団長ラブ勢のギャルハーヴィンだってそうさ!!必ず存在する!!!!   作:梏 桎

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書きたい意欲が上がると文字数が増えるんですね……

何処で区切るのが綺麗なのか分からなくなったので匙と共に話も投げさせてください(投稿)

22/05/01 加筆修正


港町はあったろう?

 

 

 ツクヨミ様に抱かれていた(誤解を招く表現)夜から暫く。

 

 

 日常の一部に組み込まれたフュンフの魔力暴走を対処した後、私はオクトーと話をしていた。

 話をしていると言いつつ、オクトーは何も返してこないので私が一方的に喋り続けているだけだ。

 

 

「あ、そうだお爺ちゃん。 私ね、この後港町に行く予定なんだ。

 だから明日までフュンフの事、任せちゃうけどいい?」

 

「構わぬ」

 

 

 あれ、返事してくれるなんて珍しい事もあるもんだ。

 

 

「用心せよ、童」

 

 

 うわっ、しかも心配までしてくれるの?

 明日は槍の雨か?

 

 

「ふーん、心配してくれるんだ? 珍しいねお爺ちゃん、私の事好きになっちゃった?」

 

「吐かしおるわ」

 

 

 茶化してみれば一言で斬り捨てられる。

 その上、話は終わりだとばかりにオクトーは山に向かってしまった。

 

 

(いや然し、本当に珍しい事もあるもんだな……

 でも態々忠告をしてくるって事は、それだけ帝国が幅を利かせているって事なのかな)

 

 

 実際、帝国が港に現れる事があると知った時点で無策で行くつもりは無かった。

 然しオクトーから心配までされた以上、もう少し用意しておく必要があるだろうか。

 

 

 本当は愛しの妹君(エリスマルル)と行きたかったが、この分では無理だろう。

 今の私の実力で自分と妹君を守るのは少々厳しい。

 私の怪我を考慮しなければもっと余裕を持った見積もりができるのだが、オクトーに忠告された手前、怪我じゃ済まない可能性を考慮した方が良い気もする。

 

 となれば、私が港に行く話は絶対に妹君に聞かせてはいけない。

 妹君は非常に良い子なので聞き分けてくれるかもしれない。

 然し妹君は自分が港に行けないことよりも、そんな危ない状況下の港に行く私を止めに来るだろう。

 そうなってしまうとマッマの説得難度が上がるので絶対に避けねばならない。

 

 

 

 私は考えを纏めつつ帰宅。

 

 フュンフに時間を割く都合、今の私は警邏活動も出来なくなった。

 なのでオクトーの瞑想を横目に鍛錬する日を除けば、私は自宅で魔法研究してる事が多くなった。

 

 まぁ、私の魔法は自らの魔力と周囲の属性元素を掛け合わせるタイプ──たぶん分類するなら精霊魔法になるが詳しくは分からない──なので、自宅と言いつつ庭先で魔力を捏ね回す時間の方が、座って術式構築しているより圧倒的に多い。

 

 

 閑話休題。

 

 我が家に帰ってきて私が最初にするのは妹君の位置確認。

 

 どうやら不在か。 村の方で畑仕事の手伝いでもしているのかな?

 

 我が愛しの妹君は聖母と言って差し支えない優しさを持つ善性の塊なので、普段は村人の手伝いをして過ごしている。

 多くは畑仕事の手伝いで、それ以外だと蔵の掃除や荷物整理が殆どだ。

 再三言うが、この村は若者が圧倒的に不足しているので、力仕事や腰に響く仕事は助け合って行う。

 私も先述した通り家に居る事が増えたので、他所を手伝う事も以前より増した。

 

 私の場合は薪割りか、各種魔法による生活の手伝い。

 ゴミの焼却に浄水の真似事、天地返しから魔道具の手入れまで。

 未だに一瞬でとはいかないものの、畑の土をサクッと引っくり返すぐらいは出来るようになった辺り、ただ天才と持て囃されていた訳では無いのだ。

 

 改めて頼まれ事をこうして書くと、都合良く利用されているだけにしか思えないだろう。

 だが、ちゃんと報酬は貰っているので文句は特に無い。

 年配の方々は完全に孫感覚で接してくるので、いっそ遠慮しないと食料から小遣いまで山のように渡されるぐらいだ。

 

 

「ただいま、ママ。 今日こそ港に行こうと思うんだけどいい?」

 

