団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!!   作:梏 桎

31 / 37


ハッピーバレンタイン!
少し短いですが、楽しんでいただければ幸いです。


陰謀はあったろう?

 

 

 砦に来て平和だった期間は、傭兵の皆さんを契約が終了して解放するまでだった。

 要は1、2日程度である。 『危機』さん来るの早すぎ。

 

 最初に見知らぬ聖騎士が我が物顔で砦に来た。

 曰く『この島はエルステ帝国ザーリアー侯爵家に割譲されるので速やかに退去せよ』とのこと。

 更に『抵抗するならば拘束する、命の保証はしかねる』とまで言ってきたからさぁ大変。

 無論、大変だったのは激怒したエクレール騎士館の皆さんを宥める事の方だ。

 好き放題言っている方の聖騎士は、パッと見でどうとでも料理できそうだったからね。

 

 

「えぇい、ロイルミラ殿! 何を躊躇う必要がある!!

 彼奴はよりにもよってエルステに、聖国の要所たるこの島を割譲するなどと宣っているのだぞ!?」

 

 

 激昂するオーギュスティーヌに便乗し、今にも剣を抜きそうなエクレール騎士館の方々。

 私だってこの使者みたいな役割の人をぶっ飛ばして終わりなら止めないんだけれども。

 でも、この人を倒しちゃうと確実に拗れると私の第六感が告げている。

 

 

「落ち着いてくださいよ皆さん! 今あの人を倒して終わりだと思いますか!?」

 

「だが!」

 

「だがじゃなーい!!

 良いですか? こんな使者紛いな方法で此方に退去を要請するという事は、あちらにとっても今は事を荒立てたく無いんだと思うんですよ」

 

 

 私が強制的に反論しそうなオーギュスティーヌを遮り、説得フェイズに移行する。

 流石はシャルロッテの部下というべきか、理論を説けば一旦は落ち着いてくれた。

 ここで決めきれないと結局ぶっ飛ばす方向に話が纏まりそうなので、私は矢継ぎ早に言葉を続ける。

 

 

「なので、ここは業腹かと思いますが一旦従って退きましょう。

 そして身を隠しながら奴らの目的を探り、隙を見て砦の奪還。

 これならば奴らが速攻で砦の解体に移らない限りは、此方に多くの情報が舞い込んだ上で島の奪還に動けます」

 

「……もし、砦を即解体するとなったら?」

 

「その時は護衛依頼を引き受けた私が責任を取って守ります。 皆さんはその間にシャルロッテ団長殿へ連絡すれば万事解決!」

 

 

 私の発言に『いや』『だが』『然し』で食い下がろうとする面々をスパッと無視して、私は使者(?)に言葉を返す。

 

 

「了解でーす!! すぐ撤収しまーす!!」

 

 

 ……うん、我ながら緩すぎたかな。

 

 

 然して私達はサン=ベルナール砦を追い出され、僅かな食料と装備品を携えて島の西に広がる森林地帯に身を隠していた。

 一応、退去までは数日の猶予を設けてくれるという妙に優しい計らいのお陰で早々に情報は集まったのだが……

 

 

「なんだこの巫山戯た陰謀は!! シャルロッテ団長がそんな事をする筈が無かろうが!!!」

 

「はいはいはい、どうどうどう」

 

 

 オーギュスティーヌは割とずっとこんな調子で、同じくシャルロッテを慕っているだろう聖騎士さえ苦笑いするレベル。

 まぁ、本当に巫山戯た話なので彼女がイライラするのも分かるがね。

 

 シャルロッテは本領で現在、団長選挙にて不正を働き、サン=ベルナール砦の金を私欲に使い権勢を欲しい儘にした……という事になって投獄されている。

 言うまでも無く茶番である。 というかこれ、犯人側がやっていた事を押し付けているだけだろう。

 判決は今日の査問会で出るそうだが、まぁ全部茶番なのでシャルロッテが悪い事にされるのが見え透いている。

 そしてこの島はそんな横暴を働いて傭兵を雇い、エルステへの戦争を吹っ掛けようとしていた(大嘘)リュミエール側がエルステへの誠意と友好を示す為に、ザーリアー侯爵家とやらに割譲するという筋書きなようだ。

