団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!!   作:梏 桎

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そろそろ1つの区切りかなという感じです。
加筆修正に関しても裏で改稿を始めており、更新速度が多少下がるかと思いますが、元々『書けたら出す』でやって来ているので許してください。


準備はあったろう?

 

 

 決闘を経て私が島を発つ権利を得ても、基本的な生活に変化は無い。

 

 

 今日は珍しく朝イチに愚図ったフュンフの対処から始まった。

 普段は寝るのも起きるのもスムーズなフュンフが愚図るのは、大体が体内の魔力生成が放出よりもずっと多くて気持ち悪くなるからだ。

 

 人間が体内に貯蔵できる魔力というのには限界がある。

 普通の子供は、基本的に身体に備わっている放出機能と釣り合う程度しか生成出来ず、身体の成長と共に生成量も増えていく。

 私も平均に比べれば魔力の生成量が多い方だが、生成量に変化が訪れたのは魔法の基礎を学び始めてからだ。

 

 だがフュンフは生まれながらに生成量が異常な程に多い。

 放出に関してもほぼ全身から行えるという物凄く稀有な体質な筈なのに、追い付かない所が彼女の魔力量の多さを物語っている。

 

 

 私1人での魔力暴走への対処は初めてだったが、少しばかり村の地面が抉れたのと、空を覆い始めていた雨雲を吹き飛ばすぐらいの被害で留まった。

 まだ私には真正面から魔力を打ち消すなんて芸当が出来ないので、相も変わらず包んで投げる方式。

 その際にほんの少しだけ風属性の元素を混ぜ込む事で雨雲を吹き飛ばしたのだが、これは今日やる予定だった新魔法が雨だと台無しだからだ。

 

 

 

 そんな朝から始まり、現在時刻は正午を少し過ぎた頃。

 早めに昼餉を済ませた私は、山頂にある背の高い木に登っていた。

 

 

「さーてと、始めますかー!────千里眼(ヴィルーパークシャ)!!」

 

 

 私の目に魔力が寄せ集められる。

 そうして、この言霊と術式によって私は隣の島の街並みを()()()()

 

 

(問題無く成功した! こいつは便()()()魔法が出来たよ!!)

 

 

 今回の成果である千里眼(ヴィルーパークシャ)は、名は体を表すように遠見の魔法である。

 当初は市販の双眼鏡に術式を書き込んで行う予定だったのだが、目から魔力放出が出来そう────つまり、目に魔力を寄せる事が出来ると判明してから調整を続けていたのだ。

 現在は近隣の島の街並みを見る程度で留まっているが、将来的には見渡せる距離を自在にする事も考えている。

 

 この魔法の参考元は、言わずもがなソーンの魔眼だ。

 ソーンと違って平常時は普通の視界なので、発動の手間を考慮しても便利だとは思う。

 感覚に慣れないと遠見しながら移動は出来そうにも無いが。

 

 この魔法の開発理由は覗き────ゲフンゲフン、偵察や遠方からの観察に役立つからに他ならない。

 主人公と幼女の周りには危険がいっぱいであると相場が決まっている。

 だから私がキッチリと目視確認で周囲の安全を密かに保証してあげるのだ。

 

 

(どうにか改良して服の繊維だけ透かせないか……?

 全部を透過する方が逆に楽な気はする。 調整するのが難しそうだな……)

 

 

 決して、悪用はしない。

 服だけ透かす事が出来れば、隠している凶器も事前に発見できるというだけである。

 まさか主人公や幼女の裸を服越しに拝むなどという不埒極まりない使い方をするつもりは無い。

 

 

────改良の際は妹君(エリスマルル)かツクヨミ様で試そう。

 

 

 妹君を対象にするのは私欲に塗れているだけだが、ツクヨミ様に関しては単純に構造が気になっているのもある。

 然しながら、最近のスキンシップが過剰なツクヨミ様に『身体が気になるので脱いでください』とか言ったら、美味しく頂かれるエンドに突入しそうで怖い。

 清純を気取るつもりも、女の快楽に怯えている訳でも無いが、単純に初めてがツクヨミ様なのは絵面がアウトすぎると思う。

 ハーヴィンの少女とヒューマンの少女にしか見えない星晶獣で構成される百合の花──その内の片方は元々男とする──は、背徳感が高過ぎるだろう。

 

