団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!!   作:梏 桎

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この作品をしっかり終わらせてから次を書きたい自分 vs 書きたいものは早く書くべきな自分で決戦をしていました。

最後の方に別視点が入りますが、話数次第では投げっぱなしになるかもしれません。


月虹はあったろう?

 

 

 本来の作刀期間を私は知らない。 知らないが、恐らく異例の長さではあったと思う。

 具体的には、私の手元に来るまで3ヶ月を必要とした。 ……やっぱ長いよね?

 お陰で暦の上ではもうすぐ春になるが、バルツの暑さの前に四季なんてほぼ存在せず、降ってくるのは雪じゃなくて灰ばかり。

 意見を求められる場所以外は全て立入禁止だったのもあって、他島の話でも聞いていなければ今頃は季節感も思い出せなくなっていたかもしれない。

 

 

 私だけの刀を作るにあたって大変だったのは使う鋼に関して。

 パパから貰った前の刀は、特に文句も言われずに一部を再利用する事となった────否、正確には再利用せざるを得なかった。

 何でも『なんちゅうもんをへし折ってるんじゃアホ』とユールネールさんが言う程度には素晴らしい一振りだったようで、一発殴られた後に使える部分は極力使おうという事になったのだ。

 『折ったのは私じゃなくてサビルバラだから叩くならそっちだろうに』とも思ったのだが、そもそも所有者が確り管理しろという話であり、更に言えば元凶は罅を入れるような力の掛け方をした私なのだから、ぐっと堪えた。

 ……ごめん、実際は堪えきれずに街の外まで行って魔物をしばいて発散した。

 

 新たに使う鋼に関しては、最初に私の魔力がどれぐらい馴染むかを見てからという話になって、素人には違いが全く分からないそれらに触れて魔力を流す作業をする事に。

 これが作刀期間が伸びた理由のほぼ全てと言っても過言ではない。

 何が問題だったのかというと、私の魔力が()()()()()()()()()のが問題だった。

 当初の予定では取り敢えず私の魔力が馴染む鋼だけを残して、そこから各属性の浸透率を調べて配分を調整するつもりだったらしい。

 だというのに、私の魔力は良くも悪くもどんな鋼とも仲良くできてしまったからほぼ全てが篩にかからず、そのせいで来る日も来る日も鋼に向かって『君は火を良く通すけど水がダメダメだねぇ』なんてする羽目になったのだ。

 

 

 それから暫くは彼の専門分野に突入して、私は必然的に時間が余る事に。

 その間にシェロカルテの下へ赴き、今回の費用に関してザックリではあるが見積もったところ────

 

 

「え……? マジでこの値段、なん、ですか?」

 

「マジ、ですね〜。 何なら少しシェロちゃん割を効かせてこの値段です〜!」

 

 

 出された額は使える予算の倍近い数字であった、OMB(オーマイバハムー)

 今更になって妥協も出来ない。 既に作ってもらっているという点でも、クオリティを下げるという点でも。

 だから私はシェロちゃんにそれはもう誠心誠意頭を下げた。

 いっそ土下座する勢いだったが、その前に彼女は私の救世主(メシア)となってくれたのだ。

 

 

「うふふ〜、この万屋シェロカルテに借金とは中々勇気がありますね〜!!」

 

 

 訂正、何が救世主だ。 鬼! 悪魔! シェロカルテ!

 ……なんて言うのは簡単だが、実際とても助かったのだから文句は言えない。

 

 その後、逃げるつもりは最初から無いが念には念を入れて書面上でも約束し、刀が出来上がってから暫くはシェロちゃんの下でアルバイトをする事に。

 彼女曰く『今までとやってもらう事は何も変わらない』らしいので、恐らく魔物退治や護衛依頼を回されるのだろう。

 

 

────頼んだらギュステ*1やポブ*2の依頼貰えないかなぁ……

 

 

 そんな思いを抱え、未来にどんな無茶振りをされるのか戦々恐々としながら過ごすこと数日。

 遂に完成した一振りの刀が、私とユールネールさんの間に置かれていた。

 

 

「お主の要望は出来る限り汲んでやった。 刀身彫刻なぞ久しくやってなかったせいで肩が凝ったわい」

 

「うわぁ……!! ちょー綺麗!! すごいすごい!!」

 

 

 ユールネールさんから受け取った最初の感想は、もう語彙力を空の彼方に吹き飛ばした酷いものだった。

 でも、そうなってしまう程に美しい刀だったんだ!

