団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!!   作:梏 桎

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小説版のグラブルを、改めて読み返している途中です。
追憶のアーシヴェルも買いたくなって困っています。


頼みはあったろう?

 

 

「んっ…… 何……?」

 

 

 

 私が11歳を迎えて、少し経った頃に()()はやってきた。

 

 

 起床の際に、胸に僅かに発生した違和感。

 服を脱ぎ捨てて胸を凝視するも、特に変わった所は無い。

 

 然しそっと触ってみれば、乳頭付近が痛いとも痒いとも言える違和感に苛まれる。

 まだ大した違和感でも無いが、すわ大病の兆しかと一瞬焦る。

 

 暫し考え、今世の年齢に行き着いたタイミングで思い至る。

 

 

 多くの人が経験する事が無いだろう2回目の──無論、前世を含む──第二次性徴では無いかと。

 

 

 前世からすれば特殊な種族であるハーヴィンも、枠組みとしては人間である。

 当然のように思春期も存在する訳だが、私の身体もついに女性らしさを増していくのか。

 

 

(まぁ中身は相変わらずコレ(陰キャロリコン)だけど)

 

 

 それにしてもこの胸の違和感はどうにも鬱陶しい。

 先述した通り大した違和感では無いのだが、全く気にせず生活出来る自信は無い。

 この違和感が暫く続くと思うと、過剰なストレスになりそうだ。

 

 

女の子(身体)の事は、()よりマッマに頼る方が正しいか)

 

 

 私は素直にマッマに話そうと、朝餉の支度が進む食卓へ顔を出す。

 

 既にパッパが食卓に着き、新聞のように何かの紙を広げている。

 我が家は新聞を購読していない筈だから、恐らく警邏活動に関する書類とかだろうか。

 

 

「おはよーパパ。 ふわぁ……」

 

 

 何はともあれ挨拶をする。

 胸の違和感のせいで普段より早めに起きたからか、挨拶と同時に欠伸をする無礼を働いてしまった。

 家族間なので許してくれ、パッパ。

 

 

「おはようルミ。 今日は早い……な……」

 

 

 んぁ?パッパの歯切れが悪い。 普段はもっとこう、シャキッとした言葉が返ってくるのだが。

 

 

「ルミちゃん起きたの〜? それなら少し手伝って欲しいのだけ……ど……」

 

「おはよー……2人して何をそんな固まってるの?」

 

「ル、ルル、ルミちゃん!? 服はどうしたのよ!服は!!」

 

「服ぅ? 服が何か……あっ」

 

 

 やってしまった。 脱いだっきり着るのを忘れていた。

 

 普段は起きるのが遅いけれどキッチリ服を着ている娘が、珍しく早起きして来たと思えば上裸だったんだもんね。

 私が両親側なら天変地異の前触れでも疑ってしまいそうだ。

 

 

「あはは……これには事情がありまして──」

 

「お話は後で聞くから取り敢えず服を着てルミちゃん!!」

 

「ルミ、先ずは服を着なさい」

 

 

 両親が言葉こそ違えど服を着る事を促す。

 

 私としては脱いだままの方が説明も実証も出来て楽なのだけれども。

 家族に裸を見られて今更羞恥も無く、私としては胸が擦れる可能性が生まれる点を思えば、出来る限り服を着たくない。

 

 

 そんな私の心情が顔にも出ていたのか、言っても動かないと判断したパッパに腕を引かれて強制的に部屋に戻された。

 仕方が無いので、非常に緩慢とした動作で服を着直す。

 

 ……やっぱり擦れた際に違和感が生じる。

 

 

(激痛とかでも無いから有難いけど、くっっそ気になるなぁコレ)

 

 

 

 そんな騒動と朝餉を挟み、私はマッマに胸の違和感を話した。

 マッマは『あぁ、だから脱いでいたのねぇ……』なんて今になって納得してくれた。

 

 その後、解決策は用意するが少し時間がかかるのでそれまでは我慢して貰うしかない、という話になってマッマとは解散。

 

 

 早急にどうにかなれば、と思ったりもしたが矢張り難しいか。

 この世界の下着事情とか、魔法体系以上に想像が付かないので私からは何も出来ない。

 ハーヴィン用のブラ自体は港町で見た事があるから、将来に関しては心配していない。

 

 だが────

 

 

この世界(グラブル)の文化って謎すぎるからなぁ……ジュニアブラはどうなんだ?)

