ランボー / 怒りのメスガキわからせ   作:エロスはせがわ

17 / 18




君が死んだら……、俺も死ぬ。

でも俺が死んでも、君は死ぬなッ!!



君一人でも、愛は生きる……。

俺一人では愛は死ぬ……!



――――しゃべるなッ!! 何もいうなッッ!!!!


目を見ろ、何が見えた……?

炎が見えたか

君を愛する、炎が見えたか!?



――――さあ来いッ! とんで来いッ!!

抱いてやるッ……! 抱いてやるぅぅぅうううッッ!!!!






~西〇秀樹【ジャガー】より~








えっ、素直になる薬? ……ちょ、やめてよ! 言わないったら! 私ぜったい言ったりしな……ってあああ、あんたの事が好きッ!!!!

 

 

 

 

 

「はぅ~♥ おじさんカッコよすぎるよぉ~♥♥♥」ヘナヘナ

 

 想いの籠った言霊。全てを君に捧げる、という宣言。

 ハリウッドスターもかくやという、ダンディで素敵なおじさまの、情熱――――

 

「ちゅきぃ~♥ おじさんちゅきぃ~♥ チュッチュしてぇ~♥」トローン

 

 先ほど目にしたランボーの姿、その熱い言葉に、デカちゃん改めエイドリアンちゃんは、もう腰砕けであった。

 瞳は【はぁと】の形となり、下腹部の辺りから謎のおつゆが溢れ出し、もう床はビッチョンコ。

 足どころか、腰にも腕にも力が入らず、その場にヘナヘナと座りこむばかり。

 YES! フォーリンラブ!

 

「あわわ……、あわわわわ……!

 もうダメ、なにも考えらんない……。

 今すぐちんぽほしい……! ぎゅ~ってしてほしいっ……! おじさぁ~ん♥♥♥」

 

 凄い人だっていうのは知ってた。優しい人だっていうのも知ってた。

 でもまさか、これほどだなんて……。どれだけ拒絶しても、真っすぐアタシの目を見てくれるだなんて……。

 お前を抱くと、言ってくれるだなんて……。

 

 メロメロだ。もう完膚なきまでにやられた。

 元からゾッコンだったというのに、アタシの心は今、完全に溶かされてしまった。

 ぜんぶ全部、おじさんの物にされてしまった。

 

 あれだけ心を苛んでいた罪悪感、トラウマ、劣等感――――

 彼の未来のことや、こうすべきだっていう道理、管理者としての重圧――――

 

 そんな全てが跡形もなく消し飛び、どこ吹く風。

 いま彼女の頭にあるのは、あのカッコ良くて、炎のような熱さで自分を愛してくれる、宝物のように素敵な彼の事だけ。

 

 その温かく逞しい胸に、〈ピョーン!〉と飛び込んでいきたいという、止められない想いだけだ。

 

「ムリよ、ここまでされたら……。

 もう帰れなんて言えない。もう離れらんないっ……!」

 

 受け止める以外、アリエナイ。

 向かい合うこと以外、デキナイ。

 

 臆病で、人見知りで、あんなにも傷だらけの心だった彼が、そうしてくれたんだから。

 迷いを捨て、己の全てを捧げてまで、愛すると言ってくれたのだから。

 

 なら自分も同じようにしなければ、申し訳が立たない。

 恋する乙女の矜持が、彼から逃げることを許さない。

 好きならば、一緒にいたいのならば、あの人と対等であらねばならない!

 

 

「――――受け入れなきゃ、彼のジョーネツを。

 女の子として。ひとりの()()()()として」

 

 

 

 

 愛に生きるが、我がさだめ。

 尽くし、捧げ、包み込んでこその乙女。

 

 出会い、触れ合い、想いを通わせ、心でぶつかり合ってきた。

 

 好きですおじさま。大好き。

 貴方に恋した事が、アタシの誇りです――――

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「うおぉぉぉ! エイドリアァァーン!! うおぉぉぉおおおッッ!! 」

 

 ランボーは駆ける。

 一刻も早く、彼女のもとへ向かう為に。

 

「エイドリアァーーン!! 顔を見せてくれぇーーーッッ!!!!」

 

 熊のような雄たけびを上げながら、階段を駆け上っていく。

 今この建物は、彼女以外の子は全て退去しており、まったく人気がしないから良いものの、もし誰かがこれを聞いたら「ビクッ!?」としてしまうに違いない。

 彼のマッチョな腹筋から絞り出される凄まじい大声が、もうそこら中に反響している。

 

「好きだぁ! エイドリアァーン!!

 こんな気持ち初めてだぁぁッ!! エイドリアァァーーン!!!!」 

 

 ランボーは叫ぶ! 胸いっぱいの愛を!!

 彼は心から人を愛そうと決意し、その想いに燃えているのだ!!

 

 ちなみに、先ほど1階にあるエレベーターを使おうと試みたのだが、そこは棚だのソファーだのといったバリケードで塞がれていた。きっと侵入された時への用心なのだろう。

 今のランボーには、これを撤去している時間すらもどかしく、もう想いの迸るままに階段を駆けあがり、現在メスガキ署の二階へと向かっている最中である。

 

「エイドリアーン!! どこだぁエイドリアーーンッ!!

 姿を見せろエイドリアン! エイドリアァァァーーンッ!!!!」

 

 関係ないが、さっきからエイドリアン、エイドリアンうるさい。

 呼びやすいのか、言ってて気持ちいいのかは知らないが、ひたすらテンションMAXで連呼。

 お前エイドリアン言いたいだけちゃうんか? と疑ってしまう程に。とっても良い笑顔で叫んでいる。

 

「 エイドリアァァーーーンッッ!!!! 」バッキィ!

 

 扉を一息に蹴破り、二階のフロアへ侵入。

 気合の掛け声にも、「エイドリアン」を採用する。

 

「……エイドリアン?! エイドリアンッ!? エイドリアァァァーーン!!!!」

 

 意訳をすれば「どこだ?! どこにいる!? 姿を見せてくれ!」

 ついにランボーは人語を話すことを放棄し、全てをエイドリアンの一言で表現し始めた。“エイドリアン万能説”の誕生である。

 

「はっ!? これは……?」

 

 見渡せば、そこには沢山の長椅子や、煌びやかなステンドグラスが見える。

 正面の壁には、大きな十字架まで飾られており、一見してここが“教会”であることが、簡単に窺えた。

 だがそんなバカな! 自分は今、メスガキ署の二階にいるハズなのに! ランボーは混乱する。

 

「――――おじさん、こっちよ♥」

 

「ッ!!??」

 

 突然の声に振り向いてみると、自身のすぐ後ろに、会いたくて仕方なかった少女の姿が。

 

「うれしい、来てくれたのね。

 アタシずっとまってた。……この日がくるのを」

 

 純白――――いや()()()()()()()()()

 いま彼女は、あのエロカワちっくなヘソ出しキャミではなく、美しく煌びやかな白いドレスに身を包んでいる。

 そのまだ幼い、この上なく愛らしかった顔ですら、高価さを感じさせるベールによって覆われているのだ。

 

 まごう事なき、花嫁。

 あまりにも小さな。

 

「えっ、エイドリアン……。君なのか……?」

 

「そうよおじさん。アタシよ♥」

 

 急いで着てきたの。似合うかなぁ?

 未だベールによって、その顔は隠されている。だがその声色から、いま彼女がこの上なく幸せな表情をしている事が分かった。

 心から満たされ、乙女の本懐を遂げた少女の姿だ。

 

 ランボーは困惑する。この状況に理解が追い付かない。

 ある種の戦いのような気持ちで、敵地に突貫してみれば、ウェディングドレスに身を包んだ愛しの少女が、突然目の前に表れたのだから。それも無理からぬ事だろう。

 

「きっ……綺麗だ。エイドリアン……」

 

 思わず、といったように告げる。

 物を考えるよりも先に、見たままの印象が口を突いて出た。

 純朴で、素直な彼らしいと言えば、そうなのかもしれない。

 さっきまで戦場気分で、こんな状況だというのに、この子を美しいと感じざるを得なかった。

 

 そんな彼の微笑ましい姿、そして真っすぐな言葉に、デカちゃんことエイドリアンが、ニコッと微笑んだ。

 貴方のそんな所も好き。だからこそアタシは、貴方に恋をした。

 そう今の幸せを噛みしめているかのような、やわらかな笑みだった。

 

「好きよおじさん――――アタシをもらってくれる?」

 

 手が差し出される。

 白いレースの手袋に包まれた、とても小さな少女の左手が。

 

「……ッ!」

 

 彼は暫しの間、呆けたようにそれを見つめる。

 こちらに差し出された手と、嬉しそうに微笑む彼女の顔を、何度も何度も交互に見る。

 どうして良いのか分からない、といった様子で。

 

「……」

 