 この時ばかりは刀に詳しくない己を憎いとさえ思った。 何せ彼が丁寧に解説してくれているのに何も分からないんだもの。

 

 

「名はお主の名声と共に付いていくじゃろうが……わしとしても満足行く作品となった。

 折角じゃ、名も与えんか? 候補なら既に出しておいたぞ」

 

「もうそれはユールネールさんが名付けたいだけじゃん!」

 

「良い作品に名を付けて何が悪いんじゃ!!」

 

 

 いえ、別に問題は何も無いんですけれども。 というか私も賛成。

 私としても初めての自分だけの刀なのだ、名前ぐらいあげたくなっちゃう。

 

 然し刀の名前か、難しいな。

 ユールネールさんの出してくれた候補名は、ぱっと見でも『コイツは凄い刀なんだぞ!』みたいなのを全面に出しすぎていると思う。

 一番まともなのですら『瞬断魔裂(しゅんだんまさき)』だ、大仰すぎる。

 

 

「うーん……」

 

「どれが良いかの? わしとしては矢張りこの『三千大千──」

 

個人的にはもっとシンプルなのが良いかなー! なんて……」

 

「ふむ……」

 

 

 仰々しい名前はそれこそ奥義なんかに付ければ良い。

 私は少しでもアイデアが欲しくて、刀をまじまじと見る。

 刃が光を受けると薄っすら虹色っぽく反射するのは、属性を等しく浸透させようとした結果なのだろうか?

 

 

月虹(げっこう)……」

 

 

 口からそんな単語が零れる。 月の光によって生まれる薄い虹の名だ。

 

 

「ほう? 悪く無い。 わしのセンスには到底及ばんが、振るうのはお主じゃ。

 気に入ったならそう呼べば良い」

 

「あ、あはは……」

 

 

 何でこの人、そんなに自分のネーミングセンスに自信があるんだ……?

 

 

「然し要望通りに作ったとはいえ、お主のようなチビに振るえるのかの」

 

 

 今度はユールネールさんが言葉を零す。 至極当然の疑問ではあると思うが。

 

 私が頼んだこの月虹は、柄も含めた全体の長さが私の身長より長く、何なら刃長だけでも私の身長と大差ない。

 因みに私は最近14になり、身長を測定したところ83cmであった。

 

 なので疑問の解消ついでに、私としても実際に抜刀の心地を体験するべく刀を鞘に収めて持つ。

 腰から抜く方法もあるのだが、新品で試すのは流石に少し怖いので今回は背中に回す方だ。

 立ち上がって頭の後ろで掲げるように刀を持ち、足を広げながら抜いていく。

 少しずつ刀を傾ければ私でもこの長さの刀を問題無く抜ける。

 

 

「おぉ……曲芸でも見てる気分になったわい」

 

「実際これは武芸派生の見世物ですから」

 

 

 実戦の際は刀が傷むから余りしたくは無いが、最低限抜刀したら後は魔力で鞘を吹き飛ばす形か、曲抜きする時間を作るように舌戦する必要もあるだろう。

 それが分かっていて何故そんなに長い刀を、なんて無粋な事は言わないように。

 

 

────小さい子がデカい武器を持つのは浪漫だろう!!

 

 

 実際に戦う私がこんな理由で武器を選んでいるのだ、誰にも文句は言わせないとも。

 それに、刀を抜く隙も無い時の対策も頼んである。

 ……もしかして、これが原因で値段が上がったのかな。

 

 

「それと、こっちが追加注文の懐剣じゃ。

 全く、これが『お守り』だからといって老人にこんな神経の磨り減る彫りをさせるな!

 見知らぬ記号を渡されて彫る身にもなれ!!」

 

「ごめんなさーい、反省してまーす」

 

「ガキが……ッ!」

 

 

 適当な謝罪なのは今までの仕打ちに対するちょっとした報復なのだから、そう怒らないでほしい。

 内心はとても、とてもとてもとても感謝している。

 武器そのものもそうだが、この世界では下手したら存在せず、あったとて古い文献を漁らないと見つからなさそうな梵字を彫ってくれて本当に有難う。

 自分の決意とお守りを兼ねて、刀には月天を、懐剣には虚空蔵菩薩の種字を彫ってもらったのだ。

 

 然し前世持ちからすると、グラブル文字も梵字とさして変わらない気もするのだが。

 私もこの世界に適応して10年以上経過するけれど、未だにウッカリするとグラブル文字でも無ければアルファベットでも無い謎の文字を生み出す時がある。

 マジでそれぐらいには慣れないし、その島特有の字みたいなのに希に遭遇するのが最悪。

 それを思えば梵字の1つや2つ、寛大な心で受け入れてくれ。

 

