博麗霊夢の日記──
◇月〇日
ようやく博麗神社に戻ることができた。
いや、別にそんなに長かったわけではないけれど、なんというか前世でいうところのホームシックなような症状に陥ってしまったのかもしれない。
急に家に帰りたくなるというアレだ。
そこまで重症ではないから、正直どうでもいいんだけれども、博麗神社に帰ってきたときの満足感のようなものは結構感じることができた。
まあ、退院した感想はこれぐらいにしといて、今日はあるお客が来た。
茨木華扇だ。
ちなみに例の腕については、もう解決済みではあるけれど、それと言って前と関係が変わることもなかったので、今もよく話す仲である。
それにしても、華扇も私の寿命について知っているのだろうか?
そんな疑問は私の中にはあった。
前に早苗が博麗神社に来た時も、早苗は私の余命については知らなかった。
だから、華扇も必ずしも私について知っているから、ここに来たとは言えないのだ。
そんな考えがその時はあったから、少々疑り深いような表情になっていたのか、華扇から「そんな顔を私にするものじゃありませんよ」と軽く叱られてしまった。
いつもと変わらない。
華扇の様子から見て、そうだった。
やっぱり、紫あたりが私についての情報を遮断しているのかもしれない。
あの早苗が知らなかったこともあるから、そう考えるのが自然だろう。
まあ、その時の私はただ単に華扇は余命について知らない、と言うことしか興味がなかったから、流れるようにお茶を用意した。
久しぶりの博麗神社で飲むお茶は美味しかった。
縁側と言うのはどうしてこうも落ち着くのだろうか?
デザインが神がかっている。
そんなどうでもいいことを考えながら、華扇と話していたからあっという間に時間は過ぎていった。
最近は何かとトラブル続きだったから、こういう日もありかもしれない。
追記
ちなみに華扇は昨日も博麗神社に来たようだった。
だけれども、私はいなかった。
当然だ。
昨日の私はずっと布団の中で寝ていたか、紫の体調診断に付き合っていたかのどちらかしかなかったのだしね。
だから今日も来たようだけれど、魔理沙がいないことに不思議がってはいた。
今日は、昨日べったりとくっついていた魔理沙と萃香はいないのだ。
何か用事があると言っていたけれど、何をしているのやら。
魔理沙は分かるけれど、萃香の用事はホントに予測がつかない。
萃香に予定があると言われたときは「嘘」と言って、すぐに疑ったけれどどうやら真実のようだ。
それにしても萃香に用事か……
世の中、いろいろとおかしくなってしまったようだ。
◇月□日
今日も華扇が来た。
しかも珍しい……のかは分からないけれど、初めて見る組み合わせでだ。
萃香と華扇。
正直、この二人が一緒になってくるなんて想像もしてなかった。
二人とも同じ鬼であることは知ってはいるのだが、実際にこの組み合わせを見るのは初めてだ。
どうやら、仲はそこまで険悪と言うわけではなさそうなのでよかった。
昨日、華扇が博麗神社に来てから、ちょっとだけ心配していたのだ。
萃香と華扇が接触してしまい、何かしらのいざこざが生まれることを。
ただ、その心配も杞憂だったので幸いだった。
それで、最初にあった時に、気づいたことがあった。
華扇の私を見る目が、明らかに昨日とは全く違うのだ。
どこか心配するような、どこか焦っているような、どこか悲しそうな、そんな目をしていたのだ。
まあ、理由はその時の私でもすぐに分かった。
萃香と一緒にいる理由もここにきて理解することができた。
どうやら、華扇も私の余命について知ってしまったらしい。
まあ、そこまで私にとってはマイナスにならないから別に良いんだけどね。
でも、できればいつも通りの華扇の方が良かったなー、……なんてわがままは言わない。
その感情もなくはないけれど、実際に私も身の回りの人がそうなったら、今の華扇のようになる自信がある。
いつも通りを求めすぎない方が、これから何かと良いのかもしれない。
でも、やっぱり……
いや、いけない、いけない。
日記を書いていると、こういう気持ちの滅入り方がたまにある。
その時は何とも感じずとも、振り返って考えてみると、どこかしら後悔を感じてしまったり、気持ちがマイナスな方向に連れていかれてしまうのだ。
過去を振り返るとこのような気持ちの切り替わりがあるから面倒だ。
それがなければもっと楽しめるのに。
……話を戻そう。
そして、私が華扇の違和感に気づいたことに気づいたのか、華扇は目を瞑って「大丈夫です……何も言う必要はありませんよ」と言って、華扇自身の口に人差し指を添えた。
ありがたい。
正直、ありがたかった。
母性と言うのだろうか?
そんなものを私はその時、華扇に感じた。
華扇の私に対する態度は、まさに大人が子供にする態度……もっと言うのであれば、母親が息子に元気を出してもらおうとする時のような対応だと感じた。
後ろからしっかりと見守るけれど、過干渉にはなりすぎない。
そんな理解をしてくれる存在だと感じたのだ。
別に、過度に心配をしてくれる紫みたいな感じでも、本当にありがたい。
それだけでも、本当にありがたいのだ。
だけれども、私は今の華扇のような母性を求めていたのかは分からないけれど、どういう訳か心にストンと収まるような感触がした。
簡単に言うならば、過去最高に落ち着くことができたのだ。
私の心が荒れていたわけではなかった。
でも、なぜか華扇の立ち振る舞いを見ていると、なぜか涙が出そうになった。
そしてその後のことは……日記を書いている今の私からしたら、正直……その後のことは、少し恥ずかしい話になる。
私の心情を察知した華扇は、ゆっくりと抱擁をしてきた。
母性。
やっぱりそんなものを感じた。
久しぶりなような感覚だった。
私はそこで、ぽつぽつと涙を流してしまった。
華扇もはじめこそ私が涙を流していることに驚いていたけれど、それも受け入れてくれたようで優しく頭も撫でてくれた。
あぁ、思い出すだけでも温かかったし、恥ずかしかった。
もちろん、萃香もこの状況を見ていたけれど、萃香も萃香で呆然としていた。
それは当然だ。
私自身、人の前で涙を流すこと、そもそも涙を流すことが本当に久しぶりだった。
もちろん、萃香や華扇も見たことがない。
でも、受け入れてくれたから幾分かは恥ずかしさはましになった。
本当に、華扇には感謝してもしきれない。
そして、敵わないなと安っぽい感想ではあるけれど、そう思った。
追記
ちなみにその後、華扇に膝枕をさせてもらった。
この時はさっきとは違って、めちゃくちゃ恥ずかしかった。
あと、萃香も萃香で煽るな。
それのせいで終始、心が落ち着かなかったし、恥ずかしさで身が悶えそうになった。
……それにしても萃香の「……またか」って何よ?
私、膝枕させてもらったの初めてなんだけど。
ちょっとだけ補足
ちなみに、萃香は最近、霊夢の周りにいる人ら(魔理沙とか華扇とか)のスキンシップが激しいことから、霊夢の事を夢魔やサキュバスじゃないのかと疑っているようです。
だから、最後の「……またか」は……そういうことです。
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