ランボー / 怒りのメスガキわからせ 作:エロスはせがわ
「ではこれより、調書を作成する。
分かる範囲で構わない、質問に答えていって欲しい」
テーブルを挟んで向かい合わせに、メスガキブラックが座る。
「ご協力、誠に感謝。
後で署のメスガキ共を、わからせファックしていい」
「聞き慣れない言葉だが、とりあえず遠慮するよ……」
えー、すればいいのにぃー! ぶーぶーっ!
そんな抗議の声が、両隣から聞こえる。
ゆさゆさと身体を揺すってくるメスガキイエローと、ニコニコしながらぴとっと身体をくっつけているメスガキピンク。
彼女達は、聞き取りを受けているランボーを安心させるように、キャッキャ言いながら彼の両脇に座っている。
別にこれは取り調べとかじゃなく、ランボーも悪い容疑者というワケではないので、この場の空気はとても柔らかな物。リラックスした雰囲気だ。
まぁいま目の前で、ネコのキャップが付いたえんぴつを握っているのが、自分の背丈の半分もないような、ランドセルを背負ってる幼い女の子だ……というのは物凄くシュールかもしれないが。
ファンシーなヘソ出しキャミソールと、まだぺったんこの胸にキラリと輝く保安官のバッジ。
艶やかで長い黒髪と、リップを塗った瑞々しい唇が、とても印象的に思う。
まるで高価な日本人形を思わせるような美しさと、ミステリアスな魅力を持った子である。
メスガキブラックはいつも、その大きくてまん丸な瞳で、「きょとん?」って感じでじーっとランボーを見つめている事が多い。
まっすぐで、吸い込まれそうなほど綺麗な瞳。無垢な子供の目だ。
でも今は仕事だからなのか、心なしか「キリッ!」とした目をしているようだ。
こんなにもちんまい彼女が、頑張って真面目な顔をしようとも、「えらいなぁ」としか思えなかったりするのだけど……。カワイイばかりで威厳など全く無かったりするんだけれど……。それをわざわざ口にするランボーではない。
いま部屋の隅っこの方で、一人ブツブツと何かを呟きつつ、【子供の名前の付け方♡】という謎の本を読んでいるメスガキブルーの方にチラッと目をやってから、彼は対面に座るブラックちゃんへと向き直るのだった。
「名前はジョン・ランボー。
スペルはこれでいい?」
「うむ、問題ない」
「アリゾナ州、ボウイ出身。1947年7月6日生まれ。
17歳でアメリカ陸軍に入隊。1966年に
南ベトナム等で任務に従事した後、1974年に除隊し、現在に至る」
「そんなトコだ。合っているよ」
スラスラ……というか〈かきかき!〉って感じで、ブラックちゃんが一生懸命えんぴつを動かしていく。
あらかじめ調べておいたのだろうが、ランボーのプロフィールは既に手元の書類に揃っており、それを口頭で確認するのみ。手間はかからなかった。
軽くではあるが、話の中で、ランボーがこれまで受けて来た“勲章”の事にも触れられた。
アメリカ軍において最高位の勲章である名誉勲章(大統領から直接授与される!)を始めとして、10を超える様々な勲章がズラリ。
彼がまごう事なき英雄であり、ものすご~く優秀な兵士であった事を知り、みんな目をキラキラさせて「すごーい!」と叫ぶ。無邪気にキャッキャと喜ぶ。
その様は、まさにヒーローに憧れる子供、そのものだ。
ベトナム帰還兵であるという、ただそれだけの事で、これまで散々人々に冷遇されてきた彼は、なにやら素直に喜べないような、むずがゆいような、不思議な気持ちになる。
国の為に命を賭して戦い、しかもこれだけの功績をあげた兵士が、こうして人に褒められるのは当たり前。誇らしい事なのだ。
それをランボーは、今日この子達と会うまで、知らなかったのかもしれない――――
「身長は180㎝とあるが、服のサイズはどう? どのくらいの大きさ?」
「えっと……ジャケットはXL、ズボンはMサイズが多いかな」
「好物は何? 普段はどんな物を食べてる?」
「なんでも。好き嫌いは無いんだ。
ジャンクフードも食うし、狩りをした獲物を調理する事もあるぞ」
「好きな女性のタイプは?
