団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!! 作:梏 桎
開幕お手紙スタートです。
いつもより文字多めですが楽しんで頂ければ幸いです。
愛しの
そちらの島では季節の移ろいを動植物の些細な違いで感じ取るしか無いぐらい一年中安定した気候だったかと思いますが、今も変わらず穏やかである事を願っています。
お姉ちゃんは前の手紙で報告した通り、色々あって刀を折ってしまったのでバルツ公国に来ています。
シェロカルテさんが推薦してくれた刀鍛冶という事でウキウキしている反面、東方の島にいた私を問答無用でバルツまで呼び出した人なので少し怖いです。
更にこのバルツ公国の主島・フレイメル島は活火山に平気で寄り添って街を形成しているので、それはもう暑いです。
火山灰のせいで髪が傷むのも割とマイナスポイントなので、エリスが将来もし旅行をしたくなってもバルツはオススメしません。
余りの暑さと火山灰にウンザリしたお姉ちゃんは魔法で周囲に冷風をばら撒く人間冷房装置と化していますが、エリスは魔法がどこまで上達しましたか。
スカートめくりはもうしていませんか?
風魔法は調整を頑張ればスカートをめくった上でパンツの紐だけ切り落とせるので、いっそ極めるならそのレベルまで頑張ってね。
因みにお姉ちゃんは旅の途中でお世話になった人(手紙にも書いたリフォリさんです)に余興気分で実行したところ、2時間以上の説教と拳骨を貰ったので気を付けてください。
幻影術も組み合わせればパッと見はバレませんが、魔力残滓をキッチリ散らして証拠隠滅しないとすぐ見抜かれます。
お姉ちゃんが思い付く理想は相手の五感をギリギリ壊さない程度に暈す毒を空気中に散布する方法ですが、お姉ちゃんでも成功していないので研究は自己責任でお願いね。
村の方は変わりありませんか?
エルステ帝国軍は旅の中で目にする機会も多く、お姉ちゃんは運が悪いのか粗野な雑魚軍人しか見た事が無いのも相まって、島が荒らされていないか心配です。
何かあったら呼んでくれればお姉ちゃんが何処にいても駆けつけて帝国だろうと相手するのでエリスは安心してね。
そういえば、旅の途中でエルステとそう遠くないリュミエール聖国に行きました。
前団長(ジルベールという方だったそうです。パパに近い名前でビックリ)が逝去されて、新たな団長を決める選挙の最中でした。
そしてなんと、新団長はハーヴィンの女性に決まりました。
お姉ちゃんは遠くから見ていたのだけれど、ドラフの男性が横に付き従っているのに存在感と気迫が一切劣っていなくて物凄かったよ。
お手合わせを願おうか散々悩んでいたら高名な占い師さんに『今は止めたほうが良い』という助言を貰って諦めたものの……こうして書いている時点で我ながら未練タラタラです。
代わりという訳じゃないけど、リュミエールからバルツまでに受理した依頼が幾つだったかはもう覚えていません。
魔物討伐や賊の退治は兎も角、迷子探しや子守りはやることが多くて大変でした。
子守といえば、エリスはフュンフのお姉ちゃんをしていますか?
莫大な魔力を持て余している子だけど、同時にあなたより年下の女の子です。
もう少し大きくなったらエリスがお洒落とか教えてあげるように。
お姉ちゃん的にフュンフやエリスみたいな赤系統の髪は致命的な合わせ方じゃない限り綺麗に纏まりやすいと思うので、お小遣いと相談しながら色々試してみてね。
因みにお姉ちゃんは前の手紙の時は途中だった仕事服がほぼ完成しました!
