空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。


 ――空条承太郎だって、スタンド使い同士のルールを信じたくない時があるはず。




空条承太郎の友人は、馴染む

 

 

 

 

 

「朋子さん、出来ましたよー」

 

「ありがとう!本当に、助かるわぁ」

 

「いえいえ、どういたしまして。……にしても、作ってる間も思いましたが、本当に凄い量ですね」

 

「うちの子達はみんな食べ盛りだから……あ、徐倫!お醤油ちょうだい」

 

「はいはい、母さん。……っと、園原先輩。そこの小皿取ってくれる?」

 

「あいよ、どうぞ」

 

 

 

 

「…………1日だけで随分馴染んだな、お前」

 

「おっ?おはよう承太郎」

 

「おはよう、シド。……で。どういう状況だ、これは?」

 

「見れば分かるだろ?一宿一飯の恩を返すために、朝飯作るの手伝ってんだよ」

 

 

 という訳で、翌朝。朝早くに起きた俺は今、女性陣と一緒に朝食を作っている。

 

 俺が起きた時には既に、彼女達は料理の準備に取り掛かっていたので、手伝いを申し出たところ歓迎された。

 最初は簡単な事を任されていたのだが、俺が料理に慣れている事が分かると、仕事がどんどん増えていった。料理は嫌いじゃないから、仕事が増えても問題ない。

 

 承太郎が起きて来た今もちょうど、一品作ろうとしていたところだ。

 

 

「そうだ、ちょうどいい。お前、料理できるんだろ?野菜切るの手伝ってくれよ。ちゃちゃっと野菜炒め作りたいんだが、量が多くてな」

 

「分かった。手伝う」

 

「えっ!?」

 

 

 俺が承太郎に手伝いを頼み、こいつがそれを引き受けると、隣で徐倫が驚いた。他の女性陣も、声には出さないが驚いているらしい。

 

 

「ま、待って?父…じゃない、兄さんって料理できるの!?」

 

 

 "兄さん"と言い換えたのは、スタンドも波紋も使えないため、記憶を取り戻していない他の女性陣がいるからだろう。

 

 

「……できるが、言った事はなかったか?」

 

「聞いてないわ!……って、さっそく野菜切ってる。えっ?つーか、手際良過ぎ!?」

 

「すごーい!承太郎ったら、本当に慣れてるのね!」

 

 

 女性陣が揃って驚いている。承太郎が料理ができる事を、本当に知らなかったようだ。

 

 

(……あれ?じゃあ俺が高熱出した時にお粥作ってくれたのって、かなり珍しい事だったのか?)

 

 

 とすると……彼女達にそれを教えたのは、ちょっと勿体なかったかもしれない。

 

 

 それから、続々と起床したジョースター家の皆さんが、承太郎がキッチンにいるのを見て一様に驚いていた。

 特に、ジョセフと仗助が大げさに驚き、キッチンの側で騒いでいたが、スタープラチナによって摘まみ出されている。

 

 その際。スタンドが見えない人達が驚いていなかった事を不思議に思ったが、後で聞いた話によると、記憶を取り戻していない人達は、スタンドと波紋の存在だけは知らされているらしい。

 

 

 閑話休題。朝食も食べ終わり、昨日の約束通り承太郎を買い出しの荷物持ちとして連れて行こうとしたのだが……その途中で、仗助に声を掛けられた。

 

 

「志人さん。昨日、承太郎さんと話してる時に、自転車盗まれたって言ってたっスね?」

 

「あぁ、そうだけど?」

 

「……今、その自転車の鍵とか持ってないっスか?」

 

「持ってるぞ」

 

「それ、買い物行ってる間だけでいいんで、ちょっと貸して欲しいんスよ」

 

「構わねぇが……何に使うんだ?」

 

「それは後のお楽しみっス!」

 

 

 と言って、にこやかに笑う仗助。……嫌な物は含まれていないな。それなら、まぁいいか。

 自転車の鍵を取り出して彼に渡すと、お礼を言って立ち去って行った。本当に何に使うんだ?

