第4十刃が異世界へ渡るそうですよ? 【ブラック・ブレット編】   作:安全第一

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第三話です。

ここで原作と違う点は、

・前回の話で蓮太郎が力を得ている(未覚醒)
・ゾディアックガストレアの数が11体→この作品では12体

この2点ですね。

因みにこの第三話の時系列はガストレア戦争の六年後、つまり原作の四年前となっています。

ではそれを踏まえた上でどうぞ。



3.vs『ステージV』

 ───人類がガストレアに敗北してから凡そ六年の歳月が流れた。

 

 『モノリス』へと閉じ籠る事によって生き永らえた人類は現在もガストレアの脅威に怯えながら過ごしていた。

 『ガストレア戦争』が世界規模で勃発し、日本国では瞬く間に活動領域を五つに分断されてしまう。その五つの活動領域である『エリア』は東京、大阪、北海道、仙台、博多の五つであり、それぞれ狭い空間に閉じ籠って暮らしている。

 当時は自衛隊による自衛戦が張られた関東区域では多大な犠牲を払い辛うじて侵攻を防ぐものの、更に活動領域が後退してしまった。後にこの出来事は『第一次関東会戦』と呼ばれた。

 次いで一年前にガストレアの大群によって東京エリアが未曾有の危機に晒されたが、既に人類はガストレアに対する対抗手段を得ていた。

 

『バラニウム』

 

 ガストレアの再生能力を阻害出来る唯一の金属であり、様々な用途に使われている。幅約一km、高さ約一・六kmもある巨大な『モノリス』もバラニウムの塊を加工し等間隔で囲う事によって磁場を形成しガストレアの侵攻を食い止めているのだ。

 自衛隊はそれを弾頭や弾薬として使用して応戦する事でガストレアを退ける事に成功した。この日を『第二次関東会戦』と呼び、東京エリアを守った記念として二千挺の銃を溶かして作った記念碑「回帰の炎」を外周第40区に建てた。

 

 そしてこの『第一次関東会戦』及び『第二次関東会戦』にて自衛の為とはいえ、ガストレアを蹂躙する圧倒的戦闘力を見せた第4十刃、ウルキオラ・シファーは現在───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───『五翔会』本部

 

「……『ステージV』だと?」

「その通りだ。君には現在東京エリアに侵攻しつつあるこの『ステージV』を撃破して貰いたい」

 

 僅かなライトによって照らされた薄暗い空間にて、ウルキオラはある人物と会合していた。

 相手は『第一次関東会戦』後、大規模で発足し始めた超国家的組織『五翔会』の頭領である。薄暗い空間の所為で顔は視認出来ないが、その雰囲気は只者では無い事が伺える。

 ウルキオラがこの五翔会と関わりを持ったのは『第二次関東会戦』以降の事である。その会戦にてウルキオラの持つ圧倒的な力に目を付けた五翔会は頭領自らが直接コンタクトを取って来たのが始まりである。

 五翔会の目的はガストレアのいない世界を作る為、世界各国に成り代わって秩序を維持し、世界の覇権を握ることにある。ウルキオラにとってはどうでも良い事でありその組織には組さなかったが、その頭領とは何度か会合を開いていた。

 そして今回の会合にて、その頭領はウルキオラへ依頼を申し込んでいた。

 

 内容は『ステージV(ファイブ)』の撃破。

 

 ガストレアには感染して間もないステージIから完成形であるステージIVまで4段階に分けられている。尚、ステージが進行して行く過程にて様々な生物のDNAを取り込む。それ故にステージIII以降のガストレアはそれぞれ異なる異形の姿と特徴を持ち『オリジナル』と呼ばれている。だが、その段階の差別は『I』から『IV』では無い。

 

 本来のガストレアの段階の差別は『I』から『V』。

 

 それは通常では発生し得ないガストレア。

 

 ステージIVが子供同然に見える程に巨躯。

 

 通常兵器が殆ど通じない程の硬度な皮膚。

 

 分子レベルの再生能力。

 

 通常のガストレアと違い、『モノリス』の地場の影響を受け付けない。

 