「おかえりルミちゃん。 港ねぇ……どうしても行きたい?」

 

「……うん、どうしても」

 

 

 妹君が不在と分かれば早めに話した方が良い。

 

 そうしてサッと切り出せば、返ってくるのはマッマの不安げな表情。

 私にはとても効くが、ここで退いたら最後『帝国が大人しくなるまで港には行かない方が……』とか言われかねないので、説得材料を持ち出して速攻で決めにいく。

 

 

「行く途中でパパにも話して、パパと泊まるつもりなんだけど、それでも……ダメ?」

 

 

 マッマにはパッパほど効果は無いが、私の上目遣いはやはりそれなりに効く。

 

 加えて、普段は一人で突っ走る娘から親を頼る提案をしているのだ。

 どうか折れてくれマッマ!

 

 

「……はぁ、しょうがないわねぇ。

 ルミちゃんの事だからダメと言ったら一人で行きかねないし」

 

「あはは……よくご存知で……」

 

「そこで『もうしません』と言ってくれないのが、ルミちゃんの困った所ね」

 

 

 実際、今回も最終手段は『こっそり行く』だったので下手に誤魔化すのは悪手。

 この分だと、両親揃って私を頑固者だとでも思っていそうだ。

 大きく否定はしないが、私だって道を譲る事もある。

 それが良くも悪くも両親の前で発生していないだけだ。

 

 

「パパと一緒ならまだ安心出来るわ。

 ルミちゃんが幾ら強くてしっかりしてると言っても、大人と子供の差までは覆せないもの」

 

 

 どうやらマッマの懸念事項は帝国云々よりも、私が悪い人や阿漕な商売に捕まらないかの心配だったらしい。

 港町の治安が特別悪いとは聞いた事も無いが、確かに知り合いばかりの村から知らない人ばかりの港町に愛娘が行くとなれば、そっちの方が心配になるのかも。

 

 私はてっきり帝国の人間をぶっ飛ばしたりして村に迷惑を掛けないかとか、悪人に遭遇した際にやり過ぎないかみたいな心配をされているとばかり思っていた。

 

 

「宿に関してだけれど、少し待っててねルミちゃん。

 信頼出来る人に向けたお手紙を書くから」

 

 

(紹介状みたいなものだろうか?

 マッマが信頼出来るというなら心配は無いかな)

 

 

 私はマッマの発言に首肯で返し、出掛ける支度をする事にした。

 山を越す必要があるので鎧は外せないが、折角の遠出なのだから少しオシャレに気合いを入れたい。

 

 今日の気分は赤のミニフレアスカートに黒のタイツ、上は鎧の事もあるしシンプルな長袖の白シャツ。

 髪は普段からデコ出しだが、今日はいつも以上にガッツリ開けてハーフアップで纏める。

 足元は普段から履くショートブーツだが、新しいのがそろそろ欲しくなる。

 

 

(靴も港で見る必要あり、と……うーん、今日も(ロイルミラ)ってば可愛い)

 

 

 素材が良いと何を着ても似合うなんて言うが、今世ではソレを享受している。

 無骨な印象を与えるレザーの鎧や、私の身の丈には長い刀すらファッションの一部として機能してくれているのだ。

 

 帯刀ベルトに至っては私の魔法糸を少しばかり編み込んだ事で、属性元素を混ぜ込んで色が変わる特別製となっている。

 その日のファッションに合わせて色味を調整するのが毎日の楽しみの一つであり、属性元素を喧嘩させずに注ぎ込む練習にもなる優れ物だ。

 

 

「今日の帯刀ベルトはー……スカートに合わせるなら黄色系かな?

 クリーム色に寄せれば鎧とも、私の髪色とも喧嘩しないし」

 

「あらあら、今日もバッチリねルミちゃん。

 はい、これがお手紙ね。 この時期なら港町にいると思うから、着いたら先ずは()()()()に向かうのよ」

 

 

 私がポロッと口からベルトの色味について零したらマッマが返してくれた。

 なら今日はクリーム色でいいか。

 

 マッマからランチや薬瓶入りのバスケットと共に手紙を受け取る。

 

 んで、渡すのがよろず屋ね、はいはい了解。

 

 

────ん?

 

 

()()()()ぁ!?」

 

「ッ!? 急にどうしたの? ママびっくりしちゃったわ」

 

「あ、あぁごめんなさいママ!

