ランボー / 怒りのメスガキわからせ   作:エロスはせがわ

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気にし過ぎ。アンタなんか誰も見てないのに。

 

 

 

 

 

「ぶっちゃけさー? “ちんぽ”とか言うのって、恥ずかしーよね~☆www」

 

 メスガキイエローが、「やれやれ」といった感じで、ぷるぷる首を振る。

 

「あたいら女の子じゃん? 花の化身なワケじゃん?

 ならもっと、清楚でなきゃダメでしょ☆」

 

「うん。ゲヒンなことばとか、ゆっちゃダメだよね♡

 よくないっておもう♡」

 

「淑やかさこそ美徳。

 乙女たる者、品性を培うべし」

 

 それにうんうんと同調するピンクとブラック。

 三人は円になってお喋りをしており、真剣な表情で意見を交わし合っている。

 まぁみんな幼い子達なので、いくら真面目であろうと、見ていて微笑ましいばかりの光景ではあるが。

 

 ちなみに、いま彼女達が着ているのは“修道服”。

 えらいちんまいシスターだな……って感じではあるが、まるで彼女達の心境の変化を表すかのように、とても清楚な服を身に纏っているのだ。

 

 エロかわいいヘソ出しキャミソールや、生足がまぶしい健康的なハーフパンツといった、いわゆる“メスガキ”的な恰好をしていたハズの彼女達は、先の一件で彼に()()()()()()()事により、この露出の少ない修道女ちっくな姿となっている。

 これは恐らく、「もうメスガキではなくなった」という、ある種の象徴的な物であるのだろう。

 

 そして関係ないが、小さな小さなシスターさんとなったこの子達は、見ていてホンワカしてしまう程に愛らしい。

 もし世の悪人たちが、今の三人を目の前にしたらば、思わず跪いて改心しちゃいそうである。

 汚れきった大人の醜い心までも、一瞬で浄化されてしまうかもしれない。まさに地上に降り立った天使そのものだ。

 

「あたいね? これからは女の子らしい言葉遣いをしようって、そー思ってるんだぁ~☆

 おじさん言ってくれたし……♥ がんばってみよっかな~って!」

 

「わたしも、おじさんをかなしませるよーなコトは、もうしたくないの……。

 よろこんでもらえるように♡ いっぱいスキになってもらえるように♡」

 

「想ってくれる人がいる。

 ならば私達は、それに恥じぬ振る舞いをしなければ」

 

 キラキラと後光が指す――――聖なる光がこの場を包む。

 あれだけ好ましくない言葉ばかり使っていた彼女達が、今はその行為を心から恥じて、反省している。とても綺麗な心で微笑み合っているのだ。

 それはまさに乙女、うら若き少女に相応しい姿。

 

「だからさー。これからは()()()()って呼ばな~い?

 そっちの方が上品な感じするっしょ☆」

 

「それいい! すっごくカワイイよっ!

 わたしも()()()()ってゆーね♡」

 

「なんという事でしょう――――

 あれだけ卑猥だった言葉が、“お”を付けた事により、見違えるよう(ナレーション風)」

 

 遠くの方でメスガキブルーが〈ズッコォーー!!〉とこけた。

 三人はそれに気付く事無く、キャッキャと話に花を咲かせる。

 

「あっ! あと『ですわ』とか付けたら、上品かもしんな~い!

 ランボーおじさま? その恥ずかしがり屋で小汚いパトリオットミサイル(意味深)を、鬼のようにこねくり回して差し上げますわ☆

 ブヒィ~と豚のように鳴く声が聴きたいですわ♥ とか言っちゃってwww」

 

()()()()のときも、りょーてをそえて、やさしくにぎってあげたほうが、じょーひんだよね♡

 ちゃんと『あーん』って、おくちのなかをみせてから、のんであげるの♡」

 

「彼女らの成長、矢の如し。

 メスガキ三日会わざれば、刮目して見よ」

 

「あー辛いわ~w おしとやか辛いわ~w

 でもまぁ、おじさんの為だし? やりますケドー☆

 この露出度クソざこな服も、()()()()()()()()()()()?w」

 

「おじさんが、あんしんしておちんぽできるように、がんばろーね♡

 もっとえっちで、いーこにならなきゃ♡

 いっぱい〈びゅっびゅ~♪〉ってしてもらうんだ♡」

 

男根(だんこん)を生やしておいて、普通に道を歩いてるとか、とんだエロエロ生物。

 メスガキを誘っているとしか思えない所業。

 だが我々は、彼を最大限尊重し、清楚であることを誓おう――――

 今日はノーパンです(報告)」

 

 引き続きワイワイ盛り上がるメスガキポリス三人を余所に、「こいつらシスターのコスってるだけじゃねーか」とブルーちゃんは思った。

 中身なんにも変わってねーじゃん。わからせとはいったい(哲学)

 

 それはともかくとして……、先の作戦で(形としては)ランボーの前に敗れ去ってしまった彼女だったが、今はすっかり意識を取り戻し、こうして元気な姿を見せている。

 