 

 

 今回はジュニアブラで頭を悩ませているが、このような悩みは片手では足りない程に抱えて来た。

 

 以前のユニバーサルデザインに関するアレコレもそうだが、空の世界は歪だという六竜の発言を私は文化の方面からヒシヒシと感じている。

 電気に関する理解や発明が進んでいながら、電子機器の発展が遅すぎる点もそう。

 かと思えば、羅生門研究艇が抱えている設備なんかは明らかに近未来的だ。

 

 

 ゲームとして遊んでいる頃は、ご都合ファンタジー世界特有のアレやコレなのだから気にしたら負けというものだと思って受け入れていたのだが。

 

 

(生活する側に回るとナーロッパって想像以上にチグハグでムズムズするんだよなぁ……

 この世界(グラブル)はそもそもの地理からして前世と歩んだ歴史が違い過ぎるから、私が勝手に納得しきれていないだけなんだろうけども……)

 

 

 

 私がこの世界の文化についてうんうん唸っていれば、背後から風が吹く。

 

 

「隙ありっ!」

 

「ふっふっふ……甘いよ、エリス。 見よ!我が輝きを!」

 

「まぶしっ!? お姉ちゃんなんでパンツ光ってるの!?」

 

 

 何でと聞かれたら、君がスカートめくりを楽しむ悪い子になったからだよ妹君。

 

 

 妹君は村の手伝いをしている時間の方が長いが、順調に魔法も覚えている。

 風属性への適性が非常に高いようでそれ自体は喜ばしいのだが、このようにスカートめくりに悪用する。

 

 最初の内は大人しく餌食になってあげていたのだが、調子に乗り始めて村内なら場所を問わずスカートめくりするようになってしまった。

 なので最近は対抗策としてパンツを光らせたり、闇で覆って『プレイエリアの外です』してみたりしている。

 敢えてスッケスケのエグいパンツを履く事で、妹君にやって良い事と悪い事を教え込むのも考えたのだが、狭い村内で10歳前後の子供がエグいパンツを履いている噂とか流れるのは嫌だったので諦めた。

 

 因みにそのパンツは余っている生地と無色の魔法糸を用いた手作りの予定だったのだが、今にして思えば、自らスケスケのパンツを作って履く痴女になる所だったと戦慄している。

 

 

「お姉ちゃん、何かあった?」

 

「何かって、何?」

 

「うーん……いつもより動かないから、具合悪いのかなって」

 

 

 相も変わらず奇妙な察しの良さを発揮する妹。

 というか、え? 妹君は私がやたらと動いている生物という認識だったの?

 

 

「お姉ちゃん、普段からそんなに動いてるかな……」

 

「いつもエリスを撫でてる時にクネクネしてるよ?」

 

 

 そんな事になっているの!? 自覚が有りません!

 いや、確かに妹君を触る時は、こう、()()しているが……

 

 

「んー? でもいつものお姉ちゃんの目だね?」

 

「……それは、どんな目なんでしょうかエリスマルル氏」

 

「し? ……うーん、何て言うのかなー」

 

 

 途端に歯切れが悪くなる妹君。

 

 嘘、私ってそんなに普段から妹君をエッチな目で見ているか!?

 朝起きてから寝る時までぐらいしかそんな目で見た事が無いのに!?

 

 

「何と言うかー、エリスしか見えていない感じ?」

 

 

「間違って無いよエリス! エリスしか勝たん!!」

 

 

「え、う、うん……」

 

 

 妹君が至極当然な事を言うから、前世(オタク)の血が騒いでしまった。

 少しばかり引かれたが、反射で飛び出た発言だからスルーして欲しいな、妹君よ。

 

 そして妹君には覚えておいて欲しいが、オタクは大概、推しが複数居る。

 更に『勝たん!』宣言は大抵の場合、割と早めに別の推しにも言う。

 同じ推しに重ねて言う事もあるけれど、オタクはそういう生物なのでどうか割り切って貰いたい。

 

 

 

 決して口には出さない意味不明なオタク弁明を胸中でしながら、私は妹君を連れて村人の手伝いに赴く。

 

 気付けば私は、すっかり胸の違和感を気にしなくなっていた。

 

 

 やっぱり妹君しか勝たん!!

