団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!!   作:梏 桎

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タグに書いてあるので改めて書く事でもありませんが、今回も本当に独自設定だらけです。

22/05/21 年齢を修正


挨拶はあったろう?

 

 

 故郷を離れて2週間、私は目的地────ファータ・グランデ東方の島に到着した。

 

 

 レヴィオン周辺空域での魔物撃退戦からここまで、何度か魔物と戦う事にはなった。

 とはいえ最初の魔物の群れが1番多かったのもあって、消化試合という感じではあったのだが。

 魔物自体は昼夜問わずに戦ったのだが、どちらもビドゥおじさんと2人で手分けしていたのも楽だった要因だろう。

 

 

 

 太陽が心地よく照らす朝、私は貨物艇のおじさん達に別れを告げて港から街へ歩みを進める。

 おじさん達は、暫くは積荷を降ろしたりで島に居るだろうが、余り貨物艇付近で長居しておじさん達と離れ難くなっても困る。

 

 おじさん達はそれぞれ笑顔で送り出してくれたり、それはもう大袈裟なぐらい泣いたりと、様々な表情で見送ってくれた。

 私も色々言ってはいたが居心地が良かったので、少々寂しい気分である。

 

 

(ま、それも山を越えれば多少は薄れるでしょ)

 

 

 クラーバラ達の住む村は、港町から山を跨いだ先というどこかで聞いたような立地をしている。

 もしかして、ハーヴィンとはそういう場所で暮らすものなのだろうか。

 

 ただし、サビルバラやミリンの発言から推測するに、私の住んでいた村と違って他種族もいるだろう。

 私の故郷は種族が違えば住む村も違ったので、来訪者だったり土地を借りている他種族の人でも無い限り、村は種族が統一されていた。

 昨今の空の世界の情勢を思えば、こちらの村の方が少しだけ時代に沿っていると言えるか。

 態々閉鎖的でも構わない村という環境に、そういう他種族のアレコレを持ち込むのが果たして正しいかは、私には分からないけれど。

 

 

 現在私が歩いているのは港町の大通り。

 大きな屋敷に向かうように作られているこの通りは、朝から活気に溢れている。

 それでいて騒がしすぎず、決して屋敷には迷惑を掛けないという気遣いが感じられるのが凄いところだ。

 

 あの大きな屋敷が、ゲームと変わらなければカラクラキルの屋敷だろうか。

 彼の家はこの島の顔役であり、実質的なトップといっても過言ではない────というのが、ゲームで語られていた情報だった筈。

 

 

(懸命に思い出して、態々他の人には分からんように平仮名や漢字を使ってメモったんだけど……

 書き始めた時点で既に(ロイルミラ)は10歳を過ぎていたからなぁ……)

 

 

 私の記憶力は常人からすれば優れている部類だろうが、転生物(この手の話)でそれなりにある完全記憶能力とか、何故だか転生前の出来事だけは鮮明に覚えているとかでは無い。

 キッチリ覚えていたのならば、私はエルステが帝政に移行する前後ぐらいから、もう少し危機感を持って自らを追い込んでいた事だろう。

 今となっては笑って流せるが、エルステがあの島を早々に武力制圧しようとする可能性だって有ったのだ。

 小さな村で天才と呼ばれて天狗になっている場合では無かったかもしれない。

 

 実際に私がこの島について覚えている情報は、幾つかのキャラクターと妖刀ぐらいだ。

 今現在、この島に居るのはカラクラキル、クラーバラ、サビルバラ、ミリン、レオノーラだろう。

 シオンは幼い時に引っ越していると言っていたから、既に居ない可能性の方が高い。

 レオノーラも確定では無いが、サビルバラの発言からして親戚筋なのは間違い無いので、私は勝手にこの島の生まれだと思うことにしている。

 単純にレオノーラと仲良くなりたいからこその希望的観測である事は否定しない。

 

 

 脳内でこの島の情報を整理しながら散歩していれば、私の鼻が良い香りを捉える。

 匂いを辿れば、朝のメニューが書かれている立て看板を出しているお店を発見。

 朝餉と情報収集を兼ねて、早速突撃するとしよう。

 

