・男主視点。
・SPW財団とスタンドについて、超捏造過多。
――空条承太郎だって、親友と遊び()たくなる時があるはず。
俺がスタンドを発現した日から、数日後。ジョースター邸にSPW財団から人が来たと聞き、再びお邪魔させてもらった。
相手はスーツを着た男性で、見た目は普通のサラリーマンにしか見えない。だが、とにかく誠実な人だった。
まさか、登録の手続きの前に真っ先に謝罪されるとは思わなかった。
結果的にスタンドを発現したとはいえ、一般人だった俺を例の事件に巻き込んでしまった事を、酷く申し訳なく思っていたらしい。
もちろん、謝罪は受け入れたが……その後、人払いをして今世の俺の過去に触れると、財団として何か協力できる事があれば、いつでも言って欲しいと言われた。
何故そこまで?……そう聞いたら、こんな言葉が返ってきた。
「例の事件に巻き込んでしまったお詫び……という理由もありますが、一番の理由は――あなたが、空条承太郎さんの大切なご友人だからです。
我々は前世でも、今世でも、財団の創設者であるロバート・E・O・スピードワゴン様の意向で、ジョースター家のサポートをする事が、重要な行動理念となっております」
前世、と聞いて驚いたが、実はこの男性もスタンド使いだった。今世の財団の構成員は前世よりも少ないが、代わりにその半分がスタンド使いで構成されているとか。
どうやら事前に承太郎から、"園原志人は自分の友人だから、万が一彼の身に何かあった時は助けてやって欲しい"と、頼まれていたらしい。
「……時に。私が"空条さんの前世の事をお教えしましょうか?"と言った場合、あなたはそれを聞きたいと思いますか?」
「……質問の意図が読めませんが、もしもそう聞かれたら、答えは"いいえ"です。俺はあいつが自分から話してくれるまで、別の誰かから話を聞くのは避けたいと思っています。
あいつも、俺が自分から過去を話してくれる時を待つと言ってくれましたから。俺だって、その信頼に応えたい」
「なるほど。……空条さんにも、似たような事を言われました」
「え?」
「これは私の失敗談になるのですが、実はあなたの過去について調べた後、ご友人ならそれを知りたいだろうと思って、私は空条さんに先にご報告しようとしました」
「っ!……それで?」
「――怒鳴られました」
「……はい?」
「今世では滅多に怒鳴らなくなったあの方に、それはもう叱られました。
"報告しろと頼んだ覚えは無い。俺はシドが自分から過去を話すまでいつまでも待つと、あいつに伝えた。あいつはその言葉を信じてくれている。俺にその信頼を裏切らせるつもりか"……と」
「――――」
「……その信頼関係、絆の強さに敬服いたしました。また、相手がご友人とはいえ、あなたの過去について調べた結果を勝手に他人に明かそうとしてしまった事、深く謝罪いたします。申し訳ありませんでした」
「は、はぁ……」
「これからはその罪滅ぼしを兼ねて、園原さんの事を全力でサポートさせていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします」
「あぁ、えっと……はい。よろしく、お願いします」
承太郎の言葉に赤面すればいいのか、目の前にいる財団の構成員の尊敬の眼差しに目を逸らせばいいのか、非常に迷った。
でも、嬉しい。ちくしょう、やっぱお前そういうとこだぜ空条承太郎……!