 そしてガストレア戦争にて猛威を振るい、世界を滅ぼした存在でもある。

 

 現在は十二体がその存在を確認されており、一体として撃破されていない。

 

 その総称を『ゾディアック』と呼ぶ。

 

 

 

「……個体名は?」

「『巨蟹宮(キャンサー)』。ステージVの中で最も堅牢であるガストレアさ」

 

 現在この東京エリアに侵攻している『ステージV』は『巨蟹宮(キャンサー)』。その名の如く甲殻類に近い個体との事。

 だが侮るなかれ、その個体は『ゾディアック』。確認されたデータによると体躯は当然ながら超弩級。そして先程の頭領の言った通り、『ゾディアック』中最強の防御力を持つ個体。恐らく核弾頭でも倒せないだろうと科学者達の中では結論付られている程だ。

 その防御力最強の『ゾディアック』がこの東京エリアに侵攻している。五翔会が『ゾディアック』侵攻を察知したのは東京エリア襲来まで残り六日と言った所であった。

 その事態は東京エリアや他のエリアでは知らされていないが、五翔会にとって此れは危機的状況に直面していた。

 

 故に、ウルキオラへ依頼した。

 

 腰に挿さった刀を抜くこと無く、片腕を薙ぎ払っただけでステージIVを容易く消し飛ばす別次元の力。それがあれば『ゾディアック』を撃破する事も夢では無いと。

 それに加え、ウルキオラが『ゾディアック』を撃破すれば人類初の大快挙となり、世界に多大なる影響を与えるだろう。

 

「……成る程、俺としてもこの東京エリアが壊滅する事は避けたい」

「では、依頼を()けてくれるのかい?」

「良いだろう。その依頼、承けてやる」

 

 ウルキオラはその依頼を即断し了承する。優柔不断の要素が皆無であり、完璧主義である彼の性格は五翔会の頭領も高く評価している。曰く、「非の打ち所がないとはこの事」らしい。

 

「……だが対価は何だ? 幾ら貴様と俺の仲とはいえ、対価が無い依頼なら即刻取り消すが」

「いや、既に報酬は用意してあるよ。何せ『ゾディアック』討伐だからね。戦果は特一戦果級ものだよ」

「……内容は?」

「最近発足した国際イニシエーター監督機構『IISO』のIP序列一位の権利、聖天子との直接交渉権、重要機密情報のアクセス権、と言った所かな? 勿論、莫大な報酬金も恵むがね」

「……『IISO』はプロモーターとイニシエーターの二人一組でなければ申請出来ない筈だが?」

「フフフ、例えそうであれ世界最強の戦闘力を持つ君が序列一位に居座る事は必然でないかな? イニシエーターすら霞んで見える程の力を世界が否定する道理が無いよ」

「……まあいい、対価は及第点として見てやろう」

 

 このやり取りの後、一時間程の会話を経てウルキオラはその場から立ち去った。その姿を頭領は不敵な笑みを浮かべて見ていた。

 

「……私としても君との会話は実に有意義なものだよ。ウルキオラ・シファー。

君のその眼が世界をどの様に映しているのか、拝見させて貰うよ」

 

 その時に呟いたその言葉は誰にも聞こえる事は無い───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───未踏破領域

 

 依頼を承けてから一日が過ぎた頃、ウルキオラは単身で未踏破領域の奥深くまで進出していた。

 エリア外へと行くと、六年前の光景が嘘の様に変化していた。廃墟だった建物は不気味な植物によって侵食され、全体が樹海の如く覆われていた。此れも常識を覆すガストレアウィルスの影響である。

 その未踏破領域では恐竜が存在していた大昔の様に巨大なガストレアであるステージIIIやIVが多数生息している。並の実力者では只蹂躙されるだけだろう。とは言え、『IISO』は最近発足された組織である為、ガストレアに対抗する戦力は皆無に等しい。戦力の要である自衛隊もガストレア侵攻の迎撃のみに展開される故、此方から攻めに行く事も無い。

 

「グオオオォォォォォォッ!!!」

 