 

「ねぇねぇお姉さん! お店、もう開いてますか?」

 

「あら、見ない顔ね。 旅の人? ついさっき開店だから出来たてをご馳走するわよ!」

 

「わぁ、ホント!? それじゃここで朝御飯にする!」

 

「はぁーい、1名様ごあんなーい!!」

 

 

 掴みは上々、これが前世でコミュ障の陰キャだったなど誰が信じるだろうか。

 

 顔が良いというのはそれだけで自信に繋がるものだと再認識する。

 多少ギクシャクしても『でもまぁ、私可愛いし』で切り替えられるので、顔が良いというのは最強のアドバンテージだと今世を生きていて思う。

 別に前世の自分の顔が特別嫌いだった訳では無い筈なのだが、これに関しては比較対象のせいだろう。

 おっさんと美少女じゃ、おっさん側が余程の美形じゃない限り話にならない。

 

 

 そんなことを考えながら暫く待っていれば、給仕のお姉さん──エルーンである──が朝の定食を配膳してくれた。

 

 余談だが、ここの給仕制服は和風メイドに近い。

 色合いそのものは大人しいが、広がったスカートとフリルが華やかさを目に与えてくれている。

 更に給仕のお姉さんがエルーンなので察して頂けるかもしれないが、背面が随分と無防備だ。

 和風部分が最早前合わせの構造をしている事ぐらいしか残っていないけれど、可愛い事は何より重要なので些事だろう。

 

 

「いっただっきまーす!」

 

 

 港に着いてから思っていたのだが、この島は前世(日本)を────ファンタジー作品でもお馴染みの『和風』をヒシヒシと感じる島である。

 出された定食もパッと見を述べるなら、雑穀米に卵焼き、味噌汁と魚の干物。

 小皿に盛られているのはほうれん草のおひたしに見えるし、別の皿で分けられているこれは……納豆!?

 

 

「美味しい……!」

 

「ふふっ、良かったぁ。 こういう食べ物は初めてだと思うけど、美味しいって言って貰えたなら店長も喜ぶわ!」

 

「んにゃい!? お、お姉さん!?」

 

 

 久々の日本食──に限りなく近い何か──を堪能していたら、お姉さんが私の向かいに座っていた。

 

 驚きすぎてまた奇妙な鳴き声をあげてしまった……

 妙な癖でもついてしまったのか、中々抜けなくて困っている。

 

 

「驚かせちゃってごめんね? でもまぁ、見て貰えば分かるけど結構暇でさ。

 旅の人みたいだし、迷惑じゃなければお話を聞かせてくれない?

 あぁ勿論、ご飯が先でいいからね?」

 

「問題無いですよー……と言いたいんですけど、あんまりにも美味しいから、ゆっくり味わっても……?」

 

「うんうん! 私もちょーっとサボってた色々を片付けてくるからゆっくり食べてね!」

 

 

────いや、サボってたんかい!

 

 

 中々ユニークなお姉さんに朝イチから捕まってしまったようだ。

 とはいえ、あちらから話を振ってきてくれたのは私としてもありがたい。

 

 

 私は剣術道場が云々の建前から話を始めて、最終的にどうにかカラクラキル邸にご挨拶でも出来れば……なんて思っている。

 何故カラクラキルの家に挨拶を? と思うかもしれないが、こちらに関しては開発途中の()()()()が関係している。

 

 カラクラキルの家系は『妖刀の封印』に主眼を置いているものの、非常に貴重な由緒ある呪術の家系である。

 私が現在絶賛開発中の()()()()は──私の理論が上手くいくならば──非常に呪術に近しいので、刺激を貰いたいのだ。

 

 

 私が口と目から魔力放出が出来るのは既知であろうが、現状は色織り(ルーパパタ)印術(ムドラー)で行使する魔法をその箇所でも行えるだけ、と言ってもよい。

 千里眼(ヴィルーパークシャ)生命を吹き込む(オーシュタウ・プラーナ)は例外ではあるが、前者は戦闘に転用するには私の練度がまだまだ不足しているし、後者は色織り(ルーパパタ)からの派生魔術。

