団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!! 作:梏 桎
ここで1つの区切りです。
また、今回は連続投稿でこちらが1話目となります。
22/05/21 ロイルミラの年齢に関して追記・修正
オクトーは祠の前で普段通りに瞑想をしていた。
然し、私が到着したと気付くや否や立ち上がる。
徐に辺りを見回し、祠から距離を取る。
既に戦闘する前提で彼は動いているのだろう。
辺りを見回したのは多分、周囲の魔物の気配や戦闘の被害を考えたんだと思う。
オクトーなりに気を遣っているのだと分かる。
そうして確認が済めば────
「如何した童、疾く構えよ」
「ちょーっと待ったー!!」
まるでそれが当然かのように私に促してくるオクトー。
私は──再戦を待ち焦がれていた事に違いは無いが──そこまで急いで戦いたい訳じゃない。
それにルールも決めていないのに、この人の基準で戦闘するのは終わりが分からなさすぎて困る。
「ルールも決めずに戦う奴がありますかー!?」
「剣で語らう事に由緒ある仕来りなぞ無かろう」
うーん、この戦闘狂。 自己研鑽以外の悉くを削ぎ落としたにしてもやり過ぎだろう。
私は別に剣で語る為に戦いたいんじゃない。
私がオクトーと戦いたいのは踏ん切りを付ける為、そして停滞気味の私に新しい風を入れる為だ。
勝つつもりで当然挑むのは前と変わらず────否、前以上に強いが、勝敗以前に何か掴めなければどの道それは私の負け。
ルール無用のタイマンじゃ万に一つも勝ち目が無く、スパッと斬られて終わりである。
「────という訳で、お爺ちゃんは刀1本だけね!」
「……」
私が勝手に吹っ掛けたルールに、オクトーは瞼を閉じる。
それを見て私は合意と看做し、オクトーの正面に向けて歩く。
普通ならガン無視されていると捉えてしまいそうな返し方だが、それなりに付き合っていれば分かる。
オクトーは何だかんだ文句があれば言ってくれるので、それが無ければ合意という事だ。
今回の作戦だが、先ず前提としてオクトーは仕掛けて来ない。
そう思う理由は単純で、先程オクトーはこちらに構えるよう急かした時も、こうして私が構えている最中でも構える気が皆無。
恐らくだが、自分から手は出さないと宣言している。
それはつまり、私がどれだけ大振りで隙だらけでも良いという事になる。
(
「始めるけどへーき?」
「来い」
相も変わらず単調な返しだ。
「それじゃ、遠慮無く。
左手で魔法陣を展開する。
今回は初手から全力。 自分の魔力に属性元素をモリモリ混ぜ込んでいく。
「
起動させるのは今の私の最高傑作。
左手に魔力も属性元素も、それに周囲の属性元素だってガンガン混ぜる。
私の左手付近が、属性元素を集めすぎて様々な色で光る。
この光り輝く現象は『魔力光』という、割とそのままな名称が付いている。
本来は自然現象の1つで、著しく属性元素の偏った地域──例えばバルツの火山──で目にする事が出来るものだ。
私は、自らの魔力が自身の属性元素に偏りすぎない体質を利用して、周囲に魔力をばら撒く事で属性元素を活性化させられる事を発見した。
この技の際に行う
要は、魔力という餌を放出して属性元素を大きくさせるのだ。
そうして活性化した属性元素を左手に寄せ集める事で、魔力光が人工的に発生する。
遠当てのように収束させれば誰でも魔力光の発生は出来るが、ここまで光らせる人はそう多くないと思う。
「ちゃんと受け止めてね……! 今の私の全力をさ!」
私は光り輝く左手を刀に添える。
そうすると輝きは刀に移り、今度は刀が虹色に光ってバチバチと稲妻を走らせる。
私は刀を両手で握って大きく振り上げて────
「ガガナガンジャ!!」
────勢いに任せて振り下ろす!!
