団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!!   作:梏 桎

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お久しぶりです。
色々あって半年も掛かりました。


加護はあったろう?

 

 

ごぼっ……つ、つーかまえ、た……!」

 

「あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛あ゛唖゛堊゛亜゛ア゛ァ゛!!!!」

 

 

 闇しか映さなかった眼に光が戻り、その代わりにこれだけ流れている血の匂いが一切の無臭と化してしまった。

 とはいえ奪われたのが嗅覚で良かった。

 触覚が消えていたら、こうして暴れるコルウェルに何の抵抗も出来ず斬り捨てられていたのは想像に難くない。

 一月三襲(いちがつさんしゅう)による腿の傷と月中蟾蜍(げっちゅうのせんじょ)で手に傷を負わせて漸く力の均衡を保てている辺り、妖刀によって外される理性の箍の恐ろしさを嫌という程に味わう羽目になった。

 

 

────ならば()()()と洒落込もうではないか。

 

 

 視線がきっちり合わないが、まぁ()()()は私が認識することが肝要なので問題無いだろう。

 勿論、視線が合ってくれた方が効果が通りやすいのだが。

 

 ……いや、踏ん張ってはいるが限界が近い。

 膝も笑っているが何よりも表情筋がバグったのか──或いは貫かれた痛みと恐怖で正気を失ったのか──明らかに今の私は()()()()()

 実際、視界の端に映るサビルバラが化け物でも見ているかのような顔をしているが、きっと眼前の荒れ狂うコルウェルでも見ているんだろう。

 そうに違いない。

 

 

「我が瞳よ、狂気に身を堕とした眼前の敵を……ごほっ、ごほっ……」

 

「やめろやめろやめろ!!! 何をする気だ妖刀を!! 俺の妖刀を!!!

 返せ! 返せぇぇ!!!」

 

 

 私が詠唱を始めた事に随分と警戒をしてくれるコルウェル。

 ちゃんと私を脅威として見ていてくれたのだろうか。

 

 

────ふふ、絶対にこの妖刀を私の腹から抜かせてやるものか。

 

 

 そういう意志を込めて私は自ら前進する。

 

 

「何しちゅうロイルミラ! おんし────」

 

 

 あぁ、然しこれ以上はサビルバラが止めに来ちゃいそうだ。

 そうなってしまったら全てが台無し。 手早く仕留めなければ。

 

 助けた男に早々死なれでもしたら、私が死んでも死にきれない。

 無論、最善はそもそも死なない事ではあるけれども、流石にそれが厳しいのは私だって理解している。

 

 

────おや、近付いた事で目が合ったね? それじゃあ()()()()、コルウェル。

 

 

金眼(ヒラニヤークシー)────金華幻朧(きんかげんろう)

 

「あ゛っ!? がっ……! き、貴様……な、にを……」

 

 

 あれだけ暴れていたコルウェルが急激に立つ事すら覚束ないとばかりにふらつく。

 その拍子に私の腹から妖刀が抜け、血が噴き出るが最早そんな事は些事だ。

 既にこの状況は決着がついたと言って良いだろう。

 

 

 金華幻朧(きんかげんろう)は私の目から魔力放出をし、相手の魔力放出箇所や瞳などを通じて相手の体内の魔力を直接()()()()()瞳術だ。

 表現方法からエグさは察せられると思うが、術をかけられた相手は基本的に激しい嘔吐感などを伴いながら昏倒する。

 詠唱を省略したり手順を簡略化する事で多少の目眩が生じる程度までは出力を落とせるが、それでも暫くは平衡感覚がバグったり嘔吐感が消えなかったりする。

 どうやって知ったか? それは当然、兄弟子の皆さんで試して感想まで貰いましたとも。

 呪術の師匠(カラクラキル)も同伴していたし、ちゃんと許可も貰っていたからセーフ。

 許可出したのはサビルバラだけど。

 

 

────それにしても眠い。

 

 

 魔力切れでも起こしたのかな……? 血を流しすぎたのもあるか……いっそどっちもだろうか?

