空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。

・仗助の過去を捏造しています。


 ――空条承太郎だって、親友との距離を縮めるためなら、あだ名で呼び始めるという単純な手を使う時があるはず。

 サブタイトル:黒豹の狩りの始まり





空条承太郎の友人は、思い出す

 

 

 

 

 ――夢を、見た。

 

 その夢の中で、俺は複数の男子高校生(見るからに不良)に絡まれている、中学生ぐらいの少年を見つけた。……その少年は、何故か髪型をリーゼントにしていた。

 髪型はともかく、少年はなかなか勇ましい奴で、高校生相手に上手く立ち回り、苦戦しながらもよく戦っていたため、俺は少年の方に加勢する。

 

 高校生達を追い払った後。なんとなく、流れで少年と雑談する事になった。……彼は、俺の目付きの悪さに驚きはしたが、怖がらなかった。俺はそんな彼に興味を持つ。

 

 そして、雑談中に彼の髪型に関係する話を聞いたのだ。

 

 

「――へぇ。その恩人を尊敬して、髪型も真似するようになった、と。……それはいいな。グッと来る理由じゃねぇか」

 

「本当に?……本当に、そう思うか?」

 

「あぁ。その恩人もカッコいいが、恩人を尊敬している証としてリーゼントに誇りを持つお前も、俺から見れば充分カッコいいぜ?」

 

「……へへっ!ありがとう」

 

 

 高校生との喧嘩で顔には傷が残っていたが、良い笑顔だった。

 

 

「…………でも、」

 

「ん?」

 

「でも、他の奴らは、あんたみたいにこの髪型を認めてくれねえんだよ。

 

 同じクラスの奴らも、学校の先公も、俺の髪型を見て馬鹿にしたり、不良だと決めつけたりしやがる。それに、さっきの奴らみたいに絡んで来る奴らもいる。

 俺はただ、恩人を尊敬しているだけなのに……命を救われた思い出を大切にしたいだけなのに、何でみんな、分かってくれないんだ!」

 

「ふーん……ところで、お前は普段学校ではどんな態度で過ごしてるんだ?」

 

 

 そう聞いて、彼からさらに話を聞いた俺は、彼自身にも、周りから批判される理由があるのだと指摘する。

 

 

「お前、中身が不良になってるぞ。多分、その髪型を馬鹿にする周囲への反抗心から、自然とそうなっているんだろう。

 本当に恩人を尊敬し、リーゼントを誇りに思っているなら、お前自身も、周囲の人間に歩み寄る必要がある。

 

 馬鹿にされたくない、不良だと勘違いされたくないなら――心と、頭で勝負しろ」

 

「心と、頭?」

 

「そうだ。……お前、高校生を相手にあれだけ上手く立ち回るんだから、元々頭の回転が早いんだろ?じゃあ上手く頭を使え。よく考えて、世渡り上手になれ。

 無闇やたらに売られた喧嘩を買うのではなく、基本的に自分から喧嘩を売らないように、そして、本当に買うべき喧嘩と、買う必要が無い喧嘩を見極めるんだ」

 

「買うべき喧嘩と、そうじゃない喧嘩……」

 

「頭が良いお前なら、すぐにそれが分かるはずだ。……で、次は心。さっき思ったが、お前は素直にお礼が言える奴だから、きっと心が優しい男なんだろう。

 最初は、できる限りで良い。先生にも、同級生にも、先輩にも後輩にも、穏やかに、優しく接してみろ。例えば、年上相手には敬語を使ってみたり、同級生に笑顔で話し掛けてみたり、とか」

 

「…………」

 

「――歩み寄る事を、諦めるなよ。どっかで聞いた事はないか?"他人は自分を映す鏡"だって。……お前の優しい心を見せれば、相手だって優しくなるさ。きっとな」

 

 

 すると、少年は頷いて納得し、年相応の笑顔を見せた。よしよし、良い笑顔じゃねぇか。

 

 

「ありがとう!俺、頑張ってみるっス!」

 

「はははっ!そうかそうか、頑張れ!」

 

 

 俺もつられて笑い、そろそろ帰ろうかと立ち上がる。少年も立ち上がった。

 

 

「じゃあな、少年。健闘を祈るぜ」

 

「あ、待った!あんた、名前は?」

 

「…………シド」

 

「シドさん?……名字?名前?」

 

「どっちでもない。今、即興で考えたあだ名さ。……次会えた時に、本名を教えてやるよ。で、お前の名前は?」

 

