団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!!   作:梏 桎

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何やかんや、半額期間はこれ書くよりもグラブルがメインになっていた気がします。

それと今更ですが、この作品におけるサンスクリットは正確なものではありません。
改めてご了承ください。


逢着はあったろう?

 

 

 サビルバラ達の屋敷に住まわせて貰って暫く。

 その日は私が朝餉の当番でこそあったものの後は休暇とされ、この村に来て何度目かの休日と相成った。

 

 実はとある事情でこの日まで碌に村の散策も出来ていなかったので、さっさと朝餉を作って今日は一日中村を回る予定だ。

 

 それというのも、私が住み込み始めて割と直ぐにクラーバラがプロポーズされた──正確にはそう察する事が容易い程に一目瞭然な態度で帰ってきた──事が原因である。

 そんなクラーバラを見て『これはコルウェルの襲撃が近々に迫っている』と思った私は、何度かあった休日の殆どを対策用の魔術研究や自主鍛錬に費やした。

 実際はカラクラキル側の家庭の都合で結婚そのものはもう少し先らしく、これをつい最近になって知る。

 

 余談だが、私は純粋な興味からプロポーズやカラクラキルに関して色々とクラーバラに質問を投げまくった。

 聞くところによれば、矢張りゲーム内の描写同様に白詰草の花冠と共にプロポーズされたらしい。

 その日のクラーバラは夜中になっても思い出したように時折奇声を上げるものだから、サビルバラが白い目を向けていたのは中々愉快な光景であった。

 

 

 閑話休題。

 兎も角時間的な余裕が出来たのならば、折角だと思って村の散策を予定した訳である。

 

 私はサビルバラ達と朝餉を済ませ、早々に外に繰り出すべく屋敷を出る。

 そのまま門を抜けようとすれば、何やら門の外から話し声が。

 来客かと思いつつ、とはいえ私も別にこの屋敷の人という訳では無い。

 

 どうしようと悩んでいれば途端に会話が終わり、私の心の準備も整う前に門が開かれ────

 

 

「おや、初めましてかな?」

 

「は、初めまして!!」

 

 

────優しそうなイケメン(カラクラキル)に声を掛けられた。

 

 

 カラクラキル。

 クラーバラの婚約者であり、妖刀を封印する呪術を持つ家系の者。

 今の彼は島の顔役としての凛々しい面こそあれど、基本は暴力を厭う優しい黒髪の青年。

 

 ゲームではクラーバラ殺害のショックで髪は白く染まり、復讐の為に妖刀を握って命を削りながらコルウェルを探す復讐者(アヴェンジャー)

 その果てにはクラーバラを斬った妖刀の中に彼女を見出してしまい、封印も折る事も拒否して雲隠れ。

 一連の流れの結果、サビルバラはクラーバラを救えず、仇を殺す事も出来なければ妖刀を折る事も出来ず、カラクラキルを妖刀の侵食から救う事も出来ない────改めて思うが惨い話である。

 

 

「俺はカラクラキル、ここの師範の……友人、かな? 君は?」

 

「ロイルミラです! 島外から来たので住み込みをさせて貰っています!

 あなたがカラクラキルさんなんですね! クラーバラさんからお話は聞いてますよ!!」

 

 

 私は初対面を強く意識して挨拶をする。

 中途半端に知っているが故にうっかり『呪術に関して少しお話を』と先走りかけたりしては、関係性を構築する前にヒビを入れているようなもの。

 自らをセーブして少しずつ迫るのが吉だと思う、前世が前世(コミュ障)だったので机上論だけれど。

 

 とはいえ初手で『貴方の婚約者からお話はかねがね』という発言は強すぎたのか、カラクラキルは困ったような照れ臭そうな顔を浮かべている。

 然し咳払いを挟むだけで表情は元に戻った。

 

 

「それより君は島外から来たのか。 俺よりも随分若く見えるけれど……

 差し支えなければ、何故この島へ?」

 

