団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!!   作:梏 桎

5 / 37

エイプリルフール366日目、到達記念更新です

22/04/30 加筆修正


成果はあったろう?

 

 

 修行の日々は──実際に行っていた私は兎も角──傍から見れば地味な出来事の繰り返しだ。

 

 ツクヨミ様が来なかった日は、早朝に起きて素振りから始める。

 朝餉が出来るまでに身体を温めて、朝餉を済ませたら庭で魔法の基礎を復習。

 終わったら家事の手伝いを行って、妹君を構い倒しつつ休息。

 昼餉の後はマッマの魔法講習。

 マッマから学ぶ事が少なくなった7歳以降は、村の数少ない魔導師に稽古を付けてもらっていた。

 日没手前に、何事も無ければパッパが帰宅。

 3本先取の試合形式を行って、勝敗で入浴の順番を決める。

 

 余談ではあるが、風呂といっても前世の私(現代の日本人)がイメージするような風呂では無い。

 私が火の魔法を調整出来るようになってからは近付ける事に成功したが、基本的には行水スタイルだ。

 私も妹君も髪が長いので、洗うのにも乾かすのにも時間が掛かる。

 だからパッパは私との試合を──私の糧になるように配慮しつつ──3連勝して早めに入ろうとする。

 私がこれを阻止出来るようになったのは9歳に入ってからだ。

 

 入浴後に夕餉、それが終わったら試合の反省。

 全部終わったら、妹君と寝る前に遊び尽くして就寝。

 

 ツクヨミ様が来る夜の場合は、夕餉を抜いて仮眠した後にツクヨミ様の授業が始まる。

 マッマが用意してくれた夜食を摘まみながら、夜明けまでマンツーマンのレッスンだ。

 ツクヨミ様が去る夜明け頃に就寝し、昼前には起きていつもの修行形態に戻していく。

 

 

 このサイクルに休みの日を挟む生活習慣が私の日常だ。

 たまに村人から畑仕事の手伝いなんかを頼まれる事もあるのだが、それでも崩さないように都度調整をするぐらいには毎日続けた。

 体調を崩した事も一度も無く、我ながら良く頑張っていると自賛してしまう。

 

 休みの日は基本的に一日中、愛しの妹君(エリスマルル)と遊び呆けている。

 妹君が村人のお手伝いに行ってしまっている場合は、前世の創作物で見た技の再現やら検証やらで時間を潰す。

 これはこれで楽しいので、私の毎日は非常に充実している。

 結果的にツクヨミ様に会えたから良かったものの、あの夜に『この村に飽きていた』とか吐かした当時の私は何様だったのだろう。

 幸いにも今世には魔法という前世に無かった面白い物があるのだから、する事が無くなったら増やせば良いのだ。

 

 

(当時の私は基礎の基礎しか覚えていないから、こんな遊びが出来る余裕も無かったけどね)

 

 

 そう思いつつ、私は()()()()()()()()

 

 これは妹君のマイブームに度々上がってくる綾取りを見ていた際に思い付いた魔法だ。

 妹君の遊びのマイブームはコロコロ変化するが、結構な頻度で綾取りに帰ってくる。

 私は生憎と、前世も今世も綾取りにロクに触れていないので、妹君に付き合ってやれないのが残念でならないと思っていた。

 そこで開発────というか再現したのが、魔法によって糸を生成する技術。

 アイデア元はダヌアの霊糸。

 然しあくまで参考にしただけで、この魔法糸は戦闘にはまるで使えない。

 

 これは私の魔力を糸のように細く引き伸ばし、微量の属性元素を混ぜ込んで着色するという、繊細かつ無駄に魔力を消費する妙に贅沢な技術だ。

 混ぜ込む属性元素を喧嘩しないように慎重に注ぎ足す事で、ゲーミング魔法糸にもなる。

 これが私の初めての魔法開発かと思うと些か虚しいが、オシャレに転用出来る可能性を秘めていると前向きに捉える事にする。

 

 そもそもはこれで妹君の気を惹こうと思っていたのだから、そちらの動機の方が余程虚しいとか考えてはいけない。

 

 それに、ゲーミングカラーに意図的に出来るのは全属性を行使出来る少数派だけ。

 この技術は盗まれるリスクが低い!