 

 

 そんなツクヨミ様だが、ここ暫くは──私を抱きかかえる事だけは頑なにやめないが──クラーバラの捜索報告と、私の魔法に関してお喋りするぐらいとなっている。

 クラーバラの方に関しては、矢張り多少場所を絞った程度では特定が難しく、捜索は難航している。

 場所も分からなければ存命かも不明な辺り本当に無茶なお願いをしているのに、ツクヨミ様はめげずに捜索してくださっている。

 

 報酬と称して私お手製の菓子を要求してくるので随分と料理の腕も上がり、ツクヨミ様も空の民の味──というよりは私の前世の菓子の味──を知る者となった。

 私としてはべっこう飴を舐めている時間が至福だと思っているのだが、ツクヨミ様のお気に入りは甘納豆だ。

 1番気に入ってくれているのは羊羹なのだが、寒天の入手がこの島では安定しないので我慢して貰っている。

 

 

 魔法に関しては、『その魔法はどの場面で活用するんだ』みたいな開発した事に対する文句よりも、言霊に関するものが殆どだ。

 

 曰く────

 

 

「以前、戦場で出会した神鳥(ガルーダ)が好みそうな言霊ばかり。

 御空の燭(ロイルミラ)優婉嫺雅(ゆうえんかんが)*1な言霊を用いるべきです」

 

 

 とのこと。

 

 私はこの文句を頂戴した際に思わず『ガルーダと知り合いなんですか!?』と反応してしまった。

 勿論、そんなインドに心を寄せている私をツクヨミ様が取り合ってくれる訳も無く、返事の代わりに私は暗闇で擽られる地獄を味わった。

 以後ガルーダについては禁句となり、私は貴重なチャンスを1つ失った。

 インド神話に惹かれた人間(前世)としては、シヴァ様と並んで会いたかった星晶獣なのだが……

 

 残念ながら、私の語彙力ではツクヨミ様の好みになりそうな言霊は生み出せそうにも無い。

 既にこの旨も伝えてあるのだが、それでも偶に蒸し返される。

 

 

 言霊は発言する人間の()()を乗せられる方が強い。

 現在では魔術の体系から大きく分かれた呪術系統から続いている非常に古くからある概念だ。

 

 とはいえ魔術だって進歩している訳だから、統一された言霊だったり、言霊を必要としない魔術というのも開発されている。

 実際に『魔術を扱いたいが技を叫ぶのは恥ずかしい』という意見が存在するのだとか。

 

 それでも私が言霊を用いるのは、出力を安定させる事やトリガーにしやすい面が大きい。

 前世の血が『魔法や技は名前を言ってこそだろ!』と騒いでいるのもあるけれど。

 

 

 兎にも角にも、ツクヨミ様の捜索に区切りが着くまでは私の日常は変わらなさそうである。

 ならばこの間に必要な準備や、この島でのやり残しが出ないように色々と片付けをしておこう。

 

 

 

────オクトーと()()()()()()事だけは、島を出る前に済ませておかねば。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 暫くして、オクトーは島に帰ってきた。

 何処で何をしてきたのかは一切明かしてくれなかったが、土産を強請ってみれば『首が欲しいとは酔狂な童よ』と珍しくノッてくれた。

 

 この時、もう一度戦っては貰えないか聞いてみたものの、返ってきた言葉は『暫し待て』のみ。

 断られ無かったのは喜ばしい事だろう。

 然しオクトーの基準が分からないので『暫し』がどれくらいなのかは完全に不明だ。

 これで数年待たされたら流石に島を出るぞ、私は。

 

 

 

(まぁ既にその発言からそろそろ1年が経過するんですけれどもね)

 

 

 私は新しい魔道具を持ちながら、これまでを思い出す。

 