 

 私はサビルバラ達と同様の理由(建前)を彼に説明。

 その際に魔術が扱える事をしっかり明示しつつ、呪術にも興味があるような話を少しだけ混ぜる。

 あくまでフレーバー程度の混ぜ方ではあるが、これでカラクラキルが警戒してくれるならそれで良い。

 私にだけ標的を絞られると困るが、島外から来た旨もゴリゴリ擦る事で間接的に島外から敵が来る事を伝えよう。

 伝わるかは別だが。

 

 

「そうか……この島の文化に…… 役職柄か、自分の事でも無いのに少し嬉しくなったよ。

 どうかこの島の文化を、サビルバラの道場を楽しんでいって欲しい。

 俺もその一助となれるよう、今度時間があればお茶でもご馳走するよ」

 

「本当ですか!? ありがとうございます!!」

 

 

 カラクラキルが返してきた反応は『特に反応しない』であった。

 微笑む彼に私も笑って返す。

 

 

(無警戒か…… ま、妖刀やその周辺の技術を狙って襲撃してくるかもしれないなんて態々考えたりはしないもんな)

 

 

────私はこの時、自らが心を読める訳でも、表情を窺うのが得意な訳でも無い事を失念していたのだが、それはまた別の話。

 

 

「あれ、カラちゃん? 何でそがな所でルミちゃんと喋りゆう?」

 

「クラーバラ。 ごめん、待たせてしまったかい?」

 

「ううん、声がしたき見に来ただけ」

 

 

 私とカラクラキルの声を聞き、クラーバラが門前に来る。

 

 ……これは2人の時間を邪魔してはいけないか。

 幸いにも餌は撒いたと言えるし、早々に立ち去るとしよう。

 

 

「それじゃ、私はそろそろ行きますね」

 

 

 言いながらも、私は会話を打ち切って門から出ていく。

 

 

「どうぞごゆっくりー!!」

 

 

 一度振り返って茶化し気味にそんな言葉を投げれば、慌ただしい否定のような弁解のような何かが聞こえてくる。

 

 

「ルミちゃーん!! もんてきたらお説教やきねー!!」

 

 

────最後に聞こえた言葉は、きっと聞き間違えだろう。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 屋敷から出て暫くの時間を村の散策に費やし、現在時刻は正午過ぎ。

 春の日差しは身も心も柔らかく包み──勝手に緊迫していただけだが──コルウェルを警戒していた私をも癒してくれる。

 

 茶屋に入ってほんの少し遅い昼餉を済ませ、私はデザートの団子を頬張りながらこの後の予定を考えていた。

 

 そろそろミリンやレオノーラと接点を作っておきたい。

 サビルバラ達にそれとなく話を振ったところ、レオノーラは不定期にだが道場に来る事があるらしいのでチャンスはそれなりにある。

 

 問題はミリンで、既に道場での体力作りも終わって今は家で独自の修行──恐らくは鳳回転流──をしているらしい。

 彼女もまた手合わせの為に道場に来る事が稀にあるそうだが、頻度からしてこちらは待つより会いに行った方が良いだろう。

 

 また、コルウェルの襲撃がまだだとしても対策を用意しておくべきではある。

 その為に竹林の下見もしたいが……さて、何から優先するべきか。

 

 

「じーっ……」

 

「ん?」

 

 

 考え事をしながらのんびりと団子を咀嚼していたので全く気付かなかったが、私の向かいの席に勝手に少女が座っている。

 その子は団子を狙っているのが丸分かりなぐらいに視線が団子に釘付けだし、なんなら涎を啜る音がする。

 

 容姿からして同族(ハーヴィン)だろう。

 茶色にも橙色にも形容出来そうな髪を屋内だというのにフードにしまい、更にその上から布を巻いている。

 その布は結び目の関係か兎の耳のようになっていて可愛らしい。

 