 ここは野営陣地として山の中に設置された、今回の事件のための対策本部だ。

 メスガキシティの人員のみならず、メスガキ州警察やメスガキ傭兵なども数多く動員されており、大きなテントやジープなどが所狭しと並ぶ、とても大規模な野営地である。

 

 ここの陣頭指揮を取っているメスガキ刑事の補佐として、現在ブルーはせわしなくパタパタとそこら中を駆け回り、メスガキ無線士やメスガキレーダー観測士などに指示を出して周っているのだ。

 

 それもこれも、全てはランボーを捕らえる為。

 今も山の中に逃げ隠れしている、あの童貞コミュ障ひきこもりの、ハリウッドざこちんぽおじさんを、一刻も早く町へ連れ戻すべく実施されている作戦である。

 

「とはいえ……あたし的には、あんまし重く見てなかったりするケド。

 おじさんはサバイバルの名手だし、ぜったい帰って来てくれるったら!

 なんにも心配ないし!」

 

 こんな大げさな事をせずもと、ランボーはメスガキシティに戻って来る。

 たとえ放っておいても、あたし達のもとへ帰って来てくれるという確信が、ブルーにはあった。

 なんせ彼女は、すでにランボーとの“ブライダルお姫様ちんぽ”を決めた(つもりでいる)ので、夫たる彼がこのままどこかへ行くハズがないという、確かな信頼があったのだ。

 今お腹には、ふたつも新たな命が宿っているんだから(※彼女的には)

 

 前は色んな事をウンウンと考えすぎ、妄想と現実との境目がよく分からなくなっちゃって、物凄くテンパってしまう事もあったのだが……。

 でも現在のブルーちゃんは、「あの時ランボーは助けてくれた」という確固たる事実と、ギュッと抱きしめてくれた時のあたたかな温もりを、しっかりと憶えている。

 それを想う時、彼女の心から不安や焦燥感は消え去り、とても満ち足りた気持ちになる。まるで毛布のような安心感に包まれるのだ。

 

 ゆえに、今の彼女は落ち着いたものだ。ただただ「風邪でもひいちゃったら困るし」という理由で、この作戦を実行しているに過ぎない。

 とても立派に、堂々と、しっかり自分の仕事をこなす事が出来ている。

 まだこんなに小さい子だというのに、ほんと大したモンであった。

 

「それにしても、マタニティドレスってゆーの、どこで買えるのかな?

 ネットでポチろうとしたけど、あたしのサイズって、無いっぽいんだよね……。

 なんでなんだろ?」

 

 これじゃあ、安心しておじさんと()()()()出来ないじゃないの。

 どーなってんのよ、この世界は。おかしいでしょホント――――とメスガキブルーは憤る。

 小学生はちんぽしちゃいけないってゆーの? そんな暴論ある? 馬鹿馬鹿しいったら!! とプンプンお冠であった。この世界は間違ってる。

 

 一体ちんぽを何だと思ってるんだ。おっきな大人ちんぽだよ? ランボーおじさんだよ?

 そりゃーして貰うでしょうよ。あたし今ビッチョンコですよ。キュンキュンいってますとも。

 ねぇ分かってる? 小学生は()()()()()()()()()? ……と。

 

「あっ……ちょっとおトイレ行ってこよっかな?

 おじさんの感触が残ってるうちに! もったいないもったいない♥」イソイソ

 

「――――ああブルー、るすにして悪かったわね。もうモンダイないわ」

 

 ブルーちゃんが〈ガッシャーン!〉とこける。

 自分の世界に入っていた所に、いきなりメスガキ刑事(上司)に話しかけられた。

 ペンだの書類だのが、地面に散乱する。

 

「お花つみに行くんでしょ? 代わるわ♪

 でもここヤガイだし、あまり大きな声だしちゃダメよ?(はぁと)」

 

「ぼっ……ぼぼぼボスッ!?!? 戻られたんですカ!?」

 

 ほどほどにね? アタシやりすぎて、()()()()()()()()()()()()――――

 そんな意味深なアドバイスをしつつ、デカちゃんがポンとブルーの肩を叩く。

 

「さてと。今どんなジョーキョー?

 おじさんが無線とか使ってくれれば、ぎゃくタンチもできるんだけどねぇ」

 

「……」

 

 あわあわと狼狽えるブルーをその場に残し、彼女が情報収集班の所へ声を掛けに行く。

 信頼するボスが来てくれた事で、この場の子達が笑みを浮かべ、とても喜んでいるのが分かった。

 けれど……。

 

(目が赤い……。僅かだけど、ほっぺに涙の跡がある。……ボス)

 

 元気だし、気丈に振舞ってはいるが、ブルーだけは刑事ちゃんの様子に気付く。

 少し席を外していた間に、彼女がひとりで泣いていたという事に……。

 

