ウマ娘 潮騒のアレグレット   作:秋月@小説

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第二章第十五話です。
ギリギリ年内に間に合いました。

今回も新キャラ出ます。名前のモデルは史実で中央にいる間ケイウンヘイローの調教師を担当された方です。しかし性格面等はほぼオリジナルとなりますので、あくまでも”実在の組織、競走馬、人物をモチーフにしたフィクション”として捉えて頂けると幸いです。私としてもイメージを著しく乱す表現は避けるつもりですのでご理解の程よろしくお願いいたします。

そして私事ではありますが、先日福岡で行われたウマ娘Twincle Circleの最終公演に行って参りました。今まで九州でのウマ娘関連イベントは佐賀競馬場のコラボイベントか新時代の扉の応援上映くらいだったので感慨深かったですね。
特に6thイベントの告知の時の現地の盛り上がりは尋常じゃなかったです。僕も思わず隣にいた知らないオタクと顔を見合わせてしまいました。
6thライブ、院試と卒論によりますが極力参戦するつもりなので行く予定の方は一緒に盛り上がりましょう。

それでは本編をどうぞ。


エンカウント

 私が中央での二学期を迎えて数日、少しずつだが授業やクラスにも馴染み始めていたある日の事。

 

「ねえケイウンヘイローちゃん」

 

 四時間目の国語の授業が終わり、教材を片付けようとしていた私の前に、ここ数日で少し顔なじみになった子が話しかけて来た。

 

「どうしたの?」

「いやケイウンヘイローちゃんさ、前入るチームを探してるって言ってなかった?」

「あー、うん。まだ見付けられてないけどね」

 

 既に地方で走り、本格化を迎えている身としては一刻も早くどこかのチームに所属し、こっちでもレース活動を始めたいというのが理想なのだが、如何せんこっちのチーム事情がよくわからず、選抜レースに出てスカウトして貰おうにもどのチームが良いのかも分からず困っていると軽く愚痴ったのを思い出した。

 

「ならさ、いいものがあるんだけど……」

 

 そして彼女が手渡してきたのは、薄水色のケント紙で綴られたA4くらいの冊子だった。

 

「“トレセン学園トレーナー逆評定”……?」

「うん。『バ耳東風社』っていう非公認団体が作ってる冊子でね、トレセン学園に居る百人以上のトレーナーを、実際に担当だったウマ娘からのヒアリングを基にUGからFまでの十段階で評価してあるの」

「ど、どこでこんなものを?」

「先輩から貰ったやつだからよくわかんないけど、学期の節目にゲリラ的に販売してるらしいよ? 学内での未承認出版物の販売だから毎年生徒会とか風紀委員が総出で取り締まるんだけど、全員逃げ足が速い上に素性を隠しているからただの一度も摘発されたことは無いんだって」

「……これ持ってて大丈夫な物なの?」

「よく分かんないけど販売が問題だから本自体は大目に見られてるらしいよ」

「ならまぁ良いのかな……? ともかくありがとね」

「うん。そんじゃあね~」

 

 思いがけずいい物が手に入った。どれどれとページをめくってみると、前書きの一ページを挟んで二ページ目から各トレーナーの紹介が始まっている。

 

 奈瀬文乃:UG・主な担当ウマ娘:スーパークリーク、メジロマックイーン、エアグルーヴ、サイレンススズカ、スペシャルウィーク、エアシャカール

 ・言わずと知れたトレセン学園の誇る天才トレーナー。実力もトップクラスだが被スカウト難易度もトップクラス。彼女の相マ眼に適うウマ娘は一年に一人か二人と考えた方が良いだろう。

 

 

 船須未奈美:SS・主な担当ウマ娘:ライスシャワー、グラスワンダー、アグネスデジタル

 ・担当ウマ娘が対戦する相手に何らかの記録が掛かっている場合に強さを発揮するため、担当ウマ娘だけでなく彼女自身も「刺客」「ヒットマン」と呼ばれる。非常に慎重な人柄で、担当ウマ娘が勝ったとしても無事に帰って来るまで喜びを表に出さない事で知られる。

