団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!! 作:梏 桎
今更ですが、作者は騎空士歴だけ無駄にそこそこある時間と実力が悪い意味で見合っていないタイプです。
見ていないエピソード等も多々ありますので、何か違和感を覚えたら(あぁ、コイツあのエピソード読んでいないんだな)と思ってください。
22/04/30 加筆修正
突然だが、この村には子供がほぼ居ない。
理由は単純明快で、そもそも子供を作るだけの気力と体力が有り余っている若者が少ないのだ。
だから私の誕生も妹の誕生も、この村にとって大きな吉報だった。
私の次に若い人が10歳近く年上であると言えば、この村の実情は察して貰えるだろう。
────故に。
この村の貴重な若夫婦が子宝を授かった事は、私も当然のように耳に入れていた。
……まぁ、小さな村の中で隠し事など基本的には出来ないものだが。
例外はツクヨミ様で、ヒューマンの少女──本当はそれに類似した星晶獣──が村に来たなんて話は聞いた事が無い。
どういった絡繰なのか気になるけれど、聞いたところで理解出来ないだろう。
話を戻して、若夫婦が子宝を授かり、更には出産がそろそろ近いなんて話が耳に入ってきた頃にやって来たのがオクトー。
ここまで材料が揃えば誰が産まれるかなんて分かり切っている。
────十天衆、フュンフ。
最強の杖の使い手という名の、膨大な魔力を持て余す天才幼女の出生が近いのだろう。
フュンフ、そしてオクトーは『十天衆』という組織に所属する予定──オクトーは既に所属しているかもしれない──の人物だ。
彼らは全空最強を掲げる10種の武器の使い手が集った騎空団であり、その強さは『七曜の騎士』に並ぶとも言われている。
……筈なのだが、ゲームの時は大人の事情で出番が来ない事も多く色々とツッコミを貰っていたり、全空最強を謳いながらファータ・グランデで活動が完結している疑惑があったりと、『七曜の騎士』と比較すれば扱いが悪い気がしなくも無い。
七曜は七曜で、メインストーリー以外の出番がほぼ存在しないという影の薄さが特徴的だが。
さて、そんな十天衆に将来所属するであろうフュンフだが、その出生から育児にはオクトーが非常に深く関わる。
故にオクトーの来訪は理解が出来る。
然し、私の知っている状況と多少違う所があるとすれば。
「特異な気色を隠しもせぬな、童」
(私は何で話しかけられてるんですか……!?)
────現況である。 一切合切が意味不明だ。
私に話し掛けてくる理由も分からない。
そもそも私は当初、フュンフが産まれてからオクトーが村に来るものだと思っていた。
この辺の順序はどうなっているのだろうか?
というか、態々村に来て村長の家に向かったと思えば、速攻で踵を返して我が家の前を通ったのだから山に行くのか。
今は居ないけれど、呉々もツクヨミ様と戦ったりしないで欲しい。
ツクヨミ様には相も変わらず弄り倒されているが、仲が良好になった事は確実なのだ。
ここでオクトーが喧嘩を吹っ掛けて、私の好感度まで『空の民』という大きな括りで減少したら目も当てられない。
それにしてもデカい。
屈んでくれないから首を痛めそうだし、僅かに視線を下げてくれているものの、その程度の目線の下げ方じゃ視線合わないんですけど。
後、圧がヤバい。
体格差だけじゃ無いオーラみたいなものを感じる。
これが全空最強の刀使いの威圧感……
正直に言うとめっちゃ怖い。
チビらないだけ褒めて欲しいぐらいだ。
「
童に有るまじき思惟は気色として表出する。
「は、ひゃい!?」
小難しい言い回しで私に向かって言うだけ言って、オクトーお爺さんは山へ柴刈りに────否、刈るとしても魔物か。
柴刈りとかさせたら、勢いで山ごと丸裸にしそうだし。
それに多分、主目的は瞑想でしょ……じゃなくて!
え、何。 私の中身バレた?
