ウマ娘 潮騒のアレグレット   作:秋月@小説

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ごめんなさい!!

はい、初手謝罪ですが二章第二話です。まず毎度ながら弁明させて頂きます。
レポートが終わらねえっっっ!!
私秋月、下手に理系に進んだばっかりに週に二枚の実験レポートを抱えており、他の講義の課題もあり更にアルバイトにサークルと完全にこの二か月間忙殺されておりました。誰か代わって下さい。割と真剣にお願いします。
そして読んでいただけたら分かりますがとある要素に軽率に挑戦した為に執筆が難航し、2023年も締めという所でようやく投稿に至った訳であります。
皆様には毎度お待たせしてしまい申し訳ございません。ですが今回ボリューム自体は今までの回の中でトップクラスとなっておりますので読みごたえは……まあまあある方だと思います。
また第三話も既に完成しておりますので準備出来次第投稿できます。何なら第四話も進捗五割ほどまで進んでいますので新年一発目はそこまでお待たせしないと思われます。



さて雑談のパートです。先日佐賀競馬場のウマ娘コラボ第二回に参戦して参りました。二月の第一回と比べると運営も本腰を入れたなと分かるくらいには賑わっておりまして、私も満喫させて頂いたのですが……ちょっとどころじゃなく寒すぎましたね。ほとんどスタンド内に居たので外で馬が走っているのはほぼ見られませんでした。
それと個人的にですがそこで人生で初めて馬券を買いました。なんならギャンブルに手を出したのも初めてです。朝日杯に賭けた馬券が小勝ちしたので調子に乗って先日の有馬記念にも賭けて、軸馬のジャスティンパレスが四着になったので馬券は壊滅しました。抑えで勝っておいたドウデュースとタイトルホルダーのワイドが当たったので赤字だけは避けられたのは奇跡と言えるでしょう。慣れないのに迂闊に賭けるもんじゃありませんね。

そんなこんなで年の瀬、作中世界線は年を越してますので新年を先取りする気分で読んでいただけると嬉しいです。では、どうぞ!


星揺れる草原で

 薄暗い舞台袖、聞こえてくる歓声、MCのアナウンス……

「ケイ、準備は良い?」

「う……うん!」

私は歯切れ悪く彼女に応える。しかし私の手は、自分でも自覚できるほど震えていた。

ああ、いまさらだけどなんでこんな事に……

この階段の先には、きっととりどりの星が揺れている。

まだ私たちを知らない沢山の人たちが、純粋な好奇心で私たちの事を待っている。

そう、好奇心だ。好意なんかじゃない。それは何の感情に変わるのか分からない不確定要素だ。

もし期待外れって思われたら、悪意を持たれたら……!

そんな震える私の手を、彼女が握りしめた。

仄かに微笑んだ彼女は、まっすぐに私の眼を澄んだ水面のような瞳で見つめてくる。

まるで吸い込まれそうなその美しき碧に、私は思わず見惚れてしまう。

時が来る。彼女に手を引かれて走り出す。

 

そして私たちは、星の草原へ飛び出した。

 

 

 

「――であるわけでして、この壇ノ浦の戦いで能登殿こと平家方の猛将平教経に追われた源義経が見せたのが世に訊く『八艘飛び』なのです。このように義経が優れた身体能力を持つ逸話は他にも数多く残り、有名な『鵯越の逆落とし』でも義経はウマ娘の武士と共に駆け下りたという伝説もある事から、義経自身が実はウマ娘だったのではないか、という説を唱える学者もいます。まあ如何せん数多くある真意不明の学説の一つに過ぎませんが、意外にも義経以外に剛の者として名が残る偉人はウマ娘だったのではないかという説は多くあります。例えば……」

国語の教師がそう話し始めようとした途端、チャイムが鳴り響いた。

「……時間のようですね。では今日の授業はここまで。宿題はワークの83ページからにします。学年末テストも一か月を切っていますので皆さん早めに勉強を始めるように。では日直。」

「きりーつ、れい。」

日直の号令に合わせて先生に挨拶をして四時間目が終わった。

いつも通りみんなで学食に向かおうか……と思いアオの所に行こうとしたところで、逆にアオが私の机にやって来た。

「ごめんケイ、私トレーナーさんから呼び出されてて……みんなとご飯いっててもらっていいかな?」

「あ、うん分かった。じゃあまた後でね。」

「うん!」

そう言ってアオはぱたぱたと教室を駆け出して行った。

「ありゃ、アオなにか用事だって?」

カナちゃん達が話しかけてきた。

「うん。なんか呼び出し掛かってるみたい。」

「最近多いね~、アオ。この前も荒尾のローカルアイドルのスカウトが来たとか言ってなかった?」

「あれは流石に断ったみたいだけど……でも競走ウマ娘としての活動に被らない案件ならどんどん引き受けてるみたいだよ。」

「あ、ミライこの前アオちゃんが出てる荒尾梨のポスター見たよ!」

「わたくしは遊園地のCMで見かけましたわ~」

「うわーもう引っ張りだこじゃん。私たちにも一つくらい来ないかな~」

「この前映画のエキストラの大規模募集の案件来てなかった?」

「いやそういうのじゃなくて個別で……」

そんな戯言を話しながら学食へと歩いていく。

しかしこれは結構切実な問題だ。

私達ウマ娘はアスリートであると同時に、パフォーマーでありアーティスト、そして時にはタレントでもある。

つまり少々品のない話ではあるが、そういう「案件」が入ればギャラをもらって活動する事になる。そしてそれはレース組合側と結んだ契約に基づき、何割かは私たちのものになるのだ。

一応グッズの収益とかも同じく契約に基づいて私たちに売り上げの一部が入って来るのだが、そもそもが地方レース場のためそっちはたかが知れている。だから案件の存在は遊びたい盛りでお金が欲しい私たちにとってとんでもなく大きい存在なのである。

決して私がお金にがめついなんてことではない。断じてそうじゃない。これは普通なのだっ!

だから私たちは今日もぼやくのだ。

「「あー案件来ないかな~。」」

……と。

 

「ただいまー。」

トレーニングを終えて部屋に帰って来ると、アオがもう帰って来ていた。

「あ、おかえり!ねえケイ、ちょっとお話良いかな?」

「うん、良いよ。ちょっと待ってね。」

私は手早く制服をハンガーにかけると部屋着に着替える。

「……よいしょっと。で、話って?」

「うん。あのね、わたし今日のお昼の打ち合わせでこれに出る事になったの。じゃん!」

そういってアオが見せてきたのはA4サイズのパンフレットだった。

「『GYAN!GYAN!祭』……?なにこれ?」

「福岡の方で二月にあるイベントなんだけど、全国からローカルアイドルが集まってライブをするんだって!そこに出ないかって関係者の方がたまたま声をかけて下さって!」

「へー、すごいじゃん!遂にアオもアイドルデビュー?」

「ちがうちがう!私も最初は出るか迷ったんだけど……こういうのに現役の競走ウマ娘が出るのって珍しいから話題作りにもなるし、なにより荒尾の宣伝にもなるからって言われて。それで一度挑戦してみようかなって。」

「良いんじゃない?滅多にない機会なんだし。それにアオ、歌もダンスも上手だから通用するよ。」

「えへへ、ありがとう。それでここからが本題なんだけど……」

「うん。」

「このイベント基本グループで出るイベントだから、最低でも二人以上のデュエットじゃないと出られないの。」

「うんうん。」

「それで、出来ればケイにも出て欲しいなって。」

「うん……うん?」

今なんて言った?