 

「ふぃー……漸くゆっくり眠れるわい」

 

「本当に有難う御座いました! お代は此処に」

 

「おう。 余程雑に扱わない限りは頻繁に来る事も無いじゃろうが、研ぎが必要な時はまた来い。

 他の奴なんぞに研がせてみろ、わしが空の果てまで追いかけ回して真っ二つにしてくれる」

 

「んな脅さなくても貴方にしか頼みませんよー!」

 

 

 鏡を見ずとも笑顔なのが分かる程にニコニコしながら、ユールネールさんの工房を後にする。

 今だけは暑苦しいバルツの気候も、息の詰まる刀工街の雰囲気も全て些事だ。

 生産区画をルンルン気分で歩む私は、改めて刀を撫でる。

 

 

(これからこの月虹と朧霓(ろうげい)*3で空を旅するんだ……!!)

 

 

 余りに浮かれすぎて、放り出されていた廃材に気付かず足を滑らせて転けかけたのは内緒にしてほしい。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 さて。 私も漸く、本当に漸くバルツから離れる事が出来る。

 3ヶ月程度では此処の暑さに全く順応出来ない事が判明した。

 

 

────早々に別の島に行きたい!!

 

 

 だが、私の行き先を決めるのはシェロちゃんだ。

 借金の返済が終わるまでは彼女の命令が何よりも優先される。

 そして案の定というべきか、バルツに滞在しているのだから当然というべきか、引き受ける事となった依頼は8割以上がバルツ公国内で完結するものだった。

 

 

(バルツにいるんだもん、そりゃそこにいる人間に依頼を割り振った方が効率的だよね)

 

「でもさぁ!? だからって、なーんで登山して魔物退治なのさー!!

 暑くてやってらんないよー!」

 

 

 私は1人で愚痴を零しながら襲い来る魔物を倒し続けている。

 現在地はフレイメル島から少し離れた小さな無人島、その火山の……そろそろ山頂といったところか。

 何でもまだ鉱脈が生きている可能性がある山だとかで、私がやらされているのはその調査の為の露払いだ。

 当たり前だが魔物も動物であり、僅かな例外を除けば一度脅威と見做した存在には無闇に喧嘩を売って来ない。

 なので私のこの行為は魔物相手への格付け(わからせ)。 こうしておくと、次回以降は人間を見ると先ず逃走を優先するようになる。

 大事なのは甘さを捨てる事。 中途半端に手負いにすると復讐心が芽生えるタイプのもいるからね。

 

 

「想像以上に月虹が良く斬れるから、そうならずに済んでいるけど、ね!」

 

 

 人の背後から飛び掛かる狼型の魔物を振り返りながら斬り飛ばし、飛び散る血を全て付着する前に凍結させる。

 この辺りまで来て漸く魔物の襲撃が減った程度には、此処は凶暴な種が多いようだ。

 然し、最早これしきの魔物では試し斬りにはなってもそこ止まりだ。

 

 

(これより上となると……九尾みたいな封印されるレベルの奴か真龍みたいな長生きの竜、そうじゃないなら星晶獣か。

 幽世も択だけど態々会いたくは無いし……人は極力斬りたくないからなぁ)

 

 

 空を飛びながら思考する。

 サビルバラの道場で鍛えていたのもあって、私も日々成長しているのは間違い無い。

 それどころか、一応は強者側に足を踏み入れているとは思うのだ。

 ただ、何かが足りないというか。 あくまで『強者』であって『圧倒的強者』では無い、みたいな。

 

 ここから更に強くなれる選択肢は幾つかある。

 1つ目、星晶獣との契約────教えの最奥。

 絶賛ツクヨミ様待ちの選択肢だし、他の星晶獣とってのは私としても気乗りしない。

 それはそれとして星晶獣との交流自体は図りたいから、借金返済が終わったら星晶獣探しに空域をフラフラするのもありかも。

 

 2つ目、他分野に手を出す。 具体的には錬金術か、アストラル大魔術かな。

 特にアストラル大魔術の方は遅かれ早かれ手を出すつもりだ。

 長寿は即ち研究出来る時間が長い事を意味するし、この世界において莫大な魔力は美容にも通ずる。

 長生き出来ればツクヨミ様と一緒にいられる時間も増えるし、理外の存在とエンカウントする確率も自ずと上がるだろう。

 問題があるとするなら、錬金術は今から学ぶにはちょっと時間が足りるか怪しい点、アストラル大魔術の方はそもそもよく分からない点か。

 つまり、これも手を出すのは今じゃないかな。

 