 

 

「いやー……改めて思いますけど普通に杜撰じゃありません? これが通っちゃう今のリュミエール、ヤバくないですか?」

 

「いや、その……申し訳ない」

 

 

 整理がてら雑談感覚で振った話は地雷だったようだ。 こちらこそごめん。

 早々に話題を転換しよう、そうしよう。

 

 

「砦は多少のチェックをしてからずっと放置、それ以外も特に手は加えていないみたいですね。

 ほぼそのまま譲るつもりなんでしょうか?」

 

「そのつもりらしいな。 ロイルミラ殿、いつ仕掛ける?」

 

 

 砦は非常に奪還しやすい状況下。 実際、今攻めても苦も無く取り返せるだろうが……

 

 

「……オーギュスティーヌさんの見解を聞かせていただいても?」

 

「どれだけ早く仕掛けるにしても、もう少し夜が更けてから。 でなければ明日だな」

 

「理由は?」

 

 

 聞く必要自体は余り無い。 認識の摺合せみたいなものだ。

 オーギュスティーヌも分かっているのか、嫌な顔もせずに答えてくれる。

 

 

「ふっ……聞かずとも分かっているだろうに。

 ロイルミラ殿の魔法により、シャルロッテ団長が囚われの身なれど教会に一時動いた事が判明している。

 つまり査問会が開かれた事は、想像に難くない。

 判決は凡そ決まりきってはいるが、シャルロッテ団長が無罪放免となる可能性が万に一つはあるやもしれん。

 故に判決を待ち、報告を聞いてから動くべきだ。 そうだろう?」

 

 

 彼女の回答に大きく頷き、おまけにもう1つ確認を取る。

 

 

「報告をしてくれる方は1人いれば足りますよね?

 騎士館の方々を、貴女を除いて全員本領へ送った理由は?」

 

「ロイルミラ殿は見た所、団体戦では十二分に力を発揮出来ないと思ってな。

 私は貴女の補佐を命じられている以上控えさせて貰うが他は違う。 故に送った。

 それに、隊の指揮に関してはシャルロッテ団長の次にバウタオーダが優れている。

 私が持て余すよりも有意義だと考えたまでよ」

 

 

 ふむ、私と特に相違無い認識のようで助かる。 後、ご配慮感謝します。

 そうと決まれば残るはシャルロッテの判決次第か。

 

 

 私達は夜が更けていくのを木々に囲まれながら待つ。

 ……矢張り私が必要とはとても思えないんだが。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 空の暗さが薄れ始めた頃。

 私は木の上に登って千里眼(ヴィルーパークシャ)を行使していた。

 

 

「艇が飛んできましたね。 サイズからして、私達への連絡な気もします」

 

「了解した。 ならば行くか」

 

 

 オーギュスティーヌの言葉に頷きを返し、私達は森林地帯を抜け出す。

 来たのが誰でも、目的が何でも、此処に留まる必要性はもう無い。

 

 飛来した小型艇は、砦からそう離れていない平地に着陸する。

 中から出てきた人を見て、オーギュスティーヌは驚愕を顔に浮かべた。

 私は驚きと納得が半々ってところだ。

 

 

「シャルロッテ団長!?」

 

「オーギュスティーヌ。 それにロイルミラ殿も」

 

「おはようございまーす。 アルルさんもおはよう!」

 

「おはよう、ルミ」

 

 

 うーん、ハーヴィン3人とヒューマン1人、バランスが物凄い事になっている。

 オーギュスティーヌ、お前もハーヴィンにならないか?