―――
――――――
―――――――――
それから、さらに数日後の休日。俺は承太郎と共に、ある場所へ向かった。
都心から少し離れた場所に建てられた、見た目はごく普通のビル……の、横にある細道を通り、ビルの裏手に回る。
そこには行き止まりにシャッター付きの小さな倉庫があるだけで、他には何も無い。
「…………おい。まさか、あの倉庫が入口だとか言わないよな……?」
「その、まさかだ。よく見てろ。次はお前1人でも行けるようにな」
承太郎はシャッターの横にある電子ロックに手を伸ばし、番号を入力する。
「……この電子ロックの暗証番号は、定期的に更新される。番号が変わると財団からメールが来るから、ちゃんと確認しておけ」
「了解」
「ちなみに。財団に登録したスタンド使いを含む財団関係者以外が電子ロックに触れた場合、軽い電気ショックに襲われる。
それから、この倉庫への破壊活動が確認された場合は警報が鳴って、スタンド使いの警備員が駆け付ける。……もっとも、この倉庫自体が頑丈だから、余程の事がない限りは壊れないはずだ」
「うーわ、素敵な厳重警備デスネー」
「くくっ……!そうだな。全く、素敵な、厳重警備だ」
番号の入力が終わると、倉庫のシャッターが自動で開いた。その向こうには両開きの自動ドアがあり、これも開く。
「――エレベーター……?」
「おら、早く乗れ」
「アイアイサー…って、突っ込み所あり過ぎだろ。マジで秘密結社のアジトの入口じゃねぇか」
「ふっ……実は俺も、最初見た時にそう思った」
「だよな」
中に入ると扉が閉まり、エレベーターが地下へと動き出す。……やがてエレベーターが止まり、ドアが開くと――
「さぁ――ようこそ。SPW財団、東京支部へ」
――真っ白な空間の中で多くの人が行き交っており、誰もが忙しそうにしていた。見上げると、天井が高い。それが、この空間をより広く見せている。
承太郎は俺について来いと声を掛けると、迷う事なく前に進み、受付へ向かった。
既に話は通っていたようで、俺と承太郎は今日の目的地――スタンド使い専用の訓練場へ向かう。
今日。俺達がここに来たのは、イージス・ホワイトの大体の能力を把握するためだった。
承太郎にイージスの能力を把握するために、いろいろ試せるような場所はないかと聞いたところ、ここに連れて来られたのだ。
案内ついでに自分が検証に付き合ってやる、とも言われた。前世での戦闘経験が豊富な承太郎の申し出はありがたいので、遠慮なく頼らせてもらう。
「イージス」
「はいはい。……承太郎、今日はよろしくね」
「おう。……さっそく始めるぞ。まずはどうする?」
「最初は、イージスのバリアの強度を確かめたい。こいつは何でも防ぐと言っていたが、強度については何も言ってなかったからな」
「……ふふ。良いね。何でも自分の目で確かめようとする姿勢は、素晴らしい」
訓練場に到着した俺は、手始めに結界――最近、バリアという呼び方に変えた――の強度を確かめる事にした。
ちょうどパワーに優れたスタンドを持つ承太郎がいるし、こいつの本気のラッシュにバリアがどれだけ耐えられるのかを知りたい。
「――オラオラオラァ!!」
結果――数秒で破壊された。……なるほど。近接パワー型の本気のラッシュだと、あまり耐えられないようだ。
ただし。……今のは、俺が何も考えていなかった場合の検証だ。次は違う。
「……拍子抜けだぜ。こんな物か?」
「いいや。まだ、試したい事がある」
イージスによると、バリアは俺のイメージ次第で性質を変える事ができる。……その強度も、変化させる事ができるはずだ。
俺がイメージするのは、ジェダイトという宝石。この宝石は硬度が高くないため、傷は付きやすいが……その代わりに靭性――衝撃への耐性が非常に高い。宝石の中では、1番割れにくい石だ。
それにジェダイトは、日本で言う翡翠。それは、俺にとっては見慣れた色――承太郎の瞳の色と、同じだ。
あいつの目には、いつも意志の強さを感じている。芯の通った強い目。それは時に不安や悲しみで揺れる事があるが、濁る事は無い。
その本質は変わらず、あいつの目は強い意志によって輝き続ける。根本的な部分は決して折れない。
その強さこそが、何でも防ぐというバリアのイメージに相応しい。
「――イージス・ホワイト。……俺のイメージ通りに、バリアの性質を変化させろ」
「……これ、は――っ、はは!良いね、志人。最高のイメージだ!」
イージスが杖を振り、俺のイメージをバリアに付与する。……白いバリアが、翡翠色に変化した。
「……さぁ、承太郎。今度のバリアはちょっと違うぞ。試してみろ!」
「……分かった。いくぞ!」
再び、スタープラチナのラッシュが始まる。……数秒経過しても、バリアは破れない。
「っ――スタープラチナ!」