 ウルキオラの真正面から、ステージIIIであろうライオンに酷似した巨大なガストレアが大きく口を開き襲い掛かる。だがウルキオラにはその出来事自体、眼中に無い。

 刹那、噛み砕こうとしていたガストレアが突如として崩壊し勝手に消滅して行く(・・・・・・・・・・・・・・・・・)。それでもウルキオラは依然として目的地まで歩いて行く。

 

「キシャアアアァァァァッ!!!」

 

 その歩みを止めようと、次は大蛇に似た巨大ガストレアが襲い掛かる。此方は恐らくステージIV。

 

 だが、結果は同じ。

 

 大蛇のガストレアも先程のガストレアと同じ様に、勝手に形象崩壊して行く。

 此れまで幾百のガストレアがウルキオラへと斃す為に襲い掛かるが、そのどれもが自らを形象崩壊させて斃されて行く。

 その理由はこの現象が原因だった。

 

 

 

 ───『細胞自殺(アポトーシス)

 

 

 

 アポトーシスとは、例えばオタマジャクシがカエルに変態する際に、その過程として尾が短くなって行く現象の事を指す。人間の手や足なども、その形を形成する為にアポトーシスを引き起こす事で指を得て丁度良いバランスとなるのだ。

 つまり個体をより良い状態に保つ為に積極的に引き起こされるもの。管理・調節された『細胞の自殺』、つまり「プログラムされた細胞死」なのだ。

 

 だがこのガストレア達が引き起こしたケースは違うものと言って良い。

 

 嘗て箱庭の世界にて己の力に加え、黒崎一護の力を得たウルキオラは百年もの間、研鑽を積みその力を強大して行った。

 

 そして崩玉との邂逅、そして完全融合。

 

 此れによって、殆どの修羅神仏はウルキオラの霊圧を感じ取る事が出来なくなった。その圧倒的過ぎる力の差によって。

 今回の現象はそれによる原因でもある。『モノリス』の中ではウルキオラが自らの霊圧のレベルを極限まで下げている為に人間に影響を及ぼしていない。

 

 だが未踏破領域では別だ。

 

 ウルキオラは未踏破領域へ進出した瞬間から霊圧を通常レベルへ戻す。その時点からウルキオラはガストレアにとって最も恐ろしい天敵となるのだ。

 次元の違う霊圧に触れた生物達はその形を維持出来なくなる。それは常識を覆すガストレアも『生物』という前提が有る為に、逃れられなかった。

 ウルキオラは通常の霊圧ですら僅かにしか解放していない。その僅かな霊圧こそがガストレアをアポトーシスへと陥れる原因だったのだ。

 

 ウルキオラの霊圧に恐怖し、細胞単位でショック死を引き起こす事で「死」を内包しているプログラムを無理矢理書き込まれる(・・・・・・・・・・)という形で。

 

 ただ厳密に言えば外部からの影響によって引き起こされているのでアポトーシスでは無く、『ネクローシス』と言った方がニュアンスに合っているだろう。

 

 その結果ウルキオラの歩いた道の後方では、アポトーシス(厳密に言えばネクローシスだが)によって踠き苦しみながら死んで行くガストレア達や既に死亡しているガストレア達の死骸が転がっていた。

 まるで蟻を踏み潰すかの様に、ウルキオラはガストレア達に目もくれていない。彼の目標は『ステージV』を斃す事だけ。故に一々ステージIV以下のガストレア達(雑魚共)に構っている趣味は無いのだ。まあ元から相手にしていないのだが。

 この光景を人類が目撃すれば、たちまちウルキオラは世界を震撼させ尚且つ畏怖の象徴として掲げられるだろう。

 

 

 

 

 

「……あれがそうか」

 

 ウルキオラがふとそう呟く。その眼前に広がっていた光景の中に凡そ五km先からであるが、巨大な影が此方に向かって侵攻していた。

 

 体躯は凡そ七○○mはあろう巨躯。ゴツゴツとした堅牢な甲殻に覆われ、鋏の代わりに右腕が巨大な剣を、左腕は巨大な盾を構成していた。

 脚も本来の蟹の四対の脚を無視し五対の脚へと変化しており、横歩きをする気配は無く、その五対の脚を巧みに動かしそのまま前進していた。その一歩一歩の前進をする度に地が震える。