全属性を混ぜ込んだ一閃は、轟音と爆風を伴ってオクトーへ向かう。
オクトーは自らに向かってくる全力に抜刀を以て応える。
「行くぞぉ!!」
オクトーが刀を振る。
たったそれだけの行為で、
残るのは煌めく属性元素と抉れた大地。
────そう、属性元素はまだそこにある。
「
私の言霊を合図に、煌めく属性元素が上下から挟むようにオクトーに向けて襲い掛かる。
ガガナガンジャは、ゲームでいう奥義後にアビリティを自動発動するタイプだ。
属性元素が残留する現象については、私が自分のも周りのも含めて属性元素を過剰なまでに寄せ集めているから発生する。
実際に試した事が無いので推測だが、残留した属性元素を放置しておくと所謂『エレメンタル』と呼ばれる精霊系の発生を促す可能性がある。
「いぃやぁ!」
オクトーは
……どうやっているのかは相変わらず分かんないな、アレ。
意味の分からない事を平然とやってのけるオクトーはさておき、
先述したように残留した属性元素の発散を目的としつつ、継戦能力を向上させる為に、周囲に放出しまくった私の魔力を一部の属性元素ごと回収する魔法だ。
放出した魔力と属性元素の回収なんて、と思うかもしれないが、これはあのマスクを専門外の体系なりに解き明かそうと再現する過程で生まれた偶然の産物である。
その偶然のお陰で、私の
私はオクトーとの間合いを詰めながら、回収した魔力にものを言わせて魔法を発動させ続ける。
基礎的な魔法を乱射して兎に角牽制。
オクトーに効果が有るとは思っていないが、念には念をという奴だ。
「
「遅い」
後少しで間合いになるから次に移行するつもりの私に向けて、刀を振り下ろすオクトー。
私が前よりもやれると判断したようで、攻撃に転じてくれたらしい。
その巨躯からは考えられない速度で迫り来る刀を、術を継続しながら刀で流そうと試みる。
刀から出ちゃいけないようなガリガリという音と共に、私の右腕に尋常ではない負荷が掛かった。
「ぐぅ! おっも!!」
「刀を流すにも限度は有る」
「仰る通りで……ございますねっ!!
右腕の感覚が分からなくなるのでは無いかと錯覚する程の重みをギリギリ受け流し、魔法で反撃。
オクトーは俊敏にそれを躱し、私の間合いの外から再度斬りに掛かる。
「
「ふんっ!」
私はオクトーの意識を少しでも逸らす為に印を結ぶ。
致死性を排している為に無害の煙だが、吸い込めば噎せるし視界は著しく悪化する。
だが、あろう事かオクトーはそれを
「無茶苦茶過ぎるんですけど……ッ!」
思わず愚痴る私。 愚痴のついでに切り上げる。
甲高い音が鳴り響き、私は弾かれる。
オクトーは一瞬で刀を返して私を弾き飛ばしたのだ。
(あのデカい図体をどう動かしたらその速度が出るんだよ!
しかも綺麗に
オクトーはあの一瞬で、私の小柄な身体からの切り上げを下から掬って別の方向に流すという弾き方をした。
脳内の似非お嬢様が指摘した通りのガラ空きボディーをカバーする為に、私は左手を刀から離して印を結ぶ。
「
印を結んだ指を通じて、指定した部分の土が途端に泥へと変質しながらオクトーを襲う。
オクトーは目にも留まらぬ速さでそれを躱し、私の後ろを取ろうと動く。
「
私は背後からの一撃に、今までからは考えられない速度で反転して応戦する。
当然、私は主人公に会う事も出来無いまま身体をぶっ壊したくは無いので効果時間は非常に短い。
力の差でオクトーから弾き飛ばされるが、効果時間が残ってる内に即座に距離を詰め直す。
異常な速度のまま、今度はオクトーの背後を取ろうと動く。
私はオクトーの後ろを
「態々後ろを取らせてくれる辺り、余裕じゃん、ね!!」
「温い」
直後、オクトーからまさかの回し蹴りが飛んでくる。
「ぐぁ!?」
「不測に備えよ」
私を蹴り飛ばしたオクトーは、そう言いながら
地面を転がりつつ、私は口に魔力を溜める。
(こいつならどうだ……!