気配一つで私が
我ながら妙な出自だから、完全にバレるってことはまず無いだろうけれども。
実年齢と中身がチグハグなのは看破されていそうな気もする。
こっちに関しては、意識しないとすぐ
それともツクヨミ様との関わりの方だろうか。
これも普通の子供じゃまず有り得ないから、私に残るツクヨミ様の力の残滓を……
いや、何だかこの表記だとオクトーが変態チックになる気がする。
キッチリ書くなら『幼女から美少女型の星晶獣の残り香を感じたお爺さん』だ。
書いておいて思うが、字面がアウトだろう。
ただ何にせよ、私の異常性を出会って数秒で看破された事には違い無い。
────怖すぎるんですけど!?
口の中に留めておく事に成功した言葉だが、偽りの無い私の本心だ。
もしかして十天衆レベルにもなるとこんなのが当たり前になるのだろうか?
だとすると非常にヤバい。
私のイチャイチャ対象予定こと主人公は、最初こそ新米で未熟な子供だが、最終的に十天衆も統べる成長性のエリート。
今の私の中途半端な演技力では、主人公に中身が下心満載の中年とバレかねないのでは……?
それだけは避けねばなるまい。
主人公は純朴な少年少女なのだ。
原作と相違無ければ、私より約2歳下の可愛い子らにこの劣情を分かりやすくぶつけるのは頂けない。
脳内の悪魔が『むしろ思春期の少年少女に劣情をぶつけてズブズブの関係にならないでどうするんだよ』と囁き掛けてくるが屈しないぞ私は。
追い打ちを掛けるように、私の頭に主人公を慕う年上の紳士淑女が浮かんで来るが、私は
あくまで『劣情を分かりやすくぶつけるのは頂けない』というのは私の心情の話であって、
そもそも、演技で誤魔化そうとするからいけないのだ。
前世の私を捨てる事こそせずとも、確と今世の私を形成すれば万事解決。
前世の私では出来ず、今世の私だからこそ出来るものを確立すれば、それ即ち新たな自分の誕生である。
今までの私は前世の
風味程度の薄味でさえメスガキとは劣情を煽るものであり、それを選択して行使する私もまた劣情を催しているといっても過言では無い。
いや、流石に言葉の綾だ、そんな急にムラついたりはしない。
実際、私はこの身体でそんなにシていないし。
さりとて自我が芽生えてから今日まで
落とし所を見つけなければ。
今までの雰囲気をある程度残しつつ、露骨な下心を隠し、序でに身体と心の年齢差を感じさせないような私。
うんうんと唸りながら考え事をしている私を、妹君が不思議そうな顔で見つめていた。
§ §
話題がそれはもう脱線して完全に別路線と化していたが、この村の状況についても考えねばならない。
この村に常在する存在はハーヴィンだけ。
本当にごく一部の他種族が家だけ持っている状態ではあるが、大体が倉庫扱いだったり荷物の輸送の中継地点だったり。
そして、ゲーム内で出会う面々が強烈なので忘れそうになるがハーヴィンはそもそも戦闘に向く種族では無い。
何が言いたいかといえば────
(この村、オクトーが来なかったらマジでフュンフ止められないんだけど)
そう、フュンフの魔力暴走への対抗手段だ。
実際に目にしていないので試さなければ分からないが、多分私でも完全には打ち消せない。
ゲームでは屋根が飛んだとか夜泣きで大気が揺らぐとか言っていた気もする。
正直スケールが大きすぎてどう対処すれば良いのかもまるで分からないが、オクトーで打ち消す事が出来るというのは詰まる所、魔力を
……出来るのだろうか、そんな事が。
これでも魔法戦士を目指して日夜邁進している身だ。
刀を扱う心得も魔法に対する見識も有ると自負している。
更に言えば、我ながら類稀な才──オクトーが来る前ならもっと自信を持って天才と豪語出来たのだが──を持っているとも思っている。
その上で考えても、普通に考えれば魔力
魔法ならば、難度は高くとも不可能じゃない。
ハッキリした形に、それを発生させる為の理論も術式も有るのだから、オクトー程の力量が有れば恐らく斬れる。
然し魔力は違う、まだ形を成す前の純粋な力だ。
これを斬るというのは、例えるなら磁石間の何も無い空間を斬って磁力を消失させようみたいな話だ。
無茶苦茶が過ぎる。 まず正気じゃない。
────でもきっと出来るんだろうな、そんな無茶が。
オクトーは島に居ながら飛ぶ騎空艇を両断出来るような規格外だ。
道理にかなっていなくとも不思議では無い。