 けれど、そんなのは決まっているのだ。

 いったい自分は、何をしにここへ来たのか、という話だ。

 

 ビックリしたし、突然だったけど、俺は彼女のことが好きだ。

 そして彼女を貰い受ける覚悟など、もう半日も前に済ませているじゃないか。

 今さら迷うことなんて、無い。

 

「……エイドリ、アン」

 

「おじさん……♥」

 

 彼が一歩踏み出す。ゆっくりと歩みを進める。

 そしてすぐに、彼女の目の前に立ち、万感の想いを込めた所作で、跪いて見せた。

 正しく、お姫様を迎えにきた王子様のように。神々しさすら纏って。

 

「え、エイドリアン……。俺は、君のことが……」

 

「うん……♪」

 

 彼の逞しい腕が、厳かに伸ばされる。

 まるでガラス細工を扱うように、大切な物に触れる時の、愛おし気な手つきで……。

 今そっと、彼女の手に触れた。

 

 そして、その感触を感じ取るのと同時に、エイドリアンは〈シュン!〉と残像を伴う速度を以って、素早く懐に潜り込み、物凄いオーバーアクションな範馬〇次郎ばりのアッパーカットを、彼の股間にブチ込む。

 

 

『――――ちぇえええりゃッッ!!!!!!!!』

 

「 ふ゛お゛ッ゛!!??(cvささ〇いさお) 」

 

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 

「ほっほっほ♪ ヒキョーとはゆーまいね? ベトナムのエーユーさん♥」

 

 あー、ばっちぃモン触っちゃった! とばかりの仕草で、エイドリアンがこれ見よがしに、おててをプラプラする。

 

「おじさんオトナだもんねぇー♪

 こぉ~んなちっちゃな子に、ぶたれるくらい、ぜんぜんヘーキだよねぇー♥」

 

 いま彼女が見下ろす眼下には、アントニオ猪狩に金玉を蹴り上げられた時の刃牙と全く同じポーズで、白目を向きながら倒れ伏すジョン・ランボーの姿がある。

 ぶくぶく泡も吹いてるし、全然平気ではなかった。

 

 先ほどエイドリアンが放った【メスガキあっぱーかっと☆】によって、ランボーの身体は1メートルくらい浮き上がっていた。ドゴンッ! みたいな凄い音してた。

 いくら屈強で、筋肉モリモリマッチョマンなランボーでも、霊長類ヒト科の男である以上は、鍛えられない部位という物が存在する。

 たとえば、今エイドリアンにおもいっきりブン殴られた、“お大事様”とかがそうだ。

 

 もう見事なまでに、一撃で屠られた。

 Deka chan( デカちゃん ) wins(ウィンズ)! Fatality(フェイタリティ)!!

 

 

「――――小学生とえっちするとか、なに考えてんのよっ! ヘンタイ!(正論)」

 

 

 そして、床に倒れ伏すランボーを余所に、元気に「ひゃっはー!」と逃げ出していった。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「い……いま何があった?」

 

 数分後。パチパチと瞬きを繰り返しながら、一人2階のフロアにて佇む、ランボーの姿があった。

 

「なんだ今のは……。なぜ俺は、股間をパンチされた?」

 

 状況が分からん。全く理解できん。

 教会めいた神聖な雰囲気の場で、花嫁の恰好をした愛しの女の子に、ちんぽをアッパーカットされる。

 持っている情報を総動員しても、なぜ自分がそんな目に合ったのかが、微塵も納得できない。

 

 とりあえずは、痛む股間を気遣いながらヨタヨタと歩く。

 すぐ目の前にあった、三階へと続いているらしき階段の方へと、歩みを進める。

 現状は意味不明ながらも、とにかく動かなければならない事は分かる。

 自分は兵士なのだから、いかなる時も戦わなけれなならない。グリーン・ベレーの教えが、奇しくもここで生きた。

 

 

 

「さっきゴメンね、おじさん……。アタシはずかしかったの……」

 

 階段を上り終え、フロアに辿り着いてみると、すぐ目の前に彼女の姿があった。

 

「おじさんが来てくれたのが、うれしくって……少しテンパッちゃったかも。

 ゆるしてくれる? おじさん……」ウルウル

 

 両手を祈りの形にし、涙目でランボーを見上げる。

 その可愛らしい顔は、とても申し訳なさそうな色に染まっている。心から悔いているような。

 

 良く見れば、彼女は先ほどの花嫁姿ではなく、看護師さんのような恰好をしている事が分かる。

 首に聴診器をひっかけ、その手にオモチャの注射器を持っている。

 頭にあるナース帽と、生地が少な目なミニスカタイプのナース服は、男心をそそるピンク色に揃えられている。

 有り体にいえば、コスプレで用いるようなエロカワナース服。その小学生バージョンであった。

 

「エイドリアンッ! 正気に戻ったのかッ!

 気にするな、俺は無事だ!」

 

「ホント……? アタシうれしいっ♪

 おじさんに嫌われちゃうんじゃないかって、ずっと不安だったのっ……♥」

 

 上目遣いのまま、キュッとランボーの両手を握る。

 その手のぬくもりと、いじらしい彼女の仕草に、ランボーの心が安心に包まれる。

 さっきまでの混乱が、嘘のように消え去り、ようやく彼女と話が出来るという喜びに満ちていく。

 あぁ俺は、この子の事が好きだと……。

 

「おじさん、ちんぽだいじょーぶ?

 あまりおぼえてないケド、おもいっきりパンチしちゃったでしょう……?」

 

「平気だ、もう痛みなど感じない。

 君の顔を見た途端、ぜんぶ消えてしまったよ」

 

「おじさん……(はぁと)」

 

 ギュッとお腹に抱き着く。小さな体で、精一杯“好意”を伝えるように。

 彼女のぬくもりが伝わってきて、ランボーの心に、愛おしさが込み上げる。

 ここへ来て良かったと、心底実感する。

 

「でも心配だわおじさん。もし好きな人の身に、何かあったらって……♥

 アタシがシンサツするから、このイスにすわってくれるかな?」

 

「ああ、分かったよ。よろしく頼む」

 

 言われるままに、その場にあった椅子に腰かける。

 なるほど、この子がナース服を着ていた理由が分かったぞ。俺を治してくれる気でいたんだな! なんて可愛いヤツなんだ!

 そうランボーは納得し、ニコニコしながら彼女に身を任せる。

 

 

「――――どっせぇぇぇえええいッッ!!!!!!」バリーン!

 

「 ふ゛ぬ゛こ゛ッッ!!?? 」

 

 

 手に持った蛍光灯を、ランボーの頭にフルスイング!!

 彼が安心しきり、ふと目線を逸らした瞬間の凶行。砕けたガラス片が、辺り一面に飛び散る。

 

「あすくひむコラエーーっ!!!!」

 

「 お゛っ゛ふ゛ッッ!?!?!? 」

 

 椅子に座り、頭の位置が低くなった所への、893(やくざ)キック。

 豪快にミニスカからパンチラする、メスガキVer.の必殺技だ。

 

「ベルトもってこいオラっ! リング上がれコノヤロー!! ふぁっきんU.S.A.!!!!」

 

 ランボーは「ドテーン!」とひっくり返り、そのままブクブクと泡を吹き始める。

 エロ心の不意を突いた、見事なまでの一撃! 失神KOである。

 

 

「――――なにナース服に期待してんのよっ! エロ本の読みすぎ!!(正論)」

 

 

 

 あいあむチョーノ! と力こぶを作ってから、ピンクナース姿のデカちゃんは「うっほほーい♪」と元気に去っていった。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「ごめんなさい、おじさん。アタシてれちゃって♥」

 

「…………」

 

 暫しの時が経ち、四階。

 あれから意識を取り戻したランボーは、驚愕に目をひん剥いたままで、ヨタヨタと次のフロアに辿り着いた。

 

「オンナノコって、ときに思ってるのと、反対のことをしちゃうの……。

 このかわいー乙女心、おじさんなら分かってくれるよね?(はぁと)」

 

「…………」

 

 眼前に立ちつつも、ジリジリと間合いを計る。

 ランボーは兵士としての本能に従い、彼女を警戒する。

 

 ちなみに現在、デカちゃんはキュートなエプロン姿である。

 中にキャミやハーフパンツを着ているのかは知らないが、正面からは見えない。

 いうなれば、いま“裸エプロン”的な恰好をしているのだった。

 エロカワに加え、ちっちゃい幼な妻感も加わり、破壊力が物凄い! げぼかわである!