 

 

「だ、団長。 昨日の査問会、まさか無罪で……?」

 

「そんな筈が無いのであります。 無罪であったなら、此処に来るべきはエクレール騎士館の皆であるべき。

 自分は一介の聖騎士として、やるべき事をする為に来ただけでありますよ」

 

 

 そう言って、覚悟の決まった目で荒野の方面に視線を向けるシャルロッテ。

 そんな彼女にチラと視線を送った後、アルルメイヤが私に告げる。

 

 

「ルミ。 そういう事だから、君の護衛を砦から私に変更してもらえないかな?」

 

「アルルメイヤ殿!? まさか自分に着いてくるつもりでありますか!?」

 

「依頼主様の仰せのままに〜」

 

「ロイルミラ殿まで! 馬鹿な真似は止めるのであります!!」

 

 

 1人で全部背負って戦うつもりだったシャルロッテが何だか色々言っている。

 だが私もアルルメイヤも別に聖騎士団所属では無いし、仮に所属していても一般聖騎士扱いの今のシャルロッテに指図される謂れは無い。

 そして、こうして好き勝手言っていれば当然────

 

 

「団長、私も行きます」

 

「オーギュスティーヌ!!」

 

「先に言わさせていただきますが、絶対に退きません!!!」

 

「駄目であります!」

 

 

 私達を放ってわちゃわちゃと喧嘩を始める2人。 それを尻目にアルルメイヤへ問い掛ける。

 

 

「どうでした、囚われの身というのは」

 

「君も意地が悪いね。 知っていたのかい?」

 

()えたんですよ」

 

「面白い冗談だ」

 

「……いけると思います?」

 

「君がいるなら」

 

()()()()()?」

 

「そう、()()()()()

 

 

 そこで私達の会話は途切れる。

 私は一体何時の間に彼女からここまでの信頼を寄せられるような事をしたのだろうか?

 思い当たる節が多少はあれば無理筋なりに納得するのだが、ここまで分からないとちょっと怖いまであるんだよな。

 アルルメイヤは割と普通に隠し事もするタイプだろうし、何より私が腹芸出来ないのはカラクラキルとの遣り取りで身に沁みている。

 なので取り敢えず信頼に報いる以外の選択肢がほぼ無い。

 救いなのは原作キャラだから多少は為人が判明している事だろう、これが何も知らん奴だったら胃がキュってしてたと思う。

 

 私が勝手にアルルメイヤにビクビクしていたらシャルロッテの方も決着のようだ。

 ……オーギュスティーヌさん、気絶してませんか?

 

 

「アルルメイヤ殿、ロイルミラ殿」

 

「……はい」

 

「オーギュスティーヌが()()()()()()ので、出来る限り遠くで介抱を頼みたいのであります」

 

 

 まさかの強硬策に顔を見合わせる私とアルルメイヤ。

 頑固なオーギュスティーヌを黙らせつつ、序でに私達も戦場から遠ざけられる。

 1人で背負うのであれば、正しい選択かもしれないが……思ったより脳筋。

 逆らう事そのものは容易いが、今のシャルロッテは下手に逆らうと同じ目に遭いそう。

 

 私とアルルメイヤは取り敢えずはシャルロッテに従い、2人がかりでオーギュスティーヌを持ち上げて移動をする事にした。

 ……矢張りヒューマンは大きすぎる。 オーギュスティーヌ、今すぐハーヴィンになってくれ。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 太陽が真上に差し掛かるまで一刻も必要としないであろう時間帯。

 隘路の果てに砦が見える荒野の終わりにて、シャルロッテ・フェニヤは静かに待ち続けていた。

 

 彼女は少し前までこのサン=ベルナール砦を任されるエクレール騎士館の館長であり、更に最近はリュミエール聖騎士団の新たな団長に就任した筈であった。

 然し彼女は何も益の無い陰謀に巻き込まれ、査問会の末に団長職を解任、おまけに聖騎士団追放の処分という余りに巫山戯た末路を辿っている最中である。

 

 

「自分の事ながら、中々な不運でいっそ笑えてくるでありますね」

 

 

 ここ暫くを思い出し、つい言葉が溢れた。

 そんな益体も無い呟きは、清々しくも憎いまでの蒼空に溶けて消える筈で────

 

 

「でも貴女の物語は此処じゃ終わらない」

 

「ッ!」

 

 

 不意に掛けられた声に、思わず剣を構えて振り返る。

 聖国より与えられた輝剣は囚われた時点で取り上げられたので、砦から持ってきた──リュミエールでは一般的な──蒼剣が陽光を受けて煌めく。

 

 

「ロイルミラ殿? どうしてここに……というよりも、それは!」

 

