。

 

 プッシュでのラリーが数回続く。我慢比べなら望むところ、このまま数時間続けても─────と言いたい所だけど、正直スタミナが限界だ。

 一年間目の使い方以外で最も鍛えたつもりなのがスタミナだけど、それでも全国を目指すという人達に比べれば付け焼刃に等しい。

 このままラリーが長引けば不利になるのは俺。デュースに追いつけば更に長期戦になる可能性もあるのだから、ここで長いラリーを続けてしまうのは致命的。先に仕掛けなければならないのは俺。

 

 なのだが、攻め込む隙が見つからない。フルゲームの長い時間の中、相手も俺のプレイスタイルは分かっている。コートのどこかに穴を開ければ俺が攻め込む事を知っている。だからこそ、フットワークを動かしてコートカバーを徹底している。

 相手は冷静だ。俺がスタミナ面に不安を抱いている事も見抜いているんじゃないかと思える程に徹底して向こうから仕掛けて来ない。

 

 そうなればもう勝ち筋は一つしか残されていない。このまま膠着状態では先にガス欠を起こすであろうこちらが圧倒的に不利。

 

 高くシャトルを上げる、といっても甘いショットを与える訳ではなく、相手の足を最大限に動かす、今相手がいる立ち位置とは対角線上、コートギリギリを狙ってシャトルを打ち上げる。

 相手が視線を上げ、体を起こし、高く上がったシャトルを追いかけラケットを振り被る。

 

 スマッシュか、それともコースを狙って繋げて来るか。相手の両足が床から離れた所を見て、相手がスマッシュを選択したのだと確信、身構える。

 体は傾き、こちらから相手の胸が見づらい。あの体勢からストレートにはまず打てない、とはいえ念のために頭の中にストレートの意識を残しつつ─────意識の大部分をクロスに向けていた俺は予想通りクロスに打たれたスマッシュに素早く反応、比較的余裕を持って追いつき、柔らかくシャトルの勢いを殺す。

 

 狙いは相手の立ち位置から対角線上のネット際。ふわりと舞ったシャトルに相手が素早く反応する。

 それでも追いつけるかは微妙。全力でシャトルを追いかける相手が必死に腕を伸ばす。

 

 シャトルが上がる。俺のプッシュは返された。が、その代償は大きく相手の体勢は不十分、即座にコート中央に戻るのは不可能な筈だ。

 

 ギリギリを狙う必要はない。大きく開いたオープンスペースを大雑把に狙って打つだけで得点はまず入る。

 無駄な力は要らない。俺のスマッシュの威力でも、未だに戻り切れていない相手のコートをノータッチで打ち抜ける筈だ。

 

 ─────あっ。

 

 内心、いやもしかしたら実際に声が漏れていたかもしれない。

 

 長くラリーが続く毎に掌に滲んだ汗がラケットを滑らせた。スマッシュを打ち下ろすべく全力を込めていたため、咄嗟の軌道修正が出来ない。

 振り抜いたラケット、シャトルはスイートスポットに当たらず、俺の意思に反してコートギリギリへと落ちていく。

 

 シャトルが床に落下した直後、線審がアウトとコールする。

 その瞬間、ネットを挟んで向こう側、シャトルを追いかけて動かした足を緩やかに止めながら大きくガッツポーズをする相手の姿。

 そしてその相手を応援していたチームメイト達の歓声が聞こえてきた。

 

 結末は呆気なく、俺の敗北という形で試合は幕を閉じた。それと同時に、全国大会への道はもう眼前という所で閉ざされたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、よくやったんじゃないの?」

 

 試合後の挨拶を交わし、ラケットを片付けアリーナを出た俺はユニフォーム姿のままホールのベンチに座って黄昏ていた。

 そんな俺に近付き、声を掛けてきたのはチームメイトで結構付き合いの長い親友(俺はそう思ってる)の笠原匡。

 

「去年までならお前が関東大会に出るなんて、それも全国に出れそうになるなんて考えられなかったじゃん」

 

 表情の変化が薄い、というより表情筋が固すぎて実は動かせないのではとすら思える程に動かない表情は今もそのままで、俺を励ましているつもりなのだろう、匡は返事をしない俺に構わず続けた。

 

「悔しいのは分かる。でも─────」

 

「違うんだよ」

 

 ただ、匡は一つ勘違いをしている。

 それを正すために、俺は匡の言葉を遮って口を開いた。

 

「勿論、負けた事は悔しいさ。だけど…」

 

 今、俺が言った言葉に嘘はない。試合に負けた事自体は悔しい。ただ、それ以上に俺が悔しいのは─────

 

「自分でも良くやったよなって思えるのが…そこまで悔しいって思えない自分が悔しい」

 

「─────」

 

 珍しく驚いた様に目を丸くする匡の顔が視界の端に映った。が、すぐに無表情に─────いや、どこか呆れているような表情になった匡は、

 

「面倒臭いな、お前」

 