 

「ほら、こっちに来て? だ ん な さ ま ♥

 おなか空いてるとおもって、いっぱいお料理を作ったのよ♪ さぁめしあがれ♥」

 

 普段は応接室として使われているであろう一角に、テーブルが置かれている。

 その上には、ビーフステーキやコーンスープなどなど、温かな湯気をはなつ沢山の料理が並ぶ。ぱっと見ただけで分かるくらい、どれも美味しそうだ。

 

 しかしながら、ランボーの足は動かない。

 いま笑顔で「どうぞどうぞ♪」と誘われているものの、一向にテーブルに着こうとはしなかった。

 じぃ~っとデカちゃんの方を見ながら、その場に立ち尽くすばかりである。

 

「あれっ、おじさんどーしたのぉ? はやくしないと、お料理がさめちゃうよぉ?」

 

「……」

 

「ほらほらぁ、席について♥

 メスガキシティ特産の、ざこワインもあるよぉ♥」

 

「……」

 

 その笑顔がコワイ。

 さっきまでの事など無かったかのように、何食わぬ顔で料理を勧めてくるその精神性、サイコパスだ。

 

 デカちゃんがテテテと歩いて来て、案内しようと優しく彼の手を取る。

 別に抵抗したりしないし、黙ってついては行くけれど、未だにランボーの表情は晴れない。

 その仏頂面は言外に、納得のいく釈明を要求していた。

 

「もしかして……アタシのこときらい?

 おじさんおこっちゃったの……!? アタシのことなんて、もう知らないって……!?」

 

「ッ!!??」

 

 突然、愕然とした表情を浮かべるデカちゃん。

 ヨロヨロと力なく後ずさった後、そのまま「わーっ!」と泣き崩れ、床にへたりこんでしまった。

 

「アタシのりょーりなんて、食べたくないんだぁっ……!

 がんばって作ったのにっ! おじさんのためにって、いっしょうけんめー練習したのにぃー!!」

 

「ちょッ……!? 待ってくれ! 俺はそんなつもりはッ……!!」

 

「ひどいよおじさんっ! しんじてたのにっ!

 アタシを迎えに来てくれたんだって、すごくうれしかったのにぃーっ!!

 う え え ぇ ぇ ぇ ん っ!!!!」

 

 上を向いてビービー泣き喚く。まるでスヌーピーのように、噴水みたいな涙を流す。

 女の子を泣かせてしまった!! とランボーは慌てて彼女に駆け寄る。

 目線を合わせるようにしゃがみ、今もおめめをグシグシしている彼女の肩に、優しく手を置く。どうか泣かないでおくれと。

 

「エイドリアン、俺が悪かった。さぁ涙を拭k

 

「――――メスガキバスターじゃーーい!!!!!!」

 

「 ケ゛ェ゛ーーッッ??!! 」

 

 

 デカちゃんが〈シュッ!〉とランボーに組み付き、彼の身体を肩に担ぎ上げる。

 そのままピョーン! とジャンプして、お尻からドスーンと着地した。

 分かりやすく言うなら、ようは“キ〇肉バスター”の形だ。

 

「おっとぉ。ステーキじゃなく、牛丼をヨーイしておくべきだったかしらぁーん?

 へのつっぱりは、いらんですよ!」キリッ!

 

「ごッ……ごっほぁッ……!!!!」ヨロヨロ…

 

 今ランボーの肩と背中と股関節が、ほんとエライ事になっている。

 ズガァァァーーン!! みたいな謎の音も鳴ってたし、破壊力抜群だ。

 いくら元グリーン・ベレーとはいえ、超人強度ゼロの男が耐えられるハズもない。

 

「おんなじサギ師に、三度(みたび)ひっかかる……。

 素直なのはステキだけどぉ、ちょーっとおじさんが心配だなぁー♥」

 

 コキコキと首を鳴らし、ダルそうに右腕を回しながら、ランボーの方へ近付いていく。

 

「さてさて……。おじさん骨がバキバキで、動けないみたいだしぃー?

 いっちょホンゴシ入れて、オシオキしましょっかぁー♥♥♥」

 

 メスガキ共にデレデレしよってからに! この浮気モンがッ!!

 頭にピーン! と二本角を生やしたデカちゃんが、「よっこいせ」とランボーにマウントポジションを決めた。馬乗りの態勢だ。

 

「これはぁ! メスガキブルーのぶんっ!!」ドゴォ

 

 デカちゃんのマウントぱんちが、ランボーの頬を捉える。

 

「これはカリーナのぶんっ!!」ゴスゥ

 

 勢いよく振り下ろしたおててが、彼の鼻っ柱に炸裂。

 

 

「これは田嶋〇子のぶんっ!!!!」ゴシャア!

 

「 待ってくれッ!! それは身に覚えが無いッ!?!? 」

 

 

 容赦なく叩き込まれるメスガキの拳。

 ちなみに最後は、「これはアグ〇スのぶんっ!」であった。理不尽。

 

 

「――――ハーレムとかきっしょ! 女の子をなんだと思ってんのよ!!(正論)」

 

 

 

 プスプス~と煙を上げて倒れ伏すランボー。

 それを余所にデカちゃんは、「牛丼一筋さんびゃくねーん♪」と歌いながら、スタスタ去って行った。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「ど……どういう事なんだ、エイドリアン……?」

 

「ふははは♥」

 

 時が経ち、現在メスガキ署の5階。

 いまランボーとデカちゃんは、向かい合って対峙している。

 まぁ片方はオロオロと狼狽え、もう片方はマフィアのボスみたく、足を組んで椅子に踏ん反りかえっているけれど。*1

 

「なぜ攻撃する? なぜ騙すんだ……?

 もしや俺は、敵だと認識されているのか……?」

 

「おやおや、よーやく気づいたみたいねぇ♪

 そのとーりだ、ジョン・ランボーくん♥」

 

 ざこワインが入ったグラスを、ゆらゆら揺らしつつ、デカちゃんは機嫌良く笑う。

 口元が「にんやぁ~♪」と醜く歪んでおり、もう悪の親玉そのもののだ。まぁ彼女はちんまい女の子なので、どうやったってカワイイのであるが。

 

「ザンネンだけど、たおさせてもらうわ。

 だまして悪いが、メスガキなんでね。カクゴしてちょーだい♥」

 

「そッ……そんなッ!? 馬鹿なッ!!」

 

 膝に抱っこしているシャム猫が、「にゃーん♪」と眠たそうな声を出す。まるでこの子も、ランボーをあざ笑っているかのように。

 

「とゆーかね? あたりまえでしょ、おじさん。

 ここにくれば、アタシとチュッチュできると思ったぁ?

 フツーにだっこできるって、そー思ってたのぉ?(はぁと)」

 

「……ッ!」

 

「んなワケないじゃん……。思い出してよおじさん。

 アンタはいま、メスガキをわからせるために、ここへ来たワケでしょ?

 ()()()()()()()()()()()()()()()()、それがメスガキでしょーが。

 たたかわなきゃ、ゲンジツと♥」

 

 まったく、ノーミソお花畑ね。ドーテーってゆうのは。

 そんなだから、子供にからかわれるのよと、デカちゃんは「ふんっ!」と鼻を鳴らす。

 

「で……でも聞く所によると、君はかなりの歳d

 

「――――今度それゆったらコロすよ? いっかいは見逃したげる」

 

 デカちゃんがドンッ!! と足踏みをした途端、床のコンクリートがピキピキー!

 ランボーおじさんはドン引きだ。

 

「いまアナタの前にいるのは、この世で()()()()のメスガキ。

 ロリコンこじらせた、非モテ童貞ざこちんぽ共が、毎夜ベッドの中でしてたエロ妄想の中でのみ存在してた、至高のオンナノコ……いわばょぅι゛ょ神よ。

 そりゃー3桁才くらい、フツーに生きるでしょーよ(威圧感)」

 

「ロクにお風呂にも入らず、服もしま〇らで買い、散髪も千円カットですませちゃって、がくせー時代にはチョコのひとつも貰ったこと無い。

 そんなお腹ぽっこり、前髪すっかすかの、こどおじチー牛くずちんぽ共が、自分にツゴー良く思い描いた理想の具現……」

 

「大した理由もなく貴方に惚れてくれる、らぶらぶキュートなエロカワ小学生!

