団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!! 作:梏 桎
サクサク進めたい気持ちと、早すぎる展開で発生する没入感の薄さに苦悩したので初投稿です。
22/04/01 えああ!!(るっ!803話)なミスをしてたので修正
22/04/27 加筆修正
パッパと騎空士さん達がワイバーンの群れを狩ってきた。
到着して一泊、翌日に討伐とは何とも忙しいスケジュールだ。
何はともあれ依頼を無事こなしてくれたので、騎空士さん達には──私が勝手に決めた──約束通り追加のハグで癒しを提供した。
ただ、騎空士さん達によるとパッパがハッスルした結果、群れの半分近くを1人で斬り伏せたらしい。
……パッパ普通に強くないか?
ワイバーンって別に雑魚ではないでしょ? 分からんけど。
取り敢えず、一番の功労者らしいのでパッパにもハグ。
騎空士さん達の手前、表情を引き締めようと気張っているが私にその程度の抵抗は無駄だ。
喰らえ! 必殺の────
「パパすごいね! かっこいい! だ〜い好き♡」
「……ッ!」
パッパ完全硬直。 弱すぎて可愛いまである。
§ §
結局その日は騎空士さん達がもう一泊する事になった。
強行軍で船まで戻る事も出来るが、焦る必要も無いという。
パッパは未だに私の大好き攻撃から帰って来られないのか、時折ふにゃっと表情が緩む。
ちょろ過ぎて親なのに心配だ。
マッマにはちゃんとパッパを繋ぎ止めて欲しい。
今日は討伐祝いとお別れ会を兼ねて、軽く宴だそうだ。
といっても、ド田舎の普通の家だから急激に豪華になったりはしない。
私の食べる物は普段とほぼ変わらず、騎空士さん達と両親に酒が入るくらいの些細な違いだ。
酒が入れば口が軽くなるのはこの世界でも同じようで、騎空士さん達にも次第に遠慮が無くなっていく。
私が腹八分目に突入するだろう頃、とある騎空士さんとパッパが面白い会話を始めた。
「いや〜!にしても親父さん強かったですねぇ!
ありゃ、並大抵の人間じゃ敵いませんよ!!」
「止してくれ。 私の腕など……かの剣聖には遠く及ばないのだから」
「剣聖ってーと、アレーティアですかい?
いや、あっちは剣の賢者だっけか……」
「私の言う剣聖はヨダルラーハの方だよ。
余りの壁の高さに、私は折れてしまったがね」
はぇ〜。 そうだったんすね、知らなんだ……。
……いやいやいや、聞き捨てならない会話が聞こえたんですけど。
え? は? ヨダルラーハさんと何か因縁がおありでいらっしゃる?
私はもう、そこからは食事もそこそこにパッパと騎空士さん達の話に全神経を集中させていた。
剣聖ヨダルラーハ。
変幻自在の妖剣士とも言われる、ハーヴィンのやべー爺ちゃん。
パッパはそんな人に憧れを抱いて剣の道に入ったらしい。
ヨダ爺かっこいいもんね。 後追いもそりゃいるか。
でも憧れは憧れ。 才能や努力とは別だ。
パッパは身体を壊しかねない勢いで修行して、魔物や悪人を斬り続けた。
それでも噂に聞くヨダルラーハには遠く及ばず、パッパは次第に焦ったらしい。
自分の実力では、足掻いた所で届かないのではないか。
人には努力だけで覆せないだけの『壁』があるのでは無いのかと。
そんな気持ちを振り払う為、そして自らが強くなった事を証明する為に、パッパはヨダ爺に死合を申し込んだらしい。
覚悟がエグすぎてちょっと引いたが、それだけ当時のパッパには『憧れが遠すぎる事』が死活問題だったのだろう。