これで騎空士として覚えて貰いやすくなるので、有名になった暁にはトレードマークになっていると思います。
最後に、これはお姉ちゃんからの忠告です。
より良い物を得ようとしてお金を掛けるのは悪い事では無いが、度が過ぎてはいけない。
特注の刀と聞いてアレコレ注文した結果、手持ちが足りずシェロカルテさんにお金を借りた姉より
§ §
時は私の出立まで遡る。
リフォリさんと胸の話やらで騒ぎまくったあの日から、大した日数も経過しない内に私の身体は目出度く完治。
魔術医とツクヨミ様の
……改めて思うが、魔法的な整形外科ってもう何でもできそうだ。
今となっては受け入れつつあるから良いけれど、もう少し早く実感していたらそっちの分野も触って、このムッチムチに育ちつつある下半身の肉を削ぎ落としていたかもしれん。
でもハーヴィンからこのムチっとした尻と腿を削ぐのは女ドラフから乳をもいでいるのと同義な気もするし、うむむむ。
閑話休題、すっかり完治した私は勿論バルツに向けて旅支度をする事になる。
その際『そういえばカラクラキル家のお爺さまって2人の子供でなんか実験したがっていた描写*1あったな』と天啓が如く思い出し、ご本人様と対談という名の腹の探り合いを実行した。
具体的な内容はハッキリ言って面白くないので割愛させてもらうが、牽制ぐらいはできたと思っている。
本人を目の前にして『不気味で気持ち悪い(意訳)』と言われた時はウッカリ手が出そうだったが、私も中身はいい年なのだから肉体に引っ張られてはいけないと堪えた。
全く説明せずに好き勝手していたからそういう扱いをされる覚悟はしていたけれど、いざ対面で言われると思った以上にショックだしムカついたね。
とはいえ、これで説明無しの単独行動がどういう評価を得られるのかを理解出来たと思えば勉強料としては安い。
今後は気を付けようと心に留めて、最後にお世話になった人達に挨拶をした。
療養中ずっと私のお世話をしてくれたリフォリさんは、らしくもなく涙を浮かばせたりなんかしていた。
あんまり湿っぽいのは好きじゃないので、スカートをめくってパンツ切り落としたら当たり前だけど一転してマジギレされたよね。
袴風スカートによく似合う群青色でデザインも可愛らしい花系のデザインだったから、説教を適当に聞き流して何処で買ったのか思わず聞いた。
確り教えてくれたけれど、それはそれとしてお説教は延長戦に突入した上に拳骨も落ちた。
まぁ最初の湿っぽさは完全に無くなったので良しとしよう。
サビルバラからは『わしより重傷だったのにイカれた回復速度だ』と呆れられ、クラーバラとカラクラキルは『第二の故郷と思っていつでも帰っておいで』と温かく見送られた。
レオノーラは同伴を申し出て来たので、手合わせで一本取れたらという条件で試合。
私が療養している内に特訓していたらしく、以前より確かに強くなったものの一本も取らせずに私の勝ち越し。
負けたと分かればスパッと諦めて『次にお会いした時はあたいが勝ちやす!』とリベンジ宣言だけ残して走り去っていった。
ミリンは私の出立を物凄く引き止めたいと顔に出しながらも言葉にはせず、こちらも一本だけ木刀で試合をして別れた。
純粋な剣術勝負だと矢張り私はそこまで強くない。 粘って足掻いたものの負けた。
『再会したら次は魔法も使用する試合をしよう』という話になったが、ミリンに果たして搦手をいなす技術が身に付くのかは疑問だ。
ちょっと視覚や聴覚を狂わせるタイプの魔法を使えば容易く狼狽えるレベルで、私に至っては瞳術がある以上それなりに対策をしていないと目を合わせるだけで行動不能に出来るのに、彼女は完全に信用して真っ直ぐ見つめてくる。
『ミリンはもっと人を疑うべきだよ』と何回注意したか、もう私にも分からないぞ。
結局最後まで剣を振って島を発った辺り、我ながら戦闘バカなのかもしれない。