 既に私も12歳になった。 前世ならJSとJCの狭間だ。

 現在の身長は81.5cmと1年でぐんと伸びたし、胸に関しても順調に成長をしている。

 ……まぁ、あくまで成長の基準はハーヴィンであるけれども。

 月の障りも始まって、本格的に身体は女へと変化し続けている。

 中身は大差無い。 いつでも私は妹君か主人公を想っているし、暇さえあれば研究ばかりだ。

 

 オクトーが帰ってくるまでに、結局フュンフは数回しか魔力暴走を起こさなかった。

 少しずつではあるが、彼女自身で制御が出来始めているのかもしれない。

 

 オクトーが帰ってきて再戦の約束を一応取り付けられた後は、それこそ前の日常に戻っていった。

 

 その間に私は何度か港町に行った。

 目的はシェロちゃんとの交流や頼み事、それから旅に必要な物の購入に飴の補充だ。

 言霊を必要とする実験段階の時は兎も角、術式を構築している時や、魔法の全体像を練っていく最初の段階では、糖分の補給と口元を慰める目的で私はひたすら飴を舐めている。

 シェロちゃんの処で買った棒付きキャンディは大当たりで早々に舐め尽くしてしまったから、その後は手作りのべっこう飴で凌ぎ続けていた。

 本当は店の在庫を全て貰う勢いで買いたかったのだが、この何度かの港町遠征は妹君が一緒だったので断念。

 

 1人の時は──己の購買欲との戦いはあるが──何も問題が無かったが、妹君と2人っきりの時は、それはもう理性との戦い。

 襲いたくなる程に可愛い妹君ではあるが、何より恐ろしかったのは、欲しいと思った物を正直に口に出して伝えてくる所。

 それはもう甘やかして全て買ってあげたくなってしまう程の猛毒だったのだが、主人公達に思いを馳せる事で踏みとどまれた私を褒めて欲しい。

 

 

 話を戻して、現在持っているこの魔道具は港町に行った際に購入した市販品を改造した物である。

 名付けるなら魔法(マジック)スポイトと魔法(マジック)シェイカーだろうか。

 我ながら安直なネーミングだと思うが、こういう道具は分かりやすさを重視した方が良いと思っている。

 

 実験は既に済ませているので、後は本番で成功すれば良い。

 私は何だかドタバタと音がしている妹君の部屋をノックする。

 

 

「エリスー? 少しお時間よろしいかーい?」

 

「へーきだよー! 勝手に入ってー!!」

 

 

 入室許可を得たので扉を開ければ、どうやら掃除の最中だったらしい。

 いつも綺麗な部屋なのだからそんなに高頻度で掃除する必要は無いと思うのだが、これを言ったら絶対に自室の掃除をしろと妹君が怒り出す。

 触らぬ神に祟りなし────私はやりたい事だけやって早々に退散するとしよう。

 

 

「エリスちゃんに少しだけ魔力を提供して欲しくて馳せ参じましたー」

 

「エリスの魔力? なんで?」

 

「ふふっ、ちょっとねー。 こんな感じで頂戴するから、見ててね?」

 

 

 そういって私は、掌をスポイトで吸わせる。

 これが魔法(マジック)スポイトの機能、魔力の吸い上げだ。

 私は吸い上げた魔力をシェイカーに手早く入れる。

 

 

「こんな感じで、エリスの掌と髪から吸い上げをさせて欲しいんだ」

 

「掌は分かったけど、髪? 髪って魔力通ってるの?」

 

 

 妹君はまだ学んで無いから──そもそも私が勝手に医学誌を読んで得た知識である──疑問に思うのも当然か。

 私は大雑把に説明をして、髪からの吸い上げも同意を得る事が出来た。

 数秒も掛からずに終わる作業なので、サッと終わらせてシェイカーに入れる。

 

 不思議がる妹君を前に、私はシェイカーを思いっきり振る。

 何も入ってるように見えないし、何も音のしないシェイカーを振っているから、今の私は傍から見たら狂人かもしれない。

 