ケイにも出て欲しいな、ケイニモデテホシイナ、景荷藻出手星否?

「……私ぃ!?」

「うん。全然嫌なら断って貰って良いんだけど、ケイちゃんならこういうのに出ても大丈夫そうかなって。」

「い、いやいやいや!無理無理無理!私アオよりダンスも歌も下手だし!」

「そう?ウイニングライブ結構踊れてるから向いてるかなって思ったんだけど……」

「いやいやいや!あくまでも荒尾のウイニングライブだから!こんな本職のアイドルさんたちが出てくるイベントじゃ見せられたもんじゃないよ!」

「そっか……残念だけどケイちゃんが嫌なら仕方ないね。ごめんね、無理言って。」

「ううん、ごめんね私こそ。また機会があったら……」

そこで私は言葉を止める。

「……因みになんだけど、ギャラってどのくらい?」

「え?えっとたしか……はい。」

そういってアオは資料のページをぱらぱらとめくり、一つのページを私に見せた。

そこには……きっと大人からしたら大したことない金額なのだろうけど、中学生にとっては大金が……具体的にいえば、アオと二等分した上で契約に基づいて分配されたとしても、中学生のお小遣いの平均額の十倍以上にはなるであろう金額が記されていた。

「……出る。」

「え?」

「出る!」

「ええっ!?嬉しいけど急にどうしたの!?」

「いやー折角の機会だもんね!やっぱり出なきゃ損だよね!頑張ろうねアオ!」

「な、なんかちょっと複雑だけど……うん、頑張ろうね、ケイ!」

 

その時の私の瞳には、“¥”マークが描かれていたに違いない。

こうして私は、お金につられるというなんとも不純な動機でアイドルイベントへの出演を決めたのだった。

 

 

 

「……こういうのは事前に相談してくれると助かるんだがな。」

「……スミマセン。」

翌日私はトレーナーさんの前に正座で座っていた。

「まあ契約書を書いてしまったものは仕方ない。レースの合間を縫う事にはなるがスケジュールも何とか大丈夫だろう。」

トレーナーさんには断固反対されるのではと覚悟していたから、許して貰えてとりあえずほっとする。

「それにしても来月か……こんなギリギリで話が来るってのは先方に何かあったのか?」

「アオ曰く出演グループが一つ辞退して空きが出来たそうで……」

「そこでたまたまブルーアラオに白羽の矢が立ったのか。全くこちらの都合も考えて欲しいもんだ。……それで、イベントの概要は?」

「えっと……福岡の方のイベント会場でやるみたいです。これが資料です。」

トレーナーさんは資料を受け取りじっと見つめる。

「これは……この種のイベントにしては大きい箱だな。さすがにメインのA棟じゃないがそれでも6000人規模か……」

「ろ、ろく……!?そんなに大きいんですか!?」

「お前、知らずに受けたのか?ここのA棟は有名なアーティストのアリーナツアーによく使われているし、今回の会場のB棟も大きなスポーツ大会とかコンベンションにも使われる会場だぞ。」

「あの、ちなみに普段の荒尾のウイニングライブの規模って?」

「さあな。だが普段の観客が1000人行くかどうかって所だから、その中でウイニングライブまで観ていく客は2、300人って所じゃないのか?」

私は絶句した。

お金に目がくらんでとんでもない案件を受けてしまったー!!

ああケイウンヘイロー、いつからお前は純粋な心を失ってしまったのだ。思っていた十倍は大変だぞこれ……

「そしてパフォーマンスの方は決まっているのか?他のアーティストのカバーか?」

「荒尾の曲で行くみたいです。曲名は……『Sea Breeze』。」

「あれか……まあ荒尾が版権持ってる曲で一番まともな奴だからな。実質荒尾代表みたいなものだから本気か。」

「えっと、私あんまりちゃんと聞いたこと無いんですけどどんな曲ですか?」

「ああ、シニア級の重賞を勝った時用の曲だ。三年前に前の曲から変わってな。前の曲は20年も前から使っていたから古臭いと評判が悪くてな……珍しく上が重い腰を上げたんだ。」

「あ、じゃあジュニア級の『キラキラ☆リトルハート』とかクラシック級の『火ノ國ブレイズ』よりも今どきっぽい感じですか?」

「ああ。音楽に疎い俺でも分かるくらいにはな。……しかしそうなるとダンスも暗譜も一からか。こっちの方が問題かもしれないぞ。」

「一か月ですもんね……レースもありますし。」

「それにしても何でこんなに急に出ようなんて気になったんだ?」

「ふぇっ!?い、いや~ちょっとアオに頼まれたら断れないな~って……」

「……そうか。まあ友達思いもほどほどにな。」

ほっ……

 

 

 

「今回は私共の要請にご協力して下さり感謝いたします。一か月と期間は短いですが、どうぞよろしくお願いします。」

「いえ、こちらこそ貴重な機会を頂き光栄です。どうぞよろしくお願いします。」

翌日の昼に行われたアオ達の陣営との会議で、トレーナーさんたちは恭しく社交辞令を交わしていた。

それにしてもアオのトレーナーさんは本当に若い。噂によればまだ二十歳になったばかりだとか……それに比べたらうちのトレーナーさんだって普通に若い部類に入る筈なのだが、リーゼントに固められたやや古風な髪型がもっと年上の感じを醸し出している。

「それでこれからのスケジュールですが……平日に二回と土曜日をレッスン日にして本番まで向かいたいと思います。ゲネプロは前日、当日は朝に動き確認の最終リハーサルを挟んでから本番となります。」

「では前日入りですね。宿泊施設の手配は?」

「会場まで徒歩三分のホテルを予約してあります。資料はこちらです。」

「ありがとうございます。こちらで用意するものは何か?」

「衣装が必要です。汎用ライブ衣装でも良いのですが折角の機会ですので……ただ納期的にギリギリにはなるかと思います。」

「……分かりました、検討します。」

トレーナーさんたちの会話を聞くに本当にこのライブはギリギリのスケジュールで進んでいるらしい。

何せアオ側だって急に持ち掛けられた話なのだ。責任は追えまい。

「ところで……ユニット名は決まっているんですか?」

それを私のトレーナーさんが訊くとアオのトレーナーさんは少し苦々しい顔をした。

「いえ、それがまだ決まっておらず……こちらでも検討はしているのですが、そちらからなにかご提案はございますか?」

「ユニット名か……ケイ、何か希望はあるか?」

「名前ですか……う~ん、荒尾に関連付けた方が良いですか?」

「ええ。荒尾の宣伝も兼ねていますので可能でしたら。」

荒尾……レース場……ウマ娘……海……

「……『Azure』とかどうですか?」

「『Azure』……『群青』か。」

「良いんじゃないでしょうか。海を連想させて。」

「私も良いと思う!ケイさすが!」

「ほんとですか?えへへ……」

そしてめでたく私たちのユニット名は「Azure」に決まった。

 