 こういう事は、たまにあった。

 彼女は人前で泣かない。絶対に弱みを見せない。部下たちを不安にさせたりしない。

 けれど、いつも一人っきりで悲しみを抱え、こうして誰もいない所で涙を流している事を、ブルーだけは知っていた。

 この人に憧れ、いつも見ているブルーだからこそ、気付く事もあった。

 

 

 後で聞いた所……ボスはランボーを目の前にしながらも、あえて逃がしてあげたのだという。

 彼が混乱から立ち直り、ちゃんと物が判断出来るようになるまでの時を、与えてあげるために。

 ぶっちゃけた話、この人だったら()()()()()()()。しかも余裕で、有無を言わさずに連れ戻すことも出来たハズ。

 

 簡単なのだ、彼女がランボーを倒すことなど――――赤子の手を捻るが如くに。

 あの森で、捕らえるのは至難だと思ったのは、あくまで「彼という人間を尊重するならば」の話である。

 

 女の子には決して手を出せないランボーに対し、無理やり【アルティメット小学生だいしゅきホールド☆】からの、【ちゅきちゅきメスガキべろちゅー♥】のコンボでもかまし、脳味噌をトロットロにしてやれば良い。それだけで彼を完全に無力化出来ることだろう。

 

 どれだけ屈強だろうが、英雄だろうが、つよつよ戦闘力だろうが。

 お忘れなく――――ヤツは童貞(チェリー)なのだ(揺るぎない真実)

 普通に考えて~とか、恐らくは~とか、そんなレベルではない。もう“絶対的な事実”として、彼が本気を出してかかってくるメスガキに()()()()()()()()

 

 たとえ、ねずみがネコを撃退する事があろうと、バンビの蹴りがライオンを倒す事があろうとも、ランボーが刑事ちゃんに勝つことだけは、天地がひっくり返ってもアリエナイ。

 鋼鉄の斧が、木をなぎ倒すように。火にかけられた水が、蒸発してしまうように。

 

 たとえどのような紆余曲折を経たとしても、やがて彼は必ずデカちゃんに、カラッカラになるまで搾り取られるだろう。

 それは世界のルールにも似た、“もう決まっている事”。

 

 しかし……そんな絶対強者である彼女が、彼を見逃した。

 ひとり悲しみを抱え、ポロポロと涙を流している。

 寂しい、つらい、恋しいと……、彼を想って泣いているのだ。

 

 それはとても健気で、いじらしく、心から彼を想えばこその事なのだと、ブルーは感じた。

 

 すぐにでも会いたい、一緒にいたい、無理やりにでも手に入れたいハズ……。

 でもこの人は今、メスガキである自分を押し殺してまで、彼に尽くしている――――

 

 

 

「あ! ねぇバイ〇グラって、ちゃんと注文したぁー?

 こんかい200人ドーインしたって事は、おじさんに2()0()0()()()()()()()()()()()()()

 アタシの見立てでは、彼ってソーローのゼツリンだけど。さすがに200回はねぇ?」

 

「…………」

 

 ――――おじさん死んじゃうっ! おじさんにげてっ!

 そんなブルーの心の叫びが届いたかどうかは、定かではない。

 

「ん、どーしたのブルー? “くちゅくちゅ”してくるんじゃないの?

 たくさん水分でてくだろーから、いまのうちに塩アメたべとくぅ?(はぁと)」

 

「くちゅくちゅいーです! 今はやめときますっ! あたし仕事中だし!」

 

「そうね♪ おじさん戻ってきたら、もーっとイイ事してもらえるんだし♪

 おたがい水分ため込んどこっか。ょぅι゛ょのポカリスエットをね♥」

 

 じゃああたしも、おじさんにイオンサプライしますっ! ボスとダブルでいきますっ!

 あらま、お腹タプタプになっちゃうね♥ おじさん幸せ者だわ♥ 

 そう二人でキャッキャと盛り上がる。少女二人の無邪気なお喋りではあるが、その内容が「二人でおじさんを逆レ〇プする!」という相談だったりするが。

 

 ここはメスガキシティ。世間一般の常識など通用しないのだ。

 アメリカって州によって法律ちがったりもするし。

 

「にしてもぉ! おじさんつよつよでしたねぇ!

 ムキムキだし、動きも素早いし、もーメッチャかっこ良かったですーっ!」

 

「うんうん♪

 おじさんとジャングルでたたかったら、かてる人なんて、いないんじゃないかなぁ?