 

 

 あれこそが『ステージV』。又の名をゾディアックガストレア・キャンサー

 

 

 敢えて言おう。ガストレアウィルスは常識を覆す。

 キャンサーは既に凡そ五km先に居るウルキオラの存在を認識していた。

 

 そして同時にウルキオラを我らガストレアの天敵たる者だと認識していた。

 

 キャンサーはウルキオラに向けてその巨大な剣を構成した右腕を大きく振り上げ、狙いを定める。

 

 刹那、巨躯からでは有り得ない速度で振り下ろされたそれは巨大な斬撃となり、五km先にいるウルキオラへと肉薄した。

 

「……ほう」

 

 ウルキオラは感嘆と共にその斬撃を素手で受け止める。だが受け止めても尚、その斬撃はウルキオラを切り裂かんとする。

 しかしウルキオラはそれすら覆す超越者。手に力を込め、その斬撃を掴み取った(・・・・・・・・・・)

 

「返すぞ」

 

 その一言と共に、斬撃を弾く様に投げる。するとその斬撃はあろうことかキャンサーへと返って来たのだ。

 

「ギギィッ!!!」

 

 斬撃を返された驚きからなのか、突如として声を上げる。そして咄嗟に左腕の巨大な盾を展開し、肉薄するそれを防ぎ切る。盾からは煙が出ていたが、傷は一つも付いていない。

 

「……成る程、貴様は只のガストレアでは無い事は認めてやろう」

 

 

 

 ───だが、それだけだ。

 

 

 

 ウルキオラはそう呟くと、手刀に霊圧を込め僅かに横へなぞる様に薙いだ。

 

 『月牙天衝』

 

 その霊圧を込めた手刀の斬撃は辺り一面の樹海を全て切り裂き、キャンサーの脚を二、三本切断した。

 

「ギシャアアアアァァァッ!!」

 

 バターの様に軽く切り裂かれた脚から黒い血の様な体液が霧の様に噴出する。その一撃に脚を失い体勢を崩したキャンサーは改めてウルキオラに憤怒の感情をぶつける。しかしその行為をウルキオラは冷酷にあしらう。

 

「……心無き弱者の貴様が幾ら憤怒の感情をぶつけた所で、何も変わらん」

 

 ───心が無ければ、それは無駄な事だ。

 

 響転(ソニード)

 ウルキオラはそれを使用し、五km先であるキャンサーの元に一瞬で肉薄した。それと同時に既に両手には『剣虚閃(グラディウス・セロ)』を形成しており、それを投げつける。

 莫大な霊圧と霊力が込められた剣はキャンサーの堅牢な甲殻へと突き刺さる。その防御力を一切無視して(・・・・・・・・・・)

 

 その事実はキャンサーを戦慄させた。

 

「ギガアァァッ!!!」

 

 咆哮したキャンサーは巨大な剣をウルキオラへと振り回し、大地を裂いて行く。だが、ウルキオラはそれを僅かな動きで意図も容易く躱す。それから暫くの間、その応酬が続いた。

 

 ウルキオラが霊力の剣をキャンサーの部分箇所に次々と突き刺して行き、キャンサーの攻撃を悉く躱して行く。

 キャンサー相手では幾らその防御力を貫通したとはいえ、剣で突き刺されただけでは決定打を与えられない。ウルキオラはその事は既に承知している。だがキャンサーはそうでは無かった。

 

 その剣が一体何なのかを重要視していなかった。

 それ故に、その剣を放置していた。

 

 応酬が続き、キャンサーの堅牢な甲殻には様々な部位に剣が幾つも突き刺さっている。ウルキオラは頃合いだと判断し、その場を離脱する。その際に指先に霊力を収束させていた。

 

迅光虚閃(ルース・セロ)

 

 指先から放たれた虚閃はこれまでの虚閃と違い、鋭く細い翠の光線となってキャンサーに襲い掛かる。キャンサーはこれを防ぐべく、盾を展開しその虚閃に備える。

 

 だが、翠の光線は紙を破る様に盾を容易く貫き、キャンサーの脳天を貫通した。

 