「では明日から宜しくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。では、失礼します。」

アオ陣営との話し合いは一時間ほどで終わった。

「明日から先にトレーニングを二時間やった後にライブの練習だ。一か月は忙しくなるがやれるな?」

「はい、大丈夫です。」

「ああ、それとライブ衣装のデザインの希望はすまないが明後日までに出してくれ。明後日に出しても納期がギリギリだからな。」

「分かりました。」

「じゃあ部屋に戻ってトレーニングの準備だ。」

「はい!」

 

チームの部屋に戻るとプレハブの前でブラック先輩が準備運動をしていた。

「先輩、お疲れ様です!」

「おつかれ~。ケイちゃんなんか上機嫌だね?」

「そう見えます?えへへ……じつは今度アオと福岡の方でライブイベントに出る事になって!」

「お~凄いじゃん!私も行けたら行くね!」

「それ行けないって事じゃ……そういう先輩もなんか今日は気合入ってますね。」

「ん~まあ今月だけでレース三つ入ってるからね。気合入れないと身体持たないっていうか。」

「うわぁ……トレーナーさんに減らして貰えるように頼まないんですか?」

「いやぁ、実際そろそろ昇格してシニアBクラスに上がんないとまずいし。ここで頑張っとけばこの先が楽になるからね。」

「そうですか……無理はしないでくださいね。」

「はいよ~。じゃあうち先に行ってるからケイちゃん着替えて来な。」

「はーい。」

そしてケイウンヘイローが部屋の中に入っていくのを見届けると、

「……いいなぁ。」

ブラックキャッスルはぽつりとつぶやいて走り出すのだった。

 

 

 

「はいケイウンヘイローさん!もっとステップを軽やかに!」

「は、はい!」

翌日から始まったレッスンで、私はダンス担当のコーチから檄を飛ばされていた。

「この曲はバラード調なんだから!盛り上げられない部分は動きで魅せる!はいもっと指先上げて!」

「はい!」

「今は良いけれど本番はブルーアラオさんと対のダンスになるんですからね!自分本位で考えない!はいそこテンポ遅れた!」

「はい~!!」

 

「もっと口角上げて!真顔じゃ話になりませんわよ!そしてもっと上を向く!マイクに頼らないで自分から遠くに届けるの!眉間から声を出すイメージで!」

さらに声楽担当のコーチからもたっぷりしごかれ……

「は、はい……」

「返事はしなくて宜しい!今は歌う!はいまた口角下がった!笑顔笑顔笑顔!もっと腹筋を使って!」

「は……!」

「返事は宜しいっ!」

 

そしてほぼ二時間ずつのレッスンが終わり、自分の部屋に帰って来るころには私はもう疲労困憊だった。

「やっと終わった……」

「おつかれ、ケイちゃん。どんなこと言われた?」

「もうほとんど全部指摘!!ダンスも歌もまだサビの前さえも行ってないよ……アオは?」

「私はとりあえず一番まで終わったからダンスと歌を合わせ始めた所で、今二番の譜読みをやってるとこだよ。」

「う、うそでしょ……」

一日目、たった一日目なのになんて進みの速さ!

私は決して要領が悪い方じゃない、むしろ良い方だと自負していた。

ダンスだって今まで特別何か言われたことは無いし、歌だって調子が良いときはカラオケで90点前後を安定して出せる。

しかしこのアオときたら……

「何か分からないことあったら聞いてね。力になるから。」

「う、うん……」

どうやらアオには自分のやることをこなす片手間で私に教える余裕すらあるらしい。

「ところでアオ、今やってるの何?宿題じゃなさそうだけど……」

「あ、これ?実はこんど漢字検定の二級を受けようかなって。」

「いきなり二級!?難しすぎない?」

「そうかな?でも準二級はもう持ってるし……」

「も、持ってるんだ……」

「それと期末試験の勉強と、ちょっと手話検定にも挑戦してみようかなって。」

「……アオは、なんでそんなに頑張れるの?」

「え?」

「だって……確かにすごいと思うけどそんなに今一度にやらなくたって良いじゃん?」

アオは少し考えると、微笑みながら口を開いた。

「確かに楽じゃないけど、でもこれは誰かにさせられてる事じゃなくて、私がやりたくてやってる事だもん。苦にはならないよ。」

「……そっか。」

いつも思う。一体この儚げな少女のどこにそんな熱意が秘められているのだろうか。

だからこそ彼女を見ていると、私は感嘆と同時に、

 

そこはかとない不安も感じてしまうのだ。

 

 

 

そこからは凄まじい慌ただしさだった。

私が頭を捻らせて衣装のデザインをトレーナーさんに提出した翌日には採寸の人がやって来て、頭の上からつま先まで私の身体を徹底的に計測した後軽く希望を聞いて帰っていった。……かと思った三日後にはデザイン画と生地のサンプルを引っ提げて来て再度話し合いになった。デザイナーさんは懇切丁寧にどの生地がどうでどこに装飾を入れるとどうなのかを説明してくれたのだが……はっきり言って半分くらいしか分からなかったのでほとんどお任せして完成を待つ事になった。

そしてダンスと歌の練習の方もさらに熱を増していく。

それぞれが何とか形になると、今度はこれを同時にやる練習をしなければならない。

激しい動きが無いのが救いだが、難しい事には変わりない。再び檄を飛ばされ続けて血眼になって連日の練習に耐えた。

そして当たり前だがやる事はこれだけじゃない。二月一日には一か月越しの前走の雪辱を果たすレースが控え、次の週には学年末テストが鎮座している。私は三足のわらじを履く事態になっていた。

……が、私の隣には六足くらいわらじを履いている少女が居たからか、そうそう弱音を上げる気にもならず、私は淡々とタスクをこなしながら日々を送っていた。

そして一月はあっという間に最後の日を迎えた。

 

――一月三十一日。

「先輩……」

私は事務棟の隅でうずくまっていたブラック先輩の隣に腰を下ろしていた。

「いや~……あはは。まさかうちも三戦全部負けるとは思ってなかったな……」

さっきレースを終えたばかりの先輩の顔は火照り、汗が薄くにじんでいた。

「……休養しましょうよ。やっぱり疲れが抜けてないと思います。この調子で来週もまた連闘だなんて……」

「そうだね。……きっとそっちの方が良いんだろうね。」

「なら!」

「でもね、ケイちゃん。うち、もう引けないんだよ。」

その顔は、いつになく悲愴的だった。

「合理的じゃなくたって、現実的じゃなくたって……走ってなきゃもう自分を納得させられないんだ。」

「なんで……」

「ケイちゃんには分からないだろうね。……ううん、分からなくて良いんだよ。こんな気持ち。」

私はそれ以上かける言葉を持ち合わせていなかった。

「ケイちゃん、明日レースでしょ?こんなとこでうちに構ってないで、寮でゆっくりしてな。……冷えるよ。」

そう言い残すと先輩は立ち上がって歩いて行った。

 