 ……誰が盗むんだ、こんなモノ。

 

 

 兎に角、妹君とはそんな贅沢な製法の糸を用意してからというもの、綾取りを教えて貰う仲にもなった。

 私はお礼として、妹君の気分に合わせた魔法糸を精製してプレゼントしたり、妹君の無茶振り(主にお菓子の追加要求)に応えたりする。

 

 この魔法を見せてから、妹君が私を見る目には明らかに尊敬が含まれるようになった。

 つまり妹君の気を惹く事に私は成功したのだが、問題も発生してしまった。

 

 妹君が村人に対して、私を『天才の魔法使い』と吹聴し始めたのだ。

 確かに妹君は年頃からして、凄いと思った事を自らの事のように話したくなる頃合いだとは思う。

 だがこれがまぁ日に日にエスカレートしており、先日は老夫婦から『畑の土を一瞬でひっくり返せると聞いたんだけれど』なんて言われて、私は苦笑いしか出来なかった。

 因みにこの依頼は、妹君の虚言である事を明かした上で地道に天地返しのお手伝いをした。

 老夫婦からは『妹の夢を壊さない良いお姉ちゃんだね』と言われたものの、放っておくとその内、私が妹君の中では全空最強になっていそうだ。

 

 

 多少の問題は発生しつつも家族関係が頗る良好な一方で、ツクヨミ様との仲は遅々とした進展のみとなっていた。

 ツクヨミ様の教えに不満は無いし、お互いが別に険悪になった事も無い。

 ただ、劇的な関係変化も特に無いのだ。

 

 教えの最奥を打診する程の仲など果てしなく遠い。

 というか、今の関係のままではツクヨミ様にしたい()()()もやんわり断られそうだ。

 

 仲良くはなれた、お菓子も──お供え物という体だが──あげた、部屋には……連れ込むというよりも勝手に入られている方が正しいか。

 足りないのは懐柔という事である。

 

 それならば少し冒険をしよう。

 人間関係の進退はリスク無くては成立しないと、何処かで聞いた気もするし。

 失敗しても私の今世は美幼女──妹君の天才吹聴に比べれば遥かに認めやすい──なので、お巡りさんのお世話にもならない。

 

 

(まぁそもそも、この村に警官なんざ居やしないけど!

 相手は星晶獣なんだからナニしたってバレやしないよなぁ!?)

 

 

 

  §  §

 

 

 

 満月の夜、山の祠。

 

 

 私はツクヨミ様と並んでマッマの夜食を頬張っていた。

 

 今宵、私はツクヨミ様ともう一歩進んだ関係になりたい。

 それは例えば、すれ違った際に挨拶を交わすだけの知人から、多少の世間話が混じるような。

 共通の趣味ぐらいでしか話さない友人から、プライベートの相談をし合うような。

 そういう前進を、私は望んでいる。

 

 然し、ここで重要な問題が発生する。

 

 隠してもいないが、私の前世は陰キャだ。

 陰キャとはそもそも『陰気なキャラクター』を略したものであり、ここで言う陰気とは即ち暗い者を指す。

 幼女との親交を目的に演技力こそ磨いたが、その実友人と呼べる存在は両の手で確実に足りる程しか私には居なかった。

 二進指数え法なら片手でもダダ余りする。

 そして演技力を磨いておきながら友人がそれしか居ないという時点でお察しだが、私の演技は友好関係には寄与しない。

 

 白状するが、そもそもがコミュ障なのだ。

 今世は自らの容姿に自信も持ててきたし、そうで無くとも自らが幼女であるという点でウキウキのノリノリで演技をしているだけ。

 最早捕まる事も無いからこれも白状するが、幼女との親交を目的とした演技だって下心満載で、三文芝居と笑われるのがオチのクオリティ。

 今世での親に向かっての演技だって、先述のノリノリ具合と打算がそれはもう多分に含まれている。

 

 

 つまり、何が言いたいのかというと。

 

【急募】ツクヨミ様ともっと仲良くなる方法【コミュ障】

 

 という話だ。

 物悲しいスレタイを脳裏に生成してしまった……

 

 

 あれだけ意気込んでおいていざその時が来て日和っている自分に、脳内反省会でも始めようかと思ったその時。

 

 

御空の燭(ロイルミラ)

 

「? どうしましたか、ツクヨミ様」

 

「憂悶は我に関わりますか?」

 

「!?」

 

 

 全てを見透かしたかのようなツクヨミ様の投げ掛け。

 ツクヨミ様は時折、こうして私の胸中を覗いてくる──もしかしたら私が分かりやすいだけかもしれないが──ので恐ろしい。

 というか、今回は何処までバレているんだろう。

 

 

(貴方ともっと仲良くなる方法が分からないんですとか言えませんけど!?

