団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!!   作:梏 桎

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キリの良さを考慮したところ、今回だけじゃ終わりませんでした……
感想でも『1話で片付くか?』って言われていたというのにこの始末。
改めて自身の見通しの甘さを思い知りました。


感謝はあったろう?

 

 

 月を隠した雲が更に移動し、再び月光が島を包むようになった頃。

 ノックが3回。 シャルロッテが来たのだろう、『どうぞ』と適当に返す。

 最初に入ってきたのはシャルロッテ。 後ろにはバウタオーダが控えている。

 取り敢えずこの場はアルルメイヤが主導権を握っているべきなので、私は彼女の後ろに控える事とする。

 

 

「わざわざ待っていただき、感謝するであります」

 

「いえ、友もいたので退屈しませんでしたよ」

 

 

 初手から律儀というか堅苦しいぐらいの礼でスタートするシャルロッテに対し、アルルメイヤは普段と占い師モードの中間ぐらいな優しい声色で返す。

 次いで彼女からの視線。 アルルメイヤの隣に行きつつ挨拶をする。

 

 

「恐れ多くも彼女の友人として紹介されました、旅人のロイルミラです。

 この度はリュミエール聖騎士団の新たな団長殿にお会いできて光栄の極み」

 

「……ルミ」

 

「分かってますよぉ、冗談じゃないっすか」

 

 

 私のおカタい挨拶に胡散臭そうな目を向けてきたシャルロッテ。

 アルルメイヤにも注意されたし、普段通りでいきましょうか。

 

 

「んんっ! 改めてご挨拶をば。 私はロイルミラ、自由に旅をしている一般女子でーす。

 リュミエール(此処)に来た理由は新団長が気になったからなので、貴女に会えたのは本当に嬉しいよ、シャルロッテ団長殿」

 

「そう言っていただけて光栄であります。 今更名乗る必要は無さそうでありますが、リュミエール聖騎士団所属のシャルロッテ・フェニヤであります。

 以後お見知りおきを」

 

 

 必要最低限の自己紹介を済ませ、場の空気が完全な沈黙と化す前にシャルロッテが話を振った。

 

 

「早速本題に移らせてほしいのでありますが、一体どんな用件でありますか?」

 

「出来るだけ早いうちに此処から立ち去ったほうがよろしい」

 

 

 聖騎士の2人組は揃って首を傾げた。 シャルロッテは『はい?』と口に出すレベル。

 私は詳細まで覚えてはいないが何が起きるかは理解しているので特に動じない。

 実際この先起きるのは面倒事だ。 私としてはどうせシャルロッテが解決できるので巻き込んでほしく無かったけれど。

 

 

「どういうことでありますか?」

 

「そのままの意味です。 元の場所に戻るのも良し、他でも構いません。

 兎も角、この本領より離れるのが吉です」

 

「どうしてそのような。 自分は団長です、それも新任の。

 他に行く訳にはいかないのでありますよ」

 

「……身長が伸びる秘術でも見つからない限り?」

 

 

 アルルメイヤの問いに対し、ウンウンと頷くシャルロッテ。

 頷くなよ、他に行く訳にはいかない団長様だろうが。 いや、原作もそんな理由で騎空団加入したもんね、背が伸びる方が大事だったね、ごめんね。

 バウタオーダも特にリアクションが無い辺り、さては館長時代から背を伸ばしたいと言い続けているのか。

 

 

「このままでは良い結果を生まないでしょう」

 

「予言でありますか?」

 

「はい。 占いの結果です」

 

「個人は占ったりはしないのでは?」

 

「聖騎士団全体を占った結果ですので」

 

「……その割には曖昧でありますな」

 

 

 シャルロッテの発言を受けて、アルルメイヤは残念そうに首を振る。

 

 

「詳細は不明なのです。

 貴女への忠告は……そうですね、聖騎士団の為というよりは個人的な興味が大きい。

 何にせよ、危機が迫っているのは確かなのです」

 

 