――二月一日。

『さあ荒尾レース場本日のメインレースは「フリージア賞」。クラシック級1500m戦、九人のウマ娘で争われます。15時半現在、天候は曇り、コースは重バ場の発表がされています……さて、本日のレースで注目のウマ娘は三人、それぞれ見ていきましょう。まずは一枠一番クロカゲバクシン。前走から一か月ぶりの出走。前走では圧倒的一番人気のケイウンヘイローを破り下剋上を達成。再戦となる今回、果たしてその地位を確固たるものにできるかに期待が集まります。』

「はぁーはっはっはっはっは!この胸に秘めたバクシン魂の前にはどんな挑戦も無意味ッ!返り討ちにしてみせましょうっ!!!」

『続いての注目のウマ娘は六枠六番ケージーヘイロ―。中央からの転入組で荒尾での戦績は三戦二勝二着一回の好成績。元中央ウマ娘の貫録を見せられるでしょうか。』

自信に溢れた様子の彼女はファンの声援に軽く応えると、早々と段を下りた。

『さあ、本日の主役の登場です!前走と同じ条件、同じライバルを前にリベンジを図ります!一番人気、八枠八番ケイウンヘイロー!』

私が姿を現すとひときわ大きな歓声が沸いた。

実況での紹介も以前の脇役としての私ではなく、明らかに主役としての扱いへと変わっている。

「ケイウンヘイロー!今日は勝てよー!」

お客さんの中から聞こえたひときわ大きな歓声に私は手を振って応える。

そうだ、一か月前はまさかの敗北だったけど、この一か月、私は歌って踊っていただけじゃない。1500mで戦う対策だって裏でじっくり進めていた!

まだ一回も勝ったことが無い1500m、今度こそものにして見せる!

 

 

 

『ケイウンヘイロー一着!二着にクロカゲバクシン、三着にケージーヘイロー!四着以下は離れました!まさに人気順の固い決着となりました!』

「ちょわーっ!?」

「やったぁ!」

1500m制覇!

かつてアオにちぎられ、前走ではクロカゲバクシンにも後塵を拝した因縁の1500m戦をようやく私は制した。

何よりマイルの距離で勝てるようになったという事は、現時点の最大目標である九州三冠路線でも戦える可能性があるという訳で今後の選択肢が増える点でかなり大きな勝利と言える。

「おめでとー!」「良かったねぇ!ケイちゃん!」「期待してるぞー!」

「ありがとうございまーす!」

観客の反応も上々。ファンサービスも忘れずに……あ、そうだ。これを言っとかないと。

「来週の土曜日!福岡でライブやるんで観に来てくださいね~!」

いよいよ来週が本番。最後の追い込みに入る。

 

 

 

「かーけぬけーるーきーみーのー……」

「はいそこまで!ケイウンヘイローさん、いつもそこワンテンポ遅れてる!本番はイヤモニがあるけど、音を聞いてからじゃ遅いの。自分の中で裏拍を取ってタイミングをはかる!はい、サビ前からもう一回!」

「はい!」

歌いながら、踊る。

言葉にすれば単純で、何てことのない事の様に見える。

だが、詳細に書くとこうだ。

数キロに達する衣装を着こみ、脚にはハイヒールブーツ。立つのにも気を遣う状態でアオとタイミングを合わせながら、息を切らさないように踊り、イヤモニから指示と返しを聞きながら完全な暗譜状態で……どうしても無理な時はプロンプターを使うが……リズムを崩すことなく歌う。もちろんその間はずっと笑顔。

即ちアイドルはマルチタスクを器用にこなせる人間じゃなければ出来ないのだ。

これと比べれば荒尾のウイニングライブのどれだけ気楽だったことか……

「ブルーアラオさん、さっきのターンした後のアフレコのウインクは良かったわ。本番でやる時は全体に向けてじゃなくてカメラに向かってすると効果的よ。」

「ありがとうございます。」

アオは相変わらず余裕だ。あのウインクで本番何人堕ちるだろうか。

そして私はそもそも本番までに仕上がるんだろうか……

 

次の週は学年末テストがあった。

数学に多少手間取ったが幸いにして滅茶苦茶難しい問題も無く、大体いつも通りの手ごたえで三日間のテスト期間を終えた。

返却は来週。結果はその時を待つとして、迎えた金曜日。

いよいよこの時がやってきた。

お昼過ぎに校内に乗り着けられたバンにアオとそのトレーナーさんと共に乗り込む。うちのトレーナーさんは先に向こうへと向かっている。

いつもの三人が手を振って見送ってくれる中、車は北へ向けて走り出す。

四ツ山の隣を走り抜け、すぐに福岡県に入ると車は海の方向へと左折する。そして大型トラックに交じって交差点を曲がると、海沿いの高架道路に入った。紅白の煙突や鉄塔が聳える工場地帯の中を突っ切るように道路は走っている。

ふと海の方を見ると、沖合に何か大きなものが二つ浮かんでいるのが見えた。

「あれって船?島?」

「人工島だよ、ケイ。昔炭坑で使ってたの。」

「良く知らないけど炭坑って海の中にあったの?」

「えっとね、昔は陸でも掘ってたんだけど掘り尽くしちゃったから石炭を求めて海底へどんどん掘り進んでいったんだって。それで途中から換気する施設が必要になったから人工島を二つ作って何百メートルも地下に向かって縦穴を掘って、そこに換気用の機械を置いてた……それの跡だよ。」

「へ~。でもわざわざそんなものまで作ったのに潰れちゃったんだよね?」

「うん。『エネルギー革命』ってやつ。社会で習ったでしょ?」

「あーそういえばあったね。」

「それで炭坑が無くなってからこの地域は一気に衰退しちゃって……結果が今の状態。レース場に来るお客さんも一番多かった時の十分の一になっちゃった。」

確か今の荒尾のお客さんの数が1000人ちょいだったか。という事は最盛期は一万人以上。今の荒尾からは想像もできない数だ。

「だから私は……この街にもう一度元気を取り戻したい。昔みたいには無理だとしても、それでもこのまま消えて行くのなんて嫌。その為だったらなんだって頑張る。今回のライブだってそう。荒尾の名前を少しでも広げる為に、私が出来る事ならなんだってしてみせる。」

「アオ……」

「だからケイ、力を貸してほしいの。無理を言うようだし、荒尾に所縁も無いケイに頼むのは間違ってるかもしれないけど。」

彼女の毅然とした瞳。その奥に秘められた使命感。

彼女は真に荒尾を、この地域を愛している。そしてその小柄な背中に全てを背負おうとしている。

なら、私は。

「もちろん、協力させて。私もこの街、好きだもん。」

これは嘘じゃない。

最初は困惑した。東京とは余りにも違う景色。慣れない方言、不思議な文化。

でも、この一年走って、アオ達と色んな物を見て、ファンの人たちと交流して分かった。

海に沈んでいく夕日の景色が好き。

語気が荒いようで、その中に情を秘めた言葉を話す人たちが好き。

知るたびにワクワクする、受け継がれてきた文化が好き。

この街に無い物を数えたらそれこそ挙げ切れないくらいあるし、不便じゃないなんて言ったら嘘になる。

でもそれ以上に、この街には魅力が隠れてる。

まるで新たな本のページをめくるように、もっと知りたいと思わせてくれる。

消えてしまうのが惜しくなるくらいに、守りたいと思わせてくれる。

「ケイ……ありがとう、心強いよ。今日のライブ、絶対成功させようね。」

「……うん。」

そして私たちを乗せた車は、この街を後にした。

 

