え!!1対空中騎士団でドッグファイトを!?出来らぁっ! 作:シーブック マクロスを生涯推す
「は?(何だよこれ...)」
ゲートを抜けた先で俺を待っていたのは、夥しい数の死体と瓦礫の山だった。いたる所が赤く染まり、砲撃のような音、そして悲鳴が聞こえてくる。どうやら紛争地帯の様だ。俺はあまりの衝撃で言葉を発することが出来なかった。同時に初めて死体を見たことにより、吐き気が込み上げてくる。そこで悟った。俺たちが観て来たのはマクロスΔ、いいやマクロスシリーズのほんの上澄みでしかないことを。
バシュン!バシュン!バシュン!
愕然としている俺の脇を砲弾が何発も通り過ぎていく。いや砲弾ではない、それはバルキリーのガンポッドから放たれた銃弾であった。
「おい!まだ生き残ってる奴がいるぞ!」
「ほんとかよ、運がいい奴だな!俺が直々に殺してやるぜ!」
俺が初めて見たバルキリーはVF-171 ナイトメアプラス、あの新統合軍で用いられた、VF-17 ナイトメアの発展系であった。マクロスFを観ていた時は、バジュラによく撃墜される、旧型扱いをされていたが、生身の俺にとっては悪夢としか言いようがなかった。たまらず俺は走り出した。傍らには死体が目を開けたまま俺を見つめている。死体の目から感じる恐怖と、悪夢に追われる恐怖が着実に俺を追い詰めていった。
「へへ逃げてくぜ、鬼ごっこがしたいのか?」
「こっちは鬼が2人居るんだぜ?せいぜい直ぐ捕まられない様に逃げてもらわないとな!」
相手は俺で遊んでいるに違いない。照準など合わせずに適当に射撃をしているのだろう。しかしその適当な射撃が俺には脅威になる。凄まじい音を立てながら地面にぶつかる弾。それに当たり飛び散る瓦礫。身体中に瓦礫を受け痛みが走るが、かまわず走り続けた。そして幸運にもビルの中に運良く逃げ込むことが出来た。
逃げ込んだビルの中は凄惨だった。廊下、部屋などさまざまな場所で人が血を流しながら死んでいた。途中で警備員の死体を見つけた。どうやら避難を促している最中に、瓦礫に頭を潰されてしまった様だ。俺は吐き気を抑えながら銃を拝借した。エレベーターは稼働していたが、いつ止まるか分からないため、階段で移動する事に決めた。興奮していたため気が付かなかったが、足に瓦礫が当たったのか、血が滲んでいた。おまけに頭からも出血しているようだ。途中拾った布切れで止血を促したが、階段を登る度に血が出ているのを感じる。頭がフラついてきたため、途中の踊り場で座り込んだが、意識が朦朧として来た。
(しっかりするのです!諦めてはいけません!)
聞き覚えのある声がした。
「神...様?」
(その通りです。私も考えるべきでした。アニメで描かれていた裏側には、この様な出来事があったのかも知れないと...それさえ考えついていれば、この様な場所に貴方を送り届けることはなかったのに...)
「アンタのせいじゃない...俺が甘かったんだ...」
夢にまで見ていたマクロスの世界。アニメで観たヒロインや主人公の日常風景、劇中を彩る歌、カッコいいバルキリーの戦闘。それらを全部アニメで観ていたから、この世界は素晴らしい理想の世界だとずっと思って来た。
しかしその理想は現実を見たら容易く打ち砕かれた。バルキリーが飛ぶ度に人が死ぬ。ガンポッドを撃つ度に人が死ぬ。ミサイルを撃つ度に人が死ぬ。ありとあらゆる行動1つ1つで必ず死人が出る。それも兵士だけでない、一般市民だ。たとえ死ぬことが無くても一生トラウマに残る。エンジンの音、ガンポッドの発砲音、友人の死、家族の死、そして恋人の死。全ての行動において確実に恐怖を植え付けてくるそれがマクロスという世界だった。