 3つ目、どこかの道場なり魔法学校なりに入って技を増やす。

 選択肢の中では一番まとも、それでいて糧になる事も確定している安定択だ。

 生活が縛られるのは正直好ましくないが、余程時間がかかる場所を選ばない限りは原作開始までに十分間に合うだろう。

 何せ時間にして3年ある。 多少のズレを考慮しても2年はまだ修行できると見て良い。

 道場ならガムシラさんのところがあるが、魔法はなぁ……

 マナリアは真っ先に事情を説明しても2年で解放してくれるか怪しいし、マナリアに行かないならその辺の学校より個人の魔導師に頭を下げる方が得。

 原作キャラで師と仰ぎたいのはマイシェラかマギサだが、どこに住んでいるのかも知らないのに加え、私の転生者(中身)を探ってきそうなのがね……

 

 

(どの選択肢も一長一短というか、なんか違うっていうか。

 結局、借金返済が終わっても依頼を受けて色々経験する方が最善になりそう。

 原作キャラとの接点を作っておくのも考えたけど、これぐらいの時期って何してるかよく分かんないし)

 

 

 もう1つ考えていた案を思い出し、それをすぐに隅に追いやる。

 原作キャラとは仲良くなりたいオタクとしての気持ちと、主人公に関わってこそだから私が出しゃばるのは違うというカプ厨の気持ちで、心が2つある状態だ。

 主人公による更生を介さないと会いたくないタイプのキャラもいるから、余計に難しい。

 具体的には十賢者、ガルマみたいな賊をやってたタイプ、それと主人公に出会う事で外に目を向けるようになるアンナやハレゼナみたいなタイプ。

 前2つは言うまでも無く危険なので会いたくないし、最後のタイプは私がターニングポイントになるのが許せない。

 十賢者はニーアやロベリアは論外。 他も政争だの復讐だのでおっかないから、会うにしてもアラナンぐらいかな。

 気安い関係を結び難い軍関係者や騎士団所属組、ガルマ()ユイシス(ヤクザ)ジャミル(暗殺者)レ・フィーエ(王族)……いや、あの騎空団マジでおかしな人脈している。

 兎に角、この面々も会うのは難しいだろう。

 こうなってくると残るのが旅人や傭兵になる訳だけれど、そうすると今度は場所が分からないという問題が生まれるし……

 

 色々考えたところで、私が取れる選択は大して無いのだ。

 シェロちゃんに依頼の完了を告げて、報酬の殆どを渡しながら思う。

 

 

「シェロちゃーん、次の依頼はー?」

 

「はいは〜い! お次はですねー……」

 

 

 最早『シェロちゃん』呼びを咎められる事も無い。 それだけお世話になっている証でもある。

 次の依頼は何処になるだろうか。 出来ればバルツ以外が良い、本当に暑いので。

 

 

「それでは、こちらのお店のお手伝いなんて如何でしょう?

 体力仕事のようですがルミさんなら特に問題も無いでしょうし、報酬も高めでピッタリかと〜」

 

「んー……お! ポート・ブリーズですか!! いいねいいね!! 行って来ま〜す!!」

 

 

 気軽に言ってはいるが確りと依頼書には目を通しているし、契約のサインなんかもしながらの発言だ。

 それにしてもポート・ブリーズとは有難い。

 彼処は原作で便利な舞台にされがちなだけあって娯楽も人も沢山だし、それに伴ってポート・ブリーズ出身だの関係者が住んでいるだので原作キャラにも会いやすい。

 何よりも────

 

 

────絶えず風が吹くから此処より涼しい!!

 

 

 然して私の返済生活は続く。 さっさと返さないと私の自由が確保されない!

