第4十刃が異世界へ渡るそうですよ? 【ブラック・ブレット編】 作:安全第一
つまりそれは………
ガストレア \(^o^)/ オワタ
ウルキオラが開いた異世界へと通ずる空間は断界の様なものに近いものであった。
辺りは暗く、白き一本道を只歩きながら進んで行く一人の破面、ウルキオラ。
「……そろそろか」
ウルキオラがそう呟く彼の視界には、遠くから一つの光が差し込んでいる。彼処が異世界へ通ずる扉だ。其処に向かい、躊躇無く歩いて行く。
「………?」
その時、その光から漏れる『雰囲気』に異質なものが混じっている事に気が付く。
だが霊圧では無い。大多数の人間の感情が其処から溢れ出ているものだと感じる。しかも、その感情は殆どが似通っている『絶望』の色をしている。
嘗ては絶望の権化とも言える力を振るい、かの死神代行を一度は絶命させたウルキオラだ。それに興味を持つのも当然と言えた。その『絶望』の正体を知りたい所だ。
そして光の扉が眼前へと迫り、ウルキオラを包み込む。
「……これは」
其処で彼が見た光景は───
───戦火によって荒れ果てた都市だった。
蹂躙。
その単語が似合う程に、その都市は壊滅していた。周りには人の死体に崩れ去ったビル。星座を映す筈の静かな夜空は紅蓮に染まっていた。
「……!」
その光景を眺めていたウルキオラの上空に戦闘機が高速で通り過ぎる。その戦闘機を目で追うウルキオラは『あるモノ』を見た。
巨大生物の形をした『ナニカ』を。
戦闘機が
「……追うか」
ウルキオラがそう呟き、巨大生物が墜落した地点へと歩を進めようとした時だった。
ウルキオラの
そして足音。
「………」
ウルキオラのすぐ近くに別の巨大生物の形をした『ナニカ』が姿を現していた。その姿はトカゲが巨大化した様なもの。後に人類が『ステージIV』と呼称する個体だった。
『グルルルル……』
その巨大生物はウルキオラをジロリと唸り声を上げ、睨むと同時に舌舐めずりをしている。ウルキオラを獲物として認識している証拠だ。
ごく普通の人間ならば、生きる事を諦める絶望の状況だろう。何も出来ず、只捕食されるのみ。この巨大生物はウルキオラを
───その
それがこの巨大生物の最大のミスであった。
『ゴガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』
雄叫びを上げ、鋭く巨大な爪をウルキオラへと向け襲い掛かる。それは肉を裂き、骨を砕く強力な一撃であるそれを使う。
しかし、ウルキオラはそれを
『───!?!?』
巨大生物は大いに困惑した。受け止めるまでなら良い。その膂力を活かしその人間を吹き飛ばせば良いのだから。
だが其処から
巨大生物は目の前の事態に獣同然の思考を最大限に活性化させていた。
何だ『コイツ』は。
分からない。
本能が告げている。
『拙い』と。
そもそも『コイツ』は人間なのか。
人間じゃない。
全く違う別次元の存在。
このままだと『拙い』。
恐怖。
殺される。
ニゲロ。
───殺気。
『!?!?!?』
いや、殺気という次元では無い。それを証拠に四肢が言う事を聞いていない。
“支配されている”
巨大生物は碌に動けない状態の中、恐る恐るウルキオラを見やる。視線の先の彼は相変わらず此方を一瞥すらしていない。
「おい」
『カ……ッ……!?』
その呼び掛け一つに巨大生物は息すら詰まり呼吸困難となる。逃げようにも逃げられず、最後の手段の逃亡すら許されない。ウルキオラが巨大生物に行っている事を形容する単語はこれしか言い表せないだろう。
『蹂躙』と。
「
漸くウルキオラがその無機質な翠の双眼でこちらを一瞥する。その瞬間、巨大生物が感じていた恐怖は臨界点を突破した。
この後、巨大生物がどうなったのかは言うまでも無い───
△▼△▼△▼△▼△▼
幼き少年、里見蓮太郎は地面を
彼のこれまでの人生はその年齢にしては絶望的なものであった。