 シャルロッテはその発言に頭を悩ませている。

 具体性に乏しいが、彼女が巫山戯ているようにも聞こえないからだろう。

 高名な占い師であるという評と今のアルルメイヤの真剣な表情を加味すれば、信じるだけの価値は十分ある。

 それが必ず受け入れられるかは別の話だが。

 

 

「然し、自分は聖国本領を離れたり出来ないであります。 団長就任の翌日に姿を晦ますなぞ物笑いの種でありますよ」

 

「聖騎士団の本部を別に置けば宜しいかと」

 

「わーお、無茶言うねぇアルルさん」

 

 

 やっべ、余りに無茶苦茶な事を言うもんだから口挟んじゃった。

 でもまぁ無理だろう。 由緒ある聖騎士団の本部をそんなホイホイ移せるとは思えない。

 というかリュミエールは聖騎士団が国の歴史そのものといっても過言では無いのだ、その本部を移すなんて聖王府も泡吹いて倒れかねんぞ。

 

 

「ロイルミラ殿の言う通り無茶であります。 伝統を蔑ろには出来ません。

 それに、危機があるからと逃げ出しては聖騎士の名折れ。 来るなら来いの精神でありますよ」

 

 

 シャルロッテの言葉には聖騎士としての誇りだとか矜持だとかを感じる。

 死の間際まで戦い続けろとは言わずとも、危機が来ると聞いて即逃亡する聖騎士は流石に格好がつかないわな。

 まぁこの回答はアルルメイヤの予想の範疇だったみたいだが。

 

 

「シャルロッテさんはそう仰ると思っていました」

 

「ご期待に添えたのかは兎も角、忠告には感謝するであります。

 もっと偉い方を相手に託宣を授けているとばかり思っていたので」

 

「聖騎士団の団長は十二分に偉い立場だと思いますが」

 

 

 アルルメイヤの発言にブンブン頷く私。 この空間で一番場違いなの、私なんだよね。

 然しこのままだと話が終わりそうだが良いのだろうか?

 私に依頼とか言ってくれちゃった訳だけど、この後で話すのかな?

 

 

「ロイルミラ、依頼の話なんだけれどね」

 

「うおっ、急に振りますね。 なんでしょうか」

 

「どうかシャルロッテさん達も聞いておいていただきたい」

 

 

 おいおいおい、証人増やす気じゃん。 逃さない意思を感じますわよ?

 何を頼んでくるか知らんけど、放っておいてもそこの団長さんが全部片付けてくれるってー。

 

 

「君に護衛を頼みたいんだ。 期間は……この危機が去るまで」

 

「これまた具体性に乏しいなぁ。 もう少し詳細にお願いします」

 

「護衛対象は私とリュミエール聖騎士団、それにサン=ベルナール砦だ」

 

 

 は? 何言ってるんだこの人。 私1人に頼む規模じゃないだろう、それ。

 ほら見なよ。 シャルロッテもバウタオーダもぽかーんってしてますやんか。

 

 

「あぁ、無論一切傷をつけるなという話じゃ無い。

 壊滅さえさせなければこの依頼は達成と見做し、報酬を渡そう。

 前金も君の裁量に委ねる。 幾ら欲しい?」

 

「えぇ……? 正直に言えば受けたく無いんですけど……」

 

「この話を聞いた時点で君に拒否権はあまり無いよ?」

 

 

 そんな気はしてましたよ、ええ。

 だってこれ、横流ししたら──出来るかは別として──聖騎士団の転覆狙えちゃうもん。

 その上、そんな聖騎士団の人間が2人も聞いているんだから逃げ場が無い。

 マジで最初から受ける以外の択を奪われている。 最悪。

 

 

「……意地悪も度が過ぎれば嫌われるんですよ?」

 

「だが君は受けてくれるだろう?」

 

()えたんですか?」

 

「信じているのさ」

 

 

 逃げ場もあった状態でそれ言われてたらキュンときたんだろうけれど、この状況下で『信じている』は薄っぺらいよアルルメイヤさん。

 

 

「はぁ〜〜〜……選択肢が1択の依頼とか初めてですよ。 受けます、受けましょうとも。

 それで? 危機が去るまでってパっと分かったりするんです?