 それにハンサムだし、セージツでやさしーよね♥

 きっとかみさまが、アタシ達のために遣わして下さったのね……。

 アタシにとっては、キセキみたいな人……」

 

 デカちゃんとブルーが「うふふ♪」と微笑み合う。

 昨日見たランボーの雄姿を思い出しながら、幸せな表情を浮かべる。

 まぁデカちゃんに関しては、一部ぱんつ被ってた記憶とかもあるけれど、それもまぁ愛嬌という物だ。確かに驚きはしたが、おじさんって天然だし、ぜんぜんOK(クソでか慈愛)

 

 カワイイ部下と、頼りになる上司。

 彼女達は心地よい会話の中、あったかいコーヒーを片手に、束の間の安らぎに浸っていた。

 しかし、突然……。

 

 

「――――神でも奇跡でも無い。

 彼を作ったのは、()()()()()()()()()

 

 

 この場に響いた、力強い声。

 彼女達はハッとして立ち上がり、こちらへ歩いてくる幼女へと向き直った。

 

 

 

 

 ♥ ♥ ♥

 

 

 

 

 一見して、軍服。それもかなり高位の。

 斜めに被った緑色の帽子が、彼女がスペシャル( 特別 )であるという事と、比類なき戦力を持っている事を、二人に突き付けている。

 

 なれど、その身は明らかな幼女。

 この場にいる誰よりも、背丈がちんまい女の子だった。

 ロングコートも大きめの帽子も、どうやったって()()()()()()()()ようにしか見えない。

 袖なんかダボダボで、いわゆる“萌え袖”ってヤツだし。

 そんな大層な恰好をしてても、ぶっちゃけ()()()()であった。

 

「なによこのチビ。ここ立ち入り禁止なんですケドぉ?

 どーやって入って来たのよ、アンタ」

 

 眉間に皺を寄せたメスガキブルーが、ツンデレ全開でドシドシと足音をたてながら、幼女に近付いていく。

 そのまま掴みかからんばかりの勢いで、彼女の眼前に立った。

 

「あのねぇ? おねーちゃん達は、いま仕事中なの!

 お菓子が欲しいんなら、外にいる連中に、チョコバーでもねだって……」

 

 だが、幼女がスッと懐から取り出した物を見て、ブルーは〈ピキーン!〉と動きを止めてしまう。

 これは……“ランボーの写真”だ!!

 しかもシャワーあがりでお着換え中! 上半身裸! めっちゃ逞しいっ!! 胸毛うすっ!?

 

「――――取って来い」

 

「きゃーーん♥」

 

 まるでトランプを使うマジシャンのように、幼女がピンッと写真を飛ばす。

 それを「わおーん♪」と犬のように追いかけ、ブルーがこの場から退場していく。ポンコツである。

 

「お前も欲しいか? なぁに、ネガも手元にある。

 遠慮することは無いぞ」

 

「……あんたは?」

 

 ピラピラと写真を見せびらかされ、思わずそれに手が伸びそうになるが……。刑事ちゃんはグッとそれを堪えながら、しっかりと幼女の顔を見る。

 こんな事は人生で初だったが、ガクガクと震えそうになる身体を、必死で抑え込んで。

 

 

「サリー・トラウトマン――――

 アメリカ陸軍大佐、サミュエル・トラウトマンの孫だ。

 お爺様の名代として、参上(つかまつ)った」

 

 

 幼女の右目がカッと見開かれ、メスガキ刑事を射貫く。

 その威圧感、圧倒的な雰囲気! まるでグリズリーの前にでもいるかのようだ! こんなにもちんまい女の子のに!!

 

「そうそう、ここの流儀で言うなら……【メスガキ大佐】か?

 好きに呼ぶと良いぞ、クイーン・ビー。*1

 おそらく我ら二人は、長い付き合いになるだろうからなぁ。()()()

 

「……っ!?」

 

 分からない。いまメスガキ刑事は混乱の最中にいる。

 知らない、こんなヤツは見た事がない。()()()()()()()()()()()!?

 そして何故、おじさんの写真など持っている!? コイツはいったい何だ!?!?

 

「ちょっとアンタぁ! なーにボスにナマイキな口きいてんのぉー!」

 

「えっ!? ブルー?!」

 

 突然ドドドっと砂煙を上げながら戻ってきたブルーちゃんが、再び「ガーッ!」とメスガキ大佐に詰め寄る。

 速攻で写真をとって来て、速攻で戻って来たのだろう。おバカだけど無駄にフィジカルがあった。

 

「この人はねぇ、あたし達のリーダーなの!

 メスガキシティを仕切ってる、超えらい人なんだからねっ!

 おじさんの写真くれたのは、すんごいありがとうだけど……、でも馴れ馴れしくしちゃダメだったら! 敬意を払いなさいよ!」

 

「ちょ……! やめなさいブルー!

 分からないの!? この子の“メスガ気”は……!」

 

「いーえ、やめませぇーん! いくらなんでも、ボスに失礼すぎまぁーす!

 ねぇ大佐ちゃん? アンタなんかこの人にかかれば、すーぐお空の星の仲間入りよ?

 なんたってボスは、1秒間に10回も『ちんぽ』って言える、ものすごーいメスガキだし!