 

 

「ふっ……なるほど。そういう事か」

 

「承太郎には分かったのか?」

 

「まぁな。……後のお楽しみ、だぜ」

 

 

 承太郎も、今答える気は無いようだ。……じゃあ仕方ない。さっそく買い出しに行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

「おーい、ジジイ」

 

「今はジジイじゃねえ!ピッチピッチの10代よン!……何だ?仗助」

 

「ここに、志人さんから借りた、あの人の自転車の鍵があるっス」

 

「……ほほう?そういや、昨日盗まれたとか言ってたなァ?……で?」

 

「分かってんだろ。――ハーミット・パープルの念写」

 

「フフフ……!いいぜ。その代わりに自転車がある場所が分かったら、面白そうだから俺にも付き合わせろよ?」

 

「いいっスよォ。んじゃ、よろしく」

 

「はいはーい」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 スーパーで必要な物を買い、一旦自宅に帰って来たところで、昨日1日中洗濯物を干しっぱなしにしていた事を思い出し、慌てて取り込んだ。雨降らなくて良かった!

 洗濯物をしまってから振り向くと、承太郎がテーブルの上のとある残骸を見つめている。……ちゃっかり、以前クレーンゲームで手に入れた、あのイルカのぬいぐるみを抱えていた。

 

 

「……シド。これは?」

 

「あぁ、それか。多分、犯人が自転車盗む時に、鍵掛ける部分を無理やり壊してから持って行ったんだろうな。その残骸だよ」

 

「……これ、うちに戻る時に持って行くぞ」

 

「え?何で?」

 

「後のお楽しみ、だ」

 

 

 スマホを操作しながら、承太郎がまたそんな事を言った。……さっきの仗助の行動に、承太郎の言葉。これは、もしや――?

 

 

 ……気を取り直して、買い物のついでに買った材料で簡単に昼飯を作り、2人で食べた後。自宅から出てジョースター邸へ向かっていた時……あの吸血野郎と戦った、例の公園の前を通り掛かった。

 

 俺が足を止めると、それに気づいた承太郎が振り向く。

 

 

「シド?」

 

「…………もしも自転車が盗まれてなかったら、俺はそれに乗って買い出しに向かっていたはず。

 そうなったら、承太郎が戦い始める前にここを通り過ぎて、あの場に居合わせる事も無かったのかもしれない」

 

「……後悔、してるのか?」

 

「いや、全然。それは無いと断言できる」

 

 

 その言葉に偽りは無い。あれが無かったら、イージスが目覚める事も無かったし、それだと承太郎を護る事もできなかった。

 まぁ、そもそも俺がいなければ、承太郎に対する人質になる事もなく、無事に戦闘が終わっていた可能性が高いが、な。

 

 俺のせいで、危うく承太郎の方が血を取られ…って、そんな事言ったら怒られるか?止めておこう。

 

 

「ただ……不思議だな、と思ったんだよ。承太郎がここを通り掛かった時に、偶然吸血野郎に目を付けられた事。自転車を盗まれて歩きで買い物に向かっていた俺の目の前に、偶然瀕死の吸血野郎がすっ飛んで来た事。

 

 俺とお前の偶然が重なった結果、あんな事になって、俺がスタンドを発現して。

 しかも承太郎を探しに来た仗助が俺の顔を覚えていて、あいつの言葉が俺の前世の記憶を呼び起こすきっかけになって……一体どういう巡り合わせだよ。

 

 神の存在なんか信じてねぇが、こればっかりは神とやらの悪戯なんじゃないかと疑った」

 

「――スタンド使い同士は、ひかれ合う」

 

「!」

 

 

 承太郎の言葉にはっと顔を上げると、彼は真っ直ぐに俺の目を見ていた。

 

 

「……前世からの、スタンド使い同士のルールみたいなものだ。どういう訳か、俺達スタンド使いは相手の正体を知らなくても、同じスタンド使いと偶然出会ってしまう事がよくある」

 

「……へぇ。そんなルールが……」

 

 

 そのルール、今世でも通用するのか。だからあんな偶然が続いた、と?

 

 

「……あっ。俺とお前が旧図書館で遭遇する事が多いのも、それが理由か?」

 

 

 あの遭遇率は異常だから、そういう事ではないかと思ったが、承太郎が眉をひそめた。……もしかして、拗ねてる?