 じゃないと永久に終わらない依頼になっちゃうんですけど」

 

「そこは心配しなくても平気だよ。

 詳細が分からずとも、こういった危機は終わりが容易に判断出来るものだからね」

 

 

 成程、取り敢えずアルルメイヤとリュミエールを終身まで護衛する必要は無さそうで安心した。

 元々はどうだったかなぁ。 何週間も続いてはいなかったと思うが、さて。

 

 

「そういえば護衛対象に砦が入っているけど、アルルさんの言う『危機』ってそんな大規模なの?」

 

「念には念を、のつもりではある。 再三言うけれど詳細は不明でね」

 

「アルルさんに、聖騎士団の護衛も?」

 

「あぁ。 といっても此方は自衛も出来る。 君に頼むのは矢張り砦になるだろう」

 

「ちょ、ちょっと待つであります!」

 

 

 私とアルルメイヤの会話が進む中、シャルロッテが割り込んでくる。

 それもそうだ、先程の危機とリュミエールに関する話なのにアルルメイヤの独断で進み続けている。

 言いたい事もそりゃあるだろう。

 

 

「その依頼の必要性が分からないであります! 特に護衛対象!

 アルルメイヤ殿は兎も角、リュミエール聖騎士団は守られる側では無く、守る側であります!

 それに砦は何かあるにしても此方で対処すべきで、言ってはなんですがぽっと出の旅人に任せるものでは無いのでありますよ!!」

 

「分かる〜!」

 

「こらルミ、同意しないでくれ。 話が拗れるだろう」

 

 

 いやだって私要らないんですって。 全部シャルロッテがぶっ飛ばして解決するんですって。

 

 

「彼女の腕に関しては私の御墨付きという事でご容赦願いたい。

 それに砦は現在、傭兵に任せているのでしょう?」

 

「……」

 

 

 シャルロッテが選んだのは沈黙。 だがこの場面で、しかも予言が出来る占い師に対しての沈黙は肯定と同義だ。

 ……何故か私の腕を勝手に信頼してくれているけれど、アルルさんにそんな信用されるようなもの見せたっけ?

 空飛んで、マスクで光弾防いで、そんな不思議マスクの理論についてウダウダ議論しただけだぞ。

 もしかして飛翔術だけで判断したのか? 木刀握っている子供な部分を無視していないか?

 

 

「彼女1人で雑兵なら百でも千でも相手できるでしょう。

 貴方がたにとっても、これ以上払わなければいけない金額が減って有意義かと思いますが」

 

 

 嘘っ、私の実力ちょっと盛られすぎ……? 手段を選ばなくて良いならって言葉が前に欲しい。

 

 

「……申し訳無いのでありますが、矢張り信用できません」

 

「ですよねー! 私もちょっと過大評価されてるっていうか──」

 

「ですので明日の朝、手合わせを所望するのであります」

 

 

 あー……そういう感じかぁ……

 理解は出来る。 シャルロッテとしても実力が本物なら悪い話では無かったんだろうし。

 

 

「では団長。 その手合わせ、私に任せていただいても宜しいでしょうか」

 

「バウタオーダ殿……?」

 

 

 ここで声を上げたのがずっと後ろで待ち続けていたバウタオーダ。

 

 

「砦を防衛するという事は、即ち帝国の侵攻に備えるという事。

 それならば同体格のシャルロッテ団長では無く、私が出た方が危機の想定としては相応しいかと」

 

「む……」

 

「それに団長は明日も早くから業務があります。

 私含め、多くの聖騎士は部隊再編等の都合で暫くは動こうにも動けません。

 そういった観点からも私にお任せいただければと思うのですが、如何でしょうか」

 

「……では、バウタオーダ殿に任せるであります。

 彼女が勝利したのなら、安全かつ速やかに砦に案内するように」

 

「これ、もし負けたらどうなるんです?」

 

 

 私は思わず聞いてしまった。

 正直、負けるのかと聞かれたら首を横に振るけれど。

 私の扱う魔法は初見殺しまみれだから、一発勝負なら余程の達人じゃ無い限りは勝てる。

 

