団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!! 作:梏 桎
ロイルミラが療養中の一方その頃、みたいなお話。
それとほんの少しの匂わせです。
今回も少し短いので早めに次を出したいです(出せるとは言っていない)
「邪魔するぜよ」
「ようこそサビルバラ。 いや、
「……好きにしてくれ」
「そう照れなくても良いじゃないか」
「照れちょらん! ええき早う上がらせろ!」
カラクラキルは『はいはい』と流しながら、サビルバラを屋敷へと上げる。
切っ掛けはサビルバラだった。
ある日、彼は真剣な面持ちで『話がある』と夫婦──言わずもがなカラクラキルとクラーバラである──に告げた。
平素であればその辺の茶屋で団子でも齧りながら聞いていただろうが、彼の表情からして世間話などでは無いだろうと思い、こうして屋敷で話をする事と相成ったのだ。
カラクラキルには────否、夫婦には多少の心当たりがあった。
夫婦仲の話、妖刀の話、
「あんちゃん久し振り! ……って程でも無いか、道場でも
「おまんの帰省が多すぎて、わしは2人の仲が冷え切っちょらんか心配ちや」
通された部屋に入って早々に声を掛けてきた妹を適当にあしらいながら、我が家のように腰を下ろすサビルバラ。
然し今更そんな事に突っ込みを入れる人間はこの空間に存在しない。
夫婦も当たり前にそれを受け入れ、何なら茶と菓子まで出す程だ。
そして会話もその流れのまま続いていく。
「そがな事を言うならせめてそれらしい顔をして言いなさいよ。
なんでそがにニヤニヤしちゅうが?」
「おまんらが早々に冷え切った関係やったりしたら、今頃この島は空の底やきな」
「あはは……信頼は有難いけれど、相変わらずだね」
「そう簡単に変わるものかよ。 ……
そう呟いてサビルバラは茶を啜る。
顔は平時のそれであるが、内心はどうか────今となっては義弟にも実妹にも分からない。
クラーバラが嫁入りする筈のあの日、1人の襲撃者によってサビルバラ達は色々と滅茶苦茶になってしまった。
夫婦の式が延期になったのはまだ優しく、弟子は瀕死で師たるサビルバラも大きな怪我を負い、更に彼は人を殺めた。
相手は指名手配犯であり、サビルバラとて半端な覚悟で刀を振るっていた訳では無い。
それでも殺人とはそういった覚悟を平気で曖昧に出来るだけの破壊力と罪悪感を伴わせるものであった。
サビルバラが自らの行いについて迷いに迷っていたであろう事は夫婦に容易く見抜かれるも、下手な励ましや慰めが意味の無い事なのも確か。
故に夫婦は見守る事に徹し、この問題の解決は弟子の目覚めまで待つ事となった。
ロイルミラが目覚めた際の面々の反応はほぼ共通して『安堵』であった。
サビルバラとクラーバラは己を鍛え直す方向に走り、カラクラキルは兎にも角にも彼女の解呪と治療に努めた。
そろそろ彼女も完治するであろうと誰に告げられるでも無く皆が察していて、そしてそれが自分達も新たに動く上での良き区切りだと理解している。
この話し合いとは即ち彼ら3人の次なる目的を曝け出し、それを後押しするなり引き留めるなりする為の場である。
「サビルバラは、もう決まっているんだよね?」
カラクラキルの問いに対し、サビルバラは頷く。
ゆっくりと息を吸って吐いて、未だ包帯が巻かれる右手を見て告げる。
「わしはこの手が治り次第、旅に出ようと思う。
未だ世に蔓延る妖刀・魔剣を探し出いて、害を為す前に圧し折る旅」
「そうか……寂しくなるね。 ロイルミラもあの調子だと旅立ってしまうだろうし」
「そうだろうなあ。
「……あんちゃん、詳しゅう聞いたが?」
サビルバラは首を横に振る。
結局、ロイルミラが何故コルウェルの襲撃を予期したように動けたのかを彼は聞けていなかった────否、聞かなかったと言うべきだろう。
事の真相が何であれ、妹と弟子達は救われた。
彼にとっての真実はこれで良かった。
────あの笑みを湛える
「か、カラクラキルはこの先どうするがよ?」
弟子の可愛らしい筈の笑顔を素直に受け止められなくなった己を隠し、サビルバラは強引に話を振り始めた。
話を振られたカラクラキルはそんなぎこちない彼に気付きつつも、優しさ故か努めて気にせず言葉を紡ぐ。
「俺はこの島での役割がある。 やる事はこれからもそう変わらないさ。
強いて言うならそうだね……もし折る事の出来ない妖刀・魔剣があったならいつでも帰ってきてよ、我が家がキッチリ封印すると約束しよう」
「そいつは心強い! その頃には甥か姪の顔も見れるだろうな!」
「あんちゃん! ちょっと気が早うない!?」
「そがな事は無いぜよ、ルミも『私に構ってないでイチャイチャしてほしい』と愚痴っちょったぐらいだ」
「ふ、ふーん……ルミちゃんとは後でゆっっっくり
「く、クラーバラ? 程々にね? ロイルミラも一応、俺達を思って言ってくれているんだろうから」
カラクラキルの発言に理解を示しつつ、それでも茶化されているようで小っ恥ずかしいクラーバラは軽いお説教とデコピンで済ます事を決意した。
この際、ロイルミラは『誰かに命を狙われている』というあらぬ錯覚を抱いていたのだが全くの余談である。
「それでおまんはどうするがよ、クラーバラ」
「んー……流石にずっとやっとうばっかりな訳にもいかんし、カラちゃんと……その、仲良う、したいし……」
「クラーバラ? どうしたんだい?」
「う、ううん! 何でも無い!! 妻として家事にでも専念しようかなって!!