 サビルバラが何か言っているが、如何せん上手く聞き取れない。

 おかしいな、聴覚は奪われていない筈なんだけど……

 

 

 

────サビルバラが涙を流す姿が暈けた視界いっぱいに広がる中で、私の意識は闇に落ちていった。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 サビルバラが眼前の光景を理解するのに要した時間は、一瞬のようであり永劫の時を必要としたようにも思える。

 

 何が原因でこうなったのだろうか?

 何故コルウェルは自分(サビルバラ)に標的を変更した?

 平時であれば突き飛ばして身代わりになるような事をロイルミラはするか?

 

 否、最早これらの疑問は意味を持たず。

 自らがすべきは自問という逃避でなく現実の直視にある。

 

 

 サビルバラは鉄臭い現実を改めて()()

 

 夥しい血を流し、刀に貫かれても笑みを湛えるロイルミラ。

 そんな彼女を振り切らんと、こちらも多量に血を撒きながら荒ぶるコルウェル。

 風情ある緑の竹林は今や赤黒く変色し、スクスクと育っていた竹は斬られ、圧し折られ、地に積もる落ち葉共と変わらぬ様へと成り果てた。

 

 

────此処はまるで地獄ではないか。

 

 

 サビルバラは戦慄した。

 この産み出された地獄そのものに? 是だ。

 地獄を産む悪しき元凶、コルウェルの狂乱に? 是だ。

 

 そして────今も変わらず笑い続ける、小生意気だが可愛らしい弟子(童話に語られる狂気の魔女)に戦慄した。

 

 

(どいてルミは笑いゆうん?)

 

 

 幼き弟子が師を庇い腹を貫かれている現状は、本来ならば憤るべき場面なのだろう。

 然し貫かれた弟子は決して悲観から来るものでは無い狂気的な笑みを湛え、対して貫いた側は刀を引き抜くことに躍起になっていてその顔を見もしない。

 

 サビルバラが合流した時点で既に腿から血を流していたコルウェルは、ここに至って漸くそのダメージが響いているのか、ロイルミラから刀を取り戻すだけの踏ん張る力が出ていない。

 

 

 弟子(ロイルミラ)は詠唱する。 コルウェルが殊更狂乱し、刀を引き抜こうと暴れる。

 それを受けてロイルミラは()()()()()()

 

 

────何を、している?

 

 

 ただでさえこの状況を飲み込み切れていないサビルバラは、最早何かを考える前に言葉を出力していた。

 

 

「何しちゅうロイルミラ! おんし、このままじゃ死んでしまうぜよ!!」

 

 

────否、どう足掻いてもあの子は死ぬ。

 

 

 サビルバラは自分の言っている事が余りにも非現実的であると理解していた。

 理解はしていたが、納得は出来なかった。

 

 故に選択した行動は彼女の許へ行く事だった。

 その行動に特にこれといった利が無いと知りながら、サビルバラはそれでも一縷の望みに縋って、ふらつく足に苛立ちながら駆け寄ろうとした。

 

 

「あ゛っ!? がっ……! き、貴様……な、にを……」

 

 

 すると突然コルウェルがふらつき──それでも頑なに妖刀を手放さず──ロイルミラから刀を引き抜きながら地に伏した。

 

 十中八九ロイルミラの魔術だろうと思っているにも拘わらず、サビルバラはまたも状況を理解出来ずに立ち止まる。

 然し直ぐに正気に戻り、既に息が浅い弟子を抱き起こして必死に呼び掛ける。

 

 

「ロイルミラ! 死ぬな゛!! ロ゛イ゛ル゛ミ゛ラ゛!゛!゛」

 

 

 その必死な願いは余りにも切実に、語彙すら捨てて只管に『生きろ』と『死ぬな』を繰り返す。

 視界は涙で滲みすぎて弟子の顔がよく見えず、触れている身体は確実に熱を失っていく。

 

 サビルバラは泣いた。 自らの弟子を死なせてしまった事実に。

 サビルバラは泣いた。 己の余りの弱さに。

 サビルバラは泣いた。 妹との約束を果たせぬ不甲斐なさに。

 サビルバラは────

 

 

 

 

 そうして泣いて、どれだけ経っただろう。

 いや、彼にとって経過した時間など最早どうでも良かった。

 

 

────涙はもう涸れてしまったのか出てきやしないが、()()()をつけるのならば寧ろ視界が明瞭なのは有難い限り。

 