乗合艇の甲板隅で木刀──港の商店に並んでいたのを修学旅行気分で購入した──を抱えながら私は自らの行いを省みた。
……いや、別に直すつもりもないから省みたというよりはただの回想だったな。
私としてはそんな事よりも、純粋な利用者として騎空艇に初めて乗っているこの感動を分かち合いたい。
最初に島を発った際は護衛の名目で乗っていたから、これがまた結構新鮮。
護衛じゃ無くとも自衛はしなければならないので無警戒とはいかないが、それでも魔物や賊に必要以上に目を光らせる必要が無いというのは思ったより心地良い。
特に今回搭乗したこの乗合艇は向かう場所が場所なので一般のそれより大きく、それ故に甲板も広くて他の利用者がそこまで視界に入らないから、気分は完全に観光客だ。
この乗合艇が向かう場所とはズバリ、エルステの帝都アガスティア──正確には専用の乗合艇が出る小島──と、帝国に比肩すると言われながら
この2つの島を大きな目的地と定めている艇なのである。
乗合艇にはサイズから行き先まで様々なものがあるが、リュミエール聖国本領に向かう艇に関しては今が間違い無くラッシュだろう。
理由は至極単純、リュミエール聖騎士団の新たな団長を決める選挙が始まったからだ。
今更説明するような事では無いだろうが、リュミエール聖騎士団とは原作においてシャルロッテ・フェニヤが団長を務める『清く、正しく、高潔に』でお馴染みの、弱者救済を掲げた────字の如く『聖騎士』の集団である。
以前戦闘したコルウェルも元々はこの聖騎士団所属の一般騎士であり、
昔の聖騎士団は高潔さを求めすぎた結果としてコルウェルのような存在を生み出したりもしていたが、今の聖騎士団は逆に懐が広すぎて高潔さとは何かを考えたくなるような団員もいるらしい。
実際、今回の新団長選挙戦における有力候補とされる人間はどちらも歴代の騎士団長と比較するとパッとしない、なんて話も風の噂で聞いた。
私はそもそもこの乗合艇に決めるまでリュミエール聖騎士団の団長がシャルロッテじゃない事すら頭から抜けていたレベルなので、当然一切の情報収集をしていない。
ただ前世知識で覚えている限り、シャルロッテは団長選挙に立候補する気が無かった筈で、更に紆余曲折を経て彼女が団長に就任するも直後にトラブルが起き、なんやかんや解決して新たな団長としての威厳を示す────こんな感じだった筈。
後はアルルメイヤが聖国本領に招かれている事や、シャルロッテの部下に残念美人感が文面からも漂うヒューマンの女性がいたぐらいか。
そう、このエピソードはゲームじゃなくて小説で語られていたんだ。
……思ったよりは覚えているな、偉いぞ私。
当初は帝国領に近付くルートが何だか嫌なのもあって別の空路を予定していたのだが、シャルロッテが団長に就任する瞬間が見られるかもとなれば話は別。
勢いだけでリュミエール聖国行きの乗合艇に突撃して、今はこうしてファータ・グランデの西に向かってゆっくり進んでいる。
(然し暇だなぁ……
エルステとリュミエール、それにメネアが今のファータ・グランデにおける所謂『大国』だ。
そんな認識を
それどころか三国とも
然し、だからといって小競り合いが一切起きないという事も矢張り無く、特に領空の境はバレなきゃセーフと言わんばかりに火花を散らしている事もある。
そしてそういった空路だろうと通らざるを得ない一般の艇は、只管に面倒事が起きないように──或いは面倒事が起きてもすぐ対処できるように──祈りと準備で忙しくなる。
結果として艇全体の空気もひりついた感じになって利用者も気が滅入っていくという、誰も幸せにならない空間の出来上がりだ。
私はそんな空気が余りにも嫌だったので、危険も顧みず甲板でのんびりしていた訳だが……
────いっそ魔物か賊でも襲ってきてくれた方が暇も潰れるのでは?