 然しその格好は、まるで私の知る────

 

 

「レ────!?」

 

 

 名前を呼びそうになって咄嗟に口を塞ぐ。

 危ない危ない、突然の事だったのでマジで失敗するところだった。

 まだ会話すらしていない相手を突然名前で呼ぶとか、いくら何でも怪しすぎる。

 

 幸いにも、急に大声で叫びかけて口を塞ぐという間抜けムーブをかました私に対して、レオノーラは見ているだけだ。

 寧ろ私が彼女の存在に気付いた事が明白になった訳で、ここぞとばかりに彼女は口を開く。

 

 

「なあ、お前さん。 その団子……アタイに1つ分けちゃくれねぇかい?」

 

「え? あ、あぁ……どうぞ?」

 

「ありがとうごぜえやすっ!!」

 

 

 礼を言うやいなや団子を美味しそうに頬張るレオノーラ。

 私は前世の知識があるから彼女の名前や性格の一端ぐらいは把握しているけれど、レオノーラからしたら初対面の筈。

 店の食品とはいえ、見ず知らずの人間から受け取るのは『人を信じている』とかで済ませるには余りに迂闊では無かろうか。

 

 まぁ何はともあれ、ここで会えたのも何かの縁。

 団子をもきゅもきゅと口に詰め込むレオノーラは小動物的で物凄く撫で回したいが、先ずは自己紹介だろう。

 

 

「私はロイルミラ。 島外から来た旅人……みたいな感じの人。

 あなたの名前は?」

 

 

 私の問い掛けに対して首を傾げたレオノーラは、そこで自己紹介をしていない事に気付いたのか急いで団子を飲み込む。

 

 

「すいやせん、名乗りもせずに……」

 

 

 そう言って席を立ち、何をするかと思えば()()()()彼女。

 そして大きく息を吸う様を見て、私は何だか嫌な予感がしてきた。

 

 

「おうおうおう! ニンジャを目指し日々是鍛錬。

 抜けば玉散る氷の刃に、乗せる想いは義理人情!

 人呼んで『兎小娘』レオノーラたぁアタイの事だっ!!」

 

 

 決めポーズと共に大声で名乗るレオノーラ。

 心做しかドヤ顔な気がするが、私は苦笑いしか返せない。

 

 何せ彼女、名乗る為だけに短刀とはいえ茶屋の中で抜刀している。

 加えて非常に大声。

 そしてこの場合、私に向かって自己紹介しているのだから無関係を装う事すら許されない。

 

 

(周りが凄い複雑な顔してるし店員さんも笑みが引き攣ってるんですけど!?

 え、嘘、これ私が場を収めないといけないの……?)

 

 

 私は取り敢えずポーズを決めたまま動かないレオノーラに声を掛ける。

 

 

「れ、レオノーラ……その──」

 

「お客様」

 

 

────あ、終わった。

 

 

 貼り付けたような笑みとは正にこの事を指すのだろう。

 笑顔の筈なのに目から怒りを感じさせる店長らしき人にレオノーラが声を掛けられる。

 流石にレオノーラも振り向き、そしてその表情を見て固まる。

 

 

「速やかにお帰りいただけますでしょうか?」

 

 

 そう告げられて周囲の温度が下がったと錯覚する程の怒気を感じさせられれば、最早ここに留まるのは下策。

 

 

「すみませんでしたお代はここに置いていきます! はい行くよレオノーラ急いで!!」

 

「うわっ!? ちょ──」

 

「ご馳走様でしたー!!」

 

 

 私は荷物を急いで背負い、代金を少し多めに置いてレオノーラの腕を掴む。

 そのまま彼女が何か喋る前に猛スピードで店を後にした。

 

 

 

 

 暫く走って、村の外れまで来たところでレオノーラの腕を離す。

 

 

「いやぁ悪いねぇ。 名前を聞かれるとつい、口上が必要かと思っちまいまして……」

 

「今度から場所は考慮してね……」

 

「任せろぃ! 跳ぶ前に見よ、って事でございやしょう?」

 

(それはつまり、さっきまではLeap before you look(見る前に跳べ)の精神だったと白状しているのでは……?)