 それ以外の隠し手も確かにあるのだが、今までの術と代わり映えがしない。

 

 そんな中で、私が目を付けたのが呪術だ。

 

 呪術は魔術よりも更にスピリチュアルな体系であり、非常に古くからあるこの空の神秘。

 あくまで私の推測だが、呪術を遡れば創世より『発生した』という六竜のような概念・事象の楔に辿り着くだろう。

 失われた第七元素にも────と、話が逸れた。

 

 

 さて、そんな物凄い可能性を秘めている──と私が勝手に思っている──呪術は何故この空で流行らないのか?

 理由は至極単純、スピリチュアルが過ぎるのだ。

 

 呪術という分野がある事は、魔術を嗜めば大抵の人間が知る。

 だがそれを実際に学び、実践に移せる人間となると途端に数が激減する。

 

 呪術は性質上、非常に強力である場合が多く、それ故においそれとは教授されない。

 信頼を勝ち取って教えて貰える段階に到達しても、口頭だろうが文面だろうが非常にフワッとした説明から自分でコツを掴む必要があるという。

 そんな苦行じみた行為の末に得られる呪文が、自らの魂を削って発動するタイプの場合まであるというのだから恐ろし過ぎると思う。

 

 因みにここまでの話は、全て故郷の村にいたお婆ちゃん魔導師の話である。

 お婆ちゃんは結局コツがちっとも掴めなかったので諦めたらしいけれども。

 

 

 閑話休題。

 

 要は、私はそんな秘密まみれの呪術家系であるカラクラキルと接点を早い内に作りたいのだ。

 クラーバラを救うという目標が完遂された後に繋がる為の布石、とも言える。

 一応この作戦が通らなくても代案はあるのだが、これが通ってくれた方がクラーバラを救う事に専念出来るので、頑張りどころだ。

 

 

(コルウェルの後に()()1()()はしたくないからね……)

 

 

 

 私は味噌汁と共にそんな思考を飲み干した。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 朝餉と情報収集を済ませ、現在は山を歩いている。

 向かう先はクラーバラ達が住む村だ。

 

 

 あの後、情報収集をしている中で分かったのは、カラクラキルは政務の間を縫って足繁くクラーバラに出会っているという事。

 公には妖刀に関わる家系同士の交流という体になっているらしい。

 尤も、そんな建前を正直に信じている人は殆ど居なかったが。

 給仕のお姉さんに至っては『クラーバラちゃんの話を振るとカラクラキルさん、もうリアクションが露骨なのよ!』なんて言っていた。

 ……相手は次代の顔役なのだが、お姉さんの肝が据わりすぎでは無かろうか。

 

 何はともあれ、カラクラキルはそんな様子で屋敷を開けることも多いそうだから、剣術道場に用事があるならばそっちで待った方が早いだろう────というのが、お姉さんや港の方々から頂いたアドバイスだ。

 

 

 整備された山道を進みながら、私は周囲を見遣る。

 ここはクラーバラが花嫁行列で歩く予定の道であり、殺される現場となる場所だ。

 

 周囲一帯は竹林のようで、のんびり歩く分には風情があって心が弾む。

 然し、戦闘する事を考えると視界が悪いのが気掛かりだ。

 

 ここで襲撃してくるコルウェルは既に気が触れている。

 それでいて、リュミエール聖騎士時代の論理的な思考や理性もまだ残っている。

 彼は妖刀・魔剣に魅せられてその力を存分に振るってくる訳であるが、末期だったゲームイベントの彼と違って、今は恐らく人斬りとしての全盛期だろう。

 

 

(色々と手札はあるけれど、結局のところ、コルウェルが帯刀している妖刀・魔剣次第なのがなぁ……)

 

 