いや、この思考はバトルジャンキーすぎる。 やっぱ無し。
私がなりたいものを思い出せ。
そう、ギャルハーヴィンだ。
決して私は戦闘狂では無いし、研究バカでも無ければ『同性だからセーフ』という暴論で女性にセクハラをするスケベ女でも無い。
……嘘です、研究バカとスケベ女はちょっと自分でも反省するべきだという自覚はある。
まぁ自覚があるだけ、なのだけれど。
(あ〜あ!
でも速攻で会いに行くことを選ばなかったのも私の意志だ。
何せ余りにも早く出会ってしまったらこの想いはきっと暴走してしまうし、それに────
────情を深めすぎて
§ §
リュミエール聖国の本領、その港は多くの人で賑わっていた。
元々大きな国であるから港が賑わっているのは当然ではあるが、それを加味しても矢張り人が多い。
(あんまりにも人が多いから気分悪くなりそうだなこれ……)
私はどちらかといえば人混みが苦手だ。
元来の性格が原因の一端を担っているものの、何よりも種族的特性が大きい。
ここ暫くはこういった大きな街に来ていないし、リュミエール聖国本領レベルの賑わいなど市場島や交易の盛んな島でも無い限り味わえない。
そして私はそのレベルの島に行った事がこれまで無い。
ただでさえ人に潰されそうなサイズなのに免疫まで無いのだからこればかりは勘弁してほしい。
大丈夫、主人公と合流する頃までには慣れるさ。 じゃないとギュステでデート出来ないし。
(はいはい、ちょいと失礼。 このままじゃ人波に流されて何処行っちゃうか分からん)
私は降り立ったばかりの艇の横に逸れていく。
そうしてスペースを確保したところで足に魔力を集中させる。
漸く一応の形になった飛翔術をこんな事で使うのもどうかとは思うが、人に流されてグロッキーにでもなる方が最悪なので仕方無い。
因みに今はスカートなので魔法でガードしないとパンツ丸見えになる。
メーテラがあんな際どい格好してたのってもしかして対策が面倒だったからなのかな……?
思えばニオもスリットこそエグいけど丈の長いスカートだったし、レイなんかもボディースーツみたいなのしか着て無かった気もする。
いや、いやいや、私の記憶から抜けているだけで探せばミニスカで平然と飛翔術を扱う人間だっていたよ、多分。
パッと思い付く『ミニスカで気にせず空を飛ぶキャラ』が星晶獣しか出てこないけれどきっと気の所為だ。
準備が出来たら跳躍するような感覚で膝を曲げてジャンプ。
本来なら直ぐに着く筈の地面とおさらばし、私は
出来るようになるまでは随分と腹を打ち付けたが、慣れるとこれ程に気持ちの良い寝方など無いとさえ思える姿勢がこれだ。
後この姿勢だとパンツ対策が楽なのも良い。
魔力が無尽蔵に湧くなら別だろうが、私はそんな恐ろしい体質では無いから節約できる魔力は節約したい。
一応の形になった、と称しているだけあり今の私の飛翔術は無駄が多い。
消費魔力が大きすぎて常人より魔力量に自信のある私すら長時間飛ぶとガス欠するし、細かい姿勢制御や急な方向転換は覚束無い。
軽々飛んで自由に寝ている風を装っているが、四苦八苦して漸くうつ伏せで寝そべるのがやっとなのだ。
メーテラレベルまで自由に飛べるようになるには理論構築も甘ければ試行錯誤がまだまだ足りない。
いっそメーテラが習得に際して読んだらしい『六属性魔術大全』でも探すか。
叡智の殿堂なら多分保管しているだろうし、こりゃ次の寄り道はスフィリアかな。
(ま、その前にここでシャルロッテの団長就任を見届けるのが先だけど。
それにバルツにさっさと行かないとね〜。 いつまでも木刀って訳にはいかないし。
んー……あそこが聖騎士団本部のクレーモン教会かな?)