 

 

 ゲームで語られるエピソードの時点で豪胆な子だと思ってはいたが、このまま成長してしまうとそれはもう豪胆では無く胆大妄為というものだ。

 それを思えばここで注意喚起が出来たのは彼女の将来の為にもなった気がする。

 果たしてこの程度の注意喚起で改善されるかは全くもって分からないが。

 

 

「それにしても、さっき名乗った時に『ニンジャを目指し』って言ってたけど……」

 

「そう! アタイはニンジャになるべく、日々修行してるんでさぁ!」

 

「ふむ……」

 

 

────見せてしまおうか。 研究の成果、その一端を。

 

 

 まぁ知り合えたら元々見せるつもりではあった。

 今回はじっくり部屋に籠っていたお陰で、当初の予定よりも凄い事が出来そう。

 

 

「忍術……じゃないけど、それっぽい事なら私も出来るよ?」

 

「なぬ!? そ、そいつぁ一体……?」

 

「ま、見ててね! 色織り印術(ルーパパタ・ムドラーヨーガ)────水魚(ウダカ・マツヤ)

 

 

 本来は必要無いのに忍者っぽくなるように大袈裟に印を結び、私は左手から水で構成された魚を飛ばす。

 

 

「おお!」

 

「驚くのはまだ早いよー? 転移(ヴィタラナ)!」

 

「うわっ!?」

 

 

 私は納刀してしまっていた筈のレオノーラの短刀を()()()()()、右手で振るって水魚(ウダカ・マツヤ)を切り裂く。

 

 転移(ヴィタラナ)は以前ナルメアの胡蝶の転移魔術を模倣しようと思った時に途中まで術式を構築して放置していたものを、部屋に籠っている際に範囲を物質に限定して再構築した魔術だ。

 転移出来るものに制限を設けたので精度が高く、失敗のリスクがとても低い。

 因みに再構築の途中に犠牲になったのは屋敷の庭で成長しようとしていた雑草達である。

 

 斬った事で形を保て無くなり水と化していく水魚(ウダカ・マツヤ)に向けて私が指を鳴らせば、水は形を取り戻して私の回りを泳ぐ。

 

 

「最後に────吸水(オーシュタウ・パー)

 

 

 呪文によって水の魚は形を水に戻して私の口の中に入っていく。

 これよりお見せするのは驚かすのに最適の魔法。

 これも作り掛けだったものを部屋に籠って完成させた、最新作だ。

 

 私は水を飲み込んで呪文を唱える。

 

 

循環錬金(チャクラ・ラサーヤナ)──」

 

 

 呪文を唱えたら、レオノーラに短刀を返しつつ左の掌を上にして待つ。

 今現在、私の体内で行われているのは『水の変性』だ。

 

 これは少しでも色々な術を扱いたい私が生み出した、擬似的な錬金術。

 本物の錬金術と違って自らの魔力で発生させたものや、自らの魔力を多量に取り込ませたものにしか発動出来ないのが難点ではあるものの、魔力をガッツリ媒介に用いる変性であるが故に等価交換もクソ喰らえなビックリ魔術だ。

 たぶんカリオストロに見せたら『錬金術への冒涜』と怒られると思う。

 

 

「──造花(マーヤープラーニン)()青蓮華(ニーロートパラ)

 

 

 私は左の掌から青い蓮を生み出す。

 そして魔法糸を通して携帯しているヘアゴムとくっつければ、即席ヘアアクセの出来上がりだ。

 但しあくまで即席なので、残念ながらこの造花は余り長持ちしない。

 魔力を込めれば多少は長く使えるが、どこまで粘っても精々3日が限度だろう。

 

 

「ふふん、どう? 忍術じゃ無いけどこういうのも良いもんでしょ?」

 

 

 私は折角作ったのを良い事に、即席ヘアアクセで髪を結びながら自慢気に告げる。

 

 

「くぅ〜! こいつぁすげぇもんを見してもらいやした!!