────然し、現実は非情で。
手応えなどと優しいものでは無く、その高みに掠った感触さえパッパは手に出来なかった。
当時愛用の剣を心ごとヨダ爺にポッキリ折られて、パッパは修羅になる道を────剣だけに生きる道を止めたと言う。
一通り聞いて、私はえも言われぬ感情に包まれた。
ヨダ爺の強さも、容赦の無さも垣間見える話だ。
そして同時に優しい話で、残酷な話でもあった。
パッパはそれに憧れたのか。
強く優しく、容赦が無く、それでいて慈悲深い剣聖に。
ゲームで覗けるヨダ爺にもまた通ずる部分ではある。
実際、
然し。
今、目の前にそれを体感した人がいる。
その強さを、優しさを、容赦の無さを、慈悲深さを浴びた人がいる。
私はこの時、漸く自分がグラブル世界にいる事を真に実感したのかもしれない。
それだけ、重みと深みを感じる話だった。
この世界は今や私にとって紛れも無く現実で。
当然、そこに住む
そしてそれは、
────さて。
私はそんなパッパの話を一字一句聞き逃すまいとしていた。
ここで問題となるのが未だ幼きこの身である。
幼子というのは物事に全力投球が過ぎてしまい、周囲の事が意識の外に行ってしまう。
そして転生しようが私の身体は間違い無く幼子そのもの。
これらから導き出される結果とは即ち、下品にも椅子に立ちテーブルに身を乗り出す、中身がいい歳のオジサン幼女という地獄絵図。
気付いた時にはもう手遅れだ。
マッマが怒りに震えているが、私も羞恥で震えている。
精神だけはもう中年なのだ、耐えられない! くっ殺せ!
私はマッマにこってり叱られ、騎空士さん達に笑われた。
……えぇい、止めろ! 笑うな!!
それから暫く後。
今回のヨダ爺の話をマッマに聞けば、パッパは最初からヨダ爺と死合うのが目標だったと言う。
当時のパッパ曰く『剣聖を目指す以上は、旧き剣聖を下すだけの実力が無ければ話になるまい』と。
そんな無茶な目標をバカ正直に突き進み、傷をこさえても平気で魔物狩りに行こうとするパッパを引っ叩いて治療したのが、まだ付き合っていない頃のマッマなんだとか。
2人の妙に血生臭い馴れ初めを────そして、そこから延々と続く惚気話を私は微妙な顔で聞いたのだった。
§ §
騎空士さん達も村から去り、村の平均身長がガクッと下がった頃。
私は両親に頼んで稽古をつけてもらう事になった。
然し、未だ幼き私に適するサイズの剣など、このド田舎の子供がほぼいない村にはある筈も無い。
何せこの村で剣を握った経験がある存在は、1番最近でパッパになってしまうのだ。
パッパが幼い頃に使っていた木剣はとうの昔に捨てたそうなので、新しいものを作る必要がある。
それに両親にも当然、仕事がある。
因みにパッパは猟師と守人の兼任、マッマは薬師────それと本人は基礎を学んだだけと否定しているが、魔導師だ。
そんな訳で、取り敢えずはマッマから魔法のお勉強……の足掛かりとなる、文字の勉強が仕事の合間にスタートした。
……確かにこの身体になってから会話こそすれど、読み書きはしていなかった。盲点。
グラブル文字を学ぶ時間は存外楽しいが、大変だ。
何せ身体は兎も角、精神が人生2周目である。
書く分には身体に覚え込ませる方式が多少通るが、読むのはそうもいかない。
アルファベットに多少類似しているが、それが私の頭を混乱させた。
文法も、ローマ字文が主体なのに名詞が英語基準なのは
そんなピンポイントな嫌がらせ要らないんですけど!!