 ななな何でもないの! そう、何でもなくってよ!?」

 

「ルミちゃん、焦りすぎて全く知らない口調になっちゃってるわよ」

 

 

 そんな事ありませんわよ!?────じゃない、戻って来い私。

 勝手に有りもしないお嬢様の血を騒がせているんじゃない。

 

 確認から努めよう。

 あの間延びした喋りのハーヴィンとは限らないんだし。

 

 

「ママ、この()()()()の人はなんてお名前なの?」

 

()()()()()()ってハーヴィンの人よ。

 背が高い人だからすぐ分かると思うわ」

 

 

 ですよねー。 よろず屋違いなんてことも無くシェロカルテらしい。

 よろず屋と言えばこの世界ならシェロちゃんですよね、分かりますとも。

 

 というかマッマの認識的にはシェロちゃんは背が高いのか、まぁ98cmは確かにハーヴィンとしては高いけれども。

 この辺の感覚は未だに前世(ヒューマン)に寄っているのでちょっと新鮮だ。

 

 因みに成人ハーヴィンの平均身長は90cmらしいが、我が家で90cmを超えてるのはパッパだけだし、そのパッパも92cmしかない。

 私の身長に至っては3歳下の妹君と大差無い。

 幼少期から鍛えすぎたのかもしれない、後悔はしていないけれども。

 

 

「シェロカルテさんね、分かった。 それじゃ、行ってきます!」

 

「気を付けるのよ〜!」

 

 

 マッマの言葉を背に受けながら、私は先ずパッパに話を通す為に警邏ルートへと向かった。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 日没頃にパッパと合流する方向で話が決まり、私は悠々と山を歩いていた。

 

 

 時刻は昼を少し過ぎた辺りで、先程昼餉を済ませた。

 マッマと一緒に作ったサンドイッチで、朝に作った分の余りである。

 

 山中での昼餉だったので必然的に周囲を気にしながら食べていたのだが、魔物は特にやって来なかった。

 恐らくだが、オクトーがそう遠くないのだと思う。

 そうじゃなければツクヨミ様に知らぬ間に加護られているのかもしれない。

 

 

(ゲームと変わらない性能ならツクヨミ様の加護は複数人かつ他種族が前提だから……

 ツクヨミ様には悪いが使い所の無さそうな加護だ)

 

 

 割と失礼な事を考えていると、急に魔物の気配が近付いてきた。

 

 

 気配の察知に関しては、結局オクトーとの対決に必要になると踏んで色々と試行錯誤した。

 一番効果的に鍛えられるのが、ツクヨミ様に周囲全部を暗闇にしてもらう方法。

 これはツクヨミ様の魔力まみれの暗闇からツクヨミ様を見つける修行なのだが……

 満月の夜にしか出来ない上に、オクトーが絡んでいるせいかツクヨミ様が不機嫌になるので中々頼めない。

 日中に来てやってくれないかと頼んだ事もあるが『あの不躾な御空の輝きを黄泉の国に送って良ければ』とかいう物騒極まりない交換条件だったのでお断りせざるを得なかった。

 

 というかツクヨミ様は一方的に屠るつもりなのだろうが、多分実際にやったら共倒れ────どころか、普通にオクトーが勝つ未来も有り得なくないのが恐ろしい所。

 ここに来ているツクヨミ様が分け身であるとは言え、この手の分け身システムは本体にもダメージが伝わるのがよくあるパターンだ。

 ツクヨミ様を喪うのはあらゆる観点で私の不利益となる。

 属性元素の授業、教えの最奥、まだ出来ていない()()()

 

 それに何より────

 

 

「友達を喪うのは損得以前の問題だから、ね!」

 

 

 自分の魔力を棒のように固めて、左手の乱雑な一振りで魔物を吹き飛ばす。

 これも以前の目くらまし同様に特に名前が無く、即席魔力棒とか適当な呼び方をしている。

 

 魔物の数は3、恐らく群れの中でも下っ端なのだろうか。

 揃いも揃って痩せ細った狼型の魔物だ。

 大方、飯にありつけなかったので山を歩く私を襲う事に決めたのだろう。

 

 私としては、この辺の魔物は今となっては見慣れた相手ばかり。

 油断は禁物だが、相手の手の内は代わり映えしないだろう事が容易に想像出来る。

 

 

(最初の吹き飛ばしで警戒度こそ上がっただろうけど、空腹に負けて普通に突っ込んでくるでしょ)

 

 