「俺はじょう…いや、ジョー!今考えた、俺のあだ名っス。俺もまた会えた時に、本名を名乗る!」

 

「いいぜ。約束だ。――またな、ジョー」

 

「うっす!――絶対、また会おう!シドさん!」

 

 

 ……こうして、再会の約束をした俺達は、その場で別れた。

 

 

 

 

 

 

 しかし。その約束は果たされないまま、俺は――

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「――園原!」

 

「シドさん!」

 

「…………ぅ、ん?」

 

 

 目を開けると、イケメン2人……承太郎と仗助に顔を覗き込まれていた。

 

 

「……承、太郎……」

 

「大丈夫か?……起き上がれるか?」

 

「おう……」

 

 

 どうやら、俺はベッドで眠っていたらしい。起き上がってみても、体は問題なさそうだ。

 自分の体を見ると、あの怪我は綺麗さっぱりなくなっている。やったのは仗助のクレイジー・ダイヤモンドか?

 

 

「……ここ、何処だ?」

 

「俺達の家の中にある、客室だ」

 

「俺達の家って……あの豪邸の中か」

 

 

 俺の自宅は、承太郎達が住んでいる家の近場にある。そのため、外観だけだがジョースター家の豪邸を目にした事があった。あれの中にいるのか……マジで?

 

 

「あ、……あの!」

 

「ん?」

 

「……俺の事、覚えてるっスか?」

 

 

 と、ベッドを挟んで、承太郎とは反対側にいた仗助が、俺に話し掛ける。……俺は彼の目を見て、口を開いた。

 

 

「――園原志人。……それが、俺の本名だ」

 

「!!」

 

「……次に会えた時に、互いに本名を名乗る約束だったよな?ジョー。……それで、お前の本名は?」

 

「っ――東方……東方仗助っス!やっと、やっと会えた!」

 

 

 あの時よりも成長しているが、笑顔は変わっていない。良い笑顔だ。

 

 

 いやぁ、まさかこんな事ってあるんだなぁ。

 

 ――前世だと思っていた記憶が実は前々世(・・・)の記憶で、混部の世界に転生する前に、4部時空に転生していた前世があったなんて。

 転生が二度目って、そんなのありかよ?……そう思いながら、4部に転生していた時の記憶を思い出す。

 

 

 当時の俺は、前々世の記憶を思い出していなかったため、偶然仗助と出会った時も、見所のある年下だとしか思わなかった。

 本名を名乗らなかったのは、当時も今世と同様に、高校で真面目な生徒を演じていたからだ。素顔の自分と、見た目が根倉な自分を結び付けないために、咄嗟に"シド"と名乗った。志人はシドと読めなくもないからな。

 

 だが、仗助とまた会いたいという気持ちはあったので、再会の約束として、次に会ったら本名を名乗ると宣言した。多分、仗助も同じような事を思ったから、俺に付き合ってくれたんだろうな。

 

 

「仗助、と呼んでもいいか?」

 

「もちろんっスよ!じゃあ、俺は志人さんって呼んでもいいスか?」

 

「あぁ。それでいい。……お前、良い面構えになったな。あの後、うまくいったのか?」

 

「うっす。志人さんの助言のおかげで、俺の髪型を馬鹿にする奴は大分減ったし、不良扱いされる事も減ったんスよ!志人さんのおかげっス。本当に、ありがとうございます!」

 

 

 ……うん。ワンちゃんかな?犬の尻尾と耳が生えている気がする。こいつ、前世でも承太郎に対してはこんな感じだったのかもな。

 

 

「それで、あの……承太郎さんから聞いたんスけど――志人さんも、スタンド使いだったんスね」

 

 

 しかし、そんな言葉と共に、無邪気な笑顔は一転して真剣な顔になった。承太郎も似たような顔をしている。……前々世の事がバレないように、上手くやらないとな。

 

 

「あー……そもそも、そのスタンド使いって、何だ?あの時俺の後ろにいた白い鎧の男が、スタンドと呼ばれるものだという事は、なんとなく理解してるんだが……」

 

「えっ?知らないんスか?」

 

「……なら、まずはスタンドについて説明する」

 

 

 そう言って、承太郎が簡単に説明してくれた。内容は、大体が原作で明かされていたものと同じだった。……ある話を除いて。

 

 

「……そして、これは今世に限った話だが――スタンド使いのほとんどが、前世の記憶を持っている」

 

「今世に、前世……やっぱりあの夢は、俺の前世の記憶だったのか」

 

「夢?」

 

「眠っている間に、仗助と初めて会った時の記憶とか、他にもいろいろ見た。あれが前世の記憶だと思えば、納得がいく」

 