 妖刀や魔剣はそれぞれが特別な力を持つ。

 ゲームで1番分かり易かったのは矢張りアズサだろうか。

 彼女が手にした妖刀は、眼を蝕む代償に斬った相手の年齢を操作するという『インチキ効果もいい加減にしろ!』という能力を持っていた。

 また、妖刀や魔剣を持つ者は基本的に狂気に侵されている事もあり、タガが外れているのか怪力が多い。

 

 つまるところ、クラーバラを救うには、視界の悪い竹林でどんなトンデモ効果を持っているか分からない刀剣を振るう怪力の男に、戦って勝たねばならない。

 しかも相手は元々清廉潔白な聖騎士であり、当たり前だがきっちり戦闘訓練を積んでいる。

 その辺のチンピラが妖刀を持って威張り散らしている訳では無いというのが、何より辛いところだ。

 

 更に付け加えるなら、殺さずに生きて捕えるのが目標である。

 あくまで目標ではあるが、主人公に綺麗な手でベタベタ触りたいので出来る限り貫きたい。

 それに1度手を染めてしまうと、『殺す』という選択肢があらゆる場面で追加発生するようになってしまう。

 重みが大きく異なるけれど、1度ズル休みをしてしまえば、面倒だと思った時に必ず『ズル休みをする』という考えが脳裏に浮かぶのと同じ事である。

 

 

 

 

 今後の事を考えながら山を抜ければ、村の入口で随分とだらけている門番に訪問理由やらを問われた。

 冬と春の境目らしい多少の肌寒さと暖かさを両立している今の時期は、確かに春爛漫には遠くても昼寝をするには心地好いだろう。

 門番がそんな態度で平気なのかは、私には分からないが。

 

 そうして村に入ったものの、見知らぬ人間がいるというのはそれだけで視線が集まる。

 以前の私なら前世のギスギスした職場でも思い出して胃を痛めていたかもしれない視線だが、今となっては涼しいものだ。

 

 

(美少女は注目されるものってそれ一番言われてるから)

 

 

 異郷から来た可愛い女の子()が、この村にも馴染み深い刀を佩いているなんて注目されて当然である────と、自らに言い聞かせる。

 

 さておき、私は剣術道場に足を運ぶ。

 門番に『剣術道場に用がある』と告げた際に場所を教えて貰ったし、妖刀という危険物に関わる家だからか屋敷と呼んでも差し支えなさそうな大きさで、どの建物なのかは一目瞭然。

 

 私はドラフの男も屈まずに跨げそうな門の前で声を上げる。

 

 

「たのもー!」

 

 

 道場に着いたのだから、掛け声は矢張りこれしかあるまい。

 別に道場破りをする訳では無いが、風情ある門の前で『すみませーん』と言うのはこう、何というか味気ない。

 

 私の言葉選びは常日頃、こんな感じで適当である。

 

 

「どうれー。 ウチの看板は大したきやないき、道場破りなら他所へ行っちょくれ」

 

「あー! 違うんです! 雰囲気的にこう、『たのもー!』って言いたくなったというか……

 いやまぁ、お手合せは確かに願いたいんですけれども……」

 

「んー? ……ようわからんが取り敢えず入っちょいで、お嬢ちゃん。

 此処に用があるがは確かなんやろう?」

 

「はい、そうです! ちゃんと目的があって来ました!

 お、お邪魔しまーす」

 

 

 出迎えてくれたのはこの道場の師範であるサビルバラ。

 今が原作開始から約4年前だから恐らく29歳。

 身長102cmのハーヴィンなだけあって、対面すると背が高い。

 私との身長差が約20cmもあれば、流石に同種族だろうと差を感じるものだ。

 パッパでもそれなりに感じていた差を、前世から──ゲームという一方的な形で──知る相手に感じる事になるとは。

 

 オクトーはノーカンである。

 身長差が130cm以上もあれば、背が高いとかそういう話ではない。

 アレはもう壁だ。

 

 

 彼に連れられて、私は道場では無く屋敷側へ。

 門前払いされるかと思い、焦って捲し立てた言葉の中に『手合わせ』というワードがあったのにも関わらず、先ずは話を聞くという事だろうか。

 ……いや、会話より先に刃を合わせたがるのはオクトー(戦闘狂)だけで十分なのだが。

 

 

「クラーバラ! ……は、ちっくと出掛けちゅーんやった。

 ざんじ茶を出すき、待っちょりや!」

 

「は、はーい」

 

 

 私を客間らしき部屋に通したと思ったら、まさかの見ず知らずの人間を放置するサビルバラ。

 こういう一面を見ると、彼もコルウェル襲撃みたいな案件が無ければ大概お人好しな気がする。

 

 それよりも、明らかにゲームで聞いていた時より訛りが強い。

 まだ各地を旅したりしていないからだろうか?