そんな──特異な経歴を持つ私基準では──歪な文字と文法に苦戦した結果、文字だけならサラサラ書けるのに辿々しい読みをする、妙にチグハグな子として私は暫く過ごす事になった。
ちくせう。
文字の学習と並行してスタートしたのは、パッパ主導の体力作りだ。
とはいえ、漸く安定して走る事が出来るようになった程度の娘に無理などさせたら、パッパの評判は空の底まで落ちていくだろう。
故に、遊び感覚で出来る鬼ごっこを中心とした運動メニューだ。
前世の私は運動が好きではあったが、お世辞にも運動神経が良いと言えるタイプでは無かった。
その上、基本的には出不精だったので体力も無かった。
然し今世の私の身体は──若いを通り越して幼い事を加味しても──羽のように軽い、と表現するのが正しいだろうか。
体重もそうだが、何より動きに微塵のラグも感じない。
そして何より、体力が有り余っている。
昼餉の後から水分補給の時間を除いて夕方まで、走りっぱなしでも元気いっぱいだ。
更に夕餉を食べてから寝るまではしゃげる程度に余裕がある。
但し、この年頃の子供特有の、突然電池が切れたような爆睡もセットだが。
前世の私は本当に運動神経が終わっていたモヤシだったんだと、今になって思い知る事になるとは。
そうして両親から指導を賜り、幾日かすればパッパが木剣を手作りしてくれて。
一応、この鍛錬────そしてここから長い事続ける修行の建前は『先日の騎空士を見て騎空士を目指したいと思った』である。
本音は勿論『主人公とイチャイチャする為に騎空士を目指したい』だ。
我ながら動機が不純極まりない。
兎に角、そんな私の邪な夢を叶える為、努力の日々が幕を開けたのだ。
§ §
名をエリスマルル。
パッパ譲りのワインレッドヘアーを持つ、マイスイートシスターである。
余りの可愛さに私はそれはもうベッタリ張り付き、姉ぶって世話を焼いていた。
前世の私に兄弟姉妹はいなかったのが甘やかしを加速させたのだと思うが、可愛いものは可愛いのだ。
今は乳飲み子なので基本的には反射によって反応が返されるだけだが、将来は私の事をベッタベタに愛してくれる可愛い妹君に育つよう、念を送る事にする。
……何だねマッマ、その残念な娘を見るような目は。
それから先、私の日々は鍛錬に加えて妹君の世話という項目が増えた。
マッマはどうしても妹君に掛かり切りなので、この期間に私は文字をスラスラ読めるように猛特訓していた。
努力が実るまでに1年も時間を要したのは悔しい事この上ないが。
パッパとの修行に関しては妹君が産まれてもほぼ変わらなかったので、引き続き鬼ごっこで体力作りをしたり、パッパお手製の木剣を振り回して過ごしていた。
転生者なら────いや、子供ならきっとやるであろう、漫画やアニメキャラの技の物真似をし始めたのもこの頃である。
そんな日々は、間違い無く平穏な日常そのものと言えた。
然し、平穏な日常とは人を妙な方向に走らせるものでもある。
妹君の誕生から2年、私が5歳の頃。
3歳年下の妹君は現在イヤイヤ期に突入し、我が家で暴君と化している。
マッマやパッパには嫌である事を言葉と首を振る事で示すのだが、私にだけ暴力で訴えてくるおまけ付きだ。
────そんな妹君も可愛い。
ごめんね愛しの
私の修行の成果の方だが、手加減されているとはいえパッパから木剣の試合で1本取れるようになった。
以降、パッパが少しばかり容赦が無くなって、初歩的な戦法だけでは攻撃を躱すのも一苦労になった。
今度はこのパッパから1本取る必要があると思うと、少し気が遠くなる。
だが、マッマ曰く『パパもそこそこ本気でやってるみたいだし、ルミちゃんは才能あるのね〜』なんて言われれば、やる気も湧いてくるというものである。
然して、そんな発言を受けて得意気になっていたらパッパにボコされた。
思わず私が泣いてしまったせいで、パッパはその日ご飯が無くなった。
魔法の分野においては、火や風の基礎魔法を修めた。