「そうか……」

 

 

 承太郎が黙ると、今度は仗助が口を開く。

 

 

「志人さんは、前世でもスタンドを持ってたんスか?」

 

「いや、持ってなかったぜ。普通の人間だった」

 

「えぇっ?」

 

「……そいつは妙だな。今世でスタンドを発現した奴は、前世でもスタンドを持っていたはずだ。お前と同じ例は聞いた事が無い」

 

「そう言われてもな……」

 

 

 こればっかりは嘘じゃないから、そう言われても困る。本当に持ってなかったんだよ。あの白い鎧のスタンドを見たのは、今世が初めてだ。

 

 

「……うーん、じゃあ全然関係無い話なんスけど、そもそも俺と志人さん、どうして前世で会えなかったんスかね?同じ杜王町に住んでたし、どっかで再会してもおかしく無かったのに……」

 

「…………」

 

「……園原?」

 

 

 ……2人の反応が心配だが、言うしかないな。

 

 

「会えなくて当然だぜ、仗助。なんせ、俺は――お前と出会った後に、死んだからな」

 

「…………え?」

 

 

 仗助は呆然。承太郎は眉間に皺を寄せた。……顔は怖いが、目と雰囲気で悲しんでいる事が分かる。

 

 

「……といっても、死んだ時の記憶はかなり曖昧なんだ。人気の無い道を歩いていた事と、後ろから腰に何かが刺さった事は覚えているんだが……」

 

「刺さった……?」

 

「それともう1つ。男の声で"また駄目だった"って言われたような、」

 

「っ、確実に誰かに殺されてるじゃねえか!?しかも刺さったって、まさか、それって弓矢じゃ――」

 

「――仗助!!」

 

「あっ」

 

 

 ……承太郎の怒鳴り声も、仗助の青ざめた顔も、気にならなかった。

 

 それよりも先に、脳裏にある光景が浮かび上がったからだ。

 

 

「弓矢……そう、弓矢だ」

 

「……園原?」

 

「俺は地面にうつ伏せに倒れて、頭を動かして下を見たら、腰に……刺さってたんだよ、矢が。それから、――っ!!」

 

 

 それが刺さった時。全身が熱くて、痛くて仕方なかった。熱い、痛い、苦しい。そんな感覚で頭がいっぱいになった頃、誰かが……そうだ。特徴的な髪型と、前々世で聞いた事がある声の、男。

 

 

 ――また駄目だった。……あいつを殺せる奴は、一体いつになれば――

 

 

 

 

 

 

「――――志人!!」

 

「ぁ、っ!?」

 

 

 気がつけば、俺は息を止めていた。慌てて呼吸をして、息を整える。……その間、承太郎はずっと背中を擦ってくれた。

 

 

「……ありがとう、承太郎……助かった」

 

「いや……気にするな。もう大丈夫か?」

 

「あぁ。大丈夫」

 

「志人さん……ごめんなさい、俺……俺のせいでっ!!」

 

「待て待て。泣くなよ?仗助。俺はこの通り無事だから」

 

「でもっ、うう……!!」

 

「よしよし、落ち着け落ち着けー」

 

 

 仗助の頭を軽くポンポンと叩いたり、背中を擦ってやったりしながら落ち着かせた。……あ、しまった。俺、リーゼント触っちまった。

 まぁ、本人が気にしてなかったみたいだし、別にいいか。……おい、そこの元博士。信じられない、みたいな目で俺を見るな。

 

 

「……で。俺が死んだ時の話なんだが、」

 

「待てコラ」

 

「もういいっスよ!無理に話さないで!!」

 

 

 両側から強い力で肩を掴まれた。痛い。でも続ける。

 

 

「お前らの反応から察するに、俺に刺さった矢の事で、何か知ってるんだろ?」

 

 

 と言いつつ、俺は既に察しているが、ここでちゃんと聞いておかないとな。

 

 

「……お前に刺さった矢。それは間違いなく、スタンド使いを生み出す矢だろう」

 

 

 案の定。承太郎が例の弓と矢について話してくれた。……これで、俺がスタンド使いになったきっかけが分かった。

 だが、何故だ?前世で矢が刺さって死んだなら、俺にはスタンド使いの素質が無いはず。それなのに、今世ではスタンド使いになっている……謎だな。

 

 

「……園原がスタンド使いになった原因は分かったが、問題は……前世ではスタンドを発現できなかったのに、何故今世では発現したのか、だな」

 

 