おほほほほ……」
「はぁ……結局おまんは嫁に行ってもなんちゃあ変わらざったな」
「まぁまぁ。 俺はそういうクラーバラが好きだから」
「カラちゃん……」
不意に放たれた好意に思わずキュンと来るクラーバラ。
サビルバラは妹の女の顔なんて視たくないと言わんばかりに、グイっと茶を飲み干して妹を視界から外した。
そうして外に目をやれば陽の傾きは微妙、気温も微妙、腹の減り具合まで微妙ときた。
どうしたものかと少し首を回した後、サビルバラは立ち上がりつつ口を開ける。
「それじゃ、ロイルミラの顔でも見て帰ろうかね」
「ルミちゃん、さっき何か声を張り上げちょったけど大丈夫かな?」
「
元気になってきたからか、それなりの頻度で声を張っている気がするね」
「……弟子が迷惑を掛けちゅーようで、その、すまん」
「構わないさ。 寧ろ屋敷の良い刺激となってくれている」
サビルバラはカラクラキルの発言に呆れたと言わんばかりに肩を竦める。
そんな姿に誰からともなく笑い合う。
何かが1つ誤っていれば存在し得ない光景なのだろう。
だが、紛う事無き現実であった。
斬られて斃れる白詰草も、妖刀に縋る復讐者も、何も救えぬ兄も此処には無く。
ただ3人のハーヴィンが笑顔で語り、さも当然の『それじゃあ、また』を告げていた。
「97……98……99……100っ!」
「今日の分は終わったのか?」
「うん! 待たせちゃってごめんね」
「いいってことよぅ! オイラは剣を振ってるグラン見るの、結構好きだぜ?」
「ふふっ、何それ」
「グランも木剣を難なく振れるぐらい成長したんだなぁって──」
「親目線なの!? 僕より小さい羽トカゲなのに」
「オイラはトカゲじゃねぇ! ふんだ、今日はリンゴ分けてやらねぇぞ!」
「ごめんごめん! 僕が悪かった!」
わざとらしく『つーん』なんて声に出しつつ、その割に顔から怒りなど微塵も感じさせない相棒を宥めながら、少年は村の外れから自宅への道を歩く。
此処は閉ざされた島、ザンクティンゼル。
島中央に存在する唯一の村であるキハイゼル村には、少年とその相棒の賑やかな声が響いていた。
「それで、今日この後って何かあったっけ?」
「僕は特に予定無いから、
「……グラン、人助けは
「ち、違うよ! 本当に目的は散歩で──」
グランは生来お人好しであった。
家事さえ済ませれば、後は剣を振っているか他人の世話をしているレベルの世話焼きである。
この村の環境が彼をそう成長させたのか、生みの親の気質を継いだのか、それとも
ただ一つ言えるのは、彼の言う
「──んじゃ、散歩ついでに家の手伝いでもしてくんねぇか?」
「アーロン!」
ふと飛び込んできた声の正体は、この村で数少ないグランと同年代の少年であった。
少々のサボり癖と、グランに感化でもされたかのようなお人好し具合を持つ幼馴染とも呼べる存在で────そしてビィとリンゴを奪い合う仲である。
「はぁ……要はサボりたいんだろ? アーロンは相変わらずだなぁ」
「別に良いだろ? 誰だって本当はダラダラしたいんだよ、グランみたいなのが例外なんだ」
「そこに関しちゃ、オイラも否定できねぇや……」
「ビィ!?」
ビィがいつものようにアーロンのサボり癖を咎めていたかと思いきや急に梯子を外されるグラン。
この光景も村人にとっては日常の一部で、グランにとっても掛け替えの無い時間の一つである。
そんな日常の最中、グランは空を見る事が癖であった────本人は自覚していない可能性も大いにあるが。
それは父からの手紙に思いを馳せているだけでも無く、純粋な空への憧れを孕んだ眼差し。
「グランは空を見るの好きだよなぁ。 オイラも空は嫌いじゃねぇけどよぅ」