 

 

「……俺は、そうじゃねえと思いたい。そう言われると、互いにスタンド使いではなかったら出会っていなかった、と言っているようにも聞こえる」

 

 

 なるほど。確かに、そう聞こえてもおかしくないな。……じゃあ、こうしよう。

 

 

「……俺が承太郎と出会った時は、まだ前世の記憶を思い出していなかったし、イージスだって俺の中で眠っていた。

 それから俺が梯子から落ちた時、何をしたのかは知らねぇが、スタープラチナの力で俺を助けてくれたんだろ?」

 

「あぁ。……スタープラチナは数秒間、時を止める事ができる。俺は止まった時の中でお前の落下地点まで駆け寄り、再び時が動き始めた瞬間、お前を受け止めた」

 

「時を止める!?すげぇな、そりゃ……あー、それはともかく。その時の俺は、スタープラチナが見えなかった。

 

 ――だから、俺と承太郎が出会った時、俺がスタンド使いじゃなかった事は確実だ。俺とお前の出会いに、スタンド使いかそうでないかは全く関係が無かった。……そうだろ?」

 

 

 すると、承太郎はゆっくりと目を見開き、そして嬉しそうに微笑んだ。うむ、良い笑顔だ。

 

 

「……あぁ、そうだ。俺達はきっと、スタンド使い同士じゃなくても必ず出会っていた」

 

「俺もそう思う。……足止めて悪かったな。行くか」

 

「おう」

 

 

 承太郎が背を向けて先に歩き出したので、俺もその後に続く……と、

 

 

「――っ、いってぇ!?てめー、何処見てんだよ!」

 

「うわ、デカ…っ、やんのかコラァ!!」

 

 

 曲がり角から出て来た不良の1人と、承太郎がぶつかった。向こうは人数が多い。…………あー。

 

 

「……なぁ、シド。俺はな、ついさっきまではお前のおかげで最高の気分だった」

 

「……おう」

 

「それがたった今、最悪の気分になった」

 

「…………おう」

 

「――こいつらぶっ潰してもいいよな?」

 

「こらこら、待ちなさい」

 

 

 今にも暴れそうな猫科の猛獣の腕を両手で掴み、説得を開始する。

 

 

「不良のレッテル貼りは嫌なんだろ?止めとけって。早くお前の家に戻ろう。な?」

 

「ちょっと殴るだけだ」

 

「お前の"ちょっと"は、絶対に"ちょっと"じゃない。というか本当にちょっと殴ったとして、相手が解放してくれると思うか?思わねぇだろ?」

 

「じゃあ全員まとめて、」

 

「だから待てって。それ悪化してるから。"じゃあ"じゃないから」

 

「っ、無視すんじゃねーよ!死ね!!」

 

 

 承太郎の腕を片手で掴みながら前に出て、不良共に背を向けて立ち塞がる。

 すると痺れを切らしたのか、不良の1人が暴言を吐きながら俺を殴ろうとしたため、念のために自由にしておいたもう片方の手で受け流す。

 

 

「悪いんだけど、邪魔しないでくれませんかね。俺、今こいつの説得で忙しいので」

 

「なっ、っ、なにガン飛ばしてんだ!」

 

「何だその目付きは!やる気か!?あ"ぁ!?」

 

「……睨んでねぇっつの」

 

 

 あ"ー悪化したぁぁ!面倒くせぇ!! ……って、また殴って来た!?

 だが、その時。俺が掴んでいた承太郎の腕が急に引かれ、俺がその力に負けて引き寄せられると同時に、後ろで鈍い音と悲鳴が聞こえた。……殴られたな。承太郎に。

 

 

「……やれやれだぜ。――俺の親友を、二度も殴ろうとしやがったな?よし、潰す」

 

 

 【任務】黒豹の手綱を握り、喧嘩を阻止せよ。

 

 ――ミッション、失敗。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ……あれからしばらくして、承太郎の方から着信音が聞こえて来た。あいつはスマホを取り出すと、その場で電話に出る。

 

 って、この状況で出るのかよ。

 

 

「……仗助?どうした」

 

「承太郎さん、今どこに――」

 

「てめー余裕ぶっこいてんじゃ、ぐえっ!?」

 

「――あー、なるほど理解したっス」

 

 

 しかもスピーカー!そして相手は仗助だった。

 

 

「……あれ?じゃあ志人さんは?」

 

「仗助。俺もここにいる――ほら、足元がお留守だぜ!」

 

「うぎゃあっ!?」

 

「……グレート!今世でも喧嘩はできるみたいっスね。無事なら良かった。あっ、でももし殴られたら俺に言ってください!怪我治すし、すぐに駆け付けて志人さんの分まで殴りに行くっスよ!!」

 

「いや、そこまでやらなくていい。……ちょうど今、終わったからな」

 

「あらァ、それは残念。俺も混ざりたかったのに」

 

「……その声、ジョセフ先輩ですか?あなたもいたんですね」

 

 