だからといって、オクトーに任せてばかりもいられない。
私もこの村の住人で、それなりに愛着もある。
フュンフの両親(予定)も、村の貴重な若者な事もあって他の村人と比べても親交が深い。
対処を考える頭と、それに対抗出来る力がある手前、オクトーに全て委ねて静観するなど以ての外だ。
天才と言われ、それを甘受しておきながら逃亡するのはダサいというのもある。
然し、私では魔力は斬れない。
これは今から鍛えた程度じゃ覆す事の出来ない事実だ。
それに魔力をぶつけ合って霧散させるのも不可能。
現状の私の魔力では絶対に足りない。
ならばどうするか────答えは単純。
打ち消す事を考えなければ良いのだ。
相手は暴走する魔力の奔流。
確かに脅威だが、同時にこれはフュンフの意志が介在していない垂れ流しの魔力、という事である。
私はそれを自らの魔力で包み、指向性を与えて流す。
流す先は空かオクトーの何方かだろう。
空は航行する騎空艇にこそ注意する必要があるが、この村の上空がルートに選ばれる事は殆ど無い。
空に飛ばしてしまえば、多少天気が可笑しくなるかもしれないが直に霧散する。
オクトーは言わずもがな、私が流してオクトーが斬る作業が出来上がる。
この手法の利点は主に3つ。
1つ、私の魔力消費がぶつけ合うより余程低コストな事。
2つ、被害が抑えやすい事。
3つ、私の鍛錬にもなる事、だ。
私は
私の魔法を見てツクヨミ様が仰った事なので、確度が高い情報かと聞かれるとやや疑わしい。
だがツクヨミ様が言うには、魔力の流れや属性元素を知覚・識別しやすいのでは無いかとのこと。
鍛え続ければ何れは視認する事も夢では無いとは言われたが、何年掛かるかを聞いたら目を逸らされた。
きっと途方も無い時間がかかるのだろう、しかも星晶獣の基準で。
かといって『魔力や属性元素が視認出来るかもしれない』と聞かされて諦める気にもなれない。
そんな事が出来ればカッコいいに決まっているのだ。
そこで修行対象に上がるのが、フュンフの暴走する魔力。
荒れ狂う彼女の魔力を知覚し、それを包むように自らの魔力を流してベクトルを整える事が修行内容となる。
これは魔力の流れを感知する修行になり、それを包む私の魔力との識別を行う事で、魔力視認への第一歩にもなる。
序でにオクトーやフュンフの両親の魔力を判別出来れば御の字。
ここまでする余裕が果たして有るのかは不明だが、明確な目標は打ち立てておくに越した事はない。
────
§ §
この日を私が忘れる事は無いだろう。
私の作戦が決まって数日、朝に若夫婦の旦那が我が家を訪ねてきたのが事の始まり。
旦那は短く告げた、『妻が産気付いた』と。
正確には薬師だが、この村で一番医者に近しい事をしているのは私のマッマだ。
そしてこの村で1番年齢が近い経産婦でもある。
実際、夫人が妊娠してからマッマは定期的に身体を診たり、子育てなどに関する相談に乗っていたようで、それはもう物凄い勢いで支度を終わらせた。
私はマッマの手伝い────そして、出産直後にフュンフが暴走しないかの監視の為に、若夫婦の家へお邪魔する事となった。
この村には病院なんて存在しないので、当然の如く自宅出産だ。
とはいえ先述の通りマッマは準備を整えていたし、夫人も他の村人に世話を焼かれたのか、陣痛による疲労こそ見えるがリラックスしていた。
旦那は魔力暴走時に万が一魔力の奔流をぶつけられても困るので、私が説得して別室待機。
後に知る事だが、少なくともこの村や付近の街では座位分娩が主流らしい。
母体や胎児に不必要な圧迫を与えず、母体に裂傷が発生しても治癒魔法で回復を促進出来るのでデメリットが少ないのが理由なんだとか。
魔法だからこその利点だと関心した話だ。
話を戻して夫人の分娩だが、助産の準備は既に万端。
後は
前世の私には縁の無かった世界だから────なのもそうだが、
医学にも魔法医学にも造詣が深い訳では無いから、母体から既に胎児の魔力を感じる事そのものは、もしかすれば普通なのかもしれない。
然しながら、ここまでハッキリと別の魔力を感知出来るのは、胎児そのものが莫大な魔力を持っている事の証左なのだろう。
実際、夫人もマッマも異質さを感じているのか表情が何処かぎこちない。
窓際に移動して外を眺めれば、雲の流れが先程よりも早い。
既に彼女の魔力の影響が出始めているのか?