 

 

 和多田譲治:A・主な担当ウマ娘:テイエムオペラオー

 ・新人で担当したテイエムオペラオーと共にレース界を席巻。年間無敗、シニア級王道G1完全制覇という不滅の大偉業を果たす。しかしオペラオー引退後の不調から、彼自身の手腕というより単にオペラオーが強かっただけなのではという意見も根強い。

 

 

 丸畑朋希:S・主な担当ウマ娘:フジキセキ、ジャングルポケット、ヒシミラクル

 ・気難しいウマ娘、さぼり癖があるウマ娘にも結果を出させる堅実派。自分にそんな気配があると自覚しているウマ娘は門戸を叩くべきかもしれない。

 

 担当ウマ娘からの評価

 

 〇奈瀬さんは私が育てました 

 〇先頭の景色、夢見た景色を見せてもらいました 

 〇日本一の夢! 一緒に掴みました! 

 〇正確無比な戦略眼、こっちの心を読めるんじゃねェかって位的確なメンタルケア、自分自身もトレーニングを欠かさない自己研鑽の姿勢は素直に評価できるな。だがロジックよりフィーリング型なのがオレの趣味じゃねェが 

 △偏食が多い! 特にニンジン! 注射嫌いなのも大人とし相応しくない! 

 〇お姉さまと一緒だったから、幸せをつかめたよ 

 ×鬼! 悪魔! 英語の先生! 

 

 ……これ、ここまで読んでから気づいたけど……私でも名前を知ってるクラスのトレーナーの評価を見た所で、基本成功体験しか出て来ないのでは……? 

 

 そう思って十ページくらい飛ばしてみる。

 

 △情熱があるのは分かるんだけど、私の希望を聞かずに勝手に出走予定とか入れられてキツかった

 ×毎日同じトレーニングばっかり。その上結果も出なくて……本当にやる意味あったのかな

 △トレーニング続きでライブとか歌の練習全然やらせてもらえなくて、いざ勝った時ステージで棒立ちすることになって恥ずかしかった

 △『疲労に効くから』ってクソマズい青汁を何度も飲まされた。疲労は回復したけどメンタルが死んだ

 ×連続出走で怪我した。二度と走れなくなった。サイアク

 

 おぉう、なかなか……

 “D”以下の評価は色々闇が深そうである。

 

「ケイちゃん、学食行かない?」

 

 そうこうしていると誰かが私の机に駆け寄って来る。

 私が顔を上げると、そこに立っているのは黒髪のウマ娘。ユリノシルヴァ改めユリちゃんである。

 

「うん。いいよ」

 

 私は冊子を閉じると机の中に突っ込んだ。

 

 転入から数日。顔を合わせたら話すくらいの友達は何人が出来たが、元々積極的にコミュニケーションを取る方でもないので結局身の上が似ているユリちゃんと一緒にいる事が一番多い。

 彼女は彼女でクラスのギャルグループに少し興味があるらしいが、話のノリに入れる気がしないと泣きついてくる。

 そんなわけで結局私たちは共生関係のまま学園生活を送っている。

 

 

                      ◇◇◇

 

 

「ユリちゃんってやっぱり少食だよね」

 

 賑やかな学食で向かい合って昼食を摂りながら、ふと気になって彼女に問う。

 彼女のお盆には彩鮮やかなサラダとパンとミネストローネスープが並んでいる。

 

「え、そうかな? でもボク運動してないし。むしろ皆が食べ過ぎなだけだと思うんだけど……」

 

 そう言って彼女は私の前に視線を落とす。

 そこには厚切りのとんかつ定食がこんもり盛られたご飯と共に鎮座している。

 

「……え、食べすぎ?」

 

 彼女は無言でこくりと首肯する。

 

「で、でももっと食べてる人なんていくらでもいるし、そりゃあちょこっと多いかもしれないけど、せいぜい運動部男子くらいしか食べてないはずだよ?」

「普通の女子はそんな量食べないよ……」

 

