・花京院視点。
・SPW財団とスタンドについて、超捏造過多。
――空条承太郎だって、最高にハイ!!になる時があるはず。
「――前にちょっと話した事あるだろ?新しくスタンド使いとして目覚めた、園原志人っていう奴の話!
そうそう、前世では仗助の知り合いで、今世ではなんとォ!承太郎のお友達っていう、あいつや花京院の同級生の事。
で、花京院は承太郎から紹介してもらったかァ?……まだ?じゃあやっぱりちょうど良いな!
さっきジョルノから聞いたんだけどさ、承太郎の奴、園原くんを財団の東京支部に連れて行って、案内ついでに園原くんのスタンド能力の検証に付き合ってるらしいよン。
――どうよ?今から会いに行かねーか?
ポルナレフもアヴドゥルも、園原くんにはまだ会ってないらしい。
ポルナレフは家で飼ってるイギーを散歩ついでに連れて来るっていうし、前世の旅仲間全員集合で、さらに承太郎には内緒で!そのお友達を歓迎してやるってのはどうだ?」
……休日に、ジョセフさんからそんな電話が掛かってきたので、僕は喜んでその話に乗った。
1週間程前。承太郎が変死体事件の犯人であるスタンド使いと戦闘になったと聞いた時は驚いたが、彼ほどのスタンド使いなら大丈夫だろうと、そこはあまり心配していなかった。
だがそれ以上に驚いたのが、その戦闘に一般人が巻き込まれた事。しかしただの一般人ではなく、土壇場でスタンドを発現させた事。
前世では、承太郎の年下の叔父である仗助君の知り合いだった事。――今世では、承太郎の友人である事。
承太郎に前世の仲間以外の友人がいるとは、知らなかった。……前世の旅仲間である僕達も、今世の家族であるジョースター家の人達も、誰も知らなかったというのだから、本当に驚いた。
さらにジョセフさんの話によれば、随分仲が良さそうだったという。
それなら、付き合いは長いのかもしれない。いつ何処で出会ったのか、どんなきっかけがあったのか、僕達に教えなかったのは何故か、その友人はどんな人物なのか……疑問は尽きない。
そんな、謎に包まれた承太郎の"秘密の友人"が今、SPW財団の東京支部にいる。……会いたくなるのは当然だった。
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――――――
―――――――――
東京支部のロビーで、僕、ジョセフさん、ポルナレフ、イギー、アヴドゥルの4人と1匹が合流し、承太郎達がいるという訓練場へ向かう。
「おっと。下に行く前に、あいつらがどんな事をやってるのか、ちょっと上から覗いてみようぜ」
そう言って、悪戯っぽく笑うポルナレフに、ジョセフさんが賛成し、僕とイギーとアヴドゥルもそれについて行く。
この訓練場の上には、中の様子を見物できる場所がある。そこには財団の構成員の中でも、スタンドについて研究している者がよく集まるのだ。
特に、今日訓練場を利用しているのは、最強のスタンド使いである承太郎と、最近スタンドを発現した新人。……きっと、いつも以上に集まっているだろうな。
上に行くと案の定、人がたくさん集まっていた。……だが、予想以上にざわざわしている。
「……イギギ」
「これは、何事だ?随分と賑やかだが……」
途中でポルナレフに抱えられ、その腕の中にいたイギーが煩わしいと言わんばかりに目を瞑り、アヴドゥルが首を傾げる。
同じように首を傾げたジョセフさんが、財団の研究員の1人を捕まえて事情を聞いた。
「おい。何の騒ぎだ?」
「あぁ、ジョセフさん!あれを見てください!空条さんも凄いですけど、彼と戦ってる園原くんも凄いんです!」
「あん?承太郎と戦ってるゥ!?園原くんが!?あいつのは防御特化のスタンドのはずだろ?どうやって戦ってんだ?」
「それがですね……あぁ、とにかく見てもらった方が早いです!どうぞ!」
興奮気味の研究員に通されて、訓練場の中を見られる場所まで移動する。
――そこで繰り広げられていたのは、異次元の戦闘だった。
まず僕が目にしたのは、白い翼を生やし、細長い杖を持つ人の姿だ。黒髪黒目で、承太郎並みに顔が整っている若い男。何故か顔に金の刺青が入っている。……そして目付きが悪く、怖い。
あれが、園原志人。承太郎の友人?……ちょっと怖そうな人だな。本当に今の僕や承太郎と同い年なのだろうか?
