空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。

・キャラ崩壊注意。


 ――空条承太郎だって、ライトノベルに嵌まる事もあるはず。





空条承太郎の苦悩
空条承太郎の友人は、見抜く


 

 

 

 

 虹村兄弟と遭遇した日から、数週間が経過した。その間、俺が発狂したと聞いた仗助から鬼電が来て安否確認されたり。

 財団側から、スタンドとの完全同化の研究について協力を求められたり、イージスの能力による護衛任務を頼まれたり。

 

 それから、何故か定期的にジョースター家に呼ばれて、夕食を共にしたり。……最初は遠慮したんだがなぁ。

 承太郎と仗助、それと女性陣からの押しに負けてしまい、ご一緒する事になった。正直、貧乏人にとっては一食分の費用が浮くだけでもありがたい。

 

 

 と、いろいろあったが、最も大きな変化が1つ。――旧図書館での読書仲間が、1人増えた。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「……そうだ。この前、仗助に頼まれて弟くん……違う、億泰くんと会って来た」

 

「あ?……大丈夫だったのか?」

 

「弟1人なら問題無さそうだ。側に仗助もいたし、大丈夫だったぞ。……で、その億泰くん。兄の事で俺に改めてお礼がしたかったらしく、」

 

「ほう」

 

「といっても、俺は改めて礼を言われるような事をやった覚えはねぇな。

 兄が幸せになるのを許してくれた、とか言われたけど、別に大した事でも無い。俺は彼を好き勝手に振り回して、満足しただけだ」

 

「そういうとこだぜ、お人好し」

 

「俺のどこがお人好しなんだよ?……それでな、億泰くんは仗助と俺に繋がりがあるのを知って、仗助に頼んで俺と会った訳だが……」

 

「うん」

 

「ボクサー犬がパグになってた」

 

「うん――うん?待て、何の話だ?」

 

「億泰くんの話」

 

「それが何で犬の話になった?」

 

「いやな?億泰くんに対する俺の最初の印象が、ボクサー犬なんだよ。図体デカいし、顔はブサカワだし、」

 

「ブサ、カワ……っ、ふ、……そ、それで?」

 

「そのボクサー犬。俺が待ち合わせ場所に来る前に一緒に待ってた仗助と何を話していたのか、あいつは俺の顔を見るなり、目をキラキラ輝かせて"志人のアニキ"って呼んできて、」

 

「何故そうなった」

 

「俺にもよう分からん。まぁ、そのキラキラ輝く目と俺の幻覚の犬耳と尻尾が見えて、」

 

「うん」

 

「あ、こいつパグだなって思った。あれもブサカワだし」

 

「唐突……!また、ブサカワ……っ!」

 

「ちなみに、その時隣にいた仗助は柴犬な。黒柴」

 

「く、ろ、し、ば……っ!!」

 

「あ、入ったな」

 

「黒、柴っ!仗助が、くろ……っぶふ!!」

 

「……うーん、しばらく待たなきゃ駄目だな、こりゃ」

 

「黒柴って……!ははっ!!」

 

 

 

 

 

 

「……そろそろ収まりましたか?」

 

「ん、」

 

「おっ、」

 

「「よう、ジョルノ」」

 

「……こんにちは、お2人共。相変わらず仲良しですね」

 

 

 という訳で。彼が新しい読書仲間、ジョルノくんです。

 

 

 俺と承太郎が、初めて旧図書館でジョルノと出会った時。

 

 普段は旧図書館にいても前髪と眼鏡を取っ払わない俺だが、その時は承太郎の前だからと気を抜いて、素顔を晒した。

 その瞬間を偶然、最近三谷さんと縁があって旧図書館に出入りできるようになったジョルノに、見られてしまったのだ。

 

 もちろん、口止めした。ファンクラブ怖い。

 

 するとジョルノも、自分は息抜きのためにここに来ているので、仲間達にも、誰にもこの事を言わないで欲しいと頼んできた。

 利害は一致しているので、お互いの秘密を守る事にした。あと、校内で前髪を下ろして眼鏡を掛けている俺を見ても、声を掛けないでくれとお願いする。

 

 そもそも、中等部と高等部で分かれているから、出くわす事は滅多に無いかもしれないが……念のためだ。

 その日は、互いに口止めをするだけで、それ以上の会話は無かったのだが……後日。ジョルノが好む本のジャンルを知った俺と彼の会話が弾み、一気に仲良くなる。

 

 ジョルノは、ライトノベル好きだった。

 