 あたしが優しく言ってる内に、“ごめんなさい”しなさいったら! そうでないt

 

「――――ほほう」

 

 すぅ……。とメスガキ大佐が息を吸い込む音が、静かにこの場に響く。

 

 

ちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽぉーッ!』(0.9秒)

 

「 っ!?!? 」

 

「 っっ!!?? 」

 

 

 ズガァァーーン!! と雷鳴が二人の頭上に落ちる。

 いま目の当たりにした、凄まじい絶技の前に。

 

「ふむ。久方ぶりだったので、少々鈍っているか。

 では偉大なる先達よ、()()()()()()()()?」

 

「あっ……あわわわ……!」

 

 ブルーが後ずさる。ブルブルと震え、瞳孔の開いた目をまん丸にして。

 メスガキとしての格の違い――――それを身をもって理解し、敗北を認める。

 何をもって負けと思ったのかは知らないが、とにかく屈したのだ!

 

「ツンデレ系メスガキと思い、期待していたが、所詮は“わからせられた”雌犬か。

 ほれエサだ、とって来ると良い」

 

「わおーーん♥♥♥」

 

 ランボーの写真(寝顔Ver.)を投げられ、ブルーが一目散に駆け出していく。

 わんこのように鳴きながら、四足歩行で元気に走って行った。無駄にプリチーである。

 

「ちんぽもロクに見たことが無く、男を搾り倒した経験も無い……。

 それでよくメスガキを名乗れたものだ。片腹痛い」

 

「っ!」

 

「だが、お前は別だぞ? クイーン・ビー。

 わたくしと比肩する“気”を持つ者など、これまで見たことが無かった。

 流石はメスガキの本場、と言っておこう。この()()も捨てた物ではない♥」

 

 改めて、メスガキ大佐がデカちゃんに向き直る。

 なにやら機嫌良さそうに、色っぽい流し目をして。

 

「……おほめにあずかり、コーエーよ大佐?

 ちなみにアンタ、いままで何本くらい、ちんぽをしぼっt

 

「――――そそそそんな事、今は関係ないらろぅ!!!!

 わたちはランボーしゃまを、おしゅくいに来たのらっ!!」

 

 訊こうと思ったら、顔まっかにして遮られた。ちんまい身体で「むきぃー!」と怒りながら。

 なんか口調も幼児っぽくなってたし。とても可愛かった。

 

(まだ見た事ない、とか言えるかぁ!!

 もしそんなの見ちゃったら、わたくし鼻血だして死ぬわ!)ボソッ

 

「ん、なんか言った大佐? ちょっと聞こえなかったケド……」

 

「いやいーのら! なんでもにゃいのら! ちんぽだいしゅきれす!!(ワチャワチャ)

 ふははは、これから仲良くしようじゃないかクイーン・ビー。

 共にランボー様を捕まえるぞ♥」

 

 萌え袖をブンブン振り回しながら、必死で取り繕う。

 そして大佐ちゃんは(無表情な彼女としては)友好的な笑みを浮かべ、自身がこの作戦へ協力することを提案するが……。

 

「なに言ってるの? はやくここを去りなさい。

 どうやって来たのかはしらないけど、()()()()()()()()()?」

 

 厳しい目つきで、それを一蹴する。

 

「ふふ。構わんよ♥

 もしそうなれば、お前とルームシェアでもするさ。

 彼と三人で暮らすのも悪くないな?」

 

「ふざけないで。心配して言ってるのよ……。

 それにこれは、この町のモンダイよ?

 たしかにアンタはすごい子だけど、がいらい人のブガイシャ。

 この件は、アタシがちゃんとカイケツするわ。おじさんを連れてこうなんてしても……!」

 

 取り付く島もなく、頑なに拒否。

 だが大佐ちゃんは、そよ風にでも吹かれたかのように、うすく笑い続ける。

 

「分かっていないようだな。別にランボー様の為に言っているのではない。

 たしかに彼の保護は、なにより優先すべき急務ではあるが……」

 

「えっ?」

 

「わたくしは今、お前達の為に言っている。()()()()()()()()()()()()()

 彼が元グリーン・ベレー、……いや“比類なき兵士”だという事は、もう知っているな?」

 

 ニタリと、口元が歪んだ。

 三日月のように、切れ長に、大佐がいやらしく笑う。ゾッとするような笑顔で。

 

「――――壊してしまえよクイーン・ビー。

 彼の力を以って、()()()()()()()()()()

 あの方なら、あの比肩する者がないほどの英雄であれば、それが出来る」

 

 ここはメスガキの町。女の子だけが住む王国。

 だが楽園などではない、“監獄”だ。

 彼女達は、囚われのおひめさま、そのものなのだから。

 

「というよりも……すでに壊れ始めている。

 エロかわで、生意気な女の子しかいないハズの町へ、彼が足を踏み入れた時点でな?