高速に乗り換えて荒尾から走る事一時間半。

ずっと山の中や田園地帯を走っていた車窓に住宅街や店が目立つようになって来た。

「あの、そろそろ福岡市ですか?」

私はアオのトレーナーさんに訊いてみる。

「ええ。もう福岡市内ですよ。……ほら。」

「あっ。」

進行方向右手に、飛行機が低高度で飛んでいる姿が見えた。

飛行機はそのままみるみる高度を落とすと、車輪を出して着陸態勢に入った。

「福岡空港です。ケイウンヘイローさんも、東京からは最初に降り立ったのはここでしょう?」

「はい。でもあの時はどうやって博多駅まで行くかに必死で周りをよく見て無くて。」

「ここは市街地にかなり近いので、福岡空港は交通の便が良いとよく言われています。都市高速に入っているので中心地まではもう十分程ですよ。」

福岡空港を過ぎると、周囲にビル街が広がり始める。ここが福岡市の中心部、博多らしい。

ビルが立ち並び、たくさんの車が軽く渋滞を作っている光景はまさに都会のそれだ。しかしちょっと違和感を感じるのは……高層ビルの姿が見えない所だろう。

「福岡空港が近すぎるせいで、高度制限で福岡の街には高層ビルが作れないんです。便利さの代償、という訳ですね。」

アオのトレーナーさんが教えてくれた。

「さあ、まもなく到着です。降りる準備をしてください。」

「「はい!」」

 

裏口に乗り付けた車から降りて、スタッフの人に案内されて中に入る。

「広いね……」

「うん……」

着々と準備が進む会場は数字で見るよりも遥かに広く見えて、ここで歌うのかと考えると緊張がふつふつと湧き出てくる。

「来たか。」

通路の方からトレーナーさんが歩いてきた。

「お疲れ様です。」

「ああ。到着早々悪いが今から挨拶回りだ。それが終わったら十六時からゲネプロ開始だ。」

「はい!」

トレーナーさんに案内されてエントランス脇の扉からバックヤードに入る。「主催者控室」と書かれたドアをトレーナーさんがノックする。

「失礼します。生徒が到着いたしましたのでご挨拶に伺いました。」

「ああ、どうぞどうぞ。」

中に入ると黒縁の眼鏡をかけた白髪の男性が立っていた。

「よく来てくれたね。ブルーアラオ君は年始以来かな。」

「ご無沙汰しております。大叔父様。」

アオが恭しく挨拶を交わす。

「そちらがケイウンヘイロー君か。活躍はかねがね窺っているよ。」

「は、はじめまして!今回は宜しくお願いします!」

私が慌てて一礼すると男性は何度か頷いた。

「さて、今回は急な申し出ににもかかわらず応じてくれてありがとう。このイベントは普段はばらばらに活動している各地のローカルアイドルが一堂に会する機会を作る事でローカルアイドルの魅力を再発見できる事をコンセプトにしていてね。一枠空きが出来た時にたまたまブルーアラオ君の事を思い出して、折角だし荒尾の宣伝にもなるかと思ったんだ。」

「とんでもございません。貴重な機会を頂き光栄です。」

手慣れた様子で丁寧な口調で話すアオの姿は普段よりずっと大人に見える。

その時、ドアがノックされてスタッフの人が入って来た。

「プロデューサー、お時間です。」

「ああ、分かった。では私はここで失礼するよ。今日と明日、くれぐれも宜しく。」

「はい、失礼します。」

男性が出て行ったあと、私たちも部屋を出る。

「あの方はアオの親戚なの?」

「うん。ちょっと遠いけどね。」

「二人とも、次は一緒に出演する演者の人たちの所へ行くぞ。」

トレーナーさんはそう私たちに告げると奥の楽屋へと私たちを案内した。

「挨拶をしっかりな。」

トレーナーさんはそう言うとドアをノックして開けた。

中には何十人もの女性たちが居て、私達の方を一斉に見ていた。思わずたじろいでしまいそうになる。

そんな時、アオが一歩前に出た。

「皆さん初めまして。荒尾トレセン学園より参りました。『Azure』のブルーアラオと申します。今回は宜しくお願いします。」

それを見て私も倣う。

「同じく『Azure』のケイウンヘイローです!よろしくお願いします!」

私達が挨拶を終えるとパチパチと拍手が起こった。

「ウマ娘ちゃんだ!可愛い~!」

「よろしくね!ふたりはいくつ?」

「えっと、二人とも十三歳です。」

「うわー!私より十個下だわ!」

「みんな喜べ!平均年齢下がったぞ!」

誰かがそう茶化すと楽屋が笑いに包まれた。

「しばらくはここに居てくれ。後でまた迎えに来る。」

トレーナーさんはそう言い残すと楽屋を出て行った。

「えっと、皆さんはどちらのローカルアイドルなんですか?」

「私たちは瀬戸内!『レモネードガールズ』ってグループ名だよ!」

「私たちは北九州~。」

「うちらは和歌山!」

「や、山形……多分東北私達だけだと思う……」

「北海道~♪具体的に言うと苫小牧~♪」

皆さん本当に全国から来ているようだ。

「それにしてもウマ娘ちゃんがこういうのに出てくるの珍しいから新鮮だよね!」

「ね~、こういうのに興味がある子は大体レース場のウイニングライブしか出ないっぽいからね。」

「あ、うちおるよ?ウマ娘の子。」

「ほんま!?でもなんで来よらんの?」

「入りたい入りたいって言ってくれるんだけどまだ小学校の低学年の子でね~。したから流石に入れられないっていうか。」

「……ってそれまだメンバーちゃうやん!」

「まあ入りたいって言ってくれてるから実質うちの子って事に……」

「ならんわ!」

「でもその子は逸材だよ。『とまこまいの星になる』って意気込んでてさ~。何年か先に絶対有名になるよ。」

「ふーん、まあ憶えとくわ。ところで二人は競走ウマ娘やんな?やっぱ100m走とかめっちゃ速いん?」

「100mで測ったことは無いんですけど……多分トップスピードなら5秒ちょっととかだと思います。」

「ひゃー流石やな!もうレベルがちゃうわ!」

「私達とか何秒だったっけ?」

「私20秒くらい……」

「ねえねえ、他は?ウマ娘って力も強いんだよね?握力とか。」

「あっそれは……」

アイドルの皆さんはとてもやさしくて好奇心旺盛で、その後も競走ウマ娘としての事やアイドルの裏事情の話題で盛り上がった。

 