 これだけ強い訛りでも村では普通に伝わるのだろうし、矯正する必要も特に無いという事か。

 

 

 私は荷物や刀を横に置いて、この先どう話をするか考える。

 ここに来た大本命の目的を正直に話す訳にもいかない。

 かといって、この廃れつつある剣術道場に修行をしに来たと言って、素直に信じてもらえるかは怪しい。

 妖刀の話をしてしまうと警戒されるだろうから、その路線も厳しい気がする。

 

 となれば────

 

 

「すまんのう、もてなしも碌にできいで」

 

「いえいえ! 私こそ急に来ちゃってすみません……」

 

 

 サビルバラがお茶を持ってきて、卓袱台を挟んで私の向かいに座る。

 彼に限ってそういう事はしないと思いつつ、私はそのお茶に口を付けずにサビルバラを見る。

 

 私にとっては断片であれど彼を知っているが、サビルバラからすれば私は見ず知らずの急に来たハーヴィンの子供だ。

 毒を盛る可能性も────いや、これは私が過剰に警戒しているだけか。

 

 

「それでお嬢ちゃん、一体何の用だ?」

 

 

 サビルバラはそんな私を気にせず──そう見えるだけかもしれないが──問い掛けてくる。

 少しばかり声のトーンが下がった辺り、ただの子供とは思われていなさそうだ。

 私は先程思い付いた訪問理由を述べる。

 

 

「実は私……めっっちゃくちゃ、侍文化に興味がありまして!!」

 

「は、はぁ…… 侍、ねぇ」

 

 

 予想外の返しだったのか、サビルバラが困惑する。

 そこから私は畳み掛けるようにこの島に来た理由(建前)を喋りまくる。

 

 

 そう、私が思い付いた訪問理由は、ミリン家リスペクトの『異国の文化に興味が有りすぎて行動に移しました』である。

 

 ミリンちゃんのご両親は侍文化が好きすぎてこの地に移住した程の行動力溢れる方々。

 それのリスペクトとは即ち、行動力のあるタイプの美少女だと思って貰う事。

 

 これならば、強ち嘘とも言い切れないからボロが出にくい。

 何せ本当に死ぬと決まっている訳でも無いクラーバラを救う為に、13歳で親元を自ら離れている辺りは我ながら可笑しいと思うし。

 

 それにこの島の文化に興味が有るのは事実。

 未知への好奇心というよりは郷愁を感じているというのが正しいけれど、興味を持っている事には相違無い。

 

 

(此処なら寒天の調達も故郷より容易だから、ツクヨミ様も私お手製の羊羹を好きなだけ食べられる。

 きっと少女らしい見た目に違わぬはしゃぎようを見せてくれるに違い無い!)

 

 

────なお、ツクヨミ様が私のところに来る保証がどこにも無い事に気付くのは、羊羹を作り終えてからである。

 

 

「────父に習い剣術も学びましたが、未だ私は生兵法。

 ですので、侍に縁のあるこの地で修行をする為に、この剣術道場に赴いた次第です!!」

 

「げにまっこと大人びた話し方をするお嬢ちゃんじゃのう……

 ま、言い分は理解したぜよ! よかったらこの道場で学んでいくとええ!」

 

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

 

 年相応という言葉をぶん投げたプレゼンの末に、欲しかった返事を頂戴する。

 この年齢で旅なんかしているんだから、多少大人びた話し方でもセーフ……セーフだよね?