「オラァ!!」
驚いた承太郎は、さらに猛攻を仕掛けた。しかし、それでもバリアは健在だ。……やがてラッシュが終わり、それとほぼ同時にバリアが自然消滅した。俺は両膝に手をついて、息を整える。
「……なんか、さっきよりも疲れてるんだが」
「……正確な良いイメージはね、その分かなりの効果が出るけど、本体である君の体力や精神力を削るのさ」
「そうか……イージスは、この状態を俺に経験させたかったのか?」
「正解!……体力と精神力の大切さは分かったね?これからは出来る限り体を鍛えて体力をつけて、いろんな事を経験して精神力を強くするといいよ」
「分かった。ちょっと考えてみる。……あ?って事は、俺の体と精神にダメージがあると、その後のバリアの効果にも悪影響が出る……?」
「うんうん、その通りだよ。その調子で、想像力と発想力をもっと鍛えてね」
「おう……」
そこへ、承太郎が歩み寄って来た。……複雑そうな表情だな。
「……初めてだ」
「ん?何が?」
「スタンドの拳で殴っている最中に、自分の拳の方がじんじん痛み出したのが。……見ろよ。俺の手が少し赤くなってるぜ」
「……何か、すまん」
「謝らなくていい。俺もまだまだだという事が分かった。鍛練の時間、もっと増やすかな」
お前、これ以上強くなってどうすんだよ。
「……敵にすると厄介だが、味方ならお前以上に頼もしい守護者はいないだろう」
「それはお前にも言える事だが、まぁ、ありがとう。……そろそろ、次の検証に付き合ってくれるか?」
「おう、任せろ」
その後も、バリアを利用して敵を閉じ込める想定で検証したり、バリア自体にどれ程の効果を付与できるのかを試したり……いろいろ実験した。
そして最後に、こんな事を試してみる。
「――俺と同化して、戦う?」
「あぁ。……攻撃手段が無いと、万が一1人で敵と戦闘になってしまった時がきついと思って、ちょっと考えてみたんだ。
それに、バリアも万能じゃない。例えば、バリアを張る前にスタープラチナの時止めを使われたら、一瞬でバリアの内側に入られて、俺が殴られて終わりだ。今後、敵にそれと似たような真似をされたらアウトだろ?」
「……確かにな。シドの懸念は正しい。だが同化したところで、その後はどうやって戦うつもりだ?」
「イージスがちょうど、手頃な武器を持ってるから、俺がそれを使おうかと思ってる」
「手頃な武器って……まさか、この杖の事かい?」
その通り。俺は、イージスが持つ長くて細い杖で戦おうと考えていた。
棒術、という技術がある。棒はやり方次第で応用が利く武器だ。ただ打つだけでなく、突けば槍の代わりになるし、薙げば薙刀の代わりになる。
数日前から棒術についてネットで調べたり、過去に本で読んだ内容を思い出したりしていた。素振り程度でいいから、少し試してみたい。
「ふむ……もちろん、志人のイメージ次第で同化する事は可能だけど、どうせなら杖だけでなく、他も利用して欲しいな」
そう言って、イージスが背中の翼を大きく動かし、再びしまう。その翼、動くんだな。……って、
(えっ?マジで?……これ、いけるのか?)
いや。イージスが言うなら、俺のイメージ次第で本当に利用できるんだろう。……完成形を想像して、試しにやってみるか。
イージスに声を掛けて、さっそくやってみよう。今回はより集中するために、目を閉じて想像する。……やがて、背中と手元に違和感を感じたが、それもすぐに収まった。
「……よし、どうだ?承太郎」
「…………」
「……承太郎?」
「――――天使がいる」
「はっ?」
「いや、何でもねえ。……同化は成功だな。杖もあるし――翼も生えてる。ただ同化の影響なのか、顔にイージスと同じ金の刺青が出て来たぜ」
「えぇー……?派手だなぁ。鏡見るのが怖い」
とにかく。その場で棒術の素振りを行い、さらに翼を動かして浮いてみた。……不思議とバランスが取れている。低空飛行だけなら問題無い。イージスのおかげか?
そういえば、イージスと意志疎通はできるのか?
(――できるよ)
(うおっ!?)
どうやら、頭の中で会話ができるらしい。便利だ。……と、その時。承太郎がぶつぶつと、独り言を呟いている事に気づいた。
「承太郎?……どうした?」
「――スタープラチナと、同化するイメージ」
「あ?」
それは、突然だった。……目を閉じる承太郎の背後にいたスタープラチナが、彼自身に溶け込むように消えていく。
見た目はそこまで変わらなかった。両手にスタープラチナのグローブと、首元にスカーフ?が追加されたぐらい。
だが、身に纏う空気が圧倒的強者のそれだ。
「……ほう。こいつは良いな。力が漲る……」
好戦的な笑みを浮かべた承太郎は、俺を見てさらに笑みを深める。うわぁ、嫌な予感しかしない……!
「なぁ、シド。――このまま、ちょっと遊ぼうぜ」