結局、あの後アーロンは父親に連行されて家に戻り、グランとビィも散歩という感じもせず帰宅していた。
多少の雑事を済ませ、父からの手紙を片手に窓辺に腰掛ける。
相棒の言葉を耳に入れながらも特に返答せず、ビィも返答を求めて発した訳じゃ無いので気にせずグランの横に陣取る。
外とは違い、グランという少年は家にいるとこうして黙ってじっとしている時間の方が多い。
誰にでも優しく、その人柄から多少大人びて見える彼もまた未だ10を少し越えた程度の少年。
両親は朧気な記憶に縋らなければ思い出の一つも存在しない程に遠く、育ての親たる相棒でも埋める事の出来ない心の穴がそこにあった。
だからビィも無理に会話を試みようとしたりせず、只管に
確かな絆と莫大な親愛が此処にはあり、それを確と胸に抱きながら1人と1匹は晴れ渡る蒼空を見る。
────この空の果て、星の島に父がいる。
グランは素より空が好きであり、例え父から手紙が来ずとも島を出て旅をしていただろう。
彼自身がそう思う程に空とは夢であり憧れであった訳だが、舞い込んで来た父からの手紙はその思いを一層強くさせた。
然してグランは空を知る。
家に残されていた本はこの時を待っていたかのように教科書として機能し、村人の手伝いで手渡される
ずっと聞いて育った騎空士という職は漠然とした夢から将来の目標へと変化し、それに伴って鍛錬やサバイバルを──当時は子供のごっこ遊びの範疇であったが──始めたりもした。
約一年前、彼は村の猟師に本格的な稽古を頼んだ事がある。
最初は断られたが毎日のように通って頭を下げ、根負けした猟師が木剣を与えてくれた。
最初は構えも分からず、剣に振り回されて転けたりもした。
傷は絶えず、その度に相棒から小言を貰って軽い喧嘩になった事もあった。
それから僅か一年程度で、最早グランは木剣を卒業し次に進んでも良いと思わせる程に成長したのだが。
ビィも今となっては
取り敢えず
「新しい剣か……」
「猟師のおっちゃんが言ってた
唐突なグランの呟きに即座に応じてビィが問う。
「うん。 最初は『騎空士になるんだ』って我武者羅な感じだったけど、今は普通に剣を振るのも楽しくなってきててさ」
「そう大して経ってねぇのに懐かしいまであるもんなぁ! 木剣に振り回されてすてーんって──」
「あ、あれは初めてだったんだからしょうがないだろ!?」
「へへ、新しい剣が来ても振り回されんなよ?」
茶化してはいるが心配してくれているとグランは感じ、『今度は平気』と返して自らの手を見る。
皮は未だに厚みが足りているとは言えず偶に剥けて痛むが、それさえも振り始めた頃を思えば大した事では無い。
握り締めれば木剣の感触を思い出せる程で────
「ごめん、ビィ。 ちょっともう1セット素振りしてくる!!」
言うや否や木剣を手にして家を飛び出すグラン。
「あっ、おい! グラーン! もう陽が落ちる頃だろ!?
帰ってこいよぅ! グラーーン!!」
ビィも慌ててグランを追う。
見れば確かに空は薄っすら赤みを帯びて、そう遠からず夜が来る。
然して少しずつ、運命の──若しくは仕組まれた必然の──出逢いの時は近付いていく。
完全なるオマケで御座いました。
一体いつになったら彼と遭遇するんだと我ながら呆れていますが、大まかには既に組めているので間の話が膨らみすぎないように気を付けます。
そして、少しばかり皆様のお力を借りたいので活動報告にて意見を募ろうかと思います。
物凄くザックリ言うなら、ロイルミラと絡ませたいキャラ教えてって感じのアレです。
詳細は該当する活動報告を見て頂けると助かります。