「お前ら……よくあの短時間であそこまで友好関係が築けるな。」

「ああ、まあ競走ウマ娘とアイドルってなんやかんや似てますし……」

「境遇が同じなら話題も作りやすくて話が弾みましたよ。」

「そうか。……羨ましいな。」

トレーナーさんってそういうとこ気にしてるんだ……

「さあ、本番はここから入る事になる。」

バックヤードの廊下の中ほどにある扉から出ると、そこは真っ暗な空間だった。

それがステージの裏側だと理解するのに少しタイムラグがあった。

床には大量のコードがガムテープで仮止めされ、音響や照明の物と思われる機材が所せましと置かれている。

表から観れば立派だったステージも、裏から見れば鉄骨と薄い板材を組み合わせた結構簡素な造りだと分かる。

「ライブの裏側って、こんな感じになってるんですね。」

「なんか……表から見た感じとは全然違うんですね。なんというか無骨って言うか……」

「そりゃそうだ。ずっと置いておくものじゃなくて会場ごとに持って運ぶものだからな。すぐに撤収できる構造じゃないと都合が悪い。」

それはそうかもしれないが、今までライブは観る側だった人間としては、まるで着ぐるみの中身を見てしまったような感覚だ。

「ある意味これを見る事が出来るのが裏方のスタッフと演者の特権かもしれませんね。笑顔を作る側だけが知る裏側。」

アオがまるで私の考えを察したかのようにそう言った。

「ああ。『笑顔の作り方と材料』がここにはある。……ステージに上がるぞ。」

ゴムのマットがかぶれられた木製のステップを上がると、作業用の照明に煌々と照らされたステージが目の前に広がった。

「わぁ……」

そしてその先にあるのは、今は数人のスタッフしかいない観客席。

6000人。そう、明日の本番には6000人の観客によってここが埋め尽くされる。

そう意識した途端、私は少しめまいのようなものを感じた。

「ケイ?どうしたの?」

「えっ……ううん、何でも。」

「ひとまず、下見はここまでだ。楽屋で準備しておいてくれ。」

「……はい。」

アオが不安げな表情で私の顔を覗いてくる。

事実私は、“それ”の事が気になって頭から離れなくなっていた。

 

 

 

さて、ここで「ゲネプロ」とは何かを確認しておこう。

まずはっきり言って多くの人にはなじみが無く、この言葉を知っていてかつ聞き慣れているという人は間違いなく業界人かコアなファンであろう。

この言葉は語源をドイツ語に持ち、元は「通し稽古」を意味する。

今では演劇やバレエ、あるいは音楽のコンサート等において本番前に行う最終リハーサルの事を指し、業界によっては更に略された言葉で呼ばれる事もある。

その意味なら別に「リハーサル」って呼べば良いじゃないか?と思う人が大半だろう。

しかしリハーサルとゲネプロの決定的な違いは、その内容にある。

ゲネプロは、「完全に本番と同じ条件」で行われるのだ。

即ち、衣装もメイクも音響も時間管理さえも本番と同一条件。何かを省くようなことは絶対しない。そしてなにより万一ミスがあっても進行は基本止まらない。「本番と同じ」だからだ。

唯一の違いは観客の有無だけ。……故に、その緊張感は本番そのものと言っていい。

「……」

目の前の鏡に映るウマ娘は、まるで別人のようだった。

「さーあ!可愛くなったよ~!」

中折れ帽を伊達にかぶったお洒落なスタイリストさんが、笑顔で私にそう告げる。

プロの手によって三十分以上掛けてメイクしてもらった私の顔はもう凄すぎて逆に現実味が無いように見える。

そして一か月前に発注した衣装。

ピンクと黒のチェックのスカートに青と白のジャケット。胸元には金の縁取りを施した緑のリボン。

他にも肩やベルトなどに中世の軍服を思わせる華美な装飾があしらわれている。

我ながらデザインを凝りすぎて暴走した感があった希望をこんなに綺麗に纏めてくれたデザイナーさんの技量には感服するしか無い。このまま勝負服にして走りたいくらいの出来だ。

そして隣の席で同じくメイクをしてもらっているアオの衣装もすごい。

二人で舞台に立った時、互いを視覚的に区別しやすいよう、似たような系統ではあるがあちらはフリルや大きなリボンで彩られて華やかな印象を感じるようになっている。私が王道のアイドルの制服のようなカチッとした衣装なのに対し、アオのはドレスに近いと言えるだろうか。たしかデザイナーさんは王子様とお姫様で対になるようになっていると言っていた。どっちがどっちなのかはまあ言うまでもない。

「はい、ブルーアラオさんも終わり!」

「ありがとうございます。ケイ、舞台袖行こ。」

「うん。」

二人で舞台袖に向かう。丁度二個前のグループがパフォーマンスをしている所で、派手なポップ調のメロディーが聞こえてくる。

次のグループはリフトでステージに上がるらしく、その準備でスタッフが慌ただしくしていた。

「お、アオちゃんにケイちゃん。衣装可愛いね~。」

私達に気づいて声をかけてくれたのは「レモネードガールズ」の倉橋さんという方だ。

「倉橋さん。『レモネードガールズ』の衣装も黄色で揃ってて可愛いですね。」

「でしょ~。……二人はまだ慣れない事もあると思うけど、まだゲネだから落ち着いて、ね?」

「はい。」

「はいレモネードガールズさん本番二分前でーす!リフトにどうぞ!」

「は~い。じゃあ二人とも、頑張って。」

「はい、倉橋さんも!」

彼女は手を振ってリフトの方へ歩いて行った。

表から聞こえてきた音楽が鳴りやむ。どうやら二個前のグループが終わったようだ。

「はい暗転!……三十秒前!MC入ります!」

「そっち少し右に動いて!裾引っかかるよ!」

「十秒前!……8!7!6!」

「みんないっくよ~!瀬戸内~~!」

「「ファイトー!!」」

掛け声と同時に彼女たちが乗ったリフトが一気に押し上げられ、レモネードガールズは飛び出して行った。

「はい次『Azure』さん準備お願いしまーす!」

「はい!ケイ、行こ。……ケイ?」

「あっうん!分かった!」

アオの声に一瞬気付けなかった。

自分でも思わなかった事だが、自分たちの番が近づくにつれ緊張が高ぶってきてしまっている。

大丈夫、これはゲネなんだから。大丈夫……

 

「『Azure』さん、登壇した後トーク終わったらイントロスタートしますのでお願いします!」

「はいレモネードガールズさん間もなく終わります!……はい、暗転!掃けます!」

「MC入ります!はい、8、7、6!」

「行くよ!せーの!」

ステップを駆け上がる。スポットライトで照らされたステージへと飛び出す。

「っ……!」

あれ、会場ってこんなに広かったっけ?

ライトって、こんなに眩しかったっけ?

音響、すごく大きい。閉鎖された空間だから反響してるんだ。

いや、ちがう。外の音じゃなくて、イヤモニの音に合わせるんだ。気にしなくていい。

あれ、なにこの音?聴いたことないリズム。……私の、鼓動?

あれ、何小節で歌い始めだっけ?振り付けってどんなだっけ?歌詞は?あれ?

あれ、あれ……?