 暫く振ると、シェイカーの中が淡く光る。

 これが完成の合図で、私の魔力と妹君の魔力が()()()()証拠である。

 

 普通は魔力を混ぜるといってもこんな事をしない。

 もっと丁寧にお互いが糸を撚るようにする作業が必要だ。

 今回の目的にはそこまで多くの魔力は不要だから、こんな単純で視覚的に分かりやすい作業に落とし込めるように術式を構築した。

 少しの楽の為に1から術式をシェイカー内部に書き込むのは非常に大変だったので、多分2度目は無いと思う。

 

 私はシェイカーの蓋を取りつつ、自らの髪に魔法を掛ける。

 特に名前も付けていない範囲指定の魔法だ。

 範囲を指定する、と聞くと中々便利そうだと思う人もいるだろう。

 残念ながら、この魔法で指定出来る範囲は私の身体のみ。

 更にこの魔法の影響を受けてくれる魔法が少なすぎて、基本的には誘導とかにも使えない。

 

 だが、その魔法が唯一かもしれない輝きを放つ瞬間が今だ。

 私はシェイカーの中身──目視出来るものは何も無い──を()()()()()

 

 すると────

 

 

「え? え、え!? お姉ちゃん! その髪の色……」

 

「ふっふーん! どう、エリス? お揃いのワインレッドを入れたお姉ちゃんは?」

 

 

 私のライトグリーンの髪に、ワインレッドがメッシュのように混ざる。

 これがやりたい事────髪にメッシュを入れる、だ。

 今世の私(ロイルミラ)が可愛いお陰でやろうと思えた事である。

 

 この島を離れる都合、定期的に手紙を出そうとも妹君との繋がりはどうしても薄くなってしまう。

 それが余りに辛いのでどうにかしたいと思った時に、私は閃いた。

 

 

────妹君の一部を頂戴すればいいんじゃないか、と。

 

 

 とはいえ、実際に一部を頂戴するのは歪んだ愛とかそういうジャンルである。

 そこで、髪を染めるという行いを前世でしなかった私は、可愛い顔面を手に入れたのをいい事に冒険がしたかったのもあり、それらを叶える一挙両得なアイデアとしてコレを採用した。

 因みに、魔力を媒介として指定した範囲に色を()()()()()()()()()()()ので、どうにかしたいなら毛ごと抜くか、同じ範囲を別の色で塗り直すしかない。

 事故ったら悲惨だが、成功すれば半永久的に染めたままでいられる代物という訳だ。

 

 

 さて、妹君に感想を聞いてみたがなんと返ってくるのやら。

 

 

「似合ってるよお姉ちゃん! お姉ちゃんの髪にエリスが混ざってる!」

 

「ほんとー? ふふっ、エリスの色だよー!」

 

 

 ちゃんと成功しているようで安心。

 実験でやたらとカラフルな鼠を作った甲斐があった。

 

 

「ママにも自慢しに行こ! ほらほら!!」

 

「えっ、ちょっと待って無断で髪染めたからそれは────」

 

 

 喜びや安心も束の間、妹君は死刑宣告をしてきた。

 

 言いかけた通り、この行いは両親に無断でやっている。

 反対されてもどうせやるつもりだったというのは有るが、だからといって態々報告には行きたくない。

 

 娘が島を発つ権利を手に入れて1年が過ぎた頃に、急に髪を染めるのってマッマ的にはどうなんだ。

 明らかに外の島で悪い事してきますって宣言しているように見えやしないか?

 何なら私のメスガキだかギャルだか分からん移行途中のムーブを知っている訳で、マッマからしたら男漁りでも始めると思われても仕方ないのでは?

 

 

(主人公の性癖歪ませてゴールインするつもりだから、男漁りかは兎も角、ふしだらな行為をする予定なのは否定出来ない……?)