 特にアタイの懐から刀を口寄せする姿は、ニンジャを思わせるものでございやしたよ!!

 是非アタイにも伝授してくだせぇ! 師匠!

 

「師匠!?」

 

 

 私が驚いているのも気にせず、周囲をぴょんぴょん跳ね回りながらはしゃぐレオノーラ。

 ちょっと忍術っぽいものを見せて良い刺激になればと思っていたのだけれど、どうやら成果が大きくなりすぎてしまったようだ。

 

 

 

 結局私は彼女の思いを無下にすることも出来ず、師匠として共に忍術研究もする事になる。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 レオノーラとの出逢いを経て、日もそろそろ完全に沈んでしまう頃。

 私はレオノーラと別れて屋敷に戻ろうと村を歩いていた。

 クラーバラが忘れていなければ、帰ったら説教なので憂鬱ではあるけれども、余り遅くに帰って心配を掛けるのも本意では無い。

 然しながら説教が嫌なのも事実で、私の歩みは必然的に亀の如く遅いものとなった。

 

 

「おや、アレは……サビルバラとミリンちゃん?」

 

 

 ふと見れば、民家──恐らくミリンの家──の前で喋っている人影。

 随分長い棒の影が出来ているから、恐らく特注の木刀を持ってミリンの家で稽古でも付けていたのだろう。

 彼なりに妹とその恋人の時間を作る為に……というのは、私の妄想が行き過ぎているか。

 

 然し今日は運が良い。

 カラクラキル、レオノーラ、ミリンと一度に交流出来るのだから。

 

 私は気持ち駆け足でサビルバラのもとへ赴く。

 

 

「おーい! サビルバラさーん!」

 

「ん? おぉ、ロイルミラか。 おんしも今、帰りゆうが?」

 

「はい!」

 

「サビルバラさん、そちらの方は……?」

 

「あぁ、こいつはロイルミラ。 おんしの親御さんみたいな動機で島外から来た子でなぁ。

 見て呉れで分かる通りの傾奇者ぜよ!」

 

「誰が傾奇者ですか、誰が!」

 

 

 流れで紹介してくれるだろうと思ってサビルバラに任せていたら随分な言い草である。

 

 私はサビルバラの脇腹を抓って報復しながらミリンを見る。

 サビルバラが『痛い痛い! 分かった、分かった!!』などと言っているが今は無視だ。

 

 

「改めましてロイルミラです。 侍文化に興味を持って、今はサビルバラさんの道場でお世話になっています」

 

「これはこれは丁寧に…… 拙者はミリン。 侍やってます!」

 

「わしを無視して話を進めるな痛い痛い痛い!」

 

 

 いい加減に煩いので手を離し、片手間で雑に回復魔法を掛ける。

 無詠唱だし碌に魔力も練っていないので普通なら効果に期待出来ないが、所詮脇腹を抓っただけなのでこれで十分だろう。

 

 

「おぉ! ロイルミラさんは魔法を扱えるんですね!」

 

「大して歳も変わらないだろうし呼び捨てで良いよ。 呼びにくいならルミで平気」

 

「はい、ルミちゃん!」

 

 

 うーん、可愛い。 5億点*1

 脳内にミリンの笑みを保存しつつ、魔法の話を折角振ってくれたからそれに乗っかるとしよう。

 

 

「魔法はママから、剣はパパから教えて貰ってね。 そういうのに明るい知り合いにも恵まれて、今の私が出来た感じかな」

 

「剣も嗜んでいるんですね! 腕前は如何程に?」

 