謎の寄生生物『ガストレア』の侵攻により彼の住んでいた地域が激戦区となったのはつい一週間前の事。
戦闘機による上空からの砲撃や迫撃砲によって夜空が紅蓮に染まった中、列車に押し込まれる。その時に両親は『俺と母さんもすぐに行く』という最後の言葉を残していた。
そして五日後、小さい消し炭として少年の元に来た。同時に告げられた言葉である合同葬儀。
そして少年、里見蓮太郎は『絶望』した。
目の前の状況を理解するのに何時間も掛かった。いや、理解では無くそれを肯定したくなかった。
気付けば葬儀の中、読経を唱える和尚に掴み掛かり、棺の蓋を蹴り飛ばして大暴れし、挙句の果てには家を飛び出す始末。
そうして少年が流れ着いた場所は避難民のいる仮設テント。しかしこの過酷な時代の中、無一文の彼に食料を分け与える様な者が現れる筈も無い。
だがあの家───天童家に戻ろうとする意思は微塵も無い。空腹よって彼は次第に衰弱して行った。
それを追い打ちするかの様に現在、戦闘機によって撃墜された巨大生物が少年の付近に墜落した。
墜落した巨大生物は大音響と共に幾多の建造物や彼の住んでいた仮設テントを纏めて薙ぎ倒す。そしてこちら目掛けてハードランディングして来る。
「う、うぅ……」
破砕音と共に墜落した巨大生物は蓮太郎の手が届きそうな距離にまで接近していた。蓮太郎は地に這い蹲り呻き声を上げる。同じく巨大生物も呻き声を上げ、赤い目で此方を見ている。
───こいつらのお陰で。
───いや、こいつらの所為で。
両親を奪ったであろう謎の寄生生物『ガストレア』達。蓮太郎の憎悪はその赤い目を見た瞬間、奥底から溢れ出て来る。その憎悪に共鳴するかの様に、巨大生物が再び活動を始める。
ガストレアには基本的に通常兵器は意味を成さない。驚異の再生力によって無効化同然と化してしまうからだ。
空対空ミサイルによって
『ギギギギ……』
そしていよいよ、その巨大生物の大きな口が開かれた。蓮太郎を喰らい尽くそうという魂胆だ。
それを目にしても尚、少年は諦め切れなかった。ガストレアに対する憎悪を抱えたまま無残に喰われるなどと真っ平御免だ。
「く、そぉ……」
しかし、衰弱し切った身体では動くにも動けなかった。これではガストレアに対する憎悪を向ける事すら出来ない。
蓮太郎は己の非力さを呪った。
───もっと力が有ったなら。
───こいつらを倒せるだけの力が有ったなら。
───ちくしょう。
そう少年が己を呪い、ガストレアが少年を喰らい尽くそうとした。
その時だった───
「『
───不意に聞こえた声と共に、目の前の巨大生物がより巨大な翠の閃光によって一瞬で掻き消された。
「……え?」
目の前の出来事に、蓮太郎は惚けた声を上げる。一体何が起こったのか理解出来なかった。
すると、近くから足音が聞こえて来る。それは決してガストレアの様な大きな足音では無く、人が歩く時の静かな足音と同じもの。
「……だ、れ?」
少年はその足音の方向に顔を向ける。そして目を見開く。
その視線の先にいた人物は、白い肌に白い装束、左頭部に角を生やした割れた兜を付け、腰に刀を携えるその姿は他とは全く別次元の雰囲気を放っていた。
「………」
その白い人物は黙ったまま此方を見下ろし、無機質な翠の双眼で少年を見ていた。その威圧感に蓮太郎は息を呑み、白い人物を見つめる。すると、その人物は不意に蓮太郎へ問い掛けた。
「……力が、欲しいか?」
「……え?」
その問い掛けに、蓮太郎は再び惚けた声を上げる。その言葉をすぐに飲み込めなかったからだ。
「力が欲しいのかと言っている」
再度詮索する白い人物。その言葉は本当がどうかは分からないが、蓮太郎にとってはそれが本当の様に聞こえた。
そして少年、里見蓮太郎の選択は───
「───欲しい。アイツらを倒す力が、欲しいっ……!」
───それを望んだ。
「……そうか」