 

 

 怒りを買えば、島を発つ前に丸刈りにされるかもしれん。

 もしそうなったらツクヨミ様も巻き込んで皆で丸刈りにするか。

 

 

「ねぇママー! お姉ちゃんを見て! 似合ってて可愛いよねー!?」

 

 

 私が最悪な覚悟の決め方をしていれば、妹君が無邪気に報告を始める。

 

 

「どうしたのエリスー? お姉ちゃんがなぁ……に?」

 

 

 出来上がった薬の確認をしていたマッマが振り向く。

 そして私の顔────否、髪を見て動作が停止する。

 私は最早抵抗も出来ないので、ただただ苦笑いだ。

 

 笑顔のまま固まっていたマッマだったが、直ぐに私に寄ってくる。

 

 

「あらあらあら! まぁまぁまぁ〜! ルミちゃんは赤も似合うのね〜!!」

 

「ふぇ?」

 

 

 想像の斜め上から殴られて間抜けな声が出てしまった。

 

 

「やっぱりママとパパの子ね〜! 赤が入った事でちょっと大人っぽく見えるかしら。

 お化粧もちゃんとする? 確かルミちゃん、魔力で風景を描く面白いカンバスを持っていたわよね!

 キッチリお粧しして描き残しましょう!!」

 

 

 私がリアクションすら取れない間に、人の改造魔道具まで用いる方向性で勝手に話を進めるマッマ。

 それを聞いて『いいね! エリスも一緒に描いて欲しい!!』なんて可愛らしい同調をしている妹君。

 

 

────この家、もしかして私以外も大概おかしな人達しかいない……?

 

 

 

 私はマッマに流されるように化粧をしたり服を着替えたりしながら、我が家の面々が実はおかしいのでは無いかという疑惑と向き合っていた。

 

 

 描き残された絵は、大事にこの家に残して貰おうと思う。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 私が髪を染めてから最初の満月。

 

 ツクヨミ様は私の髪を見て開口一番にこう述べた。

 

 

────何故染めるなら黒では無いのか、と。

 

 

 私としては、ツクヨミ様は最終的に一緒に旅をする事になる存在だから、態々こういう形で意匠を取り入れるみたいな事しないで良いと思うのだが。

 何か付けるにしても月のアクセサリーとかじゃ駄目なのかと本人に聞けば、『むむむ』なんて声に出して悩んだ末に渋々納得してくれた。

 

 

 そこから幾つかの雑談を挟んだ後。

 ツクヨミ様は可愛らしい咳払いをして、私に告げた。

 

 

御空の燭(ロイルミラ)、貴方の探す者を見付けました」

 

「本当ですか!?」

 

 

 そう、クラーバラを遂に見つけたというのだ。

 

 空域図を取り出して、場所を確認する。

 乗合艇の航路では遠回りすぎるその島は、東方と言っているだけあって随分と空域内の東────それも北東寄りだった。

 

 場所が分かったものの、この島から向かうには貨物艇や商団艇に乗せて貰えないと、航路次第では1ヶ月近く船旅になりそうだ。

 

 

(シェロちゃんにも話を通して、近い場所を通る艇を見繕って貰った方が結果的に早いか……?)

 

 

 シェロちゃんとは前回の港町遠征でも会う事が出来たので、既にそれなりに仲良し。

 これぐらいならツケても許してくれると思う。

 以前の港町で生地の仕入れを頼んだ際に、島を発つ時に護衛の名目で乗船する事を交渉してくれないかとは伝えてある訳だし。

 

 目的地が判明したなら、後は出るだけだ。

 オクトーとの再戦を待つ間に、出発の準備はほぼ終わらせてある。

 今一つ、強さの方面での成長が停滞気味なので刺激が欲しいが、オクトーと戦えればこの悩みも解消すると私は信じている。

 

 

(兎にも角にもオクトーと戦ってからな気がしちゃうなー。

 一体いつになったら相手してくれるんだ、あのお爺ちゃん)

 

 

 ふと、ツクヨミ様が私の頭を撫でる。 何かあったのだろうかと顔を上げる。

 

 

「……貴方は」

 

 

 そう発言して1度口を噤む。 暫くして、ツクヨミ様は言葉を紡ぐ。

 

 

「貴方は、この島を離れるのですか」

 