 ミステリや歴史小説も読まないわけではないが、1番はラノベだという。意外だった。

 ジョルノには、ラノベの中でも1番お気に入りのシリーズがあり、俺もそのシリーズを知っていたものだから、そりゃあ会話も弾む弾む。

 

 こうなると残りの1人である承太郎も、今まで興味を持たなかったラノベを、一度読んでみたくなったようだ。

 せっかくなので、会話が盛り上がっていたそのシリーズの第一作を、承太郎に貸してみた。

 

 

 結果、嵌まりました。以下は、その時のジョルノと承太郎の会話。

 

 

「……こんな世界を自由に旅してみたい」

 

「分かります。何のしがらみも無い状態でバイク……いえ、モトラドに乗って逃げ、違う。旅に出たい」

 

「喋るモトラド、いいよな。退屈しない」

 

「そうですね。良い話し相手です。人間の同行者は正直いらない。無駄」

 

「あぁ、いらねえな。そもそもこの本の世界じゃ、最も怖いのは人間のような気がするぜ」

 

「現実世界でもそうですよね」

 

「全くだ。……スタンドを扱う人間は、特に怖い」

 

「ええ、本当に。……その点、この世界は基本的に銃器で修羅場を切り抜けています。超自然現象なんて訳の分からない物は、ほとんど存在しない」

 

「……むしろ、俺達の現実の不可思議具合を見る限り、この本の世界の方が現実に近そうだな」

 

「なるほど、こちらの世界の方が現実でしたか。……何もかも忘れてこの世界に飛び込みたい」

 

「物騒な世界だが、自由はありそうだな。是非とも行きたい」

 

「この本の主人公のように、美しい世界を見て回りたいですね」

 

「同感。…………ジョルノ。お前、意外に話が合う奴だったんだな」

 

「承太郎さんって、意外に話が合う人だったんですね」

 

 

 

 

 

 

「…………お前ら、さ。同じ家に住んでるんだから、ストレス溜まってるなら定期的に愚痴大会でも開いたらどうだ?

 本の話でそれだけ気が合うなら、現実の愚痴を言い合っても話が合うだろ、多分」

 

 

 無表情で本の感想を語り合う2人の間にいた俺は、2人の言葉の端々から感じられる闇に耐えかねて、思わずそう提案してみた。

 この後。俺の提案を採用した2人は、本当に愚痴大会を定期的に開くようにしたという。余程ストレスが溜まってたんだろうな。

 

 しかしそれでも足りないのか、旧図書館にいる時は俺に聞き役を求めてくる。何故だ。

 

 

「お前なら話をちゃんと聞いて、適切な言葉を返してくれるからだ」

 

「ですね。僕達2人だけだと、愚痴をぶつけ合って言葉で殴り合いをしているだけなので」

 

「それでも多少はスッキリするが……言葉による癒しを求めている時は、シドを頼る」

 

「僕もそうしています」

 

「俺はいつからお前らのカウンセラーになったんだ……?まぁその分、俺もお前らに愚痴吐いてる訳だから、別にいいけどな」

 

 

 お前らに頼られるのは、嫌いじゃないし。……そう言うと、承太郎とジョルノは口を揃えて、"お人好し"と言った。だから、俺のどこが?

 

 

 ……それからまた時間が経過した、ある日の夜のこと。自宅で寛いでいた俺のもとに、ジョルノから電話が掛かってきた。

 

 

「――承太郎の様子に、違和感?」

 

「はい。……承太郎さんは今日、財団からの要請に応えて、スタンド使いの犯罪者を捕まえに行ったそうです。任務は成功したらしく、つい先ほど家に帰って来たんですが……何というか、」

 

「……ん?」

 

「いつもより、さらに無表情だった気がするんです。……僕の気のせいなら、いいのですが」

 

 

 いつも以上に無表情、ねぇ……?