 承太郎も、同じ事を疑問に思っている。こいつにも心当たりは無いのか……

 

 

「……いや。今考えても答えは出ねえな。とりあえず、そろそろあいつらを呼ぶか」

 

「あいつら?」

 

「この家の住人の中でも、前世の記憶を持つ奴らの事だ。……仗助。呼んで来てくれ」

 

「うっす。いってきまーす」

 

 

 ……仗助が部屋から出て行くと、承太郎が俺を見て柔らかく微笑む。最近見慣れた顔だ。

 

 

「本当に……お前が無事で良かった。巻き込んで悪かったな」

 

「巻き込む……あー、あれか。結局、俺が気絶した後はどうなったんだ?あの吸血男は?」

 

「お前の血を奪ったクソ野郎は、例の変死体の事件の犯人だった。奴は然るべき組織に引き渡したから、二度と会う事は無い」

 

「お、おう」

 

「それから、お前の怪我を治療したのはジョセフだ。実は、スタンド以外にも波紋法という特殊な力があってな。ジョセフは、その使い手だ。……詳しくは、いずれ見せてもらうといい。きっと驚くぜ」

 

「そいつは楽しみだな」

 

 

 本当に楽しみ。波紋も生で見たい。……あっ、そういえば、

 

 

「俺の眼鏡は?」

 

「……ここにあるが、もう掛けても無駄だぜ。今この家にいる奴は全員、お前の素顔を見たからな」

 

「やっぱりそうかぁ。……いや、でも起きて話してるところは見られて無いだろ?それなら、」

 

「諦めろ。今さら隠したところで、戻って来た仗助に指摘されるだけだ」

 

「なるほど、詰みか」

 

 

 じゃあ仕方ない。腹を括るとしよう。

 

 

「潔いな。……なぁ、園原」

 

「ん?」

 

「俺に前世があると聞いて、どう思った?……ちなみに、俺はこれでも前世で40過ぎまで生きていたんだが」

 

「40!はー、なるほどなぁ。お前、年齢の割には落ち着いていたが、そういう事だったかぁ」

 

 

 ちょっとわざとらしいリアクションをしてしまったが、それはともかく。

 

 

「どう思った?と聞かれてもな……あの時、海辺で俺が言った事と同じだ。――昔のお前と今のお前。その全てをひっくるめて、空条承太郎という、1人の人間である」

 

「――――」

 

「まだお前の前世については聞いてないが、前世で歩んで来た人生と、今世で歩んで来た人生。それを合わせたのが今の"空条承太郎"だろ?……俺が知っているのは、そんなお前だ。それでいいんじゃねぇの?」

 

「――――」

 

 

 ……あれ?デジャビュだ。固まった承太郎の肩を揺さぶると、すぐに我に返ったらしい。

 

 

「承太郎?」

 

「ふっ――ははははははっ!!」

 

 

 あっ、まただ。大笑いしてやがる。

 

 

「……なぁ。今、笑える要素あったか?」

 

「ははっ、くく、はははは――っ、お前、もう……勘弁しろよ!」

 

「はぁ?」

 

「あ"ー、クソ。……こうなったら、責任取りやがれ親友」

 

「えっ?何の責任?」

 

「さぁ、何の責任だろうなぁ?……ところで、聞かせてくれ。今世でお前をシドと呼ぶ奴はいるか?」

 

「いや……いないな。いても仗助ぐらいだろ」

 

「そいつはちょうど良い。仗助なら、まだ良いが――今後は、俺以外の誰かにそう呼ばせるんじゃねえぞ」

 

「はい?」

 

「ってわけで――改めてよろしくな、シド」

 

 

 ニヤリと笑った、美丈夫。キラリと輝く翡翠の瞳とその表情は、何故か以前もイメージした黒豹を彷彿とさせる。

 ……副音声で"逃がさねえぜ"って言われたような?いやいや、気のせいか。

 

 

 というか、楽しそうだなお前。

 

 

 

 

 

 

 

 






※園原が眠っている間の承太郎と仗助の会話

「――で?てめえは何で園原の事を知ってるんだ?仗助……」

「え、いや……あの、承太郎、さん?何か、目が怖い気が……?」

「そうか?気のせいだろ。で?」

「……えっと、まぁ、その――かくかくしかじか(前世の園原との出会い)――でして」

「…………へぇ」

「今度はいつもより声が低い気がする……!!」

「気のせいだ。――――俺よりも先に会って、しかもあだ名で呼び合うだと?…………ふーん」

「……じょ、承太郎さ、」

「あ"?」

「ひえっ」

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