 そうでなくては……、例えわたくしであろうと、外来人がここに入れるものか。

 すでに歪みは生まれ、ヒビが入っているぞ? このメスガキシティは。

 ははは! 流石はあの方だと言う他ないな! ハリウッド・クォリティだ!!」

 

 ふわりと大佐の前髪が浮き、オッドアイの左目が彼女を射貫く。

 悪魔……いや“魔人”という言葉が、メスガキ刑事の脳裏をよぎった。

 コイツは人でもメスガキでもない、得体のしれない()()だと。

 

 

「壊せ、利用しろ、()()()()()()()()()()()

 そのためには、彼をよく知るわたくしが必要だろうと、言っているのだ。

 お前の指揮と作戦は悪くない、だが一枚かませろ。

 いい子チャンなのは結構だが、どうにも優しくていかん……。甘さを失くしてやる」

 

 

 

 

 

 そうすれば、この町は真の“楽園”となる。

 どれだけ女の子がいようとも、そこにちんぽ無くして、何がメスガキか――――

 高らかな笑い声が、テントの中に響く。

 

 

「人員は200か? なら同志よ、“近藤さん”を200用意しておけ。

 おっと……我々はメスガキ。まだ初潮前だったなぁ! あーーっはっはっは!!!!」

 

 

 いま目の前にいる、とてもとても小さな女の子を、彼女は驚愕の目をもって見つめる。

 ()()()()()()()()()()(確信)

 

 

 

 

 

 

 ♥ ♥ ♥

 

 

 

 

 

「何度も通信していますが、応えないんです。無駄かもしれませんよ?」

 

「構わん。応答せずとも聴いているハズだ。

 わたくしが代わろう」

 

 辺りはすっかり暗くなり、森に夜がやってきた頃。

 大佐と刑事ちゃんの二人は、いまランボーに向けて無線を送っているメスガキ通信士に声を掛け、席を譲って貰った。

 

 ちなみに彼が持っている無線機は、あの時に投げてやったランドセルの中に入れていた物。

 おねがい。何かあった時のために持っておいて。どーしても困っちゃった時は、迷わず連絡してね?

 そう刑事ちゃんからの短いメッセージが添えられており、たとえ返事がなくとも、きっと彼はこれを持っていてくれている、と思われた。

 

 そして今、罪悪感にギュッと手を握りしめる刑事ちゃんを余所に、キリリとした表情をする大佐ちゃんが、無線機のマイクを受け取る。

 

「中隊長代理より、大鴉(おおがらす)へ。

 大鴉、応答せよ。お応え下さいジョン・ランボー様」

 

 ランプに照らされた薄暗いテントに、大佐ちゃんの静かでハッキリした声が響く。

 刑事ちゃんを始めとするメスガキ達が、その様を固唾を呑んで見守っている。

 

「わたくしは味方です。……これで信じて頂けますか?

 ――――ベイカーチーム、これより点呼を始めるっ!!

 よわよわちんぽのランボー! くそざこドMのメスナー! いんきんたむしのオルテガ!」

 

 ずっこぉぉーー!! とその場の全員がこけた。

 ついでに森にいるランボーもこけた。

 

「デブ専ドレッド! 短小ローヤンセン! ほもほもランフォース!

 エロサイトでウイルス感染のベリー! 親にせんずり見られたグラッカウワー!

 確認せよ大鴉! 応えなさいっ! でないと全員童貞だって事をバラs

 

『――――サーッ! みんな死にましたッ! サーッ!!』

 

 速攻で応答あった。遮るように叫んでた。

 この場の皆はほっとするような、馬鹿馬鹿しいような、微妙な気分となる。

 

「ああ良かった♪ こちらトラウトマン大佐の孫、サリーです♥

 憶えていらっしゃるかしら?

 わたくしのおまたとか胸とか、恥ずかしい所も、すべて見て頂きましたね♥♥♥」

 

『お……オムツを変える所や、風呂に入れられているのを見た、という意味ならば……。

 君なのかサリー? 本当に?

 だって俺が会ったのは、まだ赤ん坊の頃で……』

 

「ええそうですね♪ ()()()()()()()()()()()()

 あぁ、わたくしはこの人と結婚するんだ~って、ベビーベッドの上で確信しましたもの♥

 こ れ は 運 命 だ と 」

 

『…………』

 

「あ、無線置いたら殺しますよ? どうかそのままでいらしてね♪

 サリーとお話いたしましょう、ランボー様♥♥♥」

 

 二人の得も知れぬ会話はともかく、一同はワチャワチャと忙しく動き始めた。

 応答が返って来たことにより、逆探知が可能となる。ようやくランボーの居場所をつきとめる事が出来る。急げ急げとばかりだ。

 どーでもいいが、なんだその猫なで声は。ランボーと話してるからって、気持ち悪いくらいにネコチャンを被っていてムカつく。

 

「ランボー様、貴方はご無事ですか? 体調は?

 たしか腰ミノを穿き、上半身裸で、ょぅι゛ょのぱんつを被ってらしたそうですが」

 

『も……問題ない。

 彼女から受け取った中に、シャツとズボンがあったんだ。

 あの時の俺は、どうかしていた……。彼女に感謝してると伝えてくれ』

 

「そうですか。けれど先ほどの“みんな死んだ”とは、どういう事です?