 

 サビルバラはそっと弟子の身体を地面に置き、フラフラと歩く。

 弟子(ロイルミラ)(サビルバラ)を突き飛ばす為に投げ捨てた折れかけの刀を拾い上げ、今度はそれを握って未だ地に伏したままのコルウェルの許へ歩み寄る。

 

 

「全ての元凶は……この空に未だ妖刀(こがなん)があるからだ!!!」

 

 

 サビルバラは妖刀に向けて弟子の刀を()()()()()()振り下ろす。

 否────正確に記すならば、右手を無理矢理握り込ませるように左手で握らせているのだ。

 激痛が走っている筈なのに、彼の表情に痛みなど────いや、寧ろ痛みに顔を歪ませきっている。

 それが傷の痛みに由来しない事は誰の目にも明らかであるけれど。

 

 斯くして振り下ろされた罅入り刀は、アレだけの凶悪さを誇っていた妖刀をその暴れぶりに反して余りに呆気なく砕く。

 

 

────なんて虚しいんだ。

 

 

 サビルバラは心が冷えていくのを実感していた。

 そして自らが次に行うことも──まるで他人事のように──分かっていた。

 

 

「仇討ちとも呼べん、ただの憂さ晴らしだと分かっちゅうぜよ。

 ……それでも────それでも!!

 

 

 

 

 その一閃を最後に、弟子の刀も役目を終えた。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 (ロイルミラ)が対コルウェルを────というよりは楽しくて色々と魔術研究をしていた中で開発した魔法というのは、所謂イメージされがちな魔法だけに留まらない。

 猿真似に過ぎないとはいえ錬金術を模した循環錬金(チャクラ・ラサーヤナ)もそうだし、呪術も未だ途上とはいえ手を出したジャンルとなった。

 要は雑食が過ぎる訳であるが、そこから更に私は自らが魔力放出が出来る箇所に注目し、辿り着いたものが『忍者漫画(NARUT○)みたいな瞳術、使いたくない?』である。

 

 

 発想そのものは千里眼(ヴィルーパークシャ)を開発した時点からあったものの、当時の私には瞳を媒介に相手に影響を及ぼすなんて術式の組み方すら分からなかった。

 然しながら昔よりも魔力の扱いが器用になり、それに何よりカラクラキルという呪術に精通した存在が近くにいる。

 

 そんな強力な助っ人の力を借り受けながら私が編み出したものが、全空探せど滅多に存在しない瞳術────金眼(ヒラニヤークシー)である。

 ……などと格好つけたは良いものの、今現在は金華幻朧(きんかげんろう)しか術が存在しないのだが。

 とはいえ、それが決め手として機能してくれたのは魔術を嗜むものとして素直に嬉しい。

 

 

「……ロイルミラ。 これだけ手伝っておいて言うことでは無いのかもしれないけれども────」

 

「呪術とは、そも発動する機会が無い事こそが最良である。 ってやつですよね?」

 

「そうだ。 努々忘れないように。

 専門家として、先達として────それに何より、兄弟子としてね」

 

 

 金華幻朧(きんかげんろう)が完成した際にカラクラキルは私に向かってそう告げた。

 

 実際、呪術──並びにその派生である私の瞳術──は基本的に使わないで済むならその方が良いものだ。

 それは発動の条件やコストといった実用性からくるものであると同時に、呪術の持つ()()に依るものが関係している。

 

 魔術も錬金術も呪術も、基本的に術を行使した以上は完成形が出力される。

 この内、魔術と錬金術は──勿論、術の規模次第ではあるが──中断や打ち消しがそれなりに容易だ。

 然し呪術は基本的に解呪(打ち消し)はあっても中断が許されない術であり、下手に中断すると()()()()()()()()()()

 その性質故に呪術は使う側にも負担が大きく廃れていったと見る事が出来るが、逆にその性質が呪術の強力さを保証している。

 

 

────つまり、コレを使わざるを得ない状況は必然的に私の危機だろう。

 

 

 当初はそう思っていたのだ。 実際は勝手に庇っただけなんだけど。

 サビルバラが介入する事ぐらい予想しておけという至極単純な話。

 