一通り見渡して、取り敢えず大きい建物──宮殿と呼んで差し支えなさそうな建造物──が目的地だろうと思って前進。
変わらず空は飛んでいるが、先程とは違って空を歩く。
これも結構お気に入りな飛び方で、気分は某映画の空中散歩。
あのシーンで流れていた名曲を小さく口ずさみながら、私はリュミエールを眼下に見る。
先ず目に入った大きな建物。 私はそれをクレーモン教会、乃至それを内包した宮殿だと勝手に推測している。
というのもこの国に関しては本当に前世知識が情報アドとして機能しない。
リュミエールは聖王猊下が統治する国家なので、恐らくだが宗教国家なのだと思う。
となれば宮殿のような建物が教会としての側面を持っている可能性だってそこまで低くない筈だ。
私自身はそういった類とは無縁というか、多くの日本人的ふんわり宗教観で今世も生きている。
我が家では一年を通して前世でいう宗教に起因した行事は全て無かった、いや異世界なんだから本来は普通の筈なんだけれども。
でもそれが余りに寂しかったものだから、色々と適当な理由を付けて正月の料理は私も手伝って豪華にしてみたり、バレンタインが近付けば村人に菓子なんか配って回った。
イースターや七夕なんかは私自身もうろ覚えだったり、笹なんか用意出来なかったりで散々だった。
その分ハロウィンとクリスマスは思いっきり意識して自作の仮装やサンタ衣装まで作った事がある。
ツクヨミ様が来てくれる大切な日なので月見の風情や文化も理解して欲しかったが、私が夜更かしする日でもあったから家族は良い顔をしなかったものだ。
話が逸れたが、要はここが宗教国家ならば大きな建物が必然的に聖王猊下の住まう宮殿であり公務の場であり祈りの場だと判断した訳である。
そしてこの推測が正解ならば、聖騎士団本部であるクレーモン教会もあの大きな建物の一部。
そうで無くてもあのレベルの大きさの建物は、そこから少し離れた小高い丘に建っている教会と更にその奥にある城のみ。
……あれ、正解が何処であろうと方向が凡そ一緒なら、小難しく考えずとも良かったのでは?
いや、これで実は街中の教会こそが聖騎士団本部ですよとかなったら目も当てられない。
これはちゃんと自分の考えを整理しておくという、非常に大切な行いだったのだ。
誰に聞かれているでも無いのに長々と言い訳を脳内で並べつつ、ある程度の距離まで近付いた時点で地面に降りて歩く。
魔力的な余裕はそれなりにあっても、有事に備えて温存できる分はしておくべきだろう。
ふと、私の目の前をあからさまに聖騎士だろう男が小高い丘の方に歩いていくのが視界に入る。
成程、私の予想していた建物はクレーモン教会じゃ無かった訳か。
────というか、これだけキチンとした街なのだからもしかしなくても看板があったのでは?
私が余りに今更な事に思い至ったのは、選挙活動に明け暮れる聖騎士が犇めくクレーモン教会付近の広場に到着してからだった。
後の祭りも後の祭り、何故こんな当たり前に思い至らなかったのだろう?
「私、もしかしなくてもアホなんですかね?」
「ついさっき出会った人の知能を問われている私の気持ちを汲み取ってくれない辺り、確かに足りていないのかもね」
「手厳しすぎ〜! どうせ
「……だから宿の窓辺で紅茶を飲んでいたとでも?」
「そうじゃなきゃ、聖騎士が自らの館長を推しながら駆け回っている景色でティータイムを嗜む変人って事になりません?」
「分かった、降参だ。 君に変人と称されるのは耐えられない」
「はぁ〜〜〜〜!!!?!?」
この占い師、顔と声と性格と実力が全て伴っているからって好き勝手に言いやがってよぉ!
