博麗霊夢に転生したが、あと余命1年らしい   作:鳩羽しろ

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今回はちょっと短めです。
ご了承ください。


『霧雨魔理沙』の日記 〇月 一頁目

──霧雨魔理沙の日記

 

 

 

 

〇月Ω日

 

今日の夜、私の家に紫が来た。

霊夢やアリス以外私の家に来ること自体が、珍しい事だったし、何より家に来たのは紫だ。

正直、めちゃくちゃ警戒した。

 

また何かしらの面倒事かと少しばかり恐れていたけれど、どうやら違うようだった。

 

私から見て紫の姿は、どこか真剣そうな雰囲気がしたのだ。

それだけでも、異常なことだった。

 

大体いつもの紫は、持ち前の胡散臭さを醸し出し、何なら扇子を使って口を隠すもんだから、本当に何を考えているのか分からない。

でも、今の紫はそんないつもの雰囲気は全く感じさせず、真剣そうな、そして心なしか悲痛そうな顔をしていたのが印象的だったのだ。

 

もちろん、私はその異常をすぐに察知したから、紫をすぐに追い返すなんてことはしなかった。

「……何か用か?」とだけ言って、その後の紫の行動を見極めるつもりだった。

 

……でも、私がそういった後の紫の表情はさっきと比べて、誰がどう見てもわかるほど泣きそうな顔をしていたのだ。

流石におかしかった。

幻想郷の創設者ともあろう妖怪が、私のようなちっぽけな人間に対して、弱いところを見せるなんて前代未聞だ。

 

私が困惑している中、紫は言いにくそうに口を動かした。

紫は悲しそうに「……本当に急でごめんなさい……でも、どうしても伝えなければいけないことがあって、ここに来たの」と言った。

 

その時の私は間抜けな顔をしていただろう。

紫からそんな大事な情報を伝えられるなんて、今日の朝の私は想像もしなかったはずだし。

 

そして、ゆっくりと紫は言葉を続けた。

 

「……霊夢は……霊夢はもう……1年しか生きられないって言ったら、信じてくれる?」

 

紫から放たれた言葉は、あまりにも現実味がなく、あまりにも突拍子がない。

普段の私であれば、ただの戯言、質の悪い冗談だと言って、一蹴りしていたと思う。

 

でも、今回ばかりはそうはいかなかった。

紫がこんなに真剣で、泣きそうな顔で。

そして、最近の霊夢の様子。

 

それらが、最悪の形で結びあってしまったのだ。

 

はっきり言って、「信じるわけないだろ」と、言いたかった。

……でも、その時の私はどうしてもそのようなことは言えなかった。

 

本能的に、正しいと悟ってしまったのかもしれない。

 

とにかく、その後に紫からはいろいろ話された。

でも、内容は全く覚えていないし、知りたくもなかった。

 

これ以上、霊夢について聞きたくもなかった。

 

そんな私の心情を紫も悟ったのか、ゆっくりと私に近づき、ハグをしてきた。

そして、泣いた。

どちらも泣いた。

 

私はもう何も考えたくはない。

その後、私は疲れて寝てしまった。

 

もう、霊夢とは会えなくなる。

そんな思いだけが、私の心を支配した。

 

正直、霊夢と会うのが怖い。

現実を突きつけられたくない。

 

私は何日か、引きこもることになった。

 

 

 

 

〇月□日

 

ようやく、私は少しだけ立ち直ることができた。

だけれども、私の心にはまだネガティブな感情ばかりが巣食っている。

 

だが、このまま現状維持は私の性分ではない。

しっかりと霊夢と会って、霊夢と話して、現実を見なければいけないのだ。

 

私はそう思った。

だから私は今日、博麗神社に向かった。

 

足取りはとても重く、今にも私の家に帰って、現実から目を背けたいとも思っていた。

だけれども、それは私自身が許さない。

現実を見るまで、絶対に心を閉ざさないと決めているのだ。

 

そんな決意もあったせいなのか、気が付いたら博麗神社にはついていた。

だけれども、階段を上るのがどうしても遅かった。

 

そして、後何段か上ることで、博麗神社を見ることができるところまで私は来ていた。

ここまで相当、私の心の中にある悪いものが暴れまわって、今にも爆発しそうなほど、精神は摩耗していた。

 

霊夢に会えるまで、あとちょっと。

そう思ったら、私の足取りは自然と早くなっていった。

 

あとほんの少しの階段を上り切って、とうとう、霊夢と会うことができた。

久しぶりだった。

実に1週間ぶりだ。

 

私がそんなに何日も霊夢と会わなかったことは、ほとんどない。

今回が初めてぐらいだ。

 

そして、私は霊夢に向けて、手を振ったのだ。

 

久しぶりだな!

 

私はそう言おうとした瞬間のことだった。

突然、霊夢に一切の生気がなくなった。

 

その時、まるで咲夜の能力が使われたかのように、世界が完全に止まった。

呼吸はもちろん、心臓も、血も、頭も、何もかもが機能停止しているかのようだった。

 

その時に私が感じた感情は、紛れもない恐怖だ。

妖怪と会う程度では感じることができない。

まるで世界最高の怪談を聞いた後のような、妙なおどろおどろしさ。

 

そんな気持ち悪い感覚だけが、私の全身を搔き乱した。

 

……うッ……うぅ……

 

そして、そんな霊夢の呻き声が聞こえてきた。

私はその音を聞くことで、世界の時間が動いたのだと錯覚してしまった。

 

とにかく、何かしないといけない!

 

ようやく動いた私の頭は、とりあえずそんな答えを導き出し、急いで霊夢のもとに駆け寄り、霊夢の背をよしよしと撫でてあげた。

 

近くで見ればわかったけれど、どうやら霊夢は心臓を押さえているようだった。

 

心臓。

 

人間にとって、最も重要な臓器だ。

そして、今、霊夢はそんな臓器に痛みを感じて、こうやって苦しんでいる。

 

自然と、先週言っていた紫の言葉を思い出してしまった。

 

「霊夢はあと1年しか生きられない」

 

その言葉の真実性が、こんな形で証明されることになるなんて。

本当に最悪だった。

 

その言葉が真実なのは、今の霊夢を見たら誰だって信じるだろう。

そして、親友である私ですら信じてしまった。

 

もう、私の顔は涙でいっぱいだった。

情けない声を上げて、霊夢に思い切り抱き着いた。

 

離れないでほしい。

そんな思いがある中、どこか消えてしまうような、そんな感触もあった。

 

そんな考えが私の頭をよぎる中、ようやく霊夢を縁側で寝かすことができた。

そして、霊夢はどこか覇気がない声で「……ごめんなさい……迷惑かけたわね……」と言ってきた。

 

……お願いだからそんなことは言わないでくれ。

霊夢だけは、そんなことは言わないでくれ。

 

いつも私といるときのような霊夢みたいに元気出してくれよ。

お願いだ。

神様お願いだ。

 

どうか霊夢を救ってやってくれ。




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