不意打ちで口から雷を吐くも────
「児戯よ」
それが自然であるかのように斬り捨てるオクトー。
だが、お陰で体勢を戻す時間だけは得られた。
「
魔法を使いまくったお陰でガス欠が見え始めている。
私は再度、煌めく属性元素をオクトーに仕向けながら回復を図る。
又しても斬られて霧散した魔力と属性元素達。
だが2度目の
私は刀に魔力と取り込んだ属性元素を寄せ集める。
「
言霊によって、寄せ集めた魔力と属性元素が形を成していく。
そこには宙に浮かぶ、もう1本の刀が出来ていた。
これが私なりの
周囲の属性元素を
私の練度と現在の具合だと、どれだけ盛ってもMAXで5割追撃が精々だろう。
一応、限界まで取り込む事に成功すれば8割までは届くようになっている。
……物凄く時間が掛かるので実用性がまだ低いのだけれども。
私は自らの刀に追随する幻の刀の具合を確かめつつ、距離を詰めながらオクトーに向かって跳躍する。
「パパ直伝の技を見よ、ってね!
「ほう」
オクトーの背丈を越える事は叶わずとも、今までよりも高い打点からの袈裟斬り。
オクトーはそれを刀で受け止める。
今回は水では無く
狙うは勿論、オクトーのガラ空きになっている腹だ。
オクトーは力を込めて私を弾き飛ばし、瞬時に刀を振るって
更におまけと言わんばかりに私に向けて一閃。
私は着地の間際に迫る一閃に対して、
刀を握ったままだろうと、やろうと思えば魔法陣は展開出来るのだ。
万が一にも魔法を暴発させたら刀が駄目になるので、普段ならやらない事ではあるが。
「
私の左手から雷が迸り、私の刀とオクトーの刀を通じて彼の全身を貫く。
本当に僅かだが効いたようで、オクトーが少しだけ硬直した。
私はその隙を逃すまいと、受け止めたせいで痺れる腕を無理やり動かして切り上げる。
「
私の切り上げを
しかもそれは躱すだけに留まらず────
(後ろに回られている……!?)
「────終いだな」
私に向けて、何度目かの振り下ろされる刀。
この痺れが抜けきらない腕で受け止めるのは不可能、受け流すのも難しいだろう。
そもそも、刀を上げた向きの都合で今からじゃ間に合わない。
魔法で凌ごうにも時間が足りない。
残るは一か八かの賭け。
私は不格好にも膝を曲げて姿勢を前傾にして、
成功しろと念じながら、兎に角残りの魔力を全て放出する勢いで寄せる。
「翔べえええええぇぇぇ!!」
────刹那。
大地の割れる音が響き、辺り一面を土煙が覆う。
煙が晴れ、そこに映るのは
「……進めたか」
オクトーは納刀して呟く。
いつも通りの無愛想であるが、その顔は僅かに微笑んでいるようにも見えた。
尤も────
「きゅぅ……」
「……ふむ。 制御出来ずに木に激突したか」
私がオクトーのそんな珍しい表情を見る事は叶わなかったのだが。
§ §
私が目覚めた時には、空は黄昏に染まっていた。
戦い始めたのは午前だった事を思えば、随分と寝ていたらしい。
「目覚めたか」
「お、お爺ちゃん……」
私を背負って家に帰すという選択肢を何故か取らずに、起きるまで待つ事を選択したオクトーがそこに居た。
この時点でお察しだと思うが、未だに山の中である。
……いや、本当になんで担いで帰るぐらいの気遣いをしてくれなかったんだ。
「どうせ気絶から目覚めるなら『知らない天井だ』をしたかったんだけど」
伝わらない事を前提に愚痴を零してみれば、矢張りというか無視された。
オクトーは基本的に私の言葉にリアクションすら返してくれない。
だからこそ偶に返ってくるリアクションだけで一喜一憂出来てしまう訳だが……
こういう所が人間関係を拗らせる要因なのでは無いだろうか。
(でもまぁ、オクトーから毎回キッチリ返事されたら解釈違いかもしれん……)
私は主人公に──出会ってもいないのに──デカめの感情をぶつけがちだが、他のキャラからクソデカ感情をぶつけられてもきっと困惑してしまう。
オクトーに関してもそうだ。
特別な反応をするのは主人公とフュンフ及び十天衆────それから和解後のナルメアやジンだけで良い。
これだけ絡んでおいて今更だが、私にまで気を遣われても何だか困ってしまうような、そうでも無いような。
そういう意味で言えば、気絶しているのを理解していながら家まで届けてくれる訳でも無く、かといって見捨てて山に放置しない今のオクトーは解釈が一致しているのかもしれない。
「……いや普通は送り届けるだろ」
「先程から何を呟いておる、童」
「んぴゃぃ!?」
どうやら声に出していたらしい。
驚きの余り奇妙な鳴き声を発してしまった。
「して童よ、飛翔の術は掴めたか」
私が鳴き声を恥じて顔を赤らめていれば、オクトーから話を振ってきた。
しかも内容が飛翔術────即ち魔術の話とは。
「お陰様でコツは掴めた……かな?