 

 

 それから私は、あれだけ熱心にプレゼンしていた割に一切の自己紹介もしていなかった事に気付いて謝り倒したり。

 サビルバラも忘れていた事に気付いて2人して笑いながら自己紹介を済ませたりした。

 

 

 それから暫く。

 

 

「あんちゃーん! もんたよー!!」

 

「おう、おかえりー! ロイルミラ、妹がもんてきたき、やかましゅうなるぜよ」

 

 

 サビルバラが忠告しているこの瞬間にも、足音が物凄い速度で客間に向かって来ている。

 そして襖をスパーンッと豪快に開く溌剌とした女性────私がここに来た目的であるクラーバラだ──は、私には目もくれずにサビルバラに話しかける。

 

 

「あんちゃん! 知らん人の靴があったけんど、誰か来ちゅー────」

 

 

 喋りながら私を見付けてしまったクラーバラ。

 彼女の動作が固まる。

 私としてもどう反応すれば良いか分からず、愛想良く笑う事ぐらいしか出来ない。

 

 

「お、おほほ……」

 

「クラーバラ…… 取り繕うても手遅れぜよ」

 

「あはは…… 元気な方、ですね……」

 

 

 サビルバラの言う通り手遅れではあるが、私は一応()()()()()()()()()()だと知っているので安心してほしい。

 

 とはいえ、クラーバラは気が強くて男勝りで……とゲームでも述べられていたが、想像以上にパワフルな人だ。

 まさか客人が来ていると分かりながら、同じ場所にいる可能性も考えずに豪快に襖を開けるタイプだとは思っていなかった。

 

 クラーバラは『お茶を淹れ直すから少し待っていてね!』と訳するべきであろう言葉を早口で告げた後、非常にぎこちない所作──恐らく上品を心掛けているのだろう──で客間を出ていった。

 

 

「はぁ…… ロイルミラ、妹がやかましゅうてすまん」

 

「いえいえ! その、快活で可愛らしい人だと思います!!」

 

「ああいうがは『お転婆』言うがぜよ。 無理に褒めいでええ。

 ……あれでも嫁入り前なんやけんど、ちっとも落ち着つかん」

 

 

 どうしたものかと嘆くサビルバラ。

 

 どうやら既に婚約の話自体は出ているようだ。

 折角なので聞いてみる事にする。

 

 

「妹さん、お嫁に行くんですか?」

 

「いんや、正式にそがな話がある訳や無いがよ。 やけんど、仲のええ男がおって────」

 

「あんちゃん、うちとカラちゃんはまだそがな仲や無いぞね!」

 

 

 サビルバラの発言に、お茶を淹れて戻ってきたクラーバラが被せる。

 どうやら、まだ嫁入りが確定している訳では無いらしい。

 

 

(ゲームだと時期まではよく分かんなかったけど、もう少し先の事なのか)

 

 

 だが満更でも無いのか、クラーバラの耳は赤い。

 この感じだとカラクラキルにプロポーズされるのも時間の問題だろう。

 

 カラクラキルが妖刀に蝕まれながら思い出していたプロポーズは、確か白詰草で花冠を作っていた筈。

 白詰草は道中でも花を咲かせていたから、既に開花は始まっている。

 プロポーズ自体はもうそろそろなのかもしれない。

 

 そして、彼女の嫁入りは『まだ白詰草が咲いている時期で良かった』とサビルバラが言っていた頃合。

 白詰草の開花期間がいつまでかは把握していないが、既に咲き始めているなら案外すぐなのかも。

 

 そうとなれば気を引き締めなければなるまい。

 ここに来た目的は何より、クラーバラを救う事なのだから。

 

 

 

 私に向けて自己紹介をする可憐な白詰草(クラーバラ)に笑顔で応じながら、私は覚悟を固めていた。




サビルバラ及びクラーバラの訛りに関しましては色々調べながら挑戦しましたが、間違えてても許してください。
方言は難しすぎる……!

また、白詰草の開花期間は諸説有りますが、拙作では3月~8月を採用しております。


鳳回転流をどう扱うか悩みまくっているので、次回の更新も中身含めて未定です。
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