 

 

 

  §  §

 

 

 

 フィーニス諸島はガロンゾ島の、ファベル市街地郊外にて。

 見目麗しい2人が、人目を避けるように雑談をしていた。

 片手には若者に流行っているらしい過剰なまでに甘ったるい飲み物、もう片方の手にはこれまた随分とカロリーを感じさせる揚げた芋に塩をまぶしただけの屋台料理。

 2人は興味本位で購入し、多少口に放り込んだ後にどう処分するか困っていた。

 別に味が悪い訳では無い。 単純に『重かった』のだ。

 容姿だけなら10代で通じそうな2人はその実、数百年を生きる星晶獣であった。

 

 

「どうするのじゃノア! こんなモン、これ以上飲み食いしていたら暫く何も入らん!!」

 

「……別に僕達ってそこまで飲食を必要としないし、良いんじゃないかな?」

 

「じゃあ何でお主は手を付けてないのじゃ?」

 

「僕は此処の職人たちの話を聞きながら、何か食べるのが習慣みたいなものだからね。

 今、これを完食すると習慣がズレちゃうよ」

 

「お主、わらわに向かって好きに言っておいて……」

 

 

 翼を持つ少女が白い少年────ノアに文句を垂れていた。

 少女の名はガルーダ。 神鳥とも称される星晶獣である。

 

 

「にしても、この島は退屈じゃのう。 良い風が吹くというのに、その全てに油だの煙だのが混ざっておるし」

 

「それがこの島の良いところだろう?」

 

「はー嫌じゃ嫌じゃ、これだから艇造りの星晶獣なんてもんは全く……ま、あの風の竜(ティアマト)が契約している場所よりは居心地が良い。

 此処の契約の歯車(ミスラ)は無駄に干渉したりせんし、約束事さえ交わさなければ無害なのも好印象じゃ」

 

 

 言い終わるなり甘ったるい飲み物を物凄い形相で口に含み、飲み込んでは『べーっ』と舌を出す。

 その行為が口の中に広がる甘みを消してくれることなど決して無いと知りながらも、そうしたくなる程には甘い。

 絶対に受け取ってくれないだろうが、本気でノアに押し付けてさっさと何処かへ飛びたい気分だった。

 

「おや? 君がティアマトと反りが合わないとは思わなかった。

 同じ『風』を愛するものとして、昔はそれなりに交流していたと記憶しているんだけれど」

 

 

 ノアはそういって、これまた味の濃い芋を口に放り込む。

 職人達は酒のツマミに食べていたし、相伴に与った事もある。

 その時はとても美味しいと感じていた筈なのに、今は只々味が濃いとしか認識出来ない。

 いつ聞いたかは思い出せないが『食べ物はその味だけではなく、食べる状況や一緒の人が大事』なんて話を思い出す。

 ノアは確かに、この姦しい神鳥と食べる物としてはこの芋は不適切だと感じた。

 

 

「昔って戦争期の頃じゃろう? あの頃は同じ地で戦っていれば、基本的に交流するものじゃったろ。

 わらわは昔から竜が好かん! 同胞とて竜の姿なら変わらんわ」

 

「そうなのかい? 僕は星晶獣として生きてからというもの、同胞より人間との方が距離が近くてね」

 

「お主の役割を思えばのう。 わらわとしては同胞が一番じゃが、竜よりは人間の方が良い。

 彼奴らはわらわとも遊んでくれる! 退屈を凌ぐにはうってつけじゃ!」

 

 

 言っている途中から思い出してきたのか、ウズウズと身体を揺らして空に浮き始めるガルーダ。

 ノアはそれを見て、この雑談の終わりを察する。

 

 

「わらわは暫しこの────」

 

「フィーニス諸島」

 

「そう! フィーニス諸島を巡る! またな、ノア!!」

 

 

 『あぁ、またね』と返す頃には、既にガルーダは空の彼方に飛び去っていた。

 昔馴染みの同胞は大人しい性格が多かったからノアとしては新鮮であったものの、可能ならばもう少し落ち着いて会話がしたかった思いもあった。

 それに何より────

 

 

「……まさか置いていくとはね。 どう、処理したものかな……」

 

 

 目線を落とした先には、倒れないように甘ったるい飲み物が丁寧に置かれていた。

 無論、飲みかけである。 しかも芋は気に入ったのか持っていったらしい。

 

 ノアがこの重い飲食物を処理し終わったのは、夜も更けてガロンゾの港さえ静かになるような時間であった。

*1
アウギュステ列島のこと。この空の世界では非常に珍しい海を擁する島である。

*2
ポート・ブリーズ群島のこと。爽やかな風が年中吹く穏やかな島で、プレイアブルキャラでここ出身の人物も多い。

*3
懐剣の方の名称。こちらは完全に造語。




次の更新はイベ終わってからだと思います。
あくまで予定ですが初夏ぐらいまで、つまり数ヶ月ほど時間が飛ぶと思いますがよろしくお願いします。

ロイルミラはロジャーにしょーもないことで愚痴っていたけれど、あれぐらいは受け入れるべきですね。
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