「ギガアアアアァァァァッ!!」

 

 改めて己の盾と脳天が貫かれた驚愕し、共に襲い掛かった痛みによってキャンサーは悲鳴の如き声を上げる。

 

 しかしそれだけでは終わらなかった。

 

 ウルキオラが幾つも突き刺した霊力の剣。キャンサーがそれを放置していた事はこの後重大な誤りであることに気付かされる。

 ウルキオラは響転で先程と同じ約五kmの距離を取ると、『剣虚閃』を形成しキャンサーへと尋常外の速度で投げつける。それがキャンサーへと突き刺さる寸前で起爆した(・・・・)

 

 

剣虚閃・無天(グラディウス・セロ・ナーダ・シエロ)

 

 

 その起爆によって、多数に突き刺さっていた『剣虚閃』が一斉に起爆し、半径三kmの全てが焼き尽くされた。

 巨大と形容しても物足りないその超弩級の火柱は天高く舞い上がり、空を紅蓮の色へと塗り替える。

 

「……やはりこの程度の威力か。改良の余地が必要の様だ」

 

 ウルキオラは霊子を固めて足場を作る事で空中に立ちその様子を見ていた。だが結果は今一つらしく、今後の改良を考えていた。

 すると、その火柱の中から影が現れる。ウルキオラは予想していたのか眉一つ動かさなかった。

 

 その中からキャンサーが満身創痍の状態で現れた。

 

 堅牢な甲殻は罅割れ、崩れ落ちている部位が多く、両腕の剣と盾は粉々に崩壊していた。五対の脚も三、四本が消失していた。

 

 だが満身創痍となっても尚、その歩みを止める事は無かった。

 

「ギ、ギギィ……」

 

 残った僅かな脚で砕けた脚を引き摺り、東京エリアへと進んで行く。しかし先程の一撃はキャンサーの意識は朦朧となっており、ウルキオラとの交戦を維持する事すらままならない状態だった。

 その醜態は最早、世界を滅ぼした一体とは到底思えなかった。

 

「……良いだろう。せめてその五体、塵にして葬ってやろう」

 

 その醜態を見兼ねたのか、ウルキオラは指先に霊力を収束させる。

 それと同時にキャンサーを取り囲む様に霊力の塊が出現した。

 

 

 ───その数、千。

 

 

 本当ならば、先程の『剣虚閃・無天』でキャンサーは絶命する筈だった。しかし、キャンサーはそれに耐えた。

 何故、キャンサーは満身創痍となっても尚、東京エリアへと侵攻を止めなかったのか。その姿は奪われたものを取り返しに行っている(・・・・・・・・・・・・・・・・・)様にも見えた。

 ウルキオラはその事に興味を持ちながら虚閃を放った。

 

 虚閃が直撃したキャンサーは甲殻が次々に砕け散って行き、遂にその巨躯が崩れ落ちた。

 ウルキオラはその様子を見た後、踵を返しキャンサーを取り囲んでいる千もの数の霊力の塊を一斉掃射した。

 

 

 

千星虚閃(エストレヤ・セロ)

 

 

 

 『多重虚閃(マルチプル・セロ)』を容易く上回る虚閃の弾幕にキャンサーは為す術もない。

 

「ギシャアアアアアアアァァァァ………」

 

 そのままキャンサーは断末魔の悲鳴を上げながら翠の弾幕に包み込まれ、分子レベルで崩壊し死滅して行った。

 

「………」

 

 ウルキオラはその最期を見届ける事はせず、そのまま来た道へと引き返すのだった───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 ウルキオラは歩きながら思う。この出来事を皮切りに、人類の反撃が始まると。己はその一役を買って出ただけに過ぎないと。

 ウルキオラは人間ではないし、加えて異世界から来た住人だ。その住人がこの物語を無闇矢鱈(むやみやたら)と掻き乱してはならない。

 だが、今回の介入は巨蟹宮(キャンサー)の存在自体がイレギュラーだったからこそ可能だったのだ。

 ウルキオラの崩玉曰く、ウルキオラというイレギュラーによって本来現れる筈の無かったイレギュラーが現れた。それが巨蟹宮(キャンサー)