 

 

 

 

 

  §  §

 

 

 

 私の普段の生活は、修行や研究が大半を占めている。

 その合間を縫って妹君と戯れたり、1歳を目前に控えたフュンフと戯れたりする。

 

 

 フュンフの魔力暴走というランダムイベントは今も発生する事はあるものの、その頻度は大幅に減って来ている。

 

 但し、このランダムイベントに付き合う時間が減っても、他の村人からの頼み事が減る訳では無い。

 寧ろ現在は胸の違和感によって大人しくしている時間が増え、それを暇していると捉えられて頼み事も増加するようになった。

 

 

 妹君もそうだが、私はそんなに忙しなく動いているイメージなのだろうか?

 

 

 頼み事は無理難題が過ぎると思えば断るが、基本は受ける姿勢でいる。

 NOと言えない日本人魂を引き継いでいるから────と言うのも1つの事実ではあるものの、ちゃんとした理由もある。

 

 

 何せ頼み事が多くなったという事は、得られる報酬が増えたという事である。

 報酬が必ずしもお金(ルピ)であるとは限らないが、その場合は美味しい食べ物だったり不要となった(好きに遊んで良い)魔道具だったりするので、確りとwin-winの関係だ。

 

 

 報酬で得られるルピは現在、その殆どを貯金している。

 島から出る際の騎空艇の乗艇賃や、シェロちゃんに取り寄せて貰う予定の生地などに使う為だ。

 

 また、主人公と会う前に刀も新調したいのでその分でもある。

 パッパから譲り受けている現在の刀は、そろそろ私には合わなくなる可能性があるし。

 

 

 現在の刀は刃長が私の身長の7割程、柄も含めた全長がほぼ私と同じぐらいだ。

 ()()()()私には重く、長すぎる武器である。

 

 然し先日、この身体も思春期へ突入する兆しを見せた。

 私の身長が何処まで伸びるかは分からないが、多少は伸びると信じている。

 身体機能が今以上に成長する時期でもあるし、魔力容量もどこまで成長するか予想も付かない。

 

 この身体は数年の内に変わっていく事が確定しているのだ。

 それによって現在の刀が私に今以上に馴染むのなら結構だが、そうで無かった時が困る。

 

 現在の刀は、パッパの持つ刀の中で最も私と魔力や属性の相性が良いものを選んでいる。

 身体に合う刀剣だけならまだパッパが持っている可能性はあるが、魔術的な観点を見れば今以上の刀はパッパの手元にも無い。

 

 私は良くも悪くも全属性を扱うので、魔術的な観点を加えてしまうと非常に刀を選ぶ。

 実際、現在の刀も私の魔力を100%浸透させてはくれないのだ。

 特に私が1番得意とする──割に使う機会が闇より少ない──光属性の浸透率が他の属性と比べて低い。

 

 

(それに魔法戦士を目指すなら、やっぱり担ぐ刀はテトラストリーマっぽい方がテンション上がるし)

 

 

 色々と理由を並べたものの、本音は結局見た目である。

 ただ、テトラストリーマのような両刃だと構えを見直す必要があるので、あくまで寄せるのは細かな意匠だけ。

 全体的なシルエットは清めと祓いの刃のような、オーソドックスな太刀の方が好みなのだ。

 

 勿論、先に並べた理由はどれも嘘では無くて、実際に危惧する事柄ではある。

 それ以上に、見た目に拘りたいという話なだけで。

 

 

 

 

 見た目と言えば、胸の違和感をマッマに相談してから数日後。

 

 私はマッマによって人生で初めての3サイズ測定を行った。

 

 3サイズ全てを測った理由は何故か暈されたが、バストに関しては態々ジュニアブラを作って貰う為と言うので大層驚いた。

 そこまでして貰って良いのかと、思わず前世の私(陰キャ社会人)が平身低頭してしまったのだが、マッマからしたら娘の大事な成長を蔑ろにする方が有り得ないと返されてしまった。

 

 あまりにも優しいマッマを持ったと痛感して抱き締めて泣いた。

 物凄く感激していた筈なのに、抱き締めている内に前世の私(ハーヴィニスト)の部分が興奮し始めたので、我ながら情緒がめちゃくちゃだと思った瞬間である。

 

 

 兎に角、これにて服と擦れる胸の違和感とはおさらば。

 胸自体はここから多少は大きくなる筈なので、胸の違和感そのものとは付き合っていかなくてはならないだろうが、胸が大きくなる分には私は構わない。

 