もしランドセルを背負った純真無垢なロリータと、婚活パーティで『年収はおいくらですか?』とそこら中で聞いてまわってる勘違い年増女が、崖から落ちそうになっていたら、貴方はどちらを助ける?」
「もちろんこどm……ってちょっと待て。なんだその質問は」
仮に妙齢の方を助けたとしても、「どうもありがとう。ところで貴方、年収はおいくら?」とか訊かれちゃったらば、俺はそいつを崖に蹴り落とす。
それだったらもう、最初から女の子の方を助けておいたら良い。
偽善者たちは「命は等価値」などとのたまうが、未来ある子供の方が重いに決まってるじゃないか。とランボーは思う。
まぁそれはともかくとして、なんか質問の内容がおかしかった。ぜんぜん調書と関係ない気がする。
「スレ住人達がおっぱい画像で盛り上がる中、『俺は小さい方が好き』と空気の読めないコメントを書き、謎の自己主張をした事がある。
イエスかノーかで答えよ」
「無いッ! なんだその気持ち悪いヤツは! お前の事など知るかッ!!」
「使用済みのぱんつを“干物”とするならば、女の子が穿いている状態のぱんつは“刺身”に該当し、末端価格が違ってくると思う。イエスかノーか」
「なんだ末端価格って!? 何を言ってるんだ君は!!」
「もし10万ドルPON☆ と渡され、アグ〇スを始末しろと言われたら、引き受ける。
だがなぁ大佐ぁ? ヤツをブチ殺せるんなら、タダでも喜んでやるぜ!! イエスかノーか」
「誰だそいつは!? 俺はなんの恨みも無いッ!」
「最後の質問。
小さな女の子に罵られると、ぞくぞくぅ~っと得も知れぬ快感を覚える。
イエスかノーか」
「覚えん! そんなヤツが
頭がおかしいじゃないか!!(キッパリ)」
ランボーは言い切る。即座に、何の躊躇も無く――――
もしランドセルを背負った幼女に罵倒されて喜ぶような輩がいるなら、ソイツは本当にどうかしている。異常者じゃないか。
そんなヤツとはもう、口もききたくない! 近寄りたくも無いぞ! そう声を大にして熱弁した。
♥ ♥ ♥
「あらら。何をさわいでるのかしらん?」
ある程度仕事に目途が付き、メスガキ刑事が応接室を訪れた時……、そこにあったのは5人がワーキャー騒いでいる光景だった。
「――――ほらっ! さっさと押すぅ!
早くしなさいったら! 指をへし折られたいのっ!?」
「……ッ! ……ッ!!」
イエローたちがニコニコと彼にしがみつき、その上でブルーちゃんが腕を掴んでいる。
いまランボーの眼前には、なにやら書類らしき物が置かれており、それにインクが付いた親指を押すようにと、彼女に強要されているのが伺える。
有り体に言うと、それは“婚姻届け”と書かれた用紙であった。
「ヤクショが閉まるでしょお!? あそこ3時までなんだからねっ!
はやく届けを出さなきゃいけないのぉ! テーコーしないでったらぁーっ!」
「待ってくれッ……! 何故こんな事をッ……!
君とは今日会ったばかりだッ!」
「そんなのカンケーないし!
あたしもアンタなんてどーでもいいけど、コレおなかの子のためだし?
ちんぽ生えてんでしょ!? 男のセキニンとりなさいったらっ! このクズぅー!!」
暴れるワケにはいかないので、まるで石像のように、必死に身体を硬直させる。
もうブルーちゃんは「むきーっ!」って感じで、いっしょうけんめい腕にぶら下がったりして、指を押させようとしている。
まぁ他の三人は、なにやら面白がっているのか何なのか、それをニコニコ見ている感じだが。
ピンクちゃんはランボーの背中におぶさり、「~♪」と幸せそうな顔をしているし、他の二人も彼の腰にぎゅ~っと抱き着き、甘えるようにグリグリ顔を押し付けている。
一見すると、娘たちに囲まれている休日のお父さんって感じではあるが、その必死さはもう比べるべくも無い。
今ここに、ランボーの人生が決定しようとしていた。
「あらおじさま、みんなと遊んでくれてるのぉ?
モテモテじゃなぁーい♪ このこのぉ~♥」
「きっ……来てくれたのかッ!
頼むッ、この子達をなんとかしてくれッ! 君だけが頼りだッ!」
「はいはーい♥ それじゃあみんなぁ、いったんおじさんから離れてぇ~!