 え、でもこういうのってストレートな方が案外良いのかな……

 前世の友人は皆オタ友だからこんな美少女とお近付きになる機会なんて無かったし、正解が分かんねぇ……!)

 

 

「あら、正鵠を射ってしまったのね」

 

「え、えぇ。まぁ、その……はい

 

「話してご覧なさい。 憂悶は時に、他人によって雲散霧消すると聞きました」

 

「……誰に聞いたんですかそれ?」

 

「ふふ、星の獣にも友はいるのですよ」

 

 

 ツクヨミ様にもいるんだ、星トモ。

 そっちも物凄く気になるが、ここで脱線してはいけない。

 もしここで脱線すれば、私は確実に話の戻し方が分からずに有耶無耶にしてしまう。

 

 

「えっと、ですね。 恥を忍んでお願いするのですが……」

 

 

 ツクヨミ様が小首を傾げる。 可愛いなオイ。

 って、違う違う。 どうにかして伝えなければ。

 だがどう伝えるのが結局正解なのだろうか?

 

 ええいままよ、ここまで来たらストレートに行け!

 

 

「ツクヨミ様と! もっと仲良くなりたいのですが方法が分かりません!!」

 

 

 

────暫しの沈黙の後。

 

 

「ふふ、ふふふ!」

 

「〜〜〜!! 笑わないでくださいよ! こっちは真剣なのに!!」

 

 

 ストレートを投げてみれば、ポカンとした美少女のご尊顔を拝めた後に笑われてしまった。

 ムカつく程に可愛かったが、恥ずかしい気持ちの方が勝っているので絶対に褒めてやるもんか。

 

 

「うふふ、御免遊ばせ。 貴方が其の様な事に(かかずら)うとは」

 

「仕方無いじゃないですか! 私に友達が居ない事はツクヨミ様だって知ってるでしょう!?」

 

「然らば猶の事。 我が初の友となるなら、進取果敢を胸に刻むと良いでしょう」

 

「進取果敢……失敗を恐れずに、って事ですか?」

 

 

 今回のはギリギリ知っている言葉だ、助かる。

 

 ツクヨミ様との会話は、基本的に難しい言い回しを咀嚼する必要がある。

 今回のように私でも分かる言い回しならまだ良いのだが……

 

「ええ。 我は御空の輝きをも夜闇で染める者、人の世を俯瞰する者。

 生半可な覚悟では爾汝(じじょ)の交わり*1など雨夜の月*2と変わりません」

 

 

(喩えで出てくる言葉が耳馴染み無さすぎるんですけど)

 

 

 このように分からない言い回しの時もある。

 多分だが、言いたい事は『我ってば空の民なんか秒でッパーンできる星晶獣なんだから、仲良くなりたいなら失敗とか気にせず本気で来なさいよね!』だと思う。

 脳内のツクヨミ様が大分コミカルなキャラクターと化したが、間違っては無い……筈。

 ツクヨミ様の性格なら、確かに下手に機嫌を損ねる事を恐れてヘコヘコするよりは、失敗覚悟でガンガン行った方が良いんだろうけれども。

 

 

────ふむ、それならば。

 

 

「ツクヨミ様、仲良くなる為にも聞いておきたい事があるのですが」

 

「何でしょう?」

 

「ツクヨミ様って、本当に夜にしか活動出来ないんですか?」

 

「……うふふ」

 

 

 そう笑いつつも、顔を髪で隠すツクヨミ様。

 

 え、早くも地雷を踏んだか?

 1歩目が地雷は流石に想定していないんですけれども!

 

 だが、ツクヨミ様の顔を私がもし見れていれば、その表情から次に何を言うか察せていただろう。

 現実は露骨に隠されてしまっていた訳なのだが。

 

 

「我が陽の下で活動する事は、自らの利を擲つ事に相違無いのです。

 故に、我と陽の下で逢瀬を重ねたいのなら────」

 

「いやいやいや、言い方! 言い方をもっと選んでください!」

 

「逢瀬で無ければ、()()()、という事かしら」

 

「もっと違います!!」

 

 

 何なんだこの星晶獣!