 ため息混じりにそう言った。

 

「悔しくないんならそれは良い事なんじゃないの?自分が出来る事をやり切ったからこそ悔しく思わないんだろ。そんな奴は滅多に居ないぞ」

 

「いや、やり切って負けたんだから尚更駄目だろ。それって結局、俺の今までの努力じゃ全然足りなかったって事なんだから」

 

 そう。今持てる力を出し切った、と俺は思ってる。それで負けたという事は、今までの努力じゃ更に上へ行くためには足りないという事。

 

 俺は一年間、これ以上ないという程に頑張ったつもりだ。それでも届かなかった。

 だというのに、俺はそれを()()()()()()()()()()()()

 

「…まだ本気度が足りなかったか」

 

「いや、お前、あれで本気度が足りないとか正気か?一回家族にガチで心配されたって言ってたろ。あれより更に本気になったら病院連れてかれるんじゃないか?」

 

 脳裏に過るのは、体育館で涙を流しながらシュート練習をするあの人の事。

 あの人のように何かに、俺の場合はバドミントンに本気に取り組みたいと思って一年間頑張ってきた。その結果がこれなのだから、結局俺は本気で取り組んでいる()()()でまだまだ足りなかったという事なんだろう。

 

 匡が引いてる顔してるけど、つまりはそういう事だ。

 

「よし。明日からもっと頑張る」

 

「お前マジか」

 

 グッと右手で拳を握りながら宣言する。割と本気で引いてる気がする匡を無視して、俺は明日から何を練習すべきか考えるべく、頭の中で今日の試合─────大会を通しての反省点を洗い出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 栄明中学高等学校。俺が通う学校の名前である。中高一貫校で、スポーツ強豪校として世間に知られている。

 特に有名なのは陸上、ラグビー、新体操部。特に新体操部は今年の全中で四位に入った、元体操選手の娘がいる事で特に名が知れている。

 そして今挙げた部活以外で最近勢いが出てきているのが女子バスケ部。今年は全国出場こそしていないものの、それは組み合わせの運が悪いというのが大きな原因となったと話に聞いているし、何よりバスケの雑誌で取り上げられている選手がいると学校内でも有名だ。

 

 そんなスポーツ強豪である我が校の施設はかなり充実していて、俺もバドミントンと本気で向き合おうと決意してからはかなりお世話になった。

 特に朝早くから開かれる体育館で続けてきた朝練は俺の原動力になったと思う。

 

「行ってきます!」

 

「はーい。気を付けていきなさいよ」

 

 そして、原動力となった朝練は引退してから数か月経った今でも続けている。

 中学の部活を引退したため、まだ現役だった時に朝練に使っていた中等部生徒用の体育館は使えないが、内部進学すると決めた事と入学後、バド部に入る事を条件に高校のバド部の練習に参加させて貰っている。

 勿論朝練する事も許可を取り済みだ。

 

 季節はもう冬、というより春になりかけといった方が正しいかな。昨日まではもうすぐ春だなと思える暖かさが感じられる朝だったけど、今日は真冬に逆戻り。かなり冷え込みが強い朝になってしまった。

 

 そんな中、白い息を吐きながら通学路を急ぐ俺。

 今日こそは。今日こそは()()()()()()()()着いてやる。

 

「…いるし」

 

 なお、目の前の体育館の中からボールを突く音が聞こえてきます。どうやら()()()()()らしい。

 

 今日はいつもより早く起きれたから絶対にいけると思ったんだけど。学校から家が近いのか?それとも、常識外の早起きをしているのか。

 

 どちらにしろ、こんなにも早く来て練習している()()()にはまだまだ敵わないと溜息を吐きながら、中に入るべく体育館の扉を開ける。

 

「ぶべっ」

 

 直後、視界一杯が茶色に染まる、かと思うと更にその直後、額に勢いよくその茶色の物体がぶつけられた。

 

 普通に痛い。額を両手で押さえながら思わず蹲る。

 

「大丈夫!?」

 

「い、いや…平気です」

 

 遠くの方から呼び掛けられる声に答える。

 すると、声が聞こえてきた方からこちらに駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。

 

 俯いていた視線を上げ、足音が聞こえる方を見上げる。

 

 こちらに駆け寄ってくるのは一人の女子生徒。水色のパーカーを身に着け、下は黒いジャージの半ズボン。

 動きやすい恰好と、俺の傍に転がるバスケットボール。もう分かると思うが、この人はバスケ部で、俺よりも早くここに来て朝練をしている。

 

「エルボーパスの練習してて…痛かったよね」

 

 そう言いながら、ぶつけた所に手を伸ばすこの人の名前は鹿野千夏。

 俺の一つ上の高校一年生で、そして─────

 

 俺がバドミントンと本気で向き合う切っ掛けをくれた人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作では一話目冒頭から出てきたメインヒロインを一話最後の方まで出さない作者がいるらしい。
しかもオリ主じゃないのに。
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