安定させる為にこれから暫くは反復練習が必要だろうけど、お爺ちゃんが与えてくれた切っ掛けを無駄にしないよう頑張るね!」
「……下るぞ」
聞いておきながら返答は下山の宣言。
主人公と出会うまで────否、主人公と出会ってもこの無愛想な態度が完全に変わる事は無い。
だが、そんな彼に安心感すら覚えている。
私は早速、足に魔力を寄せ集めて、背を向けたオクトー目掛けて翔ぶ。
オクトーは拒みもせずに私が背に張り付くのを許した。
────私はオクトーの視界に映る強者になれるだろうか。
私の心に新たな欲が湧く。
今回の戦いは私にとって莫大な経験値となったが、オクトーはそれでも手を抜いていた。
刀の本数を指定したのは私なのでそこは良いのだが、後ろを取る事を許したり、態々蹴飛ばした相手を歩いて間合いを詰めたり。
もっと言えば、攻撃の直前か直後にほぼ必ず喋ってくれていた。
アレは私にタイミングを教える、乃至はそうやって思わせる事で攻撃をずらすテクニックだったのではとさえ思える。
(確実に地獄の道なのに、こんなにも後を追い掛けたくなる。
これが強者に魅せられるって奴なんだろうか……?)
黄昏の空が藍に染まり、月が昇って沈んでも。
心に湧いた欲が消えないと知った時、私はその欲を
§ §
冬と呼称するには遅く、春と呼ぶには未だ早い季節。
早朝にも関わらず、港には白い息を吐く私と家族が居た。
オクトーが待たせすぎたせいで13歳を迎えてしまった私は今日、故郷の島を発つ。
目的地はクラーバラ達の住む島。
シェロちゃんに交渉を頼んだ甲斐も有り、貨物艇に護衛の名目で乗艇を許された。
これならば乗合艇よりも早く到着出来る事が見込める。
それでも最短で約10日間、魔物の襲来頻度が高かったり賊に出会ったりすれば倍に伸びてもおかしくないというから恐ろしい。
家族には村で別れる予定だったのだが、見送りぐらいはと言われてしまって断れず、こうして港まで来てしまっていた。
オクトーとフュンフにも挨拶済みだ。
オクトーからは『再び見えた時は刀を以て思い出す』という、実質的に忘れるかもしれん宣言をされた。
本当に他人に対して興味が薄過ぎると思う。
然しながら、餞として高価そうな拭紙を贈ってくれた辺り、矢張り子供に甘い。
フュンフは理解していなさそうだったので、プレゼントとしてヘアピン──市販のシンプルな物に魔法糸製の花を編んでくっ付けた代物──を渡した。
いつか再会の時に付けてくれていたら嬉しい気もするし、付けていなくても原作通りなので良いという、私欲を満たすプレゼントである。
「気を付けるのよルミちゃん。
ルミちゃんが幾ら強くても、絶対は無いから────」
「はいはい! ママそれ何回目ー?