「無論、皆伝! ……って言えたらカッコイイんだけどねー。

 そもそもパパは我流剣術だから免許も何も無いんだ。 ミリンちゃんは?」

 

「拙者も道半ばで……ですが! 前向きに捉えれば、まだまだ成長出来るって事だと両親も言ってくれました!」

 

「ほほう? それじゃ是非、今度手合わせでも──」

 

「そこまでだ、ロイルミラ。 暗うなってきたき、早う去ぬるぜよ」

 

 

 言われて空を仰げば、確かに日が完全に沈み星が瞬き始めている。

 私とミリンはお互い頷いて会話を切り上げ、『またね』と手を振って別れた。

 

 

 屋敷を目指してサビルバラの隣を歩く。

 思えば彼とこうして2人というのは、剣術の指南以外では初対面以来かもしれない。

 基本的にクラーバラがいつも一緒だったし、これまでの休暇は部屋に籠っているか道場に籠っているかで出掛けてすらいなかった。

 

 私がそんな思考を巡らせているとサビルバラは徐に口を開く。

 

 

「……実の所、おんしがちっくと心配やった」

 

 

 私は黙ってそれを聞く。

 彼からすれば、島外から態々来たよく分からない子供が今日この日まで碌に島も歩かず道場か屋敷に籠っていたのだ、何かあったと思うのが筋だろう。

 

 実態は()()()()()のでは無く()()()()()()()のだからタチが悪いのだけれど。

 

 

「こじゃんと自分を追い込んでいただろう? それを止めるのが果たして正しいかも分からんで、見守るしか出来いで……」

 

 

 おっと、私が籠っているのを『自らを追い込んでいる』と解釈していたのか。

 強ち間違いでも無いが、そこまで切羽詰まっていた訳でも────いや、コルウェル戦がすぐだと思っていたから大分焦っていたな。

 まぁその焦りのお陰で色々と新たに生み出したものもあるから、結果的にはプラスだった。

 

 然しそれは私からの視点でしかない。

 サビルバラやクラーバラには、どうしたものかと要らぬ気苦労を背負わせていたのだろう。

 

 謝らねばなるまいが、さてどう取り繕うのが正解か。

 正直に追い込んでいた理由を話すのは先ず有り得ない。

 かといって、常に張り詰めて生活している武人気質でも無いから『自らを極限まで高める為』みたいなのも却下。

 

 

「ごめんなさい! その……な、慣れない環境で休日っていうのが、何して良いか思いあぐねてたんです」

 

 

 言っておいてなんだが、我ながら下手な言い訳すぎる。

 慣れない環境で何して良いか分からなかったら、取り敢えず部屋や道場に籠るより散歩しろよ。

 

 だがサビルバラは本当に優しい人なので、こんな下手な言い訳を取り敢えず肯定して話を進めてくれた。

 

 

「そうか…… それで、今日はひいとい村を歩いてみてどうやった?」

 

「良い村だと思いました。 故郷とは全然違うけど、何て言うのかな……人の温かみが似てるって言うか。

 友達も出来ましたし、弟子?も出来たんですよ!」

 

「ほーん……って、弟子ぃ!?」

 

 

 私はそこから今日の出来事をサビルバラに語る。

 サビルバラは私の話に大袈裟なぐらいリアクションをしてくれて、何だか兄が出来たような気分だ。

 

 

 

 なお、この日に起きた最後の主要な出来事は『帰りが想像以上に遅かった事によるクラーバラからの説教』であった。

 

 

 

 

 私はこの先、コルウェルの襲撃までに何回クラーバラに怒られるのだろう?

*1
オタクはすぐにデカい点数を付ける




該当する話の前書きにも記載しましたが、年齢の勘定を間違えるという酷いミスが発覚した為に修正しております。

ロイルミラは現在13歳、原作開始から約4年前となります。
この度は申し訳ございませんでした。
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