 確かデルメア・ベリー様は、ご生還なさったはず。

 お爺様より、当時のグリーン・ベレー隊員のお話は、よく伺っておりますわ」

 

『ヤツも死んだ……ベトナムの後遺症だ。

 枯葉剤で、癌におかされて』

 

『なんと……。申し訳ございません。存じませんでした。

 この事は、お爺様にもお伝えしておきますわ。

 エロいフィッシング詐欺に引っかかりはしても、勇敢な御方でしたのに……お悔やみ申し上げます』

 

 ランボー以外の隊員は、すでに全滅していた。

 馬鹿な会話の中で語られた壮絶な真実と、かの戦争の残酷さに、一体なにを思えばよいのか分からないメスガキ達だ。

 

「でもサリーは、貴方の声が聞けて嬉しゅうございます♪

 もう7年ぶりになりますもの。今日はわたくしにとって、人生最良の日です♥」

 

『…………』

 

「しかしランボー様、少々暴れ過ぎたようですね?

 パトカーの窃盗、器物破損、町での公然猥褻……。まぁ罪に問わせたりはしません。

 ですが、そろそろ終わりにいたしませんこと?

 町の外まで、わたくしがエスコートして差し上げますわ♥♥♥」

 

 どの口で言うのか。捕まえる気マンマンじゃないか。彼が油断した所を、パクッといくに決まっている。

 それを知っているメスガキ刑事は、思わず眉を顰めるが……でも片棒を担いでいるのは自分も同じなのだ。

 ゆえに、ギュッと拳を握りしめながら、ただじっと黙っていたのだが……。

 

 

『――――駄目だ。彼女を()()()()()

 

 

 ふいに返って来た応答に、刑事ちゃんはハッとする。

 思わず無線機の方を見た途端、彼の真剣な顔が頭の中に浮かぶ。

 

「馬鹿なことを仰らないで? 名誉勲章を受けた、貴方ともあろう御方が。

 メスガキなど、取るに足らない存在。

 少しくらいの“おいた”など、かわいいモノじゃありませんか。

 これ以上、関わる必要がどこに?」

 

 懐柔しようとしていた大佐ちゃんは、彼の思わぬ返事に、声を固くするが……。

 

『ああ、彼女は可愛いよ。愛おしいと感じる……。

 だがあれは、()()()()()()じゃない――――俺が正してやらなければ』

 

 息が詰まり、目を見開くメスガキ刑事。

 対して大佐ちゃんは、自分の中で凄まじいまでの憤怒が湧き上がるのを、ハッキリと感じた。

 

「わ……わたくしは!? わたくしは可愛くないのですかっ!?

 いつもお爺様は褒めて下さいますけど!? ティーン雑誌のモデルやりましたケド!?」

 

『いや、君の顔を見たのは、もう何年も前だろう。

 俺は今の君を知らん』

 

 ガーン!? と打ちひしがれるメスガキ大佐。

 正直者で、デリカシーという物が皆無なランボーの言葉に、のけぞる位のショックを受けている様子だ。

 こんだけ長年想い続けてるのに、遥々ここまでやって来てるのに、ちょっと可哀想な気がしないでもなかった。

 

「なんて事……。あれだけ地獄を這いずり周り、ようやく貴方の戦争は終わったのです。

 なのに、まだ戦おうと仰るのですか?」

 

『…………』

 

「何が貴方をそうさせるのです。なぜ自ら戦場へ?

 わたくしが居ます。これからは、ずっとお傍におります。

 本当はオックスフォードを出て、立派に成長した姿で、お迎えに上がるつもりでしたが……もうそんな事は言っていられない。

 貴方をお守りするのが、わたくしの生涯の仕事。そのために、わたくしは生まれて来たのです」

 

 さっきまでの演技とは違う、悲痛なまでの声。

 その想いのこもった言葉に、聴いていた者達も言葉を失くす。

 固い覚悟と、深い愛情。……しかし。

 

 

『大人の、役目だ――――』

 

 

 知らぬ者が聞けば、どこか素っ頓狂に聞こえる言葉。

 真剣な声だが、場の雰囲気にそぐわない、ランボーの天然さを感じてしまうような物だった。

 

『女の子が、あんな事を言っちゃ駄目だ。してはいけないんだ。

 彼女は愛らしく、心優しい子なんだから……』

 

『俺も嫌だ。叱りたくなんて無い! 足が震えてくるんだッ……!

 でも彼女のために、やらなくてはならんッ……!』

 

『あの子を大切に思うのなら。真剣に子供と向かい合うなら。

 それはいけない事と、俺が“わからせ”なければ――――』

 

 声が震えている。いま彼がとてつもない恐怖と戦っている様が、アリアリと分かる。

 人と関わった事がなく、これまで孤独に生きてきた男。……その彼が“決意”をした。

 向かい合おう、()()()()()()()()()、心に決めたのだ。

 

 その尊さに、大佐は言葉を失う。

 これまでずっと盗聴だのストーキングだのをし、全てを知っていると自負していたランボーとは、あまりにも違うまっすぐな姿。

 この人はわたくしが居なきゃ駄目、ずっと支えてあげないと。

 そう思っていた幼子のような男が、いま立派に“人間”として開花しようとしてる――――

 

 

 

「ごめん、ちょっと貸して」

 

 放心し、いつのまにか口元から放していた無線機を、刑事ちゃんが奪い取る。

 気付かぬ内に目の前に来て、そっと優しい手つき、真剣な顔で。

 

「あー、おじさん聞こえる……?

 ちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽちんぽぉーッ!」(0.7秒)

 

『――――こらぁーーッッ!!??』

 

 思わず怒鳴ったランボーの声が、大きくテント内に木霊した。

 関係無いけど、はやっ!? さっきの大佐ちゃんより遥かに凄かった。

 これが恋心の力なのか。

 

「なんちゃって! アタシよおじさん♥

 そんな山の中じゃ、()()()に困るでしょ? アタシを使ってね♪

 メスガキダイヤルQ2です。1分20ドルよ♥」

 

『 やめないか! どうして君はそうなんだッ!! 』

 

 オロオロするランボー。そして「えへへ♪」と笑うデカちゃん。

 その顔は、本当に嬉しそう。とても幸せそうな笑みに見えた。

 さっきまでの涙なんか、もう面影すらない。

 

「るっさいのよ、お じ さ ん !  ざぁ~こ♥ ざぁ~こ♥

 退きません! 媚びへつらいません! 反省しませぇん!

 メスガキに逃走はない事だぁーーっ♥」

 

『何を言ってるんだ君はッ!?!?

 すまん、俺には分からんッ! ずっと戦場暮らしだったんだッ!』

 

 ランボーはニコ動なんて観ないので、北斗の拳とかナム豆鳳凰げんこつの事は知らなかった。とても残念な事だ。面白いのに。

 

「なになにー? おじさん何でおこってるのぉー?

 あ、かんけーないけど今日ね? ともだちできたんだぁー♥ いーでしょー♥

 あたしアメリカ生まれ♪ メスガキ育ち♪ エロそうな子はダイタイともだち♪」

 

『 ギリッギリじゃないかッ! 怒られるぞッ!! 君に怖い物はないのかッ!!?? 』

 

「ねぇねぇ、今からアタシすごい名言をゆーから、ちょっと耳をすませてきいてもらえる?

 ――――――ともだちんぽ!!!!(良い笑顔)」

 

『 元気に言うんじゃないッ!! 引き付けて放とうとするなッ!! 女の子だろうッ!! 』

 

「えー。アタシちゃんと乙女だよぉー。メスガキだけどネー♪

 かわいい服きて、せーぎ(※ダブルミーニング)の為にがんばってるしぃー。

 これってもう、()()()()()()()()()()()()()()? プリティちんぽでキュアキュア♥」

 

『 本当にやめろッッ!!!!(迫真)

  いつか殺されるぞッ! 俺と一緒に謝ろうッ! 今すぐッ!! 』

 

「ドリンクバーの機械から、ちんぽ出てたらいいのにね。そう思わない?」

 

『 ――――どうしたら許してくれるんだッ!? 勘弁してくれッ! 俺は死にそうだッ!! 』

 

 嵐のような綱渡りとチキンレースに、ランボーがどんどん憔悴していく。苦労人だ。

 でもデカちゃんは今キャッキャと笑い、彼とのお喋りを心から楽しんでいるのが分かる。

 

 まさに、子供のように無邪気に。

 この町の管理者として背負っている重圧や、悲しいメスガキシティの事情など、今この瞬間だけは忘れられる。

 彼といるとき、彼女は子供らしい本当の笑顔を取り戻す。

 

「ねぇおじさん……?

 さっき言ってたけど、アタシを()()()()()()()()って……ホント?」

 

 ふいに彼女が、優しい声。

 これまでのおふざけとは違う、まるでモジモジと恥ずかしがっているかのような、とても小さな声で囁きかけた。

 

「おこってくれる? アタシと向き合ってくれる?

 こんなワガママな、わるい子でも……アタシの目を見てくれる?」

 

「……信じて、いいかな? 今度はうそじゃないって。

 おじさんをまってても、いいかな……?」

 

 キュッと、胸元で無線機を握りしめる。

 縋るように、怯えるように。お父さんの腕に抱き着くように。

 

 

「ここにいるよ。メスガキシティの中心。

 アタシを――――むかえにきて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その表情に、胸が締め付けられる。

 遠くにいるあの人に、胸いっぱいの想いを届ける、女の子の顔――――

 

 幼い、でも美しい。とてもキレイだ。

 その小さな小さな乙女の気持ちは、今しっかりと、ランボーのもとへ。

 

 

『ああ、待っていてくれ。……必ず行く』

 

「うん、気を付けてねおじさん……。まってる」

 

 

 

 二人だけの空間。二人だけの時。

 

 それを惜しみながら、この気持ちをしっかり胸に刻み込み、二人は無線機を置いた。

 

 

 

 

 

 

 

*1
【クイーン・ビー】 女王バチの事。スクールカースト最上位の、クラスのマドンナ的な女の子を指して使う言葉


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