そんな彼は低空飛行で飛びながら、承太郎に向かって杖を振り回している。……それをいなし、代わりに拳を向ける、承太郎。
彼の姿も変化していた。首元には見覚えのあるスカーフがあり、両手にも見覚えのあるグローブがついている。……あれは元々、スタープラチナが身に付けていた物じゃないか。どうなっている?
そして、何よりも!
「…………おい、花京院」
「……何だ、ポルナレフ」
「俺は、夢でも見てんのか?――承太郎が、笑ってるんだが……」
「いいや、これは夢じゃない。僕も見ている」
「私も見ているぞ、ポルナレフ。……これは現実だ」
「俺の目にもはっきりと見えてるぜ……承太郎が、いっそ怖いくらいに笑ってるところがよォ……!」
「「…………嘘だろ承太郎」」
思わずポルナレフと共にそう呟いた僕は、改めて承太郎を見る。……間違いなく、好戦的な笑みを浮かべていた。僅かに口端を上げるのではなく、顔全体が笑顔になっている。あの、承太郎が。
「……しかし、あの姿は何だ?彼の背中に生えた翼に、承太郎が身に付けているグローブ……あれは私の見間違いでなければ、スタープラチナの物に見えるぞ」
「そうです、アヴドゥルさん。――彼らは今、スタンドと完全に同化した上で戦っているのです!」
「なっ、」
「なにぃぃっ!?スタンドと完全に同化だとォ!?」
僕達は揃って驚愕した。そんな事が、可能なのか!?
当然だが、承太郎のスタープラチナは物質同化型のスタンドではない。それが本体と完全に同化するなんて……!
「始まりは、園原さんの思い付きのようでした。彼の提案に対して、自我を持った彼のスタンド、イージス・ホワイトができると頷き、彼らは完全に同化しました。
さらにそれを見ていた空条さんが、彼らを真似て自分自身もスタープラチナと同化したんです!それからは、あの力を試そうと模擬戦をする事になり……現在、あの状態となっています」
研究員の説明を聞いて、再び異次元戦闘に目を向ける。
ちょうど、承太郎が反撃に出るところだった。地面を蹴り、人間離れしたジャンプ力で、空中にいる彼に迫る。
承太郎が振り上げた拳を、彼が杖の持ち手側で跳ね上げた。その勢いで回転させた杖先で、カウンターを図る。
下から振り上がるそれを、片手でガッと掴み取った承太郎は、もう片方の手で彼を殴る。それを、高く上げた片足で防ぐ彼。
しかし。承太郎の力が強過ぎたのか、彼はそのまま吹っ飛ばされた。このままだと、地面に激突する!
……と思いきや、彼は空中で回転し、上手くバランスを取って地面に下り立った。
「何だ、あの一瞬の攻防は……!」
「いくら喧嘩慣れしてるとはいえ、承太郎のあの動きはかなり異常じゃねぇか……!?」
「あれはスタープラチナのパワーとスピードだな。今の承太郎はそれで強化されてる。あと、脚力もそうかァ?あのジャンプ力は人間には出せねえだろ」
「そうですね、ジョセフさん。それに彼……園原君もなかなかですよ。人間に翼が生えた状態なんて、普通はバランスが取りにくいはずなのに、今見ている限りではトリッキーな動きも可能ならしい。
それに、杖を上手く扱っていますね。確か、日本では剣道や柔道といった技術以外にも、棒術の技術があると聞いた事がある……花京院。お前はどう思う?」
「…………」
「……花京院?」
「えっ!?あぁ……すまない、アヴドゥル。あの戦闘に集中し過ぎて、聞いてなかった」
「いや、構わないさ。気持ちは分かる」
慌ててアヴドゥルと話を合わせるも、考えるのは別の事。
承太郎も、彼も。心底楽しそうに戦っている。……僕達とスタンドを使った模擬戦をしている時、承太郎があんな風に笑っていた事は一度も無い。
常に冷静で、笑っても僅かに口端を上げるだけ。だから、それだけでも承太郎なりに楽しんでいるのだと、そう思っていた。