 しかもアホみたいなゴツゴーシュギにより、()()()()()()()()()()()()()()()()というオマケつき! このサツバツとした世界に舞い降りたエンジェル!!」

 

「子供とゆーことで、ほどよく父性を満たせるばかりか、エロにせっきょく的だからコミュ障のオッサンにも安心という、まさに夢のような存在!! 貴方だけの幼女(はぁと)

 それがアタシなのよ。 お じ さ ん ♥♥♥」

 

 ちなみにデカちゃんは今、バニーガール姿をしている。

 彼女の感情と同調するようにして、頭のウサ耳がひょこひょこしててプリチー。

 

 そのおかげで、せっかくのラストバトルなのに、せんせん締まらなかった。

 ちんまいし、声はcv丹〇桜*2を思わせるロリロリだし、もう可愛くって仕方ない。真面目な雰囲気ゼロなのだ。

 

 なんか頑張って長々と話してくれてはいるが、言ってる事がよく分からん! という事もあり、ランボーは「頭を撫でてあげたいなぁ」としか思わなかった。えらいなぁと。

 

「さぁおじさん、Repeat after me( 後に続きなさい ). ――――しょー・がくっ・せぇい!」

 

「Sir、小学生……Sir」

 

「デカちゃんは永遠のょぅι゛ょです! ふくしょう!」

 

「Sir、君は永遠の幼女だ……Sir」

 

「デカちゃんが着てるスク水と恥丘の間に、挟まれて死にたい! ふくしょーっ!」

 

「Sir、君が着てるスk……って何を言わせるんだッ! こらぁーッ!!」

 

「ちっ! まだレイセーみたいね……。

 さすがはベトナムのえーゆー」

 

 デカちゃんが悔しそうに、でもどこか楽し気に「くっく」と笑う。

 きっとこの状況を、心から楽しんでいるのだろう。とっても悪い顔だ。

 

「とにかく、言葉をツツシミたまえ。

 きみは今、メスガキ王の前にいるのダ」ババーン 

 

「断るッ! 俺は大人だ! 子供さんには屈しないッ!

 君を愛し、わからせるッ!! どれほど強いメスガキだとしてもッ!」

 

「ふはは、片腹いたいわ。

 ドーテーのぶんざいで、メスガキに勝てるとでも? みのほど知らずめぇ~♥」

 

 アイアム ザ マン! とばかりにランボーが吠える。

 対してデカちゃんは、未だ涼しい顔。まったく彼を問題としていないのが窺える。余裕綽綽。

 

「よろしー。そろそろマジメに相手をしてあげましょー♥

 あんまりやりすぎて、おじさんに嫌われちゃうのもヤだし……(ぼそっ)」

 

「……?」

 

 シャムを膝から降ろし、「さぁおいき」と優しく逃がしてやる。

 そしてデカちゃんが、ついに椅子から腰を上げ、ゆっくりと歩を進めて、彼のすぐ目の前に立った。

 

「じゃあおじさん、()()()()()()()? ちゃんとよけてね♥」

 

「……ッ!」

 

 宣言。静かな声で高らかに告げる。

 ランボーは身を硬くし、いつでも動けるように腰を落として構える。

 だが……。

 

「――――ほいっ!」

 

「ッッ!!??!!」

 

 消えた。彼女が。

 じっと見ていたハズなのに、いつのまにかデカちゃんが眼前から居なくなる。

 一瞬その姿が霧のようにブレたかと思えば、次の瞬間には完全にその場から消失していた。

 

「ダメじゃない、しっかり避けないとぉ~。

 あーあ。アナタ獲られたわよ? おじさん♪」

 

 拳を突き出したポーズのまま、ランボーの真後ろに立っている。

 シュン! と瞬きする間に高速移動し、通り抜け様に彼を攻撃(?)したのだ。

 

 

「――――メスガキッ、りゅーせい拳ッッ!!!!!!」

 

「 ぬぅあぁぁぁーーーーッッッ!!!! 」バリバリバリ~!

 

 

 遅れて衝撃が来る。

 ランボーの身体を、とてつもない“快感”が襲う! 主に股間の辺りに。

 

「あ゛っ……あわわ! あわわわ……!(膝ガックガク)」

 

「あらら。たったの一回で、そのザマぁ?

 オトナのくせに、だらしないんだぁー♥」

 

 ズボンを脱がせる → なんやかんやする → またズボンを穿かせる。

 その三挙動を、彼女は()()()()()()()()()()でおこなったのだ。

 もちろん、ランボーに認識出来ていない事を、事細かに描写するなど不可能。

 彼が何をされたのか? 一体どんなえっちぃ目に合ったのかを説明する事など、出来はしないのだ!

 

「ふふっ、ごちそー様おじさん♥ けぷっ♪」

 

 なにやら意味深なゲップと共に、デカちゃんが振り返る。可愛らしくペロッと舌なめずりをして。

 その幼女らしからぬ妖艶な表情は、まさにサキュバス!! 男の性を搾り取る淫魔そのもの!!

 ……いや、これはあくまで“表情”に関しての事であり、彼が何をされたのかなど、皆目見当が付かないのであるが!!(重要)

 

「なッ……なんだ今のは! まったく見えなかったぞッ!

 いったい俺は、どうなってッ……!」

 

「決まってるでしょう? ()()()()()()()()()

 キョーダイなメスガ気は、時空さえも歪ませる――――エロはマッハを越えるの♥」

 

 人差し指と親指でつくった輪っかを、口元でシュッシュと前後させる。

 その淫靡なジェスチャーが何を意味するのかは、純朴で童貞な彼には、知る由もない事。

 すなわち、ここで説明することは出来ないのだ。ご理解下さい。

 

「ということでぇー、もういっちょいっとくぅ?

 アタシおじさんの、もっとのみたいなー♥ いっぱいほしーなー♥♥♥」

 

「ぬぅッ……! く、来るかッ!!」

 

「ムダよ、ざこちんぽ――――いっしゅんせんげき( 一瞬千撃 )

 

 ぱん! ぱん! ぱん! すぱぱぱぱーーーん!!

 突然ランボーの視界が暗転し、妙な打撃音と共に、沢山の閃光が煌めく!!

 

 次に気が付いた時には、彼は「ぐったり!」と床に倒れ伏しており……、その場で背を向けて仁王立ちしている、デカちゃんの姿だけがあった。

 ちなみに、その背中には“幼”という大きな文字が \ババーン!/ と浮かんでいる。有り体に言えば豪鬼みたいな感じで。

 

「われは、エロカワをきわめし者ナリ。

 キサマのような、よわよわざこちんぽには、ザンゾーすらとらえる事もできマイ」

 

「お゛ッ……おっぐぉ……!!(痙攣)」

 

 ごっくん♥ と意味ありげに喉を鳴らしてから、デカちゃんがハンカチを取り出して、上品に口元を拭う。なんか“粘り気のある液体”でも飲んだかのように。

 その表情は「うっとり♪」という感じで、すごく満足気な様子。ほんのり頬も赤らめている。

 

「ほらほら、そんなトコに寝っ転がってるとキケンよ?

 アタシにしてほしーって、言ってるようなものだわ。

 もうっ☆ おじさんったらマゾちんぽぉー♥ ほしがり屋さーん♥」

 

「待て、話し合おう。

 こんな戦いに意味は無いハズだ(賢者の如き表情)」

 

 足腰は立たないが、何故か妙に冷静な「キリッ!」とした顔で、ランボーは停戦を提案。いったい彼の身に、何があったのだろう?!

 

「えー! 自分だけまんぞくして終わりぃ―? オンナノコにさせといてぇー。

 アタシそーゆーの、ゆるせないタチです♪

 悪いおじさんには、オシオキしなきゃねー♥」

 

 ――――メスガキ・しょうりゅうは!(意味深)

 ――――メスガキ・えくすきゅーしょん!(意味深)

 ――――メスガキ・らいとにんぐぼると!(意味深)

 

 デカちゃんの姿が残像でブレる。その度にランボーが「ぎょえー!」と宙を舞い、次第に生気のない顔色になっていく。だんだんゾンビみたくカラカラに。

 

 対してデカちゃんは「いっぱいもらっちゃった♪」って感じで、幸せそうにお腹をさする。

 いま彼女のポンポンは、あたかも1.5リットルのコーラでも飲んだかように、心なしか〈ぽっこり♪〉していた。いったい何を飲んだのだろうか!? 謎だ!

 

「どう? ゴタンノーいただけたかしら♥

 ねんがんの、ょぅι゛ょとのナンヤカンヤは――――

 まぁ貴方には、ニンシキ出来なかったでしょーけど。きもちよかった?」ニコッ

 

 あー、手とアゴが疲れたわぁー。

 そんな意味深な言葉を呟きながら。デカちゃんは「ふーやれやれ」と背を向ける。

 そして、そのまま階段の方へ向かって行った。

 

「まッ……待て! どこへ行くエイドリアン……!」

 

「あら、まだ意識があるのねぇ♥

 さすがはおじさん、と言いたいトコだけどぉー」

 

 立ち止まり、つまならさそうな顔で、こちらへ振り返る。

 

「もういーでしょ? ()()()()()()()()

 気がすんだら、さっさとこの町から出てって――――」

 

 睨み付け、吐き捨てるような声で、ハッキリと告げた。

 

「ここは、ちっちゃな女の子の楽園……。

 このセカイに、あなたは不要なの――――消えなさいイレギュラー」

 

 ここはロリコンざこシャーマン共が、ょぅι゛ょを愛でる為に作った水槽。

 奴ら以外は、何人(なんぴと)たりとも入れぬ筈のここに、なぜ貴方のような者が居る?