せいれぇぇーーつ!」
メスガキ刑事がパンパン手を叩いた途端、彼女達がソソクサと離れる。
ランボーが何を言おうが全く聞く耳を持たなかったのに、「ビシッ!」と敬礼を決めた。なんか大人として腑に落ちない気持ちだ。
「ちょいちょい? こーゆーのはもっと、じっくりテーネーやらなきゃ。
だいじょうぶよブルー♪ あせる事ないわ♥」
「すいませんボスっ! あたしテンパッちゃって……ごめんなさい」
優しい笑みをしながら、ぼそっと告げる。
とても小さな声だったので、ランボーの耳には届かなかった。彼はきょとんとした顔。
「さてさてぇ……。
スマブラでもやってるのかと思えば、さっそくおんなのこを一人、
さすがはおじさんっ!
「ッ!?」
「ランドセルをせおった、つるぺたょぅじょのお味は、いかがだったかしら?(はぁと)
こちらメスガキシティの特産ですの♪
た~んと、ごタンノウくださいまし♥」
「ッッ!!??」
まるで若女将を彷彿とさせる、柔らかな笑顔。
でも何故だろう? それはちょっと冷たい感じがした。心臓をキュッと掴まれるような。
「お、怒っているのか?
君が仕事をしているのに、俺は休んでいたから……」
「あー、そうじゃないそうじゃない♪ べつに気にしないでいいわ♪
みんなとなかよくしてくれて、アタシもうれしーし♥」
ぼっくねーんじーん♥ とよく分からない事をいいながら、ギュッとランボーに抱き着く。
さっきまでのコワイ雰囲気は消え、いつもの無邪気な彼女に戻っていた。
「とりあえずぅ、チョーショも書けたみたいだし、おじさんおふろでも入ってくるぅ?
今日はたくさん汗かいたでしょ? ょぅじょとネチョネチョからんで♥」
「言い方に語弊がある気がするが……。ここに風呂があるのか?」
「もっちろん♪ 男の人もはいれる、おっきな浴場があるよぉ♪
それ行ってるあいだ、アタシ服をあらっといてあげるね♥ やくそくしてたし♥」
実はここメスガキシティには、男風呂どころか、ありとあらゆる男性用の設備がある。
いつか男の人がやって来た時のために~と、町のお金を沢山つぎこんで、準備してあったのだ。
男性用トイレの小便器や、先のファミレスにもあった喫煙席、身体の大きな人でもゆったり座れる座席などなど。そういった物が当たり前のように、町中どの建物にも備えられている。
近年は、身体の不自由な方々の為、“バリアフリー”の必要性が強く訴えられているが……、それを遥かに凌駕する普及率で、男の人専用の設備があったりする。
すべては「ちんぽしたい!」というメスガキ達の情熱……いや彼女達の優しい心遣いの賜物だ。
「すまない、君には世話になってばかりだ。
この町にいる間、俺に出来ることがあれば、もう何でも……」
「もうっ! そんなカタクルシク考えなくていーのっ♪
アタシたちはね? おじさんと会えたーってだけで、ほんとぉーにうれしいんだからぁ♥
さぁ行った行ったぁー♪」
いつも岩のように表情が固まっている彼が、ほんの少しではあるが、笑ってくれた。
それはとても尊い……奇跡のような瞬間だと、彼女には映る。
思わず見とれてしまうくらいの、この上なく素敵な笑みだった。
メスガキポリスの4人に案内されながら、彼が浴場に向かうべく、この場を去って行く。
その後ろ姿を、メスガキ刑事はちいさな胸をぎゅっと押さえながら、ただその場で見送る。
「おじさん……、本当にキキカンリノーリョクがたりないよ。
きっと、アタシをシンヨーしてくれてるのね。ちょっと胸がいたいな……」
だが、ドアがばたんと閉まり、彼の姿が完全に見えなくなった途端、メスガキ刑事が呟く。
「服をとられちゃったら、
もうにげられなくなるよ? いいのおじさん……?」
♥ ♥ ♥
カポーン! という音が浴場に響く。
現在ランボーは、備え付けの椅子に座り、わしゃわしゃとシャンプーをしている所だ。
「まさか、こんな立派な風呂があるとは……。
いったい幾らかけたんだ? ライオンの彫刻や、マウント・フジの絵まで描かれてあるぞ」
とても広い大衆浴場、それをめちゃくちゃお金かけて豪華にしたような光景が、いま彼の周りに広がっている。
サウナだの、滝の湯だの、電気風呂だの、ジャグジーだのもしっかり備わっており、もうドン引きりちゃうくらい「至れり尽くせり!」って感じ。
ここは保安官事務所であったハズなのだが……なぜこんな純和風の大浴場が?