 案の定、我慢出来ずに一匹が突っ込んで来る。

 少し遅れて後の二匹も続いてくる。

 連携もへったくれも無い、空腹に身を任せた破れかぶれの突撃だ。

 

 大人しく食われてやるつもりも無いので、いつもと変わらず──小説内では初の描写だが──さっさとお帰りいただこう。

 

 

色織り(ルーパパタ)四大元素(マハーブータ)────(アグニ)!」

 

 

 左手から炎を放ち、魔物を退却させる。

 退却を確認したら即座に水魔法をぶっ掛けて消火、炎上を防ぐ。

 

 種にもよるが、魔物とて不必要に狩って群れごと敵に回すのは好ましく無い。

 特にこの山に棲む狼型の魔物達は村に態々向かうようなタイプじゃ無いから、放置で構わない。

 

 それに今、この山ではしゃいでいる魔物は遅かれ早かれオクトーに斬られるのがオチだとも思うし。

 丁寧に展開して詠唱までする必要があったかはちょっと怪しいが、執拗に追われるよりはマシな選択肢と言えるか。

 

 

 魔力や元素を扱う上でのバランス感覚といった基礎的な事を除くと、魔法に大事なものは言霊と術式だ。

 ファンタジーな作品ならお馴染みと言えるし、この世界(グラブル)でも大事には違いない。

 とはいえ少し実情が違う所もあって、火力や精密性を求める必要が無い時や、逆に魔法に完璧に集中出来る環境下ならば言霊や細かい術式は省略できる。

 

 前者は相手の意識を逸らす目的だったり、限られた時間で発動しなきゃいけなかったり、グミ撃ちしたりする際に用いる。

 グミ撃ちは戦法としては下策?

 分かっていても見栄えが良いんだよなぁ、アレ。

 

 昔、遊びで魔法の水弾を作りまくり、木に向けてグミ撃ちをしたのだが非常に楽しかった。

 命中したのは数発で、しかも当たった箇所もまばらすぎて威力もお察し、トドメに私は動く事が出来ないぐらい疲弊したので使い道は0だったのだが。

 

 

 後者は前衛職がヘイトを稼いでいたり、完全に別の場所から魔法を行使する際に用いる。

 こちらの場合は複雑すぎる術式の時とかに使われるもので、結果的に言霊も無いと威力が足りないみたいな事も発生するらしい。

 村に住む数少ない魔導師のお婆ちゃんが言っていたので体験談なのだろう。

 

 私はそこまで大規模な魔法をそもそも教えて貰っていないし、開発もしていないので後者に関しては未経験だ。

 

 

 さて、先程私が使った魔法はエレメンタルキャストをモデルにした魔法陣展開術。

 そこから属性元素を選択して周囲から取り寄せ、混ぜ込んで発射する────文字で並べると複雑だが、やっている事は魔法戦士と変わらない。

 属性を選んで、それに応じた魔法を発動させるシンプルなものだ。

 

 随分とインドを感じる言霊だと思うが、前世の私の拗らせた趣味の一つであって、何か重要な意味などが内包されている訳じゃない。

 強いて言えば、その言葉に乗る()()という意味であのインド感溢れる呪文は私には必須なのだが。

 

 

(誰もが通る道でしょ……どこかの神話に魅せられるのは)

 

 

 要は厨二病を拗らせているのだが、結果として今世で唱えて使えるのだから人生は分からないものである。

 

 

 ……一度、私の人生が終わりを迎えている事に関しては禁句だ。

 

 

 

  §  §

 

 

 

 魔物の襲来はアレが最後で、夕方前に私は港町に到着した。

 

 

 門番が一応いるものの、村側から来る人間はほぼ無条件で通れる。

 それだけ村から来る人間が限られているという事なのだろうが、ザル警備と怒られないのだろうか。

 

 通行料なり証明書なりが必要になるとそれはそれで面倒だけれども、町の安全と引き換えなら安い手間だと思う。

 

 

────ただ、私が口を出す事でも無いだろう。

 

 

 門番さんに愛嬌を振り撒きつつ、市街地に足を踏み入れる。

 

 

 きっと他所から来た人にはこれでも小規模に見えるのだろうが、それでも私には胸が踊る大きな町である。

 

 山側から町に入るとすぐに広場に行き着く。

 多少の露店とベンチを除けばだだっ広いだけの空間だが、もうすぐ日が暮れ始めるという時間帯が重なり、かなり人が多い。

 行き交う人々の多くがヒューマンなのも相まって、潰されそうでちょっと怖い。

 

 然し怖がってばかりもいられない。

 何はともあれ先ずはよろず屋、シェロちゃんに会える事が今は楽しみなのだ。

 それにしても本当に人が多いな……道が分からないし、分かった所でその方向に流れていけるのか?