 

 これは質問じゃなく、確認だろう。

 

 まだ私はツクヨミ様に教えの最奥に関して話せていない。

 だからツクヨミ様からすれば、私が島を発つ事は別れを意味している。

 それならば、ここらで少し明かしていこう。

 

 

「そうですね。 私には夢が有りますから」

 

「夢……」

 

 

 そこから私は、ツクヨミ様に夢の一部を話していく。

 

 様々な島を巡りたい、様々な文化に触れたい、様々な技術を目にしたい、様々な魔法を試したい、様々な人と語りたい。

 

 

 そして────

 

 

(ロイルミラ)(転生者)である時から想いを寄せる人に出会い、共に旅をして、その者に寄り添う事が私の夢です」

 

 

 家族にも打ち明けない(本音)を、少し暈しながらも伝える。

 きっと教えの最奥をするなら、ツクヨミ様はこの先も知るのだから、少しぐらい先走っても良いだろう。

 

 

「そして私の夢に、ツクヨミ様は欠けてはならない存在です」

 

「我が……? それは我が星の獣だからですか?」

 

「そうです。 でも、星晶獣なら誰でも良かったとは思いません」

 

 

 下手な隠し方だとツクヨミ様にはバレる。

 だから隠さずに直球で投げる。 偽らざる本心だから、恥ずかしい事を抜きにすれば私にダメージは無い。

 

 

「そう……そうですか」

 

「ですから、ツクヨミ様。 友として、そして星晶獣と人として、私と────」

 

御空の燭(ロイルミラ)

 

 

 ふと、私の言葉を遮るツクヨミ様。

 その顔を見て、私は急ぎすぎた事を察する。

 

 ツクヨミ様は未だに自分の在り方に悩んでいる。

 ただでさえ、星晶獣としてどうすれば良いか悩んでいるツクヨミ様に、新しい道まで提案してどうするのだ私は。

 

 

「す、すみませんツクヨミ様。 些か気が急いていました」

 

「いいえ、御空の燭(ロイルミラ)。 我が懊悩呻吟しているばかりに……」

 

 

 

 結局、この夜は夜明け前まで2人とも何も喋らなかった。

 

 帰り際にツクヨミ様は、私を撫でて言う。

 

 

御空の燭(ロイルミラ)、貴方が告げる筈の言葉の先を我は理解しています。

 貴方の提案を我が汲むか否かは、きっと我等の関わりを大きく左右するでしょう」

 

「そう……ですね。 私が急いてしまったばかりに、私とツクヨミ様は岐路に立っているのだと思います」

 

「いずれ来る時ではあります。

 我が────否、我等が望の下を歩けるように、暫くの時間を貰えますか?」

 

 

 悠久を生きる星晶獣であるツクヨミ様の言う『暫くの時間』は、一体どれぐらいの時間になるだろう。

 私はそれを待てるのだろうか?

 

 きっと今までの私なら待てない。

 

 だが────

 

 

「待ちますよ。 私はツクヨミ様の友ですから。

 何日でも、何ヶ月でも、何年でも。 ツクヨミ様を信じます」

 

 

 何故だか、今の私なら待てると思えた。

 ツクヨミ様がそこまで待たせないと思っているのかもしれない。

 何にせよ、私は待てる。 故に信じる事にした。

 

 

 

 

 この日を境に、ツクヨミ様はこの島に来なくなった。

 今もきっと悩んでいるのだと思う。

 私とツクヨミ様が望の下────満月の明るい道を歩けるような未来を。

 

 

 

────そこから更に暫く。

 

 

 『時は満ちた。 祠にて待つ』とだけ書かれた紙を握る私。

 

 

 村に流れる風が冷たさを増していく中、私の闘志は燃え始めていた。

*1
美しく気品があるさま。




というわけで次回も戦闘です。
当初の予定では、島を出る前はこんなに戦う筈じゃ無かったので行き当たりばったりの恐ろしさを実感しています。


古戦場が始まりましたね。
無事に乗り越えて、この作品でまた会いましょう。
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