 私は間違い無くロリコンだが、世間一般では胸が大きい方が男ウケする事ぐらいは理解している。

 そもそも、大小を問わなければ男女関係無く人類は凡そ胸が好きだろう。

 

 それに何の因果か男が女になったのだ。

 戦闘の邪魔になろうが、ハーヴィンのサイズ感じゃどうやっても爪先までスッキリした視界だろうとも、1度は味わいたい。

 デカい胸が自分にくっついている感覚というものを。

 

 

(ハーヴィンの場合、胸より尻の方がデカくなりそうで怖いけど)

 

 

 私の身体はハーヴィンらしい肉感が無い訳では無いが、現状は比較すればむちぷにしていない。

 それでも物凄く気にはなるし、前世の感覚からすればもう少し肉が落ちないかと思ってしまう所もある。

 

 この先は更にむちっと、ぷにっとしていくのだろう。

 見ている分には眼福だったあの体躯も、なる側としては戦々恐々だ。

 11歳にもなって未だに全てがハーヴィナイズ*1され切っていない私に、あのむちぷに具合を許容出来るのだろうか。

 

 

 

 今の内に少しでも肉を減らしておこうと、私はむちぷにを受け入れる現実から逃げて刀を持って庭に向かう。

 

 

 素振りをし始めた途端に胸の違和感を失念していた事に気付き、服を脱ぎ捨てて運動したくなる衝動を抑えながら、普段の半分だけ素振りをしてその日は諦めた。

 

 

 

 私は自分でも思っていた以上に刀を振りたくて堪らなかったらしく、結局ブラが届くまで定期的に似たような事例を繰り返した。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 ブラが無事に届いて、私も着用が当たり前になって暫く。

 

 

 満月が照らす山の祠で、私はツクヨミ様にずっとしたかった()()()を話す事にした。

 

 因みに今宵もツクヨミ様に抱きかかえられている。

 最早これが普通だった気がしてくるから、私も感覚が麻痺して来たのかもしれない。

 

 

「ツクヨミ様、折り入ってお願いがあるのですが」

 

「何でしょうか」

 

「とあるハーヴィンが住む島を探して頂きたいのです」

 

「それは……何故でしょう」

 

 

 当然の疑問が返ってくる。

 

 私のする頼み事はクラーバラの捜索だ。

 

 

 クラーバラは、プレイアブルキャラクターのサビルバラの妹で、カラクラキルと婚約したハーヴィン。

 特徴的な訛りを持つ、男勝りだけれど気遣いも出来る女性である。

 そして彼女はゲーム中において故人である。

 

 委細は省くが、彼女は花嫁行列の最中に斬られて死ぬ。

 そしてこれが原因で、サビルバラもカラクラキルも復讐者として旅に出る。

 その上、私が知っている限りの彼らの復讐の旅は、苦味の強い終わりと虚しさで染まっていた。

 カラクラキルは妖刀を持って失踪し、サビルバラは未だに妖刀を折る事が出来ないまま、彼らの復讐は終わりを迎えてそれっきり。

 

 

 私の目的は、クラーバラを救う事である。

 この世界がグラブルだと知った時に、数少ない主目的(イチャイチャ)以外のやりたい事だった。

 

 私は主人公と違って底抜けのお人好しにはなれないし、人を助け続けられるほど強くも無い。

 だからこれは、完全な私のワガママによる救済。

 

 そして、そんなワガママを行う為には、彼女の生存確認と住んでいる島の位置が把握出来ていなければならない。

 

 当然だが、彼女が生きていなければ完全に破綻する話なので生存確認は非常に大事だ。

 だが困った事に、彼女達の島はファータ・グランデの東という情報しか無い為、空域図を買った所で目星は付いても確証は得られない。

 

 普段の『困ったら1人でどうにかする』は、流石に島を出るレベルでは通用しないだろう。

 となれば両親に話を通す必要があるが、まず許可は出まい。

 種族、出来る事、年齢の3つが稼ぐ事を難しくさせているから自費旅行の目処も立てられず、先述したように今は出来る限り貯金をしたいのもある。

 

 

 故にツクヨミ様に頼る。

 画力は前世でもそれなり、今世はイメージを直接形にするのもあって悪くないから、似顔絵も用意した。

 空域図とゲームで散りばめられた少ない情報を必死に繋ぎ合わせて、ある程度の数までは島も絞れている。

 

 

 私はこれらの情報を色々と省いたり、誤魔化したりしながらツクヨミ様に説明した。

 

 

「探す理由は分かりました。 貴方がそこまで()()()()御空の輝き、我も目にしたくなりました」

 

「ほぇ?」

 

 

────懸想? 私が? クラーバラに?