 

「その時はアルルメイヤ殿の護衛に専念してくだされば」

 

「アッハイ」

 

 

 こうして私は関わる必要が無い筈の物語(シナリオ)に強制的に関与する事となる。

 

 

 

  §  §

 

 

 

「此処がサン=ベルナール砦だ」

 

「有難う御座います。 オーギュスティーヌさんはこの後どうするんです?」

 

「シャルロッテ団長直々の命により、貴女の補佐を務めよと」

 

「……お世話になります」

 

「こちらこそ、よしなに頼む」

 

 

 リュミエール聖国の本領から騎空艇で少し。

 そう離れていない此処がリュミエールの端の一つ、サン=ベルナール砦。

 大国と称される聖国本領周囲の島であり、エルステに最も近い島と言われる。

 正確に記すならば『リュミエール聖国領の要所の中で最もエルステに近い島』だ。

 島の中央からやや西にサン=ベルナール砦が存在し、そこから東に伸びる街道──と呼ばれてはいるものの岩が点在する荒れた道──の先に広がる荒野は最早エルステとの境。

 勿論、島自体は全てリュミエール聖国の領地だが、この荒野はそのまま島の東端まで続くのもあって実質的に港だ。

 故にサン=ベルナール砦が陥落でもすれば、エルステは万全な態勢で聖国本領まで攻める事が出来るようになってしまう。

 それ程までの要所だからこそ、シャルロッテが任されていたのだろう。

 

 

 話の翌朝、言われた通り私はバウタオーダとの手合わせとなった。

 結果はご覧の通りだし、手合わせの中身もなんというかアッサリしていた。

 剣も魔法も有りだったのが矢張り大きい。 そりゃ実戦を見据えるなら当たり前なんだけれど。

 月中蟾蜍(げっちゅうのせんじょ)で容赦無く奇襲し、背の高い彼にだからこそ刺さる顎を狙った突き────雲壌月鼈(うんじょうげつべつ)で攻めまくった。

 守りを固められたら雷迅(ヴァジュラ)で麻痺させ、攻められたら土遁(クシティ)で地面を泥に変性させて遅延(スロウ)したり空蝉(ラマナ)避け続けたり(完全回避(1回))

 多分バウタオーダは私と一生戦いたく無くなったと思う。 悪い事をした。

 その後、結果を報告しにバウタオーダがクレーモン教会に行き、こっちはアルルメイヤから正式に依頼を受ける事となった。

 前金も普通に頂きました。

 

 正直に言えば、私は原作で知っているキャラに関しては相当甘いと思っている。

 富豪でも無いのに前の島じゃそれなりにレオノーラやミリンとデートしたし、その費用の殆どを私が勝手に払っていた。

 今回の依頼も巻き込まれていなければ気にせずさっさとバルツに行っていたが、巻き込まれた以上はタダ働きでも良い気さえしている。

 だがここでシェロちゃんの発言を思い出す。

 曰く『一度安く請けたら上げられなくなっていく』と。

 前世でもあった話だったと思う。 所謂『友達なんだからさぁ』ってやつだ、私には無縁だったろうけどな!

 一期一会の依頼でも────否、一期一会の依頼だからこそ安請け合いはしちゃいけないんだろう。

 アルルメイヤが『あの女は安く済むぜ、げっへっへ』みたいな事を言うとは到底思えないが、こういう話はどこから漏れるか分からない。

 だから心苦しいが金は貰う。

 しかも今回は期間やら何やら曖昧だから相場より高めを意識した。

 

 

────まぁ、私はこの手の依頼の相場なんざ知らないので想像だけどね。

 

 

 とはいえ彼女も覚悟の上か、私の提示金額を特にリアクションもせずに渡してきた。

 サッと受け取って、それじゃどうやってサン=ベルナール砦へ行こうかという時にバウタオーダがヒューマンの女性を伴って帰ってくる。

 彼女の名はオーギュスティーヌ。

 バウタオーダと競い合える程の聖騎士で、シャルロッテを敬愛するエクレール騎士館所属らしい。

 バウタオーダはこの後、新団長として書類仕事等に追われるだろうシャルロッテの補佐に入るので、代わりとして彼女が砦まで案内してくれるという事になった。

 

 

「傭兵の方々はそろそろ契約期間が終了するんですよね?