それとも単なる偶然か?
そんな思考を遮るように、
今は兎に角、無事に新たな生命を迎える事に注力する。
私は人生で初めての助産に挑むのだった。
§ §
────疲れた。
私がそう零すだけの気力が戻って来たのは、後処理が全て終わって我が家に帰ってからだった。
フュンフが無事に産まれた。
周りは兎に角、母子ともに健康である事に違いは無い。
分娩その物は初産とは思えない程にスムーズに進み、座位分娩故の取り上げにくさもマッマが難なく行った。
問題は
案の定と言っては何だが、魔力が暴走したのだ。
赤子なりの本能なのかは定かでは無いが、取り上げたマッマにも実母たる夫人にも、その奔流が牙を剥く事は無かったのは喜ばしい事だろう。
家屋はその限りでは無かったが。
初めに窓が割れ、次点で扉が吹き飛び、家全体が悲鳴を上げ始めた。
私はマッマに必要なケアを全て任せて、必死に魔力を包んで指向性を持たせる事だけに専念。
これだけ濃い魔力であれば知覚も何も無く、識別も容易。
何より、少しでも気を抜くと家が吹き飛びかねない状況に焦りに焦っていた。
結果として、吹き飛んできた各種家具によって打撲をこさえる事となった。
報せを受けた訳でも無いのに異常を察知したのか、家の前まで来ていたオクトーを見付けこれ幸いにと指向を持たせた魔力をぶん投げれば、彼は意図を察してくれたようで片っ端から打ち消してくれた。
必死すぎて当初予定していた魔力の知覚も識別も──フュンフの分かりやすさを除いて──している余裕は無く、オクトーと魔力の奔流を捌き切った頃には
暴走も出産も無事に終わったので、旦那さんに家族の事を任せて私とマッマは後片付け。
この辺りで思考回路が落ち着いてきて、同時に打撲の痛みが主張を始めていた。
痛む節々を無視して掃除を終えた頃には辺りは闇に包まれる時間で、礼をしたかったオクトーも姿を消していた。
そうして全てが終わって帰宅して、マッマから打撲の治療を受けて一息付けた訳だが。
(ここからなんだよなぁ……)
ゲームと差異が無ければ、フュンフは夜泣きの度に魔力の暴走を起こす。
そして、恐らく健康優良児であるフュンフの夜泣き頻度は一般の新生児と大差無いだろう。
それに、あくまでゲームで言及されたのが夜泣きなだけで、実際は感情の起伏に応じて魔力が暴走する事は想像に難くない。
つまり私とオクトー、そして若夫婦の家の戦いはここからが本番だ。
フュンフは前世から好きなキャラクターではあるが、この苦労は出来れば体験せずに過ごしたかったと思いながら私はその日を終えた。
数日後、手掌把握反射と理解していながらフュンフに指を握られてテンションの上がる
出産云々はまるで縁が無いので1から10まで想像です。
違和感あっても許してください。