 クソッタレな児童性愛者どもが、自らの欲望を満たすために作り上げた、忌まわしき呪いの世界なのに。

 

 ロリコンでもペドフィリアでも無く、下卑(げひ)た欲望も持たず、心の底から子供達を愛する、優しい貴方が。

 しかもハリウッドスターめいたハンサムで、心身ともに屈強な戦士だなんて……、それなんてチートなの? こんなドブみたいな()()()()で、いったい何するつもり?

 小さい子供や、弱い者達を相手に、無双でもしたかった? 自尊心を満たしたかったの? 

 

 そう彼女は、ペッと唾を吐く。

 汚い物を見るような目で、未だ倒れ伏している彼を、侮蔑した。

 

「メーワクなのよぉ、おじさーん……。

 めぐまれてるクセに。ちゃんと生きてるクセに。……アタシ達をバカにしてるぅ?

 PTSDだか、何だか知らないけども、あんた外のセカイのニンゲンでしょ?」

 

「何こんなトコ来てんのよ。

 逃げ込んでんじゃないわよ。――――きもちわるい」

 

 腰に手を当て、じぃーっと彼を見下ろす。

 それは叱咤でも、アドバイスでもない。感情のこもらない冷たい目で。

 自分にとって何の価値も無い、下らない物を見る時のように。

 

 

 

「ざぁこ♥ ざぁこ♥ ざこちんぽ♥

 負け犬ちんぽの、ゴミちんぽ♥」

 

「小学生に負ける♥ 子供にバカにされる♥ なにも言い返せない♥

 コミュ障♥ こどおじ♥ 陰キャ♥

 やさしーんじゃなくて、主体性ないだけ♥」

 

「女の子にモテない♥ 人の目を見れない♥ なに喋っていいか分からない♥

 ケータイ持つ意味ない♥ 誰からも連絡来ない♥ 自分からもかけない♥」

 

「そんなアンタが、何しに来たの♥ ねぇねぇ何しに来たの♥♥♥

 相手が子供なら、好きにできると思ったんだぁー♥ ダッサー♥

 ――――帰れ、ざこちんぽ。ひとりでシコってろ」

 

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 デカちゃんが、歩き去っていく。

 

 もう振り返ることも無い。ただ一人で、階段を上っていく。

 

 その場に呆け、床にふさぎ込んでいる、情けない男を残して。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 もう……死にたい……。

 そう()()()()()は、ひとり最上階のフロアにて、両手で顔を覆う。

 

「あんな優しい人に……、あんなあったかい人に……、なんて事をっ……!」

 

 ボロボロと涙が零れる。

 まるで蛇口が壊れてしまったみたいに、止めどなく流れ続ける。

 声を殺しながら、圧し潰されそうな悲しみに抗うようにして、ブンブン頭を振る。

 

「でも()()()()()()

 アタシはメスガキなのよ、おじさん……。ゴメンしてちょーだいっ!」

 

 何そのこだわり――――何その無駄な矜持。

 きっと誰かが見ていたら、そう言っているに違いなかった。

 素直にチュッチュしたらいーじゃん。アホかと。

 

「そりゃちんぽしたいわよ! ギュってしてほしいわよ! 決まってるじゃんっ!

 でもしかたないのっ……! ()()()()だからっ!!

 これメスガキを、わからせるヤツだから! こーゆうモンなのよぉーっ!!(涙)」

 

 人類史上、稀に見る大号泣をしながら、デカちゃんは「ちきしょう! ちきしょう!」とポカポカ床を叩く。

 相思相愛なのに! 障害なんて無いのに! なぜアタシ達は引き裂かれとんのか! そう悔しがっているのが見て取れた。「とんだロミオとジュリエットだわ!」と。

 

 この町の管理者であり、しっかり者で通っている彼女ではあるが、意外とおバカな所があるのかもしれない。

 メスガキとしての義務とか、責任とか、一般的なイメージとかが、デカちゃんを苛むのだった。

 ほんとはめっちゃ、ラブラブえっちしたいのに! ドユコトー!?

 

「……もしこれでフラれたら、()()()()()()()()()()()()

 1000人のロリコンざこシャーマンなんか、メじゃないくらいの怨念で、セカイ包むから。

 ご神体と崇められし、ょぅι゛ょの巫女の力みせたるっ!

 しょうがくせーの本気みせたるっ! みんな死んじゃぇぇぇえええっ!!!!」ゴゴゴゴ…

 

 それもこれも、みんなロリコンが悪い(迫真)

 まったく、ロリコンはどーしようもねぇな!! HAHAHA☆

 そんな(微妙に分からないでもない)責任転嫁をしながら、デカちゃんが天井を睨む。

 その先にいる神様を見据えながら。

 

 許さんぞ人間ども! 特にロリコンどもめ!!

 隕石おちてこい! おおきめのヤツこい! ここに落としてよぉっ!(cv丹〇桜)

 

 

 

「……はっ!?」

 

 可愛い声で喚き散らしていると、ふいに後ろの方から物音が。

 誰かが階段を上ってくる、力強い足音が聞こえた。

 

 慌てて彼女は、ぐしぐしと目元をぬぐい、チーンと鼻をかむ。

 そして瞬時に平静を取り繕い、ぐっと両足に力を入れて立つ。

 メスガキたる矜持を、ちいさな胸に宿して。

 

「あ、あーらおじさん♥ まだやられ足りないのぉー?」

 

 やがて、ゆっくりとした足取りでこの場に表れた男に向かい、彼女は軽薄な口調を意識して声を掛ける。

 まさにメスガキといった風な、愛らしくも「イラッ☆」としてしまうような、大人を馬鹿にした声色。

 

「空気よめないねー♥ ちょーコミュ障♥

 あんなにゆったのに、ここまで来るなんてぇー♪

 そのおバカさに、ちょっとカンドーしちゃったぁ♥♥♥」

 

 嘘つけ。内心はもうお祭り騒ぎのクセに。

 アタシ捨てられなかった! ちゃんと来てくれた! そうデカちゃんはメッチャ感謝していた。

 おじさん愛してる、もう何されても良い、悔い無しッ! って感じだ。

 

「じゃーまた、してあげるから、自分でズボンぬいでよぉー? おねだりしてぇー♥

 ちっちゃい女の子の前で、なさけなーく、ざこちんぽを出s

 

「――――今度それを言ったら、()()()()()()()()()()

 

 ギラッ! ……そんな音が聞こえてこんばかりに、ランボーが手にした大型ナイフを、彼女に見せつける。

 デカちゃんは思わず絶句。アンドどん引きする。

 

「次に、君が汚い言葉を口にした時が、最後だ。

 ざこだのちんぽだの、言ってみろ。この場で死んでやるぞ」

 

「 ウソでしょおじさんっ!? そんな思いつめてたのっ??!! 」

 

 こんな情けない事を言っているのに、その目は燃えるような炎を宿している。

 まるで地球に迫る巨大隕石を粉砕する時のような、勇者の証とされる聖剣を抜く時のような、得も知れぬ固い覚悟が見て取れるのだ。

 

 ぶっちゃけ、アホかと一蹴したい。

 子供相手に何をしとんねんと、笑ってやりたい。

 でも今これをしているのが、()()()()()()()()()()()というのが問題。

 アカン、こいつはやる――――本当に喉をブッ刺す気だ。

 

 小学生に、口喧嘩で負けた。

 ただそれだけで、こいつは死ぬ気でいるのだ!! ……なさけなッ!!??

 

「あ……あのねおじさん? それすごーく困るわ……?

 いくら、何を言っていいのか分からないからって、そんなことしなくてもさ……♥」

 

「ッ!!(鋼の意思)」

 

「というか、ヒキョーよおじさんっ!

 たとえジョーダンでも、そんな事しちゃダメ!

 ヤンデレの人じゃないんだから、『ゆー事きいてくれないなら死ぬ!』とか、そーゆうの良くないと思うのぉー!」

 

 擬音をあてるとしたら、「あせあせ!」

 もうデカちゃんは、額にたくさん汗を浮かべながら、必死にネゴシエーション。

 こんな事になるだなんて、正直思って無かったで御座る!! みたいな感じだ。

 

「――――構わんだろ。子供を導けもしない、つまらん大人だ。

 そんなヤツに、価値があるとは思えない」

 

「~~っっ!!??」

 

「俺は、君を攻撃できん。君のおしりを叩くようなまねも……。

 ならば、()()()()()()()()()()()()

 俺は兵士だ。信念を証明する方法を、他に知らん」キッパリ

 

 ――――カッコいい事を言っているようで、ぜんぜんカッコ良くなーい!!!!