 私だけが残る姿って仕事の横取り感が出そうでちょっと怖いんですけど」

 

「心配は無用だ。 その瞬間だけではあるが、ロイルミラ殿には『聖騎士団の()』を名乗っていただこうかという話でな」

 

 

 ()ねぇ……禍根を残さない為とはいえ、随分な役職を名乗らされる羽目になっちゃったな。

 というかこれはセワスチアンに話が通っているんだよな?

 流石に勝手に名乗った扱いにされたらキレるぞ。

 

 

「その()とやらを名乗るのは構いませんが、許可とか平気なんです?」

 

「あぁ、それに関してはシャルロッテ団長経由で当部隊長から言伝を授かっている」

 

「え」

 

 

 私が不意打ちに困惑しているのも構わず『複雑な手順を踏んだようで誰なのかは我々も把握しかねているが』などと、雑談を挟んでくるオーギュスティーヌ。

 そりゃ分からないでしょうねぇ!

 殆どの団員にさえコックとか老紳士程度にしか思われていない人間が、まさか遊撃隊の隊長だなんて思いませんもんねぇ!?

 

 

「『ありがとうございます』とだけだそうで……今回の依頼に関しても既に把握していらしたのだろうか?」

 

「ハハハ、ソウナンジャナイデスカネー」

 

「……ロイルミラ殿?」

 

 

 私には分かる。 この『ありがとうございます』は絶対に今回の話じゃ無い。

 要約するならこうだ。

 

『コルウェルを始末してくれてありがとう。 お陰で手間も省けた。

 それはそれとして遊撃隊の事も知ってるみたいだから今度お茶しようね♡』

 

 

────セワスチアン、やっぱ怖いわ。

 

 

 言葉に出来ない恐怖というのはこういうのを指すのだろう。

 たった一言に感謝と牽制を詰め込んできている。

 

 確かにリュミエールにとって、コルウェルの存在は汚点だっただろう。

 だが前団長の逝去、そして新団長への業務引き継ぎ、それに伴う部隊編成やらの見直しと暫くリュミエールは忙しい。

 新体制直後は内外共に揺れやすく、お尋ね者の優先度は下げざるを得なくなるだろう。

 かといって放置し続ければ無辜の民が犠牲となる────遊撃隊という影の存在だからこそ、歯痒い事この上ないと思う。

 それに早々に指名手配を出し、且つ監視網も広げていたとはいえ、コルウェルの足取りを常に追い続けるのは不可能だ。

 そんな中でのコルウェル逮捕──実際は殺したのだが──は、新体制に移行するリュミエール聖騎士団にとって僅かばかりだろうが心の余裕を生む。

 指名手配犯がたった1人減っただけ。 だがその1人がリュミエールには大きい。

 だから多分、セワスチアンは本気で感謝してくれている。

 してくれているのだが、同時に警戒された訳だ。

 

 

(私がリュミエールに仇なす存在になりかねないか……というよりは、単純な戦闘力とかかも。

 でも、コルウェルとの戦いはサビルバラとの2対1だったからこそ勝てた訳で……)

 

 

 そう、これは過大評価だ。 しかも謙遜すればする程、状況が悪くなるタイプ。

 セワスチアンがどういう情報収集をしたのかは知らないけれど、恐らく私が普通じゃ無い事には気付いていると思う。

 或いは私がここまで考える事を見越した鎌掛……いや、この線を疑い始めるときりが無いな。

 とはいえ、別に私のこの先の行動は変わらないし、リュミエールに対する態度だって変わらない。

 ただ、ほんの少し、エルーンの老紳士が怖くなっただけだ。

 美味い料理に絆されてベラベラ喋らないように気を付けなければ。

 

 

 オーギュスティーヌから砦とその周辺の案内を受けながら、私は今後の身の振り方を改めて脳内会議するのであった。


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