 

 

 いや、これはもしかして。

 

 

「もしかして、ツクヨミ様ってば嫉妬──」

 

「それっ」

 

「んひゅい!?」

 

 

 理性を溶かしに来る普段の揶揄いに仕返しをしようとした所、ツクヨミ様は掛け声と共に私の背中に手を突っ込んできた。

 少しヒンヤリしていて、でも温かみのある感触の急襲に私は奇声を上げて応じてしまった。

 

 

「うっふふ、良い鳴き声」

 

「ぐぬぬ……」

 

 

 私を抱きかかえながらツクヨミ様が笑う。悔しいが非常に可愛い。

 

 

「願いは受け入れましょう、期限は?」

 

 

 期限か、正直どう伝えるか困る。

 『その人、生きていたとしても死ぬ可能性があるんでそれまでに』とか言えない。

 

 

「何処にいるのかは出来れば早く知りたいんですけど……早過ぎても会いに行けないんです」

 

「ならば我が見守りましょう、貴方の為に」

 

「私の為、ですか?」

 

「その輝きが喪われれば、貴方も輝きを弱めるのでしょう?」

 

 

 私はその発言に驚いた。

 ツクヨミ様とは仲良くなれていると思ってはいたが、まさか私の為にクラーバラを見守るとまで言ってくれるとは。

 

 

「お願いしても良いんですか? その、私のワガママなのに」

 

「構いません。 それが貴方の輝きとなるならば」

 

 

 そう言いながら、ツクヨミ様の腕が私を少し強く抱き締める。

 見上げれば、ツクヨミ様と目が合った。

 

 私を慈しむような優しい目で、けれど何処か悲しげな目。

 

 

────どうしてそんなに泣きそうな顔をしているのだろう?

 

 

 ツクヨミ様は私を見て、暫くそんな顔をしていた。

 

 最近のツクヨミ様は──以前に話してくれた悩みが関係しているのだろう──割といつもこうだ。

 ツクヨミ様は言葉にこそしないものの、顔に『悩んでいます』とハッキリ出るレベルで自分がこの先どうするかを考えているのだ。

 とはいえ、私には推測しか出来ない。

 下手に聞いて判断を急がせるような行いはしたくない────なんて、私が臆病なだけかもしれないけれど。

 

 

 ツクヨミ様がこういう顔をしている時は、私は決まってする事がある。

 

 私は手を伸ばしてツクヨミ様の頬を撫でる。

 

 

「ツクヨミ様が何を思っているのか、私には残念ながら分かりません」

 

 

 ツクヨミ様は頬を撫でる私の手に、自らの手を重ねる。

 

 

「けれど私は、ツクヨミ様の友です。 貴方の味方です」

 

 

 私はツクヨミ様に笑顔を向ける。

 ツクヨミ様も微笑みで返してくれる。

 

 今の私に出来るのは、彼女に寄り添う事だけだ。

 だから私は彼女が悩んだ顔をする度に、味方である事を主張する。

 彼女が少しでも、自身の決断を認めてくれる人がいる事を覚えていて欲しいが故の言葉だ。

 

 

 今はまだこれで良い。 私達はゆっくりだが進めているのだから。

 

 

 

 何時かはツクヨミ様に教えの最奥の話をするだろう。

 その時にはきっと、私は秘密(前世)を打ち明ける事になる。

 

 

 何時かは話さなければならないだろう。

 ツクヨミ様の力を欲する理由は、私が懸想する相手(主人公)の為だと。

 

 

 でも────今はまだ、この温もりを。

 

 

 

 

 小さな2つの影を、満月は優しく照らす。

*1
何時ぞやの造語。今回の用法は、ハーヴィンらしい感性という意味。




成長の兆しと漸く書けた頼み事。

ツクヨミ様と何だか物凄く良い感じですが、1つになる(教えの最奥)為にはきっとこれぐらい仲良くなる必要があるはず……
イオちゃんとロゼッタもこんな感じですもんね? ね?
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