そんな疑問を呈するのも馬鹿らしくなる程に、気合の入ったお風呂場であった。
「まぁ、別に構わんか。
身体を洗えるのはありがたい。彼女達に感謝しておくさ」
あらかた身を清め終えた後、じゃぼんと浴槽に入る。
思わず「お~!」と声が出てしまうくらい、とても気持ち良い湯だ。
こうして温かい風呂に浸かっていると、旅の疲れがどんどん抜けていく心地がする。
普段はシャワーや行水ばかりで、滅多に入ることは無いが、やはり風呂は偉大だな~と思う。
生きる喜びを実感するランボーであった。
『おじさぁーん! ゆかげんはどーですかぁ~?
あつくないですかぁ~?』
恐らくは脱衣所の方からだろう。メスガキピンクの物らしき、ほわほわした声が聞こえてきた。
きっと彼の服を受け取り、代わりの物を準備しに来てくれたんだろう。
あの子は桃色のセミロングの髪で、とても愛らしい容姿の子だ。
4人の中でも一際幼く、一緒にいてほんわかとするような雰囲気の、心優しい女の子。
だというのに、こんな男の服を触らねばならんとは。あの子にも世話をかけてしまってるな……、とランボーは苦笑。
ありがとう、問題ないよと、あちらに聞こえるよう大きな声で返事をした。
『はーいっ! わっかりましたぁ~っ!
じゃあわたしたちも、
ズッコー!! とランボーはひっくり返る。
風呂の中だったので、ゴボゴボと溺れそうになった。
そして、彼が声をかける間もなく、浴場の扉が〈ガラガラー!〉と音を立ててオープン。
「わぁ♡ おっきぃねー♪
わたしたちがつかってる、ちいさなバスルームとは、ぜんぜんちがうよぉー♡」
「総工費300万ドルをかけ、この浴場は作られた。
全ては今日、この日の為といっても、決して過言では無い」
「おじさんどこぉ~?
あたい早く、ちんぽ見たいんですけどぉ~☆
ざこちんぽ見せてぇ~www」
「あああ……あんた達ぃ! からだ隠さないのっ!?!?
タオルくらい巻きなさいったら! あわわわ……!」
ぞろぞろと浴場入って来る、メスガキポリスの4人。
ランボーはザッパァ! と水面から顔を上げ、もう目をひん剥いて驚愕。
「あっ、おじさんいたぁー♪
おじさぁ~~ん♡♡♡」
一糸纏わぬ、まさに生まれたままの姿のピンクちゃんが、嬉しそうに声を上げた。
彼女はランボーを見つけた途端、「わーい!」と両手をバンザイしながら、トテトテこっちに走って来る。
――――肌色! つぼみ! ピンク! ぺたんこ! つるつる!
この刹那の瞬間、怒涛の勢いで様々な単語が、彼の頭に浮かぶ。
「おっ、じっ、さーん♡♡♡」ピョーン
彼の胸にダイブし、ぎゅーっと抱きつく。
ランボーの逞しい胸板と、少女の未発達な身体が、遮る物のない素肌同士で密着。ピンクちゃんがランボーの腕の中に納まる。
まるで子犬のように純粋な好意で、スリスリと首筋に顔を押し付ける。
大好きなパパに甘えるみたいにして――――
「えへへ♪ おふろきもちいーい?
わたし、おじさんのちんぽ、いっぱいあらってあげるね♡
ごしごしって♡」
♥ ♥ ♥
「はい、はい……。
もー嫌ですわ、お義母さまったら♪ お上手なんだからぁー♥」
事務所のデスクで、ひとり電話をかけている、メスガキ刑事。
「ではまた、改めてご挨拶に伺いますわ♪ 謝礼金の方はすぐに♪
今後とも、末永くお願い申し上げます。よしなに♥」
電話ごしだというのに、ペコペコ頭を下げたり、「やだもー!」と手を振ったり、とても忙しい様子だ。
「はい、そうですね。存じておりますわ……。
ベトナム帰還兵のPTSD*1は、アメリカが抱える大きな社会問題であり、この国の罪です。
私達みんなで、彼の尊い献身に、報いていかなければと……」
「わたくし共が、
どうかご心配なさらないで、お義母さま♥」
そう告げて、カチャッと受話器を置く。
メスガキ刑事は「ふーやれやれ」といったように、グルグルと肩を回す。
「カクショへのれんらくと“書類作り”も、ホネが折れるわねぇ……。
でもがんばんなきゃ♪ みんなの幸せのためだもん♥」
椅子にもたれかかり、のびぃ~! っと両手を上げる。
そうしてすぐにメスガキ刑事は、次の連絡先に電話をすべく、いそいそと受話器を手に取った。
けれど……その時。
――――どっごぉぉぉーーーん!!!!