 

 振り返った先にいたのは()()()()()()部下を任せた旅人、そして彼女の手には取り上げられた筈の輝剣があった。

 疑問に思ってあれこれ聞いても、返ってくるのは『アルルさんに頼まれて』ばかり。

 何としても依頼を遂行したいのかと思い、依頼金が必要ならバウタオーダに掛け合ってくれればどうにかしてくれるだろうし早々に撤退して欲しい、と訴えれば寧ろ笑われる始末。

 もうこのままだと梃子でも動かないんじゃないかと思える程に頑固なものだから、シャルロッテはその内諦めた。

 オーギュスティーヌと違って、寝かせるにも面倒臭そうだと直感で判断したのだ。

 

 

 

 

 然して暫し彼女と恐らく最期となる雑談を交わしていれば、荒野に人影が現れる。

 半刻もせずに荒野は大勢の人間によって埋められた。

 先頭には男と女が1人ずつ────シャルロッテを貶めたフランソワとマルティーヌだ。

 シャルロッテの剣閃が届かぬ間合いから声が掛かる。 先ずはフランソワからだった。

 

 

「これはこれはシャルロッテ殿! 頼んでもいないのに態々1人で出迎えとは御苦労な事だ」

 

「1人でも無ければ、出迎えたつもりも無いであります」

 

 

 言葉を受けてチラとシャルロッテの横を見るフランソワ。

 ロイルミラは場違いなまでに愛想良くニコニコとしていて、フランソワは思わず悪態を吐いた。

 

 

「気味の悪い……どこの馬の骨とも知れぬ同族(ハーヴィン)を連れて、味方を得たつもりかな?」

 

「衆を頼むフランソワ殿よりはマシであります」

 

 

 彼女の発言に『ふん』と鼻で返し、フランソワが黙る。

 間髪入れずにマルティーヌが口を開けた。

 

 

「そこをどけシャルロッテ! どかなければまとめて斬る!」

 

「どいても斬るでしょう。

 自分に罪を擦り付けて尚、足りないのでありますか。 このような行い……それでも聖騎士でありますか?」

 

「はっ! 正真正銘の聖騎士だとも! 聖騎士たるもの己の剣技で生き抜いてこそだ。

 奉仕などに感けていては剣が鈍るだろう?」

 

「……この砦を奪うつもりでありますか」

 

「それさえあれば帝国によって我が地位は保証され、聖騎士団に名が残る。

 帝国と聖国は友好的であり続け、我らは更に裕福となるだろう。 一体これの何が不満だ?」

 

 

 彼女の発言に、シャルロッテは毅然とした態度で返す。

 

 

「それでは誇りが傷つくのであります。

 高潔さを忘れ、私利私欲に走る聖騎士は最早聖騎士に非ず。 恥を知るべきであります」

 

 

 マルティーヌは剣を抜いて返す。 彼女に遅れて後ろの騎士達も剣に手を置いた。

 合わせるようにロイルミラも──輝剣を渡した際に受け取った──蒼剣を握る手に力を込める。

 

 

「恥など端から持ち合わせていない!

 ……そこをどくか死ぬかだ。 今すぐ武器を捨てて降伏すれば、また聖騎士としてやり直す事も許可しよう」

 

「自分はもとより聖騎士であります! そして聖騎士である以上、理不尽な要求には屈しないであります!!」

 

 

 言い放ち、輝剣を構えるシャルロッテ。

 蒼き刀身は彼女の想いを反映するように強く輝き、莫大な威圧感で敵勢を怯ませた。

 

 

「通りたければ自分を斃してから通るであります!!」

 

「ならばそうしてやる!!」

 

 

 斯くして戦は始まる。

 敵はフランソワ率いるスプランドゥール騎士館改め、スプランドゥール騎士隊にマルティーヌ率いるサンティユモン騎士隊。

 加えてエルステ帝国ザーリアー侯爵軍を含めた数百人の混成部隊。

 対するはシャルロッテ・フェニヤとロイルミラの2人のみ。

 

 

 

 蒼き空と同じ色の刀身が、戦場を照らした。





次回でちゃんと終わる……筈です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。