これ以上聞いたら耳にタコが出来そうだよ」
マッマは私が島を発つと決めてからずっとこの調子だ。
手紙を書く約束までしているのに、そこまで心配しなくても良いと思うのだが。
「ママの心配も汲んでやりなさい、ルミ」
「それは勿論分かってるんだよ? でもパパだってこんなに念を押されたら困るでしょ?」
「む……」
「あ・な・た〜? どうしてそこで躊躇うのかしら〜?」
「いや、これは────」
パッパから追撃が飛んできたが私は知っている。
パッパも過剰に心配されると、かえって反発するタイプの人間だと。
それを指摘してみればマッマとイチャイチャし始めたので、私は愛しの
妹君は私が島を発つ事に対して大きなリアクションは取らなかった。
ただ、目元が赤くなっている事から随分と泣いたのだろう。
今も伏し目がちで、私が島から出て行く事を見ないようにしているのかと思えてしまう。
「エリス」
「……なーに、お姉ちゃん」
声を掛けると悄気た声が返ってくる。
「お姉ちゃんの夢、応援してくれる?」
妹君は私の
私が話をした後に両親から教えられているとは聞いたが、その後も私に何か言ってきた事は無い。
妹君には、夢を追う私がどう見えているのだろうか。
「……応援するよ。 お姉ちゃんなら辿り着くでしょ?」
「もっっちろん!! 何ならお土産、期待しても良いよー?」
「空の果てからのお土産って、想像も出来ないんだけど……」
「うーん……お宝とか?」
「……お姉ちゃんがイスタルシアを宝島みたいに思ってるのは分かったよ」
冗談のつもりで言ったのだが、妹君から何故か冷めた視線が送られる。
この分なら少しは元気が戻ったと思って良いだろうか。
ただ、私の3つ下の子がそんな現実を見たようなコメントしないで欲しい。
こちとら中身が中年なのに宝島を夢見て旅を始めるイタい人になりたい訳では無いのだ。
「ロイルミラさ〜ん!」
「シェロちゃ……シェロカルテさん!」
妹君にどう弁解するか考えてれば、聞き馴染みのある緩い声。
うっかりシェロちゃんと呼びそうになり、私は慌てて軌道修正。
シェロちゃん自身はそう呼んでも多分怒らないが、両親も居るこの空間でお世話になる年上の人を気安く呼ぶのは宜しくないだろう。
「護衛の依頼、よろしくお願いしますね〜?」
「はいっ! シェロ……カルテさんが繋いでくれた初依頼ですから!
しっかり成功させます!」
「それと、頼まれていた物も用意が出来ましたので、落ち着いたらシェロちゃんにもお手紙をくださいね〜!」
私はパァっと顔を輝かせてブンブンと頷く。
結局、シェロちゃんにはJK風の魔法戦士用の生地を全て頼み、追加で飴の定期補充も頼んである。
対価としてお金は勿論の事、私はシェロちゃんからの依頼を優先してこなす契約になっている。
シェロちゃんと両親が長い付き合いなのもあって、無茶な依頼を回したりはしないという保証まで貰ってしまった。
破格の契約過ぎて、少しだけ裏があるかと思ったのは許して欲しい。
「おいチビッ子ー!! 艇を出すから乗ってくれー!」
私を呼ぶドラフのおじさん。
今回の護衛対象である貨物艇を仕切る、艇長のおじさんだ。
「それじゃあ、行ってきます!!」
私は家族とシェロちゃんに向かって元気良く告げる。
例の黒マスクを口に当てて、刀の位置を確認しつつ、荷物が詰まった鞄を担ぎ直す。
貨物艇に乗り込んで艇員に挨拶をしながら、私は空を仰ぐ。
私の髪を新たに彩る飾りの月が、陽光を浴びて煌めく。
優しい風が私の髪を撫でて、船出を祝福してくれているかのようだ。
────先ずはクラーバラを救う。
私は当座の目標を改めて胸に刻みながら、手を振る家族に手を振り返すのだった。
そろそろ20話が見えてくる頃になって漸くの旅立ちです。
次話にてロイルミラの現在のスペックと少しのおまけを挟みます。