「なっ?! なにごとぉーーっ!?!?」
突然この場に、凄まじい破壊音。
事務所の壁が粉砕した大きな音が、辺りに木霊する。
ビックリしてぴょーんと飛び跳ねたメスガキ刑事は、慌ててキョロキョロ周囲を確認する。
『ぬぅおおおおッッ!! うおぉぉぉおおおおーーーーッッ!!!!』
そこには、
彼はマッパのまま手で前だけを隠し、突然壁をぶち破り、この場に飛び込んで来たのだ!!
「キャアアア! いやーーーっ!!」
「わあああ!! ちんぽがいるよぉぉーー!」
「やーん♥ ごりっぱぁー♥」
阿鼻叫喚のメスガキ署。悲鳴とか黄色い声が飛び交う。
デカちゃんは「ぽかーん……」としたまま、いま猛然と暴れ狂っている全裸でムキムキのおっさんを、ひとり見つめ続ける。
デスクが宙を舞い、棚が豪快に倒れ、ウォータークーラーが粉砕する。
やがてランボーは事務所の窓を〈バリィィン!〉とブチ破り、カッコよく外に飛び出していった。
流石はアクションヒーローだ! フルチンではあるけど!
「ちょ……ちょっとおじさん!? そのカッコで外いくの?!
ちんぽ出てますケドーっ!!??」
彼女が背中に向けて声をかけるが、もうランボーは止まらない。止められない。
この幼女ばかりが住むメスガキシティの青空の下、アダムとイブより露出度の高いおっさんが降臨。
猛然とメスガキ署から逃走し、股間を押さえながら爆走して行く。突如として町は大混乱に陥る。
「――――ッ!?!?」
署から暫くいった所で、ランボーは道路脇に止められている二輪車を発見し、即座に乗り込む。
「うおぉぉぉっ!! どけどけぇぇーーーッッ!!
道を空けろぉぉぉおおおーーーッッ!!!!」
「わあっ! あのひと裸だよぉー!?」
「きゃーっ! へんたぁーーい! ちんぽぉー!」
「えっちぃー! 変質者ぁーっ! ちょっとさわらせてぇー♥」
通りすがりのメスガキ達に、罵られたり好奇の目で見られながら、ランボーは走るッ!
この町から脱出すべく、雄たけびを上げながら逃走を開始する!
そうッ! ベトナムの英雄である彼の戦いが、再びここに幕を開けたのだったッ!!
……。
…………。
……………………。
「ねぇおじさん……、そんなカッコでお外に出ちゃダメでしょ?
あんた大人なんだから、それくらい分かるよね?」
「……」
しかし、その10分後――――
「ダメじゃないの!
おじさん身体おっきーんだから、そんなの乗ったって、しかたないでしょ?
じぶんの足で走った方が、よっぽど速かったでしょうに」
「……」
ランボーがめっちゃ小さな幼児向け自転車(補助輪つきのヤツ)を、キコキコと頑張って漕いでいる所を、後からパトカーで追って来たメスガキ刑事が、あっさりと捕獲。
彼が逃走を開始してから、10分くらいで署に連れ戻したのだった! なんの苦労も無く!
「おじさん、ゼンカついちゃうよ?
こーんな女の子しかいない町で、フルチンのまま外出するだなんて……。
そーゆーシュミの人なんだな~、って思われちゃうよ?
おじさんベトナムのエーユーでしょ? それでいいの?」
「……」
腰に手を当てて怒るメスガキ刑事を前に、今も両手で股間を押さえたまま「しゅん……」と正座をするランボー。
これまで彼が成してきた数々の功績と、大統領から授与された名誉勲章が泣いている。
今そのメダルでちんぽを隠してみたら、ちょっと面白いかもしれない。
「いくらメスガキポリスの子たちに、ビックリしたからって……。
それで町中の女の子にちんぽさらしてたら、世話ないでしょ?