 

 そんな風に広場の隅で悩んでいれば、私の困っている雰囲気が外に漏れていたのか近付いてくるヒューマンの男女。

 

 雰囲気からして人攫いでも無さそう。

 優しい人達もいるもんだ、会話の流れ次第ではよろず屋まで案内してもらうのが得策だろうか。

 

 

 私に目線を合わせる為に屈んで話し掛けてきたのは女性の方だ。

 

 

「ねぇ、君。 もしかして迷子かな?

 それとも何処か行きたい場所があったりする?」

 

「あのね、よろず屋さんに用事があるの。

 シェロカルテさんのお店なんですけど、知ってますか?」

 

 

 女性のストレートな質問に、私は外見相応を意識して返す。

 初対面の人は未だに少し緊張してしまい、前世の私(中年陰キャ)がうっかり顔を出しかける。

 顔を出してしまえば口調が草臥れた社会人に早変わりしてしまうので、それだけは避けねばなるまい。

 

 

「よろず屋さん? なら大通りに出ればすぐだったよね?」

 

「うん。 お嬢ちゃん、もし良かったら僕達が案内しようか?」

 

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

 

 色良い返事を頂戴した。

 念には念を入れて警戒は解かないが、嘘を吐いたりしているようには聞こえないので素直に案内してもらう。

 

 

(人が多いから、有事の際に抜刀しにくい気がするな……

 村に帰ったら魔法戦士らしく、格闘術にも少しずつ手を出すか)

 

 

 なお前身の忍者なら兎も角、魔法戦士の格闘は殴る蹴るとは程遠い。

 但し、純粋な膂力や格闘技でハーヴィンが活躍する事の厳しさは、アルハリードがゲームでも語っていた通り。

 

 

 どうもハーヴィンという種族は筋肉が付きにくい。

 特に女性はこれが顕著で、好きでむちぷにボディをしている訳では無く、頑張ってもなんだかむちぷにしていくのだ。

 第二次性徴を控えている私ですら感じている悩みなので、多分ハーヴィン女子は全員この悩みと生涯向き合うんだと思う。

 

 

(まぁ、むちぷにボディにどうしてもなっていくのなら、主人公の性癖を歪ませれば良いだけの話よな。

 分かりやすく劣情をぶつけたりしないとは決めているが、主人公から劣情を向けられる事に関しては大歓迎だからね……♡)

 

 

 私が邪悪な主人公歪ませ計画を考えつつ、案内をしてくれている男女──予想はしていたがカップルだった──と軽い雑談を交わしていれば、10分も掛からずによろず屋に辿り着いた。

 まさか広場を真っ直ぐ突っ切って、港に向けて歩くだけの簡単な道だとは思っていなかった。

 

 カップルに礼を言って、よろず屋に入る。

 

 この島でのよろず屋は、分類するなら露店だろう。

 物が多いからか、戸や窓の概念が無いコンビニと言った方が正しい気もする。

 

 ドラフの男だったらすれ違えないだろう、狭めの通路だけ確保された品物の山を進んで行けば、目的の人物とご対面だ。

 

 

「おやおや〜? 初めてのお客さんですね〜」

 

「初めまして、ロイルミラと言います!

 ママからお手紙を渡すように言われてきました!」

 

「ご丁寧にどうも〜。 ロイルミラさんですね〜、私はシェロカルテと言います〜。

 どうぞご贔屓にしてくださいね〜!

 何かありましたら、よろず屋によろ〜ず……うぷぷぷぷ……!」

 

 

 ニコニコと、それはそれは愛らしい笑顔で語り掛けてくる────序でに極寒の駄洒落を開幕から飛ばすシェロちゃん。

 

 

 

 

 私と彼女の末永い交流は、この日から始まるのだった。




次回はシェロちゃんとのお話から始まり、港町での散策になるかと思います。


追記:フュンフの名に関してですが、当作品において『フュンフ』は本名として扱います。
オクトーの超越エピソードにて、フュンフの両親が『フュンフ』と呼ぶ事が一応の根拠です。
ハーヴィンの命名規則からは外れますが、ご理解の程よろしくお願いします。
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