まぁ……顔も声も良いから許すが……
私の顔を見てクスッと笑い、ノンビリ紅茶を嗜んでいる眼前の人物────名をアルルメイヤという。
正真正銘、神託の妖童その人である。 知っているキャラにこうして会うのは何度体験しても慣れる気がしない。
彼女はクレーモン教会から程近い宿に泊まっていた。
私が己の愚かさに顔が赤くなりそうなのを堪えて広場を去り、今晩の宿を決めようと港側の歓楽街に向けて歩みを進めた際にふと感じた視線。
見上げた先にいたのが窓辺でティータイムを嗜んでいるアルルメイヤだったのだ。
手招きをされたものだから、私はそのまま飛んでいって窓からダイレクトエントリー。
物凄く簡潔な自己紹介だけ済ませて、気付けば彼女に流されて私も紅茶を飲んでいる。
アルルメイヤがここに来た理由は聖騎士団の部隊であるスプランドゥール騎士館の館長から依頼されたから、らしい。
流石に依頼内容は教えて貰えなかったが、まぁ私は知っている。
ざっくり言えば、高名な占い師であるアルルメイヤのネームバリューを借りて『自分こそ新たな騎士団長に相応しい』とスプランドゥール騎士館の館長──ヒューマンの中年男で名をフランソワというらしい──は聖騎士団に訴えかけたい訳である。
但し、ご存知の通りアルルメイヤは個人を占ったりはしないので、この話はぶっちゃけ最初から破綻しているのだが。
「どうかしたかい? 私の顔に何か付いているかな?」
「……いえ、お綺麗だな〜って」
彼女を眺めながらそんな事を頭に浮かべていたが、流石に見過ぎだったか。
いやでも、本当に見ていて思うがすっげー綺麗。 語彙が飛ぶレベル。
この人、私より干支一周分は年上の筈なんだけど……見えねぇ〜〜!!
どれだけ厳し目に見ても私より5歳上ぐらいでギリギリ、正直2つ上でも通じる。
まぁ、多分ハーヴィン以外にはそもそもこの辺りの感覚は分からないんだろうけど。
私も前世じゃアルルメイヤとシャルロッテを5歳差の関係で見ていた記憶無いし。
……グランくんやジータちゃんと12歳以上の差があるのにグイグイ攻めるお姉さんとしては見ていたけどな!!
「ふふ、有難う。 もう一杯淹れようか」
「え、もしかしてコミュニケーション間違えたら追い出されるシステムなんですか、これ」
「それも面白そうだね、そうするかい?」
「出来ればティータイムはそういうのから解放されたいかな〜って……」
「冗談だとも。 私も実の所、中々退屈でね」
アルルメイヤは占い師として振る舞う時こそ神秘的な雰囲気で言葉を紡ぐが、実態はご覧のようにお喋り好きの可愛らしい女性だ。
そういう神秘性も占い師には求められてしまうものらしい。
気持ちは分かる。 砕けた口調で危機が云々と語られても世迷い言と一蹴するだろうが、その発言が厳かに告げられれば即座に信じずとも頭の片隅には残る。
キャラを作るというと聞こえが悪いけれど、そういったTPOに即した話し方が出来るからこそ占い師は務まるのだろう。
私は暫し彼女とのティータイムを楽しんだ後、今度こそ宿を探しに歓楽街に向けて歩くこととなった。
彼女の泊まっている宿があったのに何をしているんだと思うだろう?
私自身、同感だよ。 でも、でもね────
(聖騎士団の騎士館長が手配した場所だけあって高かったなぁ……)
特注の刀が待っている今、散財は極力避けたい。
これはしょうがないのだ。 いや、余裕があってもあの値段の宿に泊まっていたかは微妙かも。
自分は案外と貧乏性なのかもしれないと考えながら、私は結局フカフカのベッドの誘惑に負けてそこそこの宿に泊まる事にした。
この時の私はまだ、刀の為に手持ちを使い切るどころか借金する金遣いの荒い人間だったなんて微塵も思っていなかったのである。
出発して早々にリュミエールに寄り道です。
マジで情報が少なすぎるリュミエールは本家で掘り下げられる日は来るのでしょうか。
次回はシャルロッテの団長就任、ロイルミラとシャルロッテ(とバウタオーダ)の邂逅がメインになるかと思います。