今メスガキシティのSNSやネットけーじ板は、えらい事になってるの。
おじさんセキニンとれんの?」
「……」
おじさんのちんぽどうだった? という話題や、おじさんのちんぽ画像ください! というスレでいっぱいなのだ。
現在メスガキシティは、まるでビートルズ来日の如く、大盛り上がりである。
「とりあえずおじさん、もっかいおふろ行こっか?
そのままじゃ、湯冷めしちゃうからさ……」
「すまないッ……! 君には本当に苦労をかけるッ……! すまないッッ……!!」
土下座をせんばかりに頭を下げ、ランボーはデカちゃんに感謝を示す。
そして彼女に優しく手を引かれながら、とりあえず大浴場に向かって行く。
未だ左手で股間を隠したまま。
『――――あーっ、おじさんかえってきたぁー♪ おじさぁーーん♡♡♡』
「ッッ!?!?」
その時、廊下の向こう側に、
彼女はとても無邪気に、未だ一糸纏わぬ“つるぺったん”のまま、「わーい♡」とこちらに駆け寄って来た。
「うっ――――うおわぁぁぁあああああああッッ!!!!!!!!」
「ちょま?! おじさーんっ!?!?」
ランボーは駆け出す。
クルッと背を向けた途端、猛然とこの場を走り去って行く。全裸フルチンのままで。
再び事務所の窓を〈バリィィン!〉とブチ破り、勢いよく外へ飛び出す。
そのまま「うおぉぉぉ!!」と雄たけびを上げ、メロスのように太陽に向かって走る。
どんどんその背中が小さくなり、瞬く間に見えなくなっていった。
「止まってよおじさんっ! どこいくつもりなのっ?!
カゼひいちゃうってばぁーーっ!」
ランボーは逃げる! 炎の逃走! 自由への脱出だ!
彼は再びこの町から脱出すべく、その比類なき肉体を惜しげもなくメスガキ達に晒しながら、解き放たれた矢のように走り出した!!
ヒロイズムの元祖たる、偉大なアメリカンヒーローッ!! 誰もが憧れる男の中の男!
今ちんぽを〈ぶるんぶるん!〉しながら、改めて彼の戦いが、ここに幕を開けたのだった!!
……。
…………。
……………………。
「ねぇおじさん……、なんかい言ったらわかるの?
そんなカッコで外に出ちゃダメって、アタシ言ったよね?」
「……」
だが、その10分後――――
「ぶるんぶるんしてたよ?
おじさんのちんぽ、右に左におーあばれ。すんごい荒ぶってた。
……そんなの町の子たちに見せないでよ。
原始人だって、もーちょい恥じらいあるよ? 毛皮とか着てるもん」
「……」
はぁー! とため息を付き、じとぉ~っとランボーを睨む。
この町には、小さい女の子が乗る用の、自転車とかキックスケートしか無い。ゆえにランボーは、今度は自分の足だけを頼りに、頑張って山に向かって走っていたのだが、当然の如く後から追っかけて来たパトカーに掴まった。
そのまま普通に連行され、また署に連れ戻されて今に至る……というのが事のあらましである。
いつまで経っても、怒りの脱出ができない。哀れだ。
「だいたいさぁ……なんで逃げんのよおじさん?
あんたくらいの年の人が、ちいさい子とおふろ入ったげるのなんて、
いったい何をはずかしがってるのよ? ちょっとシャイすぎないかなぁ?」
「……うむ。そうだよな……」
例えば、まだ幼い女の子が、銭湯でお父さんと一緒に男湯の方に入るのなんて、ごく普通の事。
それにランボーくらいの年齢ならば、自分の娘さんをお風呂に入れてやっている人なんて、もう沢山沢山いる事だろう。
なーんにもおかしい事も無ければ、別に逃げるような事でもない。
きっと、このメスガキシティの空気にあてられ、彼はテンパっていたのかもしれない。
あたかもサバンナのバンビちゃんみたく、「ぼく襲われちゃう! 逃げなきゃ!」みたく思ってしまったのだ。
よくよく考えたら……、何をそんなに怯えていたのだろう?