文字を読む特訓がしっかりと実を結んだ証だ。
実際、魔法の基礎を学び始めたのは私が4つになって暫くしてからなので、この2属性の基礎魔法を私は1年未満で修めた事になる。
我ながら自らを天才と自賛したくなる。
因みにマッマの得意分野は風寄りの光とのことだ。
マッマは光が得意分野なのに火と風を?と思われるかもしれないが、グラブルプレイヤーの諸賢には思い当たる節があるだろう。
ゲーム内でも光の武器などの上限解放に火と風の素材を要求されるアレだ。
グラブルにおいて、光と闇は希少元素やエーテルと呼ばれる。
光と闇は二面性を備えるもので、特定周期で状態が変化する────というのがゲーム内でも確認できる情報だ。
そして、この世界においてもそれは同じ。
それではエーテルが闇の性質に寄っている時、光魔法はどうやって行使されるのか。
その答えが、火と風の元素による補完だ。
足りない物は擬似的に再現する、そのための
さて、そんな風に両親の教えを授かっている時期ではあるのだが。
私は少し悪い子になっていた。
傍から見れば遅めの第一次反抗期、私の内情からすれば流石に村に飽きていた。
前世は情報が溢れに溢れた世界で、そこですら日々を退屈などと宣っていたような奴が私だ。
まぁ前世の場合は情報が溢れすぎているが故に、不要と判断したものを削ぎ落としたから退屈だったのだが。
兎に角、このド田舎な村でそんな情報社会を生きた私が満喫出来るかと言われれば否と返すのも当然というもの。
最愛の妹君は現在、全てを拒絶する姿勢を頑として崩さない。
両親もそんな暴君と化した妹君にどうしても付きっきりになるものだ。
私とて中身は既に中年、妬いたり等はしない。
しないが、ただでさえ娯楽の無いこの村で両親という構ってくれる相手が減ると、本気でやる事が無くなるのだ。
────とはいえ。
(やっちまったかなぁ……)
私、ロイルミラさん。 今、夜の山のどこかにいるの。
……はい。 遭難しました、詰みです。
切っ掛け及び言い訳なのだが、今宵は満月で月が綺麗に丸かった。
だから『少しでも開けた場所で目いっぱい眺めたい』という感情が生まれてしまったのも、
まぁ納得された所で現状は解決しないが。
夜の帳が降りた山は、不気味な程に静かだ。
幸いにして月明かりが地面を照らしてくれている。
然し、下手に躓いたり転けないだけで家路が分かる訳では無い。
(家に帰るまでの道標も照らしてくれないかね、お月様よ)
────かれこれ歩いてどれほど経っただろう。
時刻は分からない。家を出た時が何時だったかも覚えていないし、そこから今までの時間も分からない。
両親は──愛してくれている筈なので──心配しているだろうし、仮に心配して居なくとも、それは私が家の中に居ると思い込んでいるからに他ならない。
そして今、私が家に居ない事に気付くのは時間の問題だ。
嗚呼、今になってスマホが恋しくなるとは思わなんだ。
アレ1つで助けを呼ぶ事も、無事の連絡もこなせるのだから。
近くから魔物の声やら気配やらはしない。
そもそも察知出来るのかは怪しいけれど、しないものはしないのだ。
今はこの感覚を信じる他に無い。
万が一にも主人公に会う事すら叶わず死んでみろ、未練がましく現世に居座ってフェリと幽霊同盟でも組んでやるからな。
「ん? 祠……?」
魔物に怯え、思考が妙な方向に行き始めていた折。
ふと、視界が少し開けた。
そこには古びた祠が一宇。
整備もされていないだろうソレに、私はどうしようもなく惹かれた。
一歩近付く度に、頭のどこかで警鐘が鳴る。
向かってはいけない、危ない、と。
然し私はその警鐘を振り切って、只管に祠に向けて足を進める。
そうして祠の前に着いた私は、何を思ったのか扉に触れた。
刹那、風が吹く。
木々がざわめき、雲が月を覆い隠さんと動いていく。
見れば、私のすぐ側に
────宵の調べを奏でましょう。
その玉声を最後に、私の意識も闇に落ちた。