白い人物はそう言うと右手に刀を、左手には髑髏の仮面を創り出した。そしてそれを蓮太郎の目の前へと落とす。
「……力を手にしたくば、それを取れ。来るべき時、それはお前を助ける力となる」
蓮太郎の目の前に落とされた刀と仮面。
刀は飾り気の無い形をしていた。
髑髏の仮面は紋様が何一つ入っていなかった。
だが、その二つは白い人物と同じ雰囲気を発していた。
「……だが、一つ忠告しておこう」
そこで白い人物から忠告が入る。蓮太郎は再び顔を上げ、相手を見る。
「その力に己を呑み込まれるな。確固たる自我を持て。さもなくばお前という存在は消えて無くなるだろう」
「……っ」
その忠告に、蓮太郎は再び息を呑む。何故かその忠告を忘れてはならない気がした。蓮太郎の本能がそう告げているからだ。
「そして、もう一つだけ言おう」
「……?」
そう言うと白い人物は踵を返し、ガストレアが此方に接近している方向へ向く。
そして相対する新たなガストレア。それは『ステージIV』と呼ばれる個体だった。
ガストレアは咆哮を上げ、彼に襲い掛かる。対する白い人物は右腕を薙ぎ払う様に振るった。
───それだけの行為で相対するガストレアは一瞬にして塵と化し絶命した。
「───『生きろ』」
「!!」
最後にそう告げて彼は一瞬にして姿を消した。その現象にも驚いたが、何よりもその言葉が少年の心に響いた。
「……僕は、死にたくない。生きる。生きて生きて生き残ってやる」
蓮太郎は白い人物から告げられた言葉を心の中で反芻しながら自身に言い聞かせていた。
『生きろ』と。
「……うぅ……!」
少年は手を伸ばす。彼が与えてくれた力を手にする為に。残った全ての力を両腕に込めて、それを掴み取る為に。
そして掴む刀と仮面。
するとその二つは蓮太郎に溶けて行くかの様に馴染んで行く。蓮太郎は右手に刀を握り締めて、左手に掴んだ仮面を己の顔へゆっくりと被った。
それを最後に少年、里見蓮太郎の意識は途切れた───
△▼△▼△▼△▼△▼
「……あの餓鬼の瞳は何故か黒崎一護に似ている」
ウルキオラはそう呟いた。
最初に目撃した巨大生物が墜落した地点へ到着すると、一人の少年が衰弱した状態で地面を這い蹲っていた。
だが、その
それに興味を持ったウルキオラは『死神の因子』と『虚の因子』を少年へ与えた。
それは因子であり、すぐに発生するものでは無い。斬魄刀の『浅打』の様に何年も掛けて馴染んで行き、力を顕現する。少年に与えた因子はそういう構造にしてある。
その因子がどの様な形となって顕現するのかはあの少年や与えた本人であるウルキオラですら分からない。
只、一つ言えるとすれば与えた本人がウルキオラである故、因子の力は『
何がともあれ、与えた力は与えられた本人次第で強くなったり弱くなったりするという事だ。
ウルキオラは
「……この世界は『死』と『絶望』によって包まれている」
───そして最も感じたもの。
それは『負の感情』。
「……箱庭ではあまり感じた事の無い『心』だ。この世界が今後どの様な形になるのか興味深い」
そう呟いた後、ウルキオラは右手に『
百年の研鑽によって『破道の九十六・一刀火葬』を上回る威力を手にしたそれは一瞬にして巨大生物達を焼き尽くす。
「……そして学ぶ必要が有る様だ。この世界に充満している『負の感情』を」
そうしてウルキオラは歩き出す。巨大生物など目もくれずに。
新たな世界にて、ウルキオラの心を理解する物語の続きが始まった───
時は二○二一年。
謎の寄生生物『ガストレア』に為す術も無く、人類は駆逐され全人口八○億人の九割が死滅した。
それに伴い、世界の各国は事実上の敗北宣言を行い『モノリス』へと閉じ籠る事になる。
───人類は『ガストレア』に敗北した。
ウルキオラがやって来たのはガストレア戦争初期の頃です。
つまり原作前ですね。
それと原作と違い様々な変更点が有りますのでご注意下さい。
変更点についてはその話ごとに挙げていきます。
では次回にて。