 う、うーんそうなんだろうか? 別に荒尾に居た時も皆このくらいの量食べてた気がするんだけど……

 

「ところでさ、ケイちゃん。さっきあの子から何貰ってたの?」

「ああ、なんか各チームのトレーナーさんの評価が書かれてる本を貰ったの。結構興味深かったよ」

「え……ケイちゃん、走るの?」

 

 彼女の顔色が少しだけ変わった気がした。

 

「うん。そのために来たんだし。もう本格化も来ちゃってるから時間を無駄にできないしね」

「……そう」

「ユリちゃんは考えてないの?」

「……ボクにとっては、走りはここに来るためのツールに過ぎなかったから。元々大してレースが好きって訳じゃないし、ここに転入できた時点で目的は達成してる。だからもうレースは良いかなって」

「そっか。でももったいない気もするけどなぁ。中央まで来れるって事はユリちゃんも結構速いんでしょ?」

 

 私がそういった途端、彼女は目を伏せた。

 

「……別に、速くなりたくて速くなった訳じゃない」

 

 ……理由は分からないが何らか地雷を踏んだか。とりあえず話題を変えよう。

 

「そ、そういえばさ! この間聞いた東京で行きたい場所、もう決めた?」

 

 何日か前にユリちゃん都会人化計画(仮)の第一弾として、ユリちゃんが行きたいことに案内すると約束していた事を思い出した。

 

「……えっとね、一番気になったのは三鷹にあるこの美術館なんだけど」

 

 そう言って彼女が見せてきたスマホの画面には、三鷹市にある有名なアニメスタジオの美術館が載っていた。

 

「あ~……そこめっちゃ人気だからひと月以上前に予約しなきゃ入れないんだよね。雰囲気楽しむだけだったらすぐ横の井の頭公園散歩したり吉祥寺でカフェ巡りとかも大人っぽくて良いかなって思うけど、どう?」

「あんまりお小遣いないからカフェ巡りは……東京って食べ物高いんでしょ?」

「あーうん。特に吉祥寺の辺りは結構高いね。安く済ませたいんだったらそれこそ原宿で食べ歩きとかどう?」

「原宿! 一回行ってみたかったんだ!」

 

 ユリちゃんの顔色がぱっと明るくなった。どうにか話題は逸らせたかな。

 

「じゃあ原宿と、折角だし明治神宮も周ろうか。三鷹はまた今度ね」

「うん。やっぱり土地勘ある子が一緒だと助かるなぁ」

 

 とはいえ私が最後に原宿に行ったのはまだ小六の頃だったから、もう二年くらいは経つか。あそこは……特に竹下通りなんかはいつ行っても店の顔ぶれが変わっているから事前にリサーチしとかなきゃ。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 そんなこんなで食事を済ませた私はユリちゃんと別れ、一人でエントランスホールにやって来た。目的はただ一つ。選抜レースへの登録だ。

 よほど期待度が高いウマ娘でもなければ、まずはトレーナーに存在を認知してもらわなければスカウトされる事なんてほとんどない。そのために自らをアピールする場が選抜レースだ。

 まずはここで勝つまでは無くともいい所を見せて、トレーナーに注目して貰わなきゃ、と思っていたのだが……

 

「……え、次の選抜レースは十月?」

 

 早速出鼻を挫かれた。

 

「はい。選抜レースは年四回。各季節ごとに開催されますので」

「え、じゃあいつも練習コースの方で走ってるウマ娘達は……?」

「あれは模擬レースになります。デビュー前のウマ娘目当てで観戦に来るトレーナーや記者もいるようですが、公式の催しではありません。選抜レースの登録はもう始まっておりますが、いかがなさいますか?」

「……あ、えっと。はい。お願いします」

 

 と言う事で選抜レースは一月後にお預けとなり、登録だけして退散する羽目になった。

 

「やっぱり新しい環境だと慣れないなぁ……」

 