 イカレてるよこのおじさん! まぁ知ってたけどね! ナットク☆

 

 デカちゃんは打ちひしがれる。

 もしかしてこのおじさんって、メスガキとの相性サイアク? 冗談や軽口を、まともに受け止めちゃうタイプだ! という事に気付く。

 

「なっ、なな何ゆってんのよぉ! このざこちn……

 

「すちゃっ!」(無言でナイフを当てる)

 

「――――今のナシ! ナシですおじさんっ! うそうそうそ!!!!」

 

 ランボーの首筋から、タラァ~っと一筋の血が流れる。

 もし後コンマ5秒でも、言うのが遅ければ、彼は間違いなく自害していた。それがハッキリと分かる。

 

「さぁー、ナイフを置こうねぇー♥ あぶないからナイナイしようねー♥

 よーしよしっ! いい子ですねぇ~♪ カワイイですねぇ~♪♪♪」

 

「……」

 

 ムツゴロウさんみたく猫可愛がりしながら、なんとかナイフを取り上げる事に成功。

 デカちゃんは「おらぁっ!!」とばかりにナイフをブン投げ、それはキラーン☆ と空の彼方へ消えていく。これで一安心なり。

 

 というか、意外とすんなりいった。ちょっとは抵抗されるかと思ったのに。

 こんな状況であっても、彼のデカちゃんに対する“クソでか信頼”が、そうさせたのだろう。

 情けは人の為ならず。こういう時に、ちゃんと返ってくる物なのだ。今まで尽くしてきて良かった。

 

「ごめん……、もうメスガキとか何とか、そーゆーの言ってらんない。

 アタシSurrender( 降伏 )するから。もう好きにして……。

 おじさんの命かかっちゃったもん」

 

「じぃ~っ!(窺うような目)」

 

「ほんとデス! もう変なこと言いまセン! いい子になりマス!

 アタシ達、トモダーチ♥

 ……わからせとか、もう知らないよっ! おじさん生キテ!(迫真)」

 

 床に大の字で寝転がり、「勝手にせぃ!」

 デカちゃんは全身で降伏の意思を表す。もうなりふり構わず。

 

「いや、でも君をわからせる、という約束が……。

 もう君を裏切れないので、任務を続行したいと思うのだが」

 

「――――マジメかっ!! 悪い意味でピュアかっ!!

 もういーから、だまって頷いててヨ! おねがいだからっ!」

 

 ややこしい! この人めんどくさい!!

 素直なのは素敵だし、心底好ましいとも思うけど、超めんどくさい!!

 

「もーきたない言葉は、使いませぇーん!

 なんだったら、言葉づかいも直しまぁーす!

 図書館で、てーねー語を勉強しまーす!」

 

「だがそれは“君の努力”であって、俺が何かをしたというワケでは……。

 やはり俺が責任を以って、何かしらの事をしてやるべきなのでは」

 

「じゃあ図書館までクルマで送ってくれるとか、帰りにジュース買ってくれるとか、ねぎらってくれたらいーよ! がんばったなーって、頭なでなでしてよ!」

 

「しかし……、やはり俺も、何か代償を払うべきだ。君に努力を強いているのだから。

 イワン共(ロシア軍)の基地を強襲するとか、単独で独裁者の首を獲るとか、そういった事を命じてくれないか? でないとフェアじゃない気がする。()()()()()()

 

「じゃあ組み伏せよう! オトナの怖さをおしえてっ! トウショの予定どーり♥

 今すぐアタシに、ナンヤカンヤしよーよ! メスガキのほんかいを遂げさせてっ!!!!」

 

Negative( 否定 )。俺は暴力は嫌いだ(キッパリ)

 兵士なのに、何を言ってると思われるかもしれんが、出来んものは出来ん。

 グリーン・ベレーの童貞仲間たちも、決して許さないだろう」

 

「 もぉぉぉおおおおっっ!!!! 」

 

 きっと、誠意が悪い方に出ちゃうタイプなのだろう。

 せっかく相手が折れてくれたというのに、「ホントにいいのかな~?」と変に気遣い、いつまでも話を蒸し返そうとしてくる。

 

 これまでの戦いで、わざと彼をからかい、馬鹿にして、怒らせようとしたのに。

 優しい彼でも、ちゃんと心を鬼に出来るように。“わからせやすく”してあげたのに……それは全くの無駄であったらしい。

 彼の変な誠実さや、その天然さにより、見事に変な方に向いてしまっていた。

 

 おじさんを傷つけたくなかった。

 その優しさの裏返しとも言える弱さや、これまで頑張って来た証明であるトラウマを抉るような真似は、決してしたくはなかった。

 でも心を殺してまで、メスガキの役目とばかりに悪役(ヒール)を演じたが、やはり慣れない事はするモンじゃないのかも。

 

 もう不毛な争いは、まっぴらだ。

 アタシだって、おじさんと仲良くしたいもん。こちとら恋する乙女なのよ。

 そうデカちゃんは、ため息をつく。これは諦めの嘆息であり、放棄する悔しさを受け入れるための所作だった。彼の命の方が大事。

 

「――――おじさん、ニンムは終わりよ! もうオシマイなのっ!!」

 

「ッ!?」

 

 高らかに、宣言。

 さぁ命令(オーダー)を。何でも言ってくれ、とばかりに促してくる彼に対し、デカちゃんはハッキリ言い放つ。

 

「貴官はよくやったっ! みごとにこの町で戦い抜き、ニンムをはたしたのだっ!」

 

「えっ!?」

 

「君は子供たちを守るべく、また大人としてみちびくべく、ゆーかんに戦った!

 もういい! もうおわりだジョン・ランボーくん! ニンムはおわったのだっ!!」キリッ

 

「ッッ!!??」

 

 なんかランボーが「そんな馬鹿なッ!?」みたく信じられないような顔をしている。まだ俺、何もしてないのにと。

 しかし彼女は、毅然とした声でキッパリ告げる。その見当違いのやる気をひっこめろと。

 

「おじさん、外を見てみなさい。……外を見るのっ! ほらっ!!」

 

 先だって窓の前に行き、ランボーを促す。

 暫くして、戸惑いながら追従した彼が目にしたのは、ここメスガキ署の最上階から見える、素晴らしい景色。そして眼下で声援を上げている、沢山の愛らしい少女たちの姿だった。

 

「今あそこにいるのは、町中のメスガキ。

 貴方と接し、その真心に触れて、ちゃんといい子になった小学生たちよ」

 

「きっと、帰ったらあの子達に、囲まれるでしょう。

 おじさんありがとう、おじさん大好きと、いっぱいほめてもらえるわ」

 

「貴方の戦いは、こんなにもたくさんの笑顔を生み出した。

 町のみんなに、希望と幸せをもたらした。それが今回の成果よ」

 

 彼女の言葉に、耳を傾ける。

 だがランボーは未だにソワソワしており、「なんかしなくては! 役に立たなくては!」と思っている事が、もうアリアリと窺える。

 それはワーカーホリックなのか、愛情こじらせた承認欲求なのか。

 

「なに意味もなく歩き回ってるのっ! ウロチョロしないっ! クマかあんたは!

 もうおしまいなのよ、おじさんっ! It's over( 作戦終了 )!!!!」

 

 トドメを刺すかのように、今日一番大きな声で言う。

 けれど……彼はそれを受け入れず、なんと彼女に言い返して見せたのだ。

 

「 何も終わっちゃいないッ!! 何もッ!!

  俺にとっての戦いは、今も続いているッ!!!! 」

 

 子供に声を荒げるなど、彼らしくもない。きっとランボー自身も、こんな事したくは無いだろう。

 でもこれは、感情の迸り。

 寡黙で、滅多に胸の内を明かさない彼の、想いの排泄行為だった。

 これはとても大切なことだと感じ、デカちゃんはじっと息を呑む。

 

 

「まだじゃないか!! ()()()()()()()()()()!!

 この町に来る前と、なんにも変わっちゃいない! ずっと童貞のままだッ!!」

 

 

 でもしょーもなかった――――大事そうに見えて、ぜんぜん大したこと無いシーンだった。

 真面目に聞こうとしていたデカちゃんの顔が、( ゚д゚)ポカーン みたくなる。

 

「君にわからせろと言われ! 抱こうと頑張ってはみたが! 結局出来なかったッ!!

 確かに暴力は嫌だと、我が儘を言ったかもしれないが、これで終わりというのはあんまりだ!! 立つ瀬が無いじゃないかッ!

 この消化不良をどうしたらいい!? やりきれない男心を、どうすれば良いんだッ!!

 先の勘違いを含めれば、これで童貞喪失(チャンス)を逃したのは二度目だッ! 二度は耐えられんッ!!」

 

「ここから出たら、どんな顔をしてあの子たちに会えばいいッ!?

 きっとキラキラした顔で訊かれるッ! おめでとう、童貞をやめたんだな、ついにセックスしたんだなと、俺を誇りに思ってくれる事だろう!