 

「……ちょっと緊張しちゃった?」

「ほ、本番じゃなくて良かったね……」

「どんまいどんまい!本番大丈夫なら良いんだから!切り替えて行こ!」

ローカルアイドルの方たちが私の周りに来て励ましてくれた。

情けない。

失敗だ。超が付くほどの大失敗だった。

ステージに飛び出した私は、途端に緊張がピークに達した。お腹が痛くなって、そして頭が真っ白になって……

そこから先は覚えていない。……たぶん棒立ちだったんじゃないだろうか。

「ケイ、水!……ゆっくり飲んで。」

アオが私を気遣ってくれる。

私が迷惑かけたのに。

ああ、もう、最悪だ。

アオが渡してくれた水を何度か嚥下する。

「……知らなかったんだ。観客席があんなに広いって。」

私は言い訳を始める。

「ゲネだって分かってるのに、あそこが全部人で埋め尽くされてるの想像したら、頭真っ白になって。」

そして私は呟く。

「怖かったんだ。……全然知らなかったけど、私って大人数の前に弱いんだね。競走ウマ娘なのに、情けない。」

夥しい数の視線が浴びせられるイメージだけで、私は参ってしまった。

明日は本当に人を入れるっているのに、この醜態。

それに、正確には私がこうなってしまった原因は自分でもよくわかっていなかった。

大人数の前に立つプレッシャーからなのか、それとも、長距離を移動してきて慣れない場所で公演をしようとしたからなのか。

どっちにしても、それは演者として、ひいては競走ウマ娘として致命的な弱点であることに替わりはなかった。

「ケイ、大丈夫か。」

「……トレーナーさん。」

私は自分が発したその声の弱弱しさに驚いた。

「大丈夫じゃないな。……ケイ、無理なようなら辞退して荒尾に帰るのも手だぞ。」

「それは……」

駄目だ。そんなことをしたらたくさんの人に迷惑がかかる。そうトレーナーさんに言い返そうとした時、

「その時は、私だけでもステージに立ちます。」

アオが会話に割って入って来た。

「ブルーアラオさん……!?無茶です。そもそもデュエット曲なんですから一人では歌詞も……」

アオのトレーナーさんも突然の申し出に驚愕している様子だ。

「大丈夫です。全部記憶してます。振り付けもアドリブで行けます。」

「しかし……」

「お願いします。やらせてください。……ケイ、心配しないで。迷惑なんて掛けさせないから、安心して休んで。」

「アオ……」

何て言う献身的な姿……と一瞬思った。しかし一瞬で、そんなものではないと気づく。

アオの立場からすれば、出演辞退する事で荒尾の名を宣伝する機会が無くなるという方が問題だ。

これは私への気遣いでも、スタッフの人たちに迷惑を掛けない為でも何でもない。荒尾の為の行動なんだ。

結局アオにとっては荒尾が第一なんだな……

だけど。

「私……動けます。私、まだやれます!」

そうだ。なんで私がもう出れない流れになってるんだ。

「おいケイ、無理しないで……」

「そうだよ、安心してケイは……」

「大丈夫です。克服できます。やらせてください!」

ここで引いたら、一生この問題はついて回ることになりそうな気がする。

私は大観衆の前にも、慣れない舞台にも弱いウマ娘になんてなりたくない。問題は、ここで克服しておきたい!

「……分かった。だが本当に無理はするなよ。」

「はい!」

トレーナーさんは少し渋々とした顔で了承した。

「ケイ……分かった。一緒にがんばろ。」

アオもそれで納得したようだった。少し考えすぎだったかな?

「今日の所はホテルへ行きましょう。ゆっくり休んで、明日に備えてください。」

「はい。」

 

その夜、宿泊したホテルからは福岡市の夜景が良く見えた。

近くにはすこしずんぐりとした見た目のポートタワーが見えて、遠くの方には福岡タワーのてっぺんがひょっこりと頭を出している。

ビルの合間からは高さが控えめな福岡の市街地が伺えて、なんだか故郷の目黒の風景に少し似ているようにも感じられる。

明日は上手くいきますように。

私は心の中でそう呟くと、都会の喧騒にカーテンを引き、眠りの中へと落ちて行った。

 

 

 

翌日。

昼過ぎになって開場が近づくと、ホールの周りには少しずつお客さんが集まって来た。

聞けば6000人分のチケットはほぼ完売、当日販売分はほとんど無いらしい。

ローカルアイドルのイベントとしてはこの時点で成功と言えるらしく、運営の人たちが喜んでいる姿をさっき見かけた。

そして開演30分前に演者と手空きのスタッフがバックヤードに集められて、皆で円陣を組むことになった。

「えー今日は北は北海道、南は沖縄、年齢は上はアラサーに下は中学生まで、たくさんのローカルアイドルが集まってくれました!普段は皆バラバラに活動しているかもしれませんが、今日だけは志は一つです!今日のステージ、盛り上げるぞー!!」

「「「おー!!」」」

「はいじゃあ一番手の『mGm-Girl』さん、準備お願いします!」

「ん、んだばみんな、行くっちゃ!」

山形から来たと行っていたローカルアイドルグループが今日のトップバッターだ。

私達は中盤が出番なので、ひとまず控室で待機する。

 

「始まった!」

開場の様子を中継するカメラに、一番手の山形のローカルアイドルグループの姿が映し出される。

それとは別に、ライブのサウンドと観客の歓声が振動となって控室まで届いて来る。

リーダの人は少し気が弱そうな印象だったが、歌の方はハードなロック調だ。そのギャップが売りなのかもしれない.

「二人はこういうライブって初めて?」

きのうも出番前に話しかけてくれた倉橋さんが話しかけてきた。

「ウイニングライブなら何回もありますけど、専門のライブだと初めてです。」

「そっか。ならいきなり大躍進だね。普通ローカルアイドルがこんな大きなハコでライブするなんて無いよ。」

「そうなんですか?」

「うん。多分今日参加してるローカルアイドルのほとんどは、普段は地元のショッピングモールとか小さなイベントで歌ってる。もしかしたら、こんな大きな場所で歌えるのは……アイドル人生で最初で最後かも。」

「そんなこと……」

そう言いかけて、私は口をつぐんだ。

ローカルアイドルの境遇は地方ウマ娘に似ている。

地方所属のウマ娘だって、そのほとんどが所属のレース場から出る事無く競技人生を終える。

そう、私達は似ているんだ。だから彼女の言葉は正しいのだ。

「私の友達にも競走ウマ娘だった子居てさ。子供の時二人ともアイドルになりたいねって憧れてて、それで私はローカルアイドルになって、あの子は福山で競走ウマ娘になって……あの子も結局一度も福山の外で走る事ないまま引退しちゃった。」

「その方は今……?」

「ふつーに大学生やってるよ。もうアイドルになる夢なんて忘れちゃったみたい。……それでさ、私もいい加減そろそろ現実見るべきなのかな~とか思っちゃうのよ。」

彼女の顔は、アイドルらしい笑顔の裏に疲れを隠しているようだった。

「だから、さ。最後にこんな大きなステージで歌えるなら、もう悔いはないかな……なんてね。」

そうか、倉橋さんはもう……

「……ごめんね!中学生にする話じゃなかったよね!あはは、大人が恥ずかしいな~」

「いえいえそんな!」

「別に脅すわけじゃないからね!ケイちゃんもアオちゃんも可愛いんだし。きっと強いんだろうしさ。それになんか二人には特別な何かを感じるんだよね。アイドルの勘ってやつ?」