そもそも、他人の前では口元さえもあまり動かない無表情だから、僕達には気を許してくれていると思っていたのに。……どうやら、それは勘違いだったようだ。
真に気を許されている相手は、彼……園原志人なのかもしれない。
「――あっ!?」
その時。突然、空中を飛んでいた彼と、彼のスタンドと思われる人型が分離した。
彼の下に立っていた承太郎が分かりやすく驚いて、慌てた様子で彼を受け止め、共に地面に倒れ込んだ。……それと同時に、承太郎とスタープラチナも分離する。
「ちょっ……っ、空条さん、園原さん!大丈夫ですか!?」
研究員の1人がマイクに手を伸ばし、訓練場の中にいる2人に声を掛ける。……彼らはこちらに向かって手を振った。無事だったようだ。
「全く、しょうがねえなァ!俺、下に行って波紋で治療してくる!」
「あ、ジョセフさん!俺も行く!」
「アギッ!」
「私も行こう。……花京院は?」
「もちろん、行くよ」
ジョセフさん達と共に、訓練場に下りると――大きな笑い声が聞こえてきた。
まさか、と思いながらそちらを見る。……彼と承太郎が、2人揃って仰向けに転がり、大笑いしていた。僕達は思わぬ出来事が起こったせいで、誰も動けない。
「……2人共。笑ってる場合じゃないよ?君達は怪我人なんだからね?」
「ふははっ!あっはははは!あぁ、悪いイージス……っ、駄目だ!笑い止まらねー!!」
「ははは!くく、あはは、ははははっ!!あ"ー――」
「「――楽しかったぁっ!!」」
……無邪気な子供のように、彼らは笑い合う。
「だあぁ、くそーっ!最初はお前と戦うなんて面倒くせぇと思ってたのに!」
「酷い野郎だな!てめえ、そんな事思ってたのか!?俺はまたやりたいと思ってるのに!」
「あっ、それはマジで遠慮するわ」
「はぁ!?何でだよ!」
「疲れるからだ!!俺が突然イージスと分離したのだって、そのせいなんだぞ!受け止めてくれてありがとう!」
「どういたしまして!で、本当に次はねーのか?あんなに楽しい模擬戦、初めてだったんだぜ!」
「知るか!次なんざねぇよ!!」
「そう言わずに次もやるぞ!なあ!?」
「だが断る!!」
「こら!無駄に言い争いして体力を削るな!!」
「「ごめんなさい」」
……かと思えば、子供っぽい口喧嘩をして、翼を生やした白いスタンドに怒られ、口を揃えて謝る。
何なんだ、あれは?本当に……本当にあれは、僕達が知っている空条承太郎なのか?
あぁ……何だろうな。このスッキリしない感覚。胸がモヤモヤして仕方ない。承太郎に対しても、彼に対しても、複雑な思いを抱いている。これは、強いて言えば――
「――面白くねーなぁ……」
一瞬、自分の心の声が出てしまったのかと思ったが、違う。……そう言ったのは、ポルナレフだった。
「あー……ポルナレフの気持ちは俺も分かるわァ」
「ジョセフさんも?」
「……不本意だが、僕も、分かる」
「えっ!?花京院も?……アヴドゥルは?」
「うむ……分からなくはないが、私はお前達ほどではないな」
興味無さそうに欠伸をしているイギーはともかく、僕のこの感情をポルナレフ達も感じている事が分かった。……この感情の正体も、分かった。
(これは、嫉妬だ)
承太郎と無邪気に戯れる彼に対して、僕は嫉妬している。……そして、僕達にはあんな笑顔を見せてくれない承太郎に対しても、少し苛立っていた。
「よっ……と、あ?」
「どうした?」
「……おい。承太郎の仲間達が来るなんて聞いてなかったんだが?また黙ってたのか?お前」
「何?」
先に起き上がり、僕達の存在に気づいた彼がそう言うと、承太郎も起き上がってこちらを見る。承太郎は目を見開くと……すぐにいつもの無表情になり、軽く首を傾げた。
――嗚呼。やはり君は、僕達にはあの笑顔を向けてくれないんだね。