 でも俺は童貞のままだッ!! 一体なんて言い訳すればいいッ!?」

 

「でもみんなに、俺を責める資格があるのかッ?!

 みんな可愛くて、将来きっとすごい美人になるッ! 性格も良く、まるでこの世界に愛されてるかのような、素晴らしい子たちばかりだ!*3

 ……だが俺は人見知りで、上手く人と喋れないクソ野郎だッ!!!!

 彼女なんか出来るものかッ! 童貞でも仕方ないじゃないかッ!! 孤独に生きてきたよッ!!」

 

 烈火のように燃え立つ、彼の憤怒。

 別に誰に怒ってるワケでもないのだが、とにかく聞いて欲しかった。

 人間そーゆー時もあるのだ。許してあげて欲しい。

 

「お、おじさん……みんなそーだよ。

 誰だって人付き合いには、くろーしてる。

 アタシもおーえんするし、勇気をだして、これからがんばっていけば……」

 

「――――ありがとうエイドリアンッ!! 君は俺にとっての光だッ!!!!(迫真)

 なんで君は、そんなに優しいんだッ!? 俺みたいな男にッ!!

 いつも感謝してるぞッ!!」

 

 情緒不安定か――――もう怒ってるんだか、喜んでるんだか。

 いったい自分が何を言いたいのか、もう本人にもよく分かって無いんだろう。

 とりあえず、彼がデカちゃん大好きなことは分かる。

 そして話は延々と続いていく。

 

「ガキの頃は、よく近所のおばちゃん達が『ジョン君は男前ねぇ~、モテるでしょ~?』と褒めてくれた! 俺はいつも、そんな事ないですよーと返したッ!」

 

「でも本当にモテない俺が、何故そんな謙遜しなくちゃならないんだッ!!(迫真)

 いつも疑問だったッ! 正直メッチャつらかったんだッ!!

 アイツら、わざと言ってるんじゃないか? 俺を傷つける為にやってるのか?

 そんな風に、おばちゃん達を疑ってしまう自分が、情けなくてたまらんかったッ!!!!」

 

「バレンタインデーが怖かったッ! その日がやって来るのを、いつも恐れてたッ!!

 放課後は学校に居残り、ワンチャン無いかを確かめたッ!

 俺は部活もやっていないのにッ!! なんにも用事なんか無いのにッ!!

 でも日が暮れるまで待っても、イベントは起きないんだぁぁぁあああッッ!!!!」

 

 ――――ボケカァァーース!! と置いてあったクッションを、ボコーンと壁に投げつける。

 女の子(デカちゃん)を怖がらせたくないのか、声の割にはあんまり力をこめずにセーブしてた所が、さらに哀愁を誘う。

 こんな時であっても、彼は優しい人だ。

 

「結婚するまでは、そういう事をしたくない、……と言い張った!

 もちろん言うまでも無く、エロい事に興味深々だったが、素知らぬ顔を装ったッ!!

 ハタチくらいの頃は、それでも通ったッ!

 むしろ『この人は誠実なのね』って、かえって周りの評判が、妙に上がったりしてたッ!!」

 

「でも24になった頃には、『こいつには何かしらの問題があるに違いない』って、そう疑われるようになった! どんどん周りの目が、辛くなっていった!!

 人見知りコミュ障のくせに、無駄にハンサムな顔してるのが、逆に俺の首を絞めたんだッ!!

 神よッ! アンタは残酷だぞ!? かえって俺の駄目さが目立ったんだッ!!!!」

 

 痛い痛い痛い。もう聴いててツライ。

 デカちゃんは大丈夫だったが、こういうのを町の子たちには聞かせないで欲しいと思う。夢も希望も無くなってしまう。

 ほんとアタシで良かったなーと、彼女は変な安心をした。

 

「変なヤツばっかりが寄ってくるッ!

 メンヘラとか、ストーカーとか、ホモとか、ドSの風俗嬢とか、軽く浮気してみたい願望のアホ女とか、中二病患者やリストカッターの子達ばかりが、俺にすり寄ってくるッ!!

 こいつも自分と同類だって、きっとそんな雰囲気が出てたんだろうと思う! 仲間だと思われてるんだッ!!!!」

 

「俺が気弱で、頼みごとをされたら断れないモンだから、ヤツラにとっては非常に都合が良く、いつも好き勝手なことを言いやがるんだッ!

 こいつなら自由にできる、お手頃だと、なんか軽く見られているッ!

 食い物にしてやろうって、そう思ってやがるのを、もうヒシヒシと感じるんだッ!!

 あんた童貞なんでしょ? いーじゃんって!!!!」

 

「俺は『出来るだけ人に優しくしよう』と心がけている、そんな人間なだけであって、別にドMでも聖人でもないッ! 変人を救済する、善意のボランティアでもないッ!!

 何をしても許され、何を言っても傷つかないワケじゃないんだッ!! むしろナイーブな方だッ!!」

 

「俺はッ……! 俺はッ!! 俺はぁぁぁあああッッ!!

 ――――お前たち変人共の受け皿ではないぞッッ!! お蔭で軽い人間不信だッ!!

 すり寄って来るなぁぁぁッ!! この変態どもがぁぁぁあああーーッッ!!!!(迫真)」

 

 なんか知らないけど、辛かったんだねおじさん――――

 寡黙な人には、寡黙な人なりの苦労があるのだと、彼女は変な所で学習する。

 やっぱ多少は自己主張とか意思表示しとかないと、悪い人ばかりが寄ってくるんだな~と。

 いくら屈強な肉体を持っていようとも、コミュニケーション弱者は容赦なく食い物にされる。世知辛い世の中なのだ。

 

「みっ……惨め過ぎるッッ……!! なんでこんな事にッッ……!!

 いつか結婚出来ると思ってたッ! 25くらいになったら、エスカレーターに乗るみたいに、普通に結婚出来るもんだと思ってたのにッ!!」

 

「みんなどこへ行った……? 夢を語り合った童貞仲間たちは、どこへ行ったんだ……!?

 俺を残して消えるな……! 傍にいてくれ! もう32だぞ俺はッ!

 一体こっからどう巻き返せば良い……? 教えてくれみんなッ……!!」

 

「空軍にも、仲間がいた……。そいつはなんと、女だった。

 確かに人見知りだが、俺にもちゃんと、ガールフレンドがいたんだエイドリアン……! 

 女性に搾取されるばかりではない! 本当なんだ……!!」

 

「女なのに格闘技が好きなヤツで、屈強だった。

 妙にウマが合って、よく二人で馬鹿話をしたんだ。

 国に帰ったら、一緒にボクシングを観に行こう。

 いつまでも筋トレを欠かさず、お互い体脂肪率13%を維持しようって、そう約束をしてたんだ……!」

 

「でもソイツ……いつの間にか()()()()()()()()ッ!!

 お互い人見知りっていう、よく分からん友情は、俺ひとりだけが感じてたのかもしれん……!!

 恋人が出来た途端、見違えるようにフランクな性格になってたッ! 筋トレも辞めてたッ!!」

 

「そいつの結婚式に行った……。出産祝いにも行ったッ……。

 旦那さんも元軍人だったので、俺にしては珍しく、すんなり仲良くなれた。

 その家族と一緒に、何故か俺も遊園地に出掛けた。

 なんだか知らないが、いつも『一緒に行こう』と誘ってくれるからなッ! 俺には断る理由が無かったッ……! 無碍には断れないッ……!」

 

「独り身の俺は、そいつ等からまるでお情けのように、幸せのおすそ分けをもらったッ……!

 子供さんも、よく俺に懐いてくれたよ! おもしろいオッサンだな~と!

 こう見えて俺は、結構ひょうきん者だッ!! 楽しい所もあるヤツなんだッ!! 子供好きなんだッ!!」

 

「ちっちゃい頃は良かった……! 掛け値なしに可愛かったッ! もう天使かと思ったよッ!! 遊んでやるのが楽しかったッ……!

 でもその坊主が5才となり、6才になり、だんだん賢くなってくると、『なんでおじちゃんは結婚してないの?』と、ものすごーく純粋な目で、俺に問いかけて来るようになったッ!!」

 

「無邪気な顔で、言葉のナイフをぶっ刺してきやがるッ!!

 天使かと思ってたのに、悪魔だったのか君はッ!? 俺を騙していたのかケビンッ!!!!」

 

「……どう答えれば良いのか、俺には分からなかったッ!

 さぁなんでだろうなーと、表面上は取り繕っていたが、あの子の『キョトン?』とした目が辛かったッ!! もうこの世から消えてしまいたかったッ!!」

 

「意味も無く『すまん』と謝りそうになったッ!! 相手は6歳の子供なのにッッ!!

 俺なんにも悪いことしていないのに! 何故こんな目に合わなくちゃいけないんだぁぁーッッ!!!!」

 

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

 彼がエグエグしている。

 大人なのに「おーいおい!」と泣いてる。

 

「こんな事が、この先も続く。

 これからの人生で、ずっと俺を苛むんだ……!