 とはいえ荒尾では私は大概特殊な方法でチーム配属されたし、荒尾でもシステムは同じで私が知らないだけなのかも。

 今更だけどトレーナーさん、なんであの段階で私を選んだんだろ。あの頃ならアオの方が圧倒的に強かったし、結局アオと互角に闘えるようになるまで一年かかったし。

 将来性を見出すのが上手いと言えば聞こえは良いけど、三冠含め重賞は一つも取れなかったし、結局中央に移籍してるんだからトレーナーさんにはほとんどメリットが無かったはず。何というか不思議な人だったよなぁ。

 

 ……というか、私が競走ウマ娘になってから出会った人は不思議な人ばっかりな気がする。トレーナーさんと言い、アオと言い、ホープさんと言い、ユリちゃんと言い。

 せめて新しいトレーナーさんくらいは普通な人と普通の出会い方をしたいものだ……

 

 そう思って教室へ向けて階段を上り、踊り場に差し掛かった時だった。

 

「うわーっ! 退いて退いて退いて逃げてぇーっ!」

 

 悲鳴に似た声と共に書類の山が階段を駆け下りてきた。

 

 ……は? 

 

 間違いない。脚の生えた書類の山である。いやそんなことは関係ない。問題はそれが私の方へと突進してきている事である。

 目標は二メートル先。速度は分かんないや。でも今から横に身を翻せばギリギリ回避は出来るだろう。

 だが冷静に考えて目の前に迫る物体は書類型の新手の生物或いは妖怪と解釈するよりは、人間或いはウマ娘だと考えるのが自然だ。それがこのままの速度で突進したら踊り場の反対側の壁と勢いよく激突する事は必至。事故の第一発見者となるのは正直御免だ。

 

 そう考えた私は何を思ったか“それ”を受け止める事を決めた。

 

 何故だろうか。正直フィジカルにそこまで自信がある訳じゃ無い。そんなに正義感に燃えているわけでも無い。でも私は実行してしまった。

 その結果、その速度を五割ほど減速させることに成功したのだった。

 ……つまるところ、受け止めきれなかった。

 

 ずってーん! 

 

 というオノマトペが似合うそこそこ派手な音を立てて私は背中から倒れた。

 受け身が上手くいったのは不幸中の幸いか。

 

「あいたたた……あの、大丈夫ですか……?」

 

 バラバラに広がった書類の海からむくりと人が起き上がる。

 

 若い女性だ。ジャージ姿で、前髪はぱっつんに切り揃えられて後ろ髪はおだんごにまとめられている。細い金縁の丸眼鏡が印象的な彼女は、起き上がりながら私を一瞥すると──突然目をまん丸にしながら綺麗に二度見して、私の肩をがしっと掴んできた。

 

「ええぇっ!? ネイチャちゃん!?」

「……へっ?」

 

 余りの唐突さに私は尻尾をピンと伸ばしたまま固まってしまった。

 

「……あ、あぁ! 違うよね! ごめんね! ……あー!! じゃなくて! 大丈夫!? ケガとか無い!?」

「だ、だいじょうぶ、です……たぶん……」

「……よかっっったぁ!! ウマ娘ちゃんにケガなんてさせたらクビ不可避だったぁー!!!」

 

 その女性は天井を仰ぎ見ると歓喜の声を上げた。

 何かまたクセの強い人に会ってしまった気がする。

 

 っていうか、さっきこの人、私の事なんて言った? 『ネイチャちゃん』って……? 

 ……あ。

 ふと彼女のジャージの胸元を見ると、金に輝く蹄鉄マークが彫られたバッジが輝いているのが目に留まった。

 

「あの、トレーナーさんなんですか?」

「……えっ? あっ! そうだ名乗らなきゃ!」

 

 女性は私の声に反応すると慌てて正座して向き合った。

 

「はい! あたしはトレセン学園のトレーナーやってる、増永浩美って言います!」

 

 そしておもむろに膝の上に置いていた手を前へと下ろすと、

 

「ぶつかっちゃってマジですみませんでしたぁーっ!!」

 

 それはそれは綺麗な土下座を繰り出したのだった。

 