 地面には死屍累々……死んではいないが、主に承太郎にボコボコにされた不良達が転がっていた。俺は大体適当にあしらって、たまに殴るか蹴るかぐらいだったし。

 人が来る前に去ろうと、2人揃って早足で現場から離れながら、承太郎が電話で話す。

 

 

「……で、そっちはどうなった?」

 

「上手くいったっスよ!」

 

「へっへっへ!多分事情が分かってないと思う園原くんは、帰ってからのお楽しみィ!じゃあな、待ってるぜ」

 

 

 そんな言葉を最後に、電話が切れる。……その後、承太郎と共にジョースター邸に戻ると、玄関の前で仗助とジョセフが待っていた。

 

 その傍らには、1台の自転車。

 

 

「――まさかとは思っていたが……本当に俺の自転車を取り返してくれたのか!」

 

「へへ、そうっスよ!ジジイが志人さんの自転車がある場所を見つけくれて、2人で取り戻しに行って……」

 

「ところが偶然、自転車を盗んだ犯人と鉢合わせてなァ……ちょおっと、おはなし(・・・・)した上で取り返したぜ」

 

 

 ……きっと、お話し(物理)だったんだろうなぁ。深くは聞かないようにしよう。

 ついでに、ジョセフのスタンドであるハーミット・パープルの能力を教えてもらった。仗助から受け取った俺の自転車の鍵を媒介に、念写で場所を突き止めたそうだ。

 

 最初はジョセフのスタンドの事をすっかり忘れていたから、鍵を借りに来た仗助の意図が分からなかったんだよな。

 

 

「志人さん。これから最後の仕上げをやるっス。……承太郎さん。それ、さっき言ってた残骸っスよね?こっちにください」

 

「おう」

 

 

 承太郎がビニール袋に入れた、鍵を掛ける部分の残骸だ。

 やはりこれを持って来たのは、物を直す能力を持つ仗助に渡すためだったんだな。そして彼が残骸の事を知っているのは、あの時携帯を操作していた承太郎が、仗助にそれを伝えたから。

 

 

「――クレイジー・ダイヤモンド!」

 

「ドラァ!」

 

「お……おおっ!直った!」

 

 

 仗助のスタンドによって、俺の自転車は完全に修復された。原作で見た事はあるが、実際に現実でそれを見ると感動する!

 

 

「これなら使えるな。ありがとう、仗助!クレイジー・ダイヤモンド、だっけ?その能力凄いな!」

 

「いやいやァ!そんな事は……まぁ、あるんスけどね!へへへっ!」

 

 

 俺に褒められて嬉しそうな顔をするので、ついまた頭を軽くポンポンと撫でてしまった。……リーゼントを崩さないように気をつけてるし、仗助は怒らないから、まぁいいよな?

 

 

 承太郎とジョセフには、凄い目で見られているが。

 

 

 

 

 

 

 

 






※以下はおまけの、イカサマ親子の会話。

「――よォし。程よくボコボコにしたし、後は綺麗に治して帰るぜ、仗助」

「うっす。……あぁっ!?今気づいたけど鍵の部分が壊されてる!?」

「あー、鍵をちゃんと掛けてたのに、それを壊して持って行ったって事ねェ」

「…………もうちょっと殴っても、」

「止めろって、仗助。気持ちは分かるが、それよりも早く園原くんに返してやろうぜ」

「でも……あれ?承太郎さんからメッセージ来てる」

「おっ?何だって?」

「……"自転車取り返しに行ってるんだろ?シドは自転車の鍵を犯人に壊されたらしい。残骸を発見した。持って行くから、後で直してくれ"、と」

「おお、ナイスタイミング。……つか、承太郎の奴、お前が何をする気か分かってたのね」

「本当に承太郎さん、さすがっスね。"了解"っと……あ、続き、が、」

「……仗助?」

「――"お前の事だから、鍵を壊されたと知って必要以上に殴りたくなるだろうが、自重しろ"」

「ギャハハハハ!読まれてるゥ!!」

「"というか、"」

「ン?」

「"俺だって殴りたいが、そもそも目の前に犯人がいないから我慢している。だからお前も我慢しろ"」

「ぶほっ!?私怨かよ、承太郎ちゃん!!」

「"じゃあ承太郎さんの分までボコりますか?"、送信」

「えっ」

「おっとォ?――"許可する。一発だけ頼んだ"。……グレート!!」

「ちょっ、はは、ギャハハハハ!!マジか承太郎……!」

「ってわけでもう一発いきまァーす!!」

「仗助ちゃん、生き生きしてるゥ!!」

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