 独り身の変わり者だとッ……!」

 

「振り払えない……決して。なぜなら俺は童貞だからッ……! 30越えてるのに……!

 人と関わることをせず、何か大切なものを軽んじて生きてきた、俺への報いなんだッ……!!」

 

 それを物言わず、ただずっと見つめていた彼女が、おもむろに歩き出した。

 情けなく床にへたり込み、膝を抱えて泣いている、彼の傍へと。

 

「うっ……ううッ……!!

 助けてくれエイドリアン……。俺はッ……俺はどうすれば良いんだ……?」

 

「どうすれば、人に愛されるようになる……? 上手く接することが出来る……?

 君たち子供と、胸を張って話せるようになるんだ――――」

 

 縋るように、手を伸ばした。

 彼女はそれをギュッと掴み、そのまま自分の方へと優しく引き寄せる。

 

 大人なのに、子供なのに、男なのに女なのに。……そんな事はもう関係無い。

 デカちゃんは聖母のような所作で、そっとランボーを抱きしめてやった。

 

 

「ねぇおじさん、知ってる?

 ドーテーの人は、けしてメスガキには勝てないって……」

 

 

 ふと、彼女が口を開く。

 今日の戦いで見せたような嘲りでなく、とても優しい声で。

 

「これはもう、ルールなの。そーゆー決まりになってる。

 アタシがグーなら、おじさんはチョキ。

 あなたの中で、何かが変わりでもしない限り……、ケッカは分かりきってたの」

 

 打ちひしがれ、自身のお腹に顔を埋めて泣くランボー。

 デカちゃんは彼の頭をよしよしと撫でる。頑張ったこの人を、慈しむように。

 

「……でもね? そんなのより、もーっと強いルールが、この世界にはある。

 “惚れた方の負け”って――――」

 

「思えば、貴方のおっきな背中を見た時から……。

 アタシはとっくに、()()()()()()()()のかもしれない。

 メスガキじゃなくなった子が、あなたに敵うワケないわ」

 

 

 

 思えば、彼女のこれまでの行動や言動は、どこかメスガキらしく無かった。

 ランボーをこけ下ろす事もせず、いつも好意的に接し、敵対しつつも彼を支えて、気遣っていた。

 今日の戦いでも、無理をして自分を奮い立たせ、メスガキというキャラを演じていたに過ぎない。彼が良心を痛めることなく、自分をわからせる事が出来るようにと、あえて悪い子になっていたのだ。

 

 とっくに彼女は、メスガキでは無くなっていた――――

 あの最初に出会った日に、恋に落ちていたんだから。

 

 

 

「だから、おじさんの勝ちなの。

 ここに来たジテンで、ニンムはかんりょーしてたのよ」

 

「わからせる必要なんて、ない。

 だってアタシは、もう心をうばわれてるの」

 

 

「むかえに来てくれて、ありがとう。

 ずっとまってたよ――――アタシのおうじさま♥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「……と油断させておいてぇ、メスガキスパーーク!!!!!!!!

 

「ゲェーーーッッ!!!!」

 

 某キン肉星の王子とまったく同形の技が、ランボーに炸裂した。

 

「な゛っ……何故だエイドリアン。なぜ攻撃する……?(膝ガックガク)」

 

「ふははは、思い知るがいい♥

 ょぅι゛ょの力は、まさに世界を支配するとゆーことを!」

 

 ワケの分からん事を言いつつ、赤い髪をファサッとかき上げる。

 

「ごめんね、おじさん。

 なんかアタシ、色々どーでもよくなっちゃって♪

 とりあえずいっかい、空気こわしとこっかなって♥」

 

 コキコキと首を鳴らしながら、拳もボキボキ鳴らす。

 おおお……みたいな感じで、ヨロヨロと立ち上がるランボーを、じっとその場で待ちながら。

 

「メスガキとか、わからせとか、ゴチャゴチャしてるけどさ?

 とりあえずおじさん、()()()()()()()()()()

 

 かの有名な「うっさい! おっぱい揉んどけや!」ならぬ、「うっさい! ちんぽしとけや!」である。

 

「もうフツーにえっちしたらよくない? ムズカシーことはおいといてさ?

 アタシねんがん叶ってハッピー♥ おじさんドーテー捨てられて幸せ♥

 ほら、いい感じでしょ? もうしよーよおじさん♪ ちょーだい(はぁと)」

 

「ッッ!!??」

 

 ヴァン〇レイ・シ〇バみたく手首をグニャグニャしつつ、彼女が「ちんぽしよ♪」と誘う。

 そのあっけらかんとした、どこか姉貴肌な姿に、ランボーおじさんはポカーン。

 

「さぁ、エンリョしないで、こっちへ来なさいな、ドーテーさん♥

 ――――もうメスガキじゃなくなったわ。()()()()()()()()」キリッ

 

 ピキリ! と場の空気が凍った。

 そのどこか挑発的な言葉に。

 

「おいでよおじさん……。ブーメランパンツなんか捨てて、かかってこいっ!」

 

「楽にソーシツしちゃ、つまらんでしょう?(※素人童貞、的な意味で)

 ちんぽを突き入れ、アタシとらぶらぶえっちするのが、望みだったんでしょう?

 そうじゃないのかぁ。おじさんっ」

 

「さぁ、息子さんを出せっ! 勃たせてやれっ!

 チャンスをフイにしたか無いだろぉ!」

 

 なんかランボーの身体が、プルプル震えてるような気がする。

 それは一体、どんな感情からなのか?

 いま俯き加減でいる顔からは、窺い知ることは出来ない。

 

 そして、改めてデカちゃんが、「アタシ永遠のょぅι゛ょだからー! 法とかカンケー無いからー!」と再確認。

 彼女は3桁才! 彼女は3桁才!(※大切な事なので二回)

 

 

「こいよジョン(童貞)ランボー(野郎 )。……こわいのか?」

 

「――――野郎・オブ・クラッシャーーッッ!!!!!(君を抱いてやるぞ! 愛している!!)」

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「あー、やっとるやっとる。これで一安心だなぁ」

 

「そーねー」

 

 メスガキ署、6階の踊り場。

 いまサリー大佐&メスガキポリスたちは、彼らの様子を確認しようと、ここまで上がってきた所だった。

 

「ドア越しだが、めっちゃ声聞こえるなぁ……。

 同志エイドリアンも、ランボー様も、張り切っておると見える」

 

「まー念願叶って結ばれたワケだし、しょーがないったら」

 

「すんごい気合入ってるw どんな声量よコレw オペラかww」

 

「たぶんこれ、そとまでひびーてるね♡ とってもしあわせそう♡」

 

「ちなみに6階には、計46にもおよぶ隠しカメラを設置しておいた。

 所謂、『こんな事もあろうかと!』というヤツ。後でみんなで共有」

 

 今も向こうからは、まるで戦争でもやっているような物音と、二人が喚き散らす熊みたいな大声が、延々としてきている。

 それを小学生の女の子達が、少し開いたドアの隙間から「じぃ~!」っと覗いている~、という構図だ。

 

「とりあえずは、これでめでたしめでたし、って感じだけど……。

 でも色々難しいんでしょ? この町の事情って」

 

「案ずるな、同志ブルーよ。

 その為のランボー様( 英雄 )、その為のわたくし( 指揮官 )だ♥」

 

 ふふんと得意げに笑い、大佐ちゃんがブルーに流し目を送る。

 この子の瞳には、もう未来が見えているのだ。みんなの幸せな明日が。

 

 

「おうじさまと結ばれた人魚姫は、()()()()()()()()()()()

 そうでなくては、おかしいんだ。必ず成して見せるさ――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、相も変わらずランボーとデカちゃんは、どったんばったん大騒ぎであった。

 

 

 

「おっしゃー! アタシのど真ん中みたるわぁーっ!

 こいおらーっ! メスガキなめとったら、いてまうどコラーっ!」

 

「――エイドリアーーン!! エイドリアーーン!!(意味深)」

 

「なんじゃあーっ! その犬みたいなヘッピリ腰はぁーっ!?

 アタシがちっちゃいからって、テカゲンしとったら、ショーチせんどぉーっ!!

 もっとこんかわりゃー!! このざこちんぽコリャー! C'moooooooon!!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ちなみにあの料理は、全部ジョン・ランボーが美味しく頂きました。

*2
Fateシリーズのネロ・クラウディウスや、カードキャプターさくらで有名な声優さん

*3
今ランボーは興奮し、メスガキシティの事情が、頭から飛んでいる






 【野郎・オブ・クラッシャー】と【童貞喪失】って、言葉のニュアンスが近い気がする(確信)

 映画本編のエピソードは、これにて終了です。
 次回、エピローグ。




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。