仮に今、よく人柄を知るメスガキ刑事に「いっしょにおふろ入ろ♪」と言われたらば、きっと自分は普通にOKしていると思う。何を考えることも無くだ。
髪を洗ってあげたり、一緒にのんびり湯船に浸かったりと、親子のように
俺はどうかしていた……。勝手にびびってたんだ……。
また「しゅん……」と正座させられながら、ランボーはそう反省するのだった。
「しっかりしてよぉ、おじさんっ! アタシ心配したんだよぉ?!
おじさんいなくなっちゃうーって、すごくかなしかったの……。
もう逃げたりしないって、やくそくしてくれる? アタシとゆびきり……しよ♥」
「ああ、分かったよ。
これで良いかな」
彼女のうるうると滲んだ目に、ランボーは自分の不甲斐なさを痛感。
言われるままに小指を差し出し、優しく絡ませて上下に揺らした。
二人はニッコリと見つめ合い、ちゃんと仲直りをする。親愛を称えるあたたかな瞳で。
もう二度と、この子に心配をかけまい。
そうランボーは、固く心に誓うのだった。
「ウソついたらヤだよ? しんじてるからねっ、おじさんっ♥」
「任せておけ。指切りもしたしな」
ドンと胸を叩き、力強く頷く。
すると彼女は花のような笑みでニコッと…………いやどこか「ニヤリ!」という声が聞こえてきそうな顔で笑う。
言質とったわ――――そう言わんばかりに。
「そんじゃあ、いっしょにおふろ行こっかっ! はだかの付き合いをしましょ♪
あ、アタシね?
カクゴしといてねーっ。 お じ さ ん っ ♥♥♥」
「ッッ!?!?!?」
天使だと思ってた。彼女はまるで花の妖精のように、可憐な女の子だと。
しかし今、ランボーにはメスガキ刑事の姿が、黒い羽とハート型の尻尾を生やした、小さな小さな悪魔のように見える――――
「イヤがる人を、むりやりここに居させるってゆーのは、アタシも心がいたかったけどぉ……。
でもおじさんの方から言ってくれたしっ! これなら何のモンダイもないよね♥
アタシうれしいわ、おじさん♥」
「さっきアリゾナ州のヤクショとか、おじさんがケーヤクしてるアパートとか、軍とかオヤゴさんにも連絡しといたんだけど、それがムダにならずにすんだもの♪
あ、これジゴショーダクになっちゃったけど……別にいーよね? てへっ♥」
「だっておじさんはもう、にげないもんねーっ♥
ずーっと、ずーっと、
これは……いったい何だ? いま目の前にいる少女は……誰だ?
まごう事なき、愛らしい少女。ランドセルを背負った、小さな小さな存在。
けれど今、彼女の身体から「決して逃がさない、拒ませない」という化け物じみたオーラが、もうハッキリとビリビリ肌で感じる位に、発せられているのが分かる。
この子には、絶対に敵わない――――たとえ何をしようが。
ランボーの兵士としての本能が、再び強く
メイデイ、メイデイ、今すぐここから逃げろと……。
「あ、さっきチラッと見たけど、
だいじょーぶ! とってもりっぱだし、アタシそーゆーのゼンゼン気にしないから♪
いっぱい『いいこいいこ♥』してあげるっ! ちんぽおっきくてえらいねって♥」
「ふだんはおとなしーけど、いちど怒り出すと、手が付けられないくらいキョーボー?
まさにランボー! って感じよね、お じ さ ん の ち ん ぽ ♥♥♥
あっはっは!(爆笑)」
気が付けば――――ランボーはその場から駆け出していた。
なりふり構わず、もう股間を手で隠す余裕もなく、一心不乱に。
これまでとは比べ物にならない、まさに韋駄天の如き速さで、瞬く間に外へ飛び出す。
「あーっ! パトカーを奪うだなんて、そんなのズルいよぉーっ!
もう逃げないーって、アタシとゆびきりしたでしょおーっ!?
おじさんのうそつきぃーっ!」
聞こえない。何も聞こえない……。
いま彼の頭の中にあるのは、一刻も早く逃げなければという、生きるための本能のみ。
この身体を突き動かすのは、決して抗うことの出来ない、絶対的な恐怖。
「むきーっ! 追いなさぁーい! みんなでおっかけるのよーっ!
――――逃げるヤツは、ざこちんぽ! 逃げないヤツは、よく訓練されたマゾちんぽ!」
「「「
ランボーは走る。自由と安息の地を求めて――――
まぁ紆余曲折あったが……、今ようやく彼とメスガキ達との戦いの火蓋が、ちゃんと切って落とされたのだった。
無駄に。