 初対面はもっとこう、神秘的な雰囲気と可憐さを兼ね備えていたじゃないか!

 今みたいに人をおちょくって笑ってる様だけ切り取ったら、それはもう普通の美少女なんだよ!

 それはそれで可愛いけど!

 

 

 

────斯くしてツクヨミ様との交友関係は、私が弄られるというやや不本意な形で進展の兆しを見せた。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 ロイルミラとして生まれて、10年が経過しようとしていた。

 

 

 私に対して教える事が無くなったとマッマに宣言されて、最早正攻法では勝機が見えんとパッパに褒めそやされたのが1年前。

 その頃から、魔法講習に使っていた時間がパッパの警邏補佐に変わって、実戦の経験を積む方向にシフトしていった。

 

 

 ツクヨミ様との交友は、私を揶揄って遊ぶ形ではあるが順調に進展していて、そろそろ日中でも出会ってくれるぐらいには親密になったと思う。

 ただ、本人が言っていた通り利点を擲つ行いである事には相違無い為、実行してくれるかは五分といった所か。

 

 

 また、魔法を教えて貰う事が減った分、魔法の研究に費やせる時間と魔力が生まれた。

 この時間のお陰で、私は幾つかの魔法を既に形にしている。

 キチッとした名前を与えていない手品の延長線上みたいな魔法に関しては山のように生んだ。

 

 お陰で妹君が吹聴した『天才の魔法使い』がいよいよ現実味を帯び始めてしまい、私も最早否定しなくなった。

 それどころか剣術にも磨きが掛かった事で『天才少女』にランクアップし、それを甘受している自分がいる。

 褒められる事に恐縮していた(前世)の自分は何処へやら、今の私は──インチキ(前世知識)を用いている事に多少の罪悪感こそあれど──自他ともに認める天才だ。

 

 

(可愛くて天才、非の打ち所が無さすぎでは?)

 

 

 そんな天才の私の魔法開発に関してだが、基本は魔法戦士を参考にしつつ、一部他のアビリティや他キャラの技も引っ張って自己流に修正。

 これを繰り返して色々と魔法を生み出している訳である。

 

 魔法において完成形のイメージは非常に大事だ。

 魔力の指向性も、扱う属性の選定・多寡も、完成形をイメージ出来ているかで苦労の度合いがまるで違う。

 その点で私は、前世の小説やゲームという『誰もが想像する魔法』において非常に強固なイメージを持てる。

 

 最近は専ら、どうにかしてドラゴンブレイク*3を再現出来ないか研究中だ。

 追撃は武器の後ろや横に付随する形で、魔力で構成された刃や衝撃波をイメージしているのだが、アプローチが悪いのか出力が低い。

 

 目標は無論、夢の味方全体10割追撃。

 同じ威力の攻撃がそっくりそのまま増えるなんて、実現出来れば最高のバフだ。

 然し未だ研究は初歩段階、焦らずに煮詰める事とする。

 

 

(今これが完成した所で木剣の試合で使う訳にもいかないし、この辺の魔物は弱いからなー。

 それよりは、妹君が喜ぶ魔法なんだか手品なんだか分からんものの方が有益ってね)

 

 

 間違い無くこの時の私は調子に乗っていたのだろう。

 

 

 然し、そんな私の鼻っ柱を容易く圧し折る出来事というのも世の中にはある。

 

 

 

────村に巨躯(ドラフ)が訪れた。

 

 

 歌舞伎役者を彷彿とさせる隈取。

 

 長い白髪と一対の角に、腰に差された三振りの刀。

 

 

 全空最強の刀使いオクトー。 またの名をザンバ。

 

 

 

 彼がハーヴィンしか殆ど居ないこの村に現れた事で、私はこの年に何が起きるのかを予期してしまった。

*1
相手を気安く呼べる程に親密な交わり。

*2
雨雲に隠れた月の事。転じて絵空事の意味を持つ。

*3
魔法戦士のリミットアビリティ。最大で8割の追撃効果を1ターンの間、味方全体に付けられるヤバい技。魔法戦士を採用する理由の大半はコレ。




次回はグラブルのエイプリルフール事変が落ち着いてからになるかもしれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。