「そう……なんですか?」

その時、彼女のグループメンバーがこちらに話しかけてきた。

「ちょっと!くらはーそろそろ着替え行くよ!中学生に夢のない話しないの!」

「は~い!ごめんね、二人とも。お互い頑張ろうね。」

そして彼女は部屋から出て行った。

「……なんか身につまされる話だったね。」

「うん。でもケイ、確かに難しいのかもしれないけど私達は目立たなきゃいけないよ。荒尾の皆が待ってるんだもん。」

「そうだね……」

 

そして一時間後、準備を終えて舞台袖にスタンバイを終えた私たちにトレーナーさんが話しかけてくる。

「ケイ、ブルーアラオ。体調は大丈夫か?」

「「はい!」」

「今までのグループの方々が会場を温めてくれているので、心配しなくても大丈夫です。落ち着いて行きましょう。」

アオのトレーナーさんが優しく語りかけて安心させてくれた。

「『Azure』さん、スタンバイお願いします!」

スタッフの方の声がかかる。

はっきり言って、覚悟は決まっていなかった。

今思い返しても、私なんかの身の丈に合ってない舞台だ。

アオが私に声をかける。

私はそれにぎこちなく応える。

そんな私の手を、彼女はぎゅっと握って微笑みかけてくる。

薄暗い舞台袖で、その笑顔はまるで陽だまりに咲いた一輪の向日葵のようにキラキラしていた。

そして彼女は、私をもっとキラキラした光に満ちた世界へと連れだした。

観客席いっぱいに広がった揺れるペンライトたちは、

 

まるで星の草原みたいに、美しかった。

 

「こんにちは!『Azure』です!荒尾トレセン学園からここ福岡までやってきました!」

「普段レースに馴染みがない人も、荒尾を知らない人もいると思いますが、このステージで私たちの事、荒尾のことをぜひ知ってください!」

「「それでは聴いてください!『Sea Breeze』!」」

 

 

 

 

 

絶え間ない波間を超えて(星空の綻びから)

 

潮風(かぜ)は運んできたんだ(あどけない君の声を)

 

そこからはじまる物語

 

 

 

広げたまっさらな海図に

 

思い思いに描いた線は

 

いびつでひとつも噛み合わなくて

 

でも君はふいに線を重ねて

 

「綺麗だね」って言って笑ったんだ

 

 

 

一緒に歩く優しさも

 

駆け抜けてくその強さも

 

君が高く翔べる理由なんだ

 

さあ翼広げて

 

手を繋いで行こう

 

まだ透明なこの世界に

 

君色の潮風(かぜ)を靡かせて!

 

 

 

駆け抜ける君の笑顔も声も

 

青の水面に映すから

 

この胸に秘めた熱い想いを

 

今この瞬間に刻んでく

 

 

 

潮風(かぜ)は彼方へ駆けて行く

 

朝と夜の狭間も飛び越えて

 

そしてキセキに変えていく

 

わたしたちの物語を……

 

 

 

ステージに当たるライトは強烈で熱く、私達の頬を火照らせる。

彼女のスカートの裾がふわりと舞う。

後ろからのライトで煌々と照らされて浮かび上がるその姿は、もはや神秘的にさえ思えた。

私の記憶はまたもはっきりしなかった。

だがそれは昨日と違って、夢中で歌い踊っていたのと、彼女に見とれていたからかもしれない。

気付けば音楽は鳴りやみ、私達の前には先ほどと同じ星の草原が広がっていた。

刹那、大きな歓声と拍手が巻き起こる。

室内であるのと6000人もの規模が手伝って、それは人生で一番大きな賞賛の嵐だった。

思わずアオと顔を見合わせる。

そして汗ばんだ彼女がにこりと笑ったのを見て、私も表情を綻ばせた。

成功だ……!

「ブルーアラオ!ケイウンヘイロー!めっちゃよかったぞぉぉ!!!」

最前列でペンライトを両手に持っているのは荒尾でよく応援しに来てくれるファンの人だ。

「来てくれたんですか!?ありがとうございまーす!」

「アオちゃーん!ケイちゃーん!」

「えっみんな!?来てくれてたの!?」

あっちに見えるのはなんといつもの三人だ。

それにブラック先輩まで近くで手を振ってくれている。「行けたら行く」で本当に来てくれるなんて……

もっと歓声に応えたい所なのだが、イヤモニからスタッフさんがそろそろ戻ってきてほしいと指示を飛ばして来ているので、二人で一礼してから引き揚げる。

その最後の瞬間まで、歓声は止むことが無かった。

 

「「かんぱーい!」」

全てが終わったその日の夜、私達はトレーナーさんに連れてきて貰った中洲の居酒屋で祝杯を挙げていた。

「全くホテルがもう一泊分開いていたから良かったものの……今日中に荒尾に戻る予定が台無しだぞ。」

「えーでも……今日くらいは頑張ったから良いじゃないですか?」

たまにはトレーナーさんに頼み込んでみる。

「……今日だけだぞ。」

「えへへ、やったあ。」

意外にトレーナーさんもちょろい物だ。今度から頼みごとをするときはこっちの路線で行こうかな。

「それにしても大成功だったね!終わった後の物販もいっぱい人来てくれたし。」

「ファンになったって言ってくれる人も居たよね。これで荒尾に人が来るようになれば良いんだけど。」

ライブの終了後は各アイドルの手渡しでの物販販売の時間が設けられたのだが、私達のブースはかなりの盛況だった。売ってるものはせいぜいブロマイドとポスターくらいなのだが、それでも飛ぶように売れた。あんまり反響が良かったからCDも出そうかなどと上の人たちが反しているのも小耳に聞こえたくらいだ。

そのあとアイドルの人たちと連絡先を交換してお開きになり、そのまま帰る筈が私とアオでトレーナーさんたちに頼み込んでもう一泊追加と居酒屋にまで連れてきてもらった訳だ。

「集客については期待して良いでしょう。SNSの登録者数も着実に増えてますし、なにより……」

「火曜日にはお前たち二人の直接対決があるしな。新規ファンの取り込みにはこれ以上ないチャンスだろう。」

トレーナーさんの言葉を聞いて、私は自分の表情が硬くなるのを感じた。

 

そう、僅か三日後、私達は10月の九州ジュニアグランプリ以来となる直接対決を控えていた。

私は中一週、アオは兵庫での敗戦以来二か月半ぶりの出走だ。

今日まで仲間として協力して来たアオが明日から、もといもうこの瞬間からライバルに戻ったなんて考えられない。

「負けないからね、ケイ。」

彼女のその表情は、もうアイドルの物から競走ウマ娘の物へと変わっていた。

「……うん。真剣勝負だね。」

だが私ももう三か月前の私とは違う。新たな走り方を身に着け、ファンの人たちの期待を背負う身にもなった。

今度こそ、今度こそは……

 

アオに、勝つ。

 

 

 

その夜、鹿児島本線を南に下る列車の中で、真っ暗な車窓を覗くウマ娘の姿があった。

「……すごかったな、ケイちゃん。」

誰に言うでもなく、そのウマ娘はぽつりと言葉を漏らした。

「あんなにキラキラしてて、華やかで……」

 

「うちとは、正反対だ。」

 

そして列車は闇夜の中を切り裂くように、そのウマ娘を乗せて走り抜けていった。

 

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