 まぁ、作った術が日の目を見る事も無くお蔵入りするよりは良かったのかな、なんて。

 

 

────嗚呼、こんな事を考えている場合では無いのに。

 

 

 『ハレの日なんだからルミちゃんもお粧ししないと』と姉弟子の皆様に着せられた──駄々を捏ねて動き易さだけは確保した──可愛らしい着物は今やズタボロで血に塗れ、見る影もないモノになった。

 私自身も全身に切り傷、左腕は多少の治癒術程度では回復しきらずにグチャグチャのまま、おまけに左肩と腹には穴が空いてしまった。

 

 

────助からないだろうなぁ、これは。

 

 

 自分の身体がどうなったのかなんて今更振り返って何になるというのだろう。

 私の死は考えるまでも無く確定している。 流石に覆せるとも思っちゃいない。

 

 

────未練は……山のようにあるなぁ。 このままじゃ幽霊コース一直線だ。

 

 

 クラーバラの結婚式は結局見れずじまいだ。

 サビルバラの手当もし損ねたし、クラーバラに面倒を見てほしいと頼まれていたのに叶えられそうにも無い。

 カラクラキルには、もっと呪術の手解きを求めていたのにそれも無理。

 レオノーラとの修行も中途半端だし、ミリンとの手合わせも半端で終わっている。

 

 

────けれど何よりも。 嗚呼、何よりもだ。

 

 

 ツクヨミ様……貴方を待てず申し訳ありません。

 貴方の友は素より短命なれど、貴方を置いて逝く事が無念でなりません。

 

 そして未だ見初めぬ想い人(主人公)よ、せめて君に逢いたかった。

 この身が朽ちても、魂が腐ろうとも、存在そのものが希薄極まりなくなろうとも。

 

 

────逢いたかった。 会話がしたかった。 愛したかった。

 

 

 

 

御空の燭(ロイルミラ)

 

 

────何処かから声がする。 ツクヨミ様の声だ。

 

 

御空の燭(ロイルミラ)、我が友よ。

 貴方は矢張り、こうして輝きを増す前に闇路に迷ってしまうのね」

 

 

────もしかして叱られているのだろうか。 こんな言い方をするのも不服ではあるが、割と致し方ない感じの流れだったと思うのだけれど。

 

 

「親しき輝きを護る為に未来ある燭が喪われる事が致し方ない……と?

 其れは()の価値観ですか?」

 

 

────あ、やっば。 これマジでキレてんじゃん。

 

 

「応えなさい、御空の燭(ロイルミラ)

 

 

────いいえツクヨミ様、空の価値観ならば寧ろ逆です。 私の傲慢が我が身を滅ぼしただけです。

 

 

「では何故、貴方は其れが傲慢と知りながら……等と昔の我ならば問うたのかもしれませんが。

 貴方との逢瀬を重ね、(ロイルミラ)を少しは我も理解したのでしょうね、ふふっ」

 

 

────事ここに至っても我々の密会は、ツクヨミ様にしてみれば逢瀬から変化無しなんですか……?

 

 

「ふむ……? 事ここに至る等、まるで(ロイルミラ)が輝きを失った前提で話すのですね」

 

 

────へ? いや、自分でも流石に腹に穴が空いているのに生きているとは思えないんですが……

 

 

「我の()()に身を委ねなさい、御空の燭(ロイルミラ)よ。 然すれば闇路に迷わず貴方を現世に導きましょう」

 

 

────それが可能ならばとても有難いのですけど……ツクヨミ様の()()って私の知るところではゴm──

 

 

「疾く身を委ねよ、御空の燭(ロイルミラ)。 我の気が変わらぬ内に」

 

 

────アッハイ

 

 

 

 何だか締まらない会話ではあったが、ツクヨミ様を想い身を委ねる。

 

 そうして私の意識は急激に浮上していく────

 

 

 

 

 貴方がその輝きを弱めた時は、我が何度でも導きましょう

 

 

 

「……知らない天井だ」




取り敢えずこれで白詰草関係は一応終わりです。
次回で締めつつ、次に向かってロイルミラにはまだまだ進んでもらう予定です。

まぁ、更新は未定なのでゆるく待ってください。


今年は拙作を見つけてくださり、読んでくださり有難う御座いました。
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