「い、いや別に何ともなかったんで顔を上げて下さい……」

「いや流石にこれはダメ! それに万一後から骨にヒビ入っていたとかになったらマズいから! これあたしの名刺です! どうぞ担当トレーナーの方に渡してください!」

「いえ、私 担当トレーナー居ないんで……」

 

 私がそういうと、彼女はキョトンとした顔をした。

 

「あれ? でもそのトモの筋肉のつき方は明らかにダート走ってるよね? それもデビュー前の段階じゃない、実戦レベル……あんまり目立たないけど砂が当たって出来る細かいキズもあるし。それはバ群の中を走ったことがなきゃ出来ないはずだよ」

「あ、私この間地方から転入して来たんです。そこで走ってたので……」

「あぁ、なるほどね! それなら納得いくわー!」

 

 彼女は合点が行ったようにぽんと手を打つと、今後は怪訝そうな顔をして私の顔を覗き込んでくる。

 

「な、なんでしょうか……」

「似てる……なんか似てるんだよな~……」

 

 そう言って彼女はしっかりと私に視線を合わせてきた。

 

「あなた、名前は?」

「えっと、ケイウンヘイローって言います」

「ケイウン……どこかで訊いたような……でもやっぱり勘違いかな」

「あの……どうしたんですか? さっきから……」

「あーごめんね。あなたの瞳というか、雰囲気がね……面影あるんだよ。私の“元担当”に」

 

 それを聞いて、私は何となく──さっきこの人が私を見て呼んだ、あの人の名前が脳裏に過った。

 

「あの、間違ってたらすみません。その人って……“ナイスネイチャ”さん、ですか?」

 

「あーそうそう! なに、もしかして親戚だったりする!?」

 

 なんたる運命か、私がぶつかったこの人は憧れのネイチャさんのトレーナーであった。

 

「いや、違います。たぶん」

「そっか~。因みにネイチャちゃんのファンだったり?」

 

「──! はい! 大ファンです! 私、ネイチャさんに憧れて競走ウマ娘になったんです!」

「そっかそっか! いやー嬉しいなぁ。もう最近はウマ娘達の強さもインフレし過ぎちゃって、挙句の果てに“英雄”みたいなのも出てくる始末だし。あの子の事憶えていてくれるだけで元トレーナーとして嬉しいよ~。しかもあの子と同じ緑のリボンまで真似してくれて……」

 

「あ、これですか? 実はこれネイチャさんから直接貰った本物で……私の宝物です!」

 

 それを言った途端、彼女の動きが止まった。

 

 

 

 二秒、三秒は固まっただろうか。

 

「みつけた……」

 

 彼女は蚊の鳴くような声でそれだけ呟いた。

 

「え、今なんて……」

「あなた、今何級?」

「クラシック級……ですけど」

「適性は今はダートだよね。芝は走ったことある?」

「無いです。あの……」

「得意脚質は?」

「逃げ先行です。あ──」

「距離適性は?」

 

 繰り返される質問。最初は真意を測りかねていたが、ぼんやりと彼女の意図が読めてきた。

 

「……短距離からマイルです。中距離は2000mで二着までです」

「1400m走ったことある? 憶えてる範囲でタイム教えて」

「良バ場で1分30秒4です」

「……なるほど。じゃあ最後に。あなたの夢は?」

「ナイスネイチャさんみたいに、強さ以上に愛されるウマ娘になる事です」

 

「分かった。あのね、ケイウンヘイローさん──」

 

 そして彼女は姿勢を改めると、しっかりと私の眼を見据えて、口を開いた。

 

「私に、あなたを担当させてほしい」

 

 

 ──耳を伝って入って来たその情報。

 途中から何となく予測できていなかったと言えば嘘になるし、冷静に考えれば突飛が過ぎる話なのだろうが、

 

 その言葉に、私の胸はとくんと弾んだ。

 

 

 

「私の全力をもって、貴方をネイチャちゃんと同じ所まで──いや、ネイチャちゃんより上まで連れて行く。それが」

 

「それが、あたしがあの子とした約束だもの」

 

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