 イレギュラー(キャンサー)にはイレギュラー(ウルキオラ)で対処するのが必然。故にウルキオラはこの依頼を承け、イレギュラー(キャンサー)を斃した。

 

 今回は只それだけの事だった。

 

 まだ物語の歯車は動いていない。歯車を動かすに必要な主要人物が来るべき時まで成長していないが故。

 そこでウルキオラは六年前のあの幼き少年を思い出していた。

 

 里見蓮太郎。

 

 後に、彼の情報を得て知った名だ。ウルキオラは彼の名に関心を持った。

 

 

『蓮』

 

 それは極楽浄土や往生の象徴的表現である文字。

 仏教の世界では宇宙で最も美しいものの象徴。

 

 

 彼と出会ったのは偶然か必然か。それは分からないが、ウルキオラは想定していた。

 

 あの少年が、この世界の中心となる存在に成り得るだろうと。

 

「……見届けてやろう。あの餓鬼の決断を」

 

 ウルキオラはそう言葉を漏らし、未踏破領域の中を歩いて行った。後に、ウルキオラの予想は的を射る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───その事実に世界が震撼した。

 

 『人類初のゾディアックガストレア撃破』。それは人類に希望を(もたら)す事になった。

 

 同時に世界は彼に畏怖した。

 

 彼の名は明かされる事は無く、謎に包まれている。何らかの組織が情報規制をしている為、正体が伺えなかったからだ。

 それと同時に彼は『IISO』の序列一位に君臨する。その二つ名は『虚無(エンプティ)』。イニシエーターが不在という例外だが、人類初のゾディアックガストレア撃破者である為、誰も咎めなかった。

 

 

 

 

 

 しかし、その二年後。

 

 とあるイニシエーターとプロモーターがゾディアックガストレアの一体『金牛宮(タウルス)』を撃破。続いてドイツに所属するイニシエーターとプロモーターが『処女宮(ヴァルゴ)』を撃破する。

 それを機に序列一位に君臨していた人類初のゾディアックガストレア撃破者はあっさりとその座を明け渡した。現在は『金牛宮(タウルス)』を撃破したペアが一位、『処女宮(ヴァルゴ)』を撃破したペアが二位となっている。

 

 そして、それを境に人類初のゾディアックガストレア撃破者は自らの名を明かした。

 

 ウルキオラ・シファー。

 

 現在、序列四位の彼はある二つ名(・・・・・)を称し自らの名を明かした。それは瞬く間に世界へと認知される。

 

 そして世界は彼が称しているその二つ名で認識され、その呼称で畏怖される事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───『第4十刃(クアトロ・エスパーダ)』と。

 

 




ウルキオラの開発した虚閃。

『千星虚閃(エストレヤ・セロ』
『多重虚閃』を超えた虚閃。千の虚閃を放つ最強の戦略級の技。霊力を莫大に消耗する為、使用頻度は低いが威力、範囲は共に絶大。

『迅光虚閃(ルース・セロ)』
通常の虚閃を細く圧縮し光線として放つ。速度と貫通力に優れる。見た目としては破道の白雷。

剣虚閃・無天(グラディウス・セロ・ナーダ・シエロ)
剣虚閃を投擲後、あえて爆発させずに放置。一定範囲内に数本ばら撒く。
その後敵を誘導し、解放。山のように大きな一刀火葬が立ち上がる。
複数の剣虚閃を共鳴爆発させることで威力を乗算的に倍化。
本数が多いほど威力、霊力のコストパフォーマンスに優れる。


月牙天衝 手刀ver
手刀に月牙を収束させて放つ技。
斬魄刀で放つより幾分か威力が落ちるが、加減の調整がやり易い。
月牙を纏ったままの斬撃も可能。




今回はウルキオラ無双回(白目
ゾディアックガストレアもこれには涙目(震え声
ですが、恐らく無双回はこれ以降出てこないと思います。

そして今回登場させた虚閃(月牙天衝 手刀verは除く)は、あるお方からアイディアを頂きました。本当に有難うございます!

次回はなんとあの人物が……!?

では次回にて。
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