 

 

「そりゃあ、何か隠してそうだな」

 

「やはり、そう思いますか?」

 

「あぁ。実際に承太郎の今の顔を見たわけでは無いから、はっきりとは分からないが……あいつ、何かあってもそれを隠すのが上手そう」

 

「確かに」

 

「動物の中でも、猫は弱みを隠すのが上手いらしい。あいつも同じような物だろ」

 

「……承太郎さんが、猫……?」

 

「おう。ネコ科の猛獣。黒豹だな、あれは」

 

「くろひょう。…………分からなくもないですが、今はそれよりも違和感の方です」

 

 

 おっと、そうだった。話を戻さないと。

 

 そうだな……えっと、明日のシフトは……お、ラッキー。ちょうど貸しがある奴が休みじゃねぇか。代わってもらおう。

 

 

「おそらく、僕よりも志人さんが見てくれた方が、その違和感の正体が分かると思うんです。ですので明日、もし時間があるようでしたら、承太郎さんと会ってもらえませんか?」

 

「……考える事は同じ、か。俺も、直接話したいと思っていた。今バイトのシフト確認したら、俺に借りがある奴が休みになってたんでな、ちょっと代わってもらってバイトを休む。時間はたっぷり取れるぞ」

 

「そんな、わざわざ……いいんですか?僕の気のせいである可能性もあるのに……」

 

「構わねぇよ。あいつを心配してくれるお前の気持ちを、無駄にしたくないし。そして何よりも――自分の金稼ぎ優先して、様子がおかしい親友の方を無視するなんて、できるわけが無い」

 

 

 バイトと親友、どっちを取るか?当然、親友だろ。

 

 

「…………そういうとこですよ、志人さん」

 

「あ?何が?」

 

「いえ、お気になさらず。……あの人の心の内は、僕達では見抜けませんが、志人さんなら理解できるのでしょう。よろしくお願いします」

 

「……そうか?あいつ、分かりやすいだろ」

 

「僕達と一緒にいる時とは違い、あなたの前では無表情でいる事の方が少ないので、そう思うのも無理はありませんが……」

 

「いや、それは最近になって俺もちょっと分かってきたけど……無表情の時も、案外分かりやすいぞ」

 

 

 旧図書館でジョルノと会うようになってから、承太郎が俺の前で見せる表情と、他の奴らに見せる表情が大分違うと、ジョルノに言われた事がある。

 

 曰く。自宅で家族に見せる顔はほとんどが無表情なのに、旧図書館で俺と会っている時は機嫌がいいのか、よく笑っている。

 

 言われてみれば、そうかもしれないと思った。俺が定期的にジョースター家にお邪魔している時、周りに家族の誰かがいると、あいつの表情筋があまり仕事しない。

 だが、俺と2人きりになると感情表現が豊かになる。大笑いする事も珍しくない。

 

 旧図書館でジョルノと3人で一緒にいる時も似たようなものだから、気のせいじゃないかと一度は思った。

 しかしジョルノからは、彼と2人きりで愚痴大会を開く時は無表情の方が多いから、気のせいでは無いと言われた。

 

 

 でもな。例え無表情でも、感情が出ていないわけでは無いぜ。

 

 

「無表情な分、目とか雰囲気に感情が表れやすい。ほら、目は口ほどに物を言うって言葉があるだろ?表情の動きだけで判断しようとするから、見抜けねぇんだよ。もっと観察してみろ。慣れると分かりやすくなるから」

 

「……確かに、あなたが言う事も一理ありますね。今度、しっかり観察してみます」

 

「おう。……とりあえず、明日旧図書館で会わないかと、誘ってみるかな」

 

「それなら、"相談したい事があるから会いたい"と言った方が、来ると思いますよ。あの人は志人さんに頼られると嬉しいみたいですし」

 

「そうなのか?……分かった、そう言ってみる」

 

 

 最後にジョルノにお礼を言って電話を切り、承太郎に連絡を取って旧図書館に誘う。……ジョルノに言われた通りにすると、疑う事もなく二つ返事で了承してくれた。ちょっとだけ、罪悪感を感じる。

 あとはバイト仲間に連絡して、明日のシフトを代わってもらい、準備完了。

 

 

 翌日。放課後に旧図書館で待っていると、承太郎がやって来た。

 

 

「……悪い、待たせた」

 

「――――」

 

「……シド?」

 

 

 ……おい、ジョルノ。これのどこが、違和感がある気がする(・・・・)、だって?

 

 

(――"気がする"どころじゃねぇだろ!全然違うじゃねぇか!!)

 

 

 いつもと違う。全然違う!!目と雰囲気で分かる。俺の親友は今、相当落ち込んでいるのだと。

 

 

「…………俺の家」

 

「ん?」

 

「俺の家に行くぞ、来い」

 

 

 とにかく、他人の気配が無い場所で、2人きりになろうと思った。その方が承太郎も安心して話せるだろうと、そう考えて。

 承太郎の腕を掴み、旧図書館から出ようとするが、こいつは動こうとしない。

 

 

「おい、シド。いきなりどうし、」

 

「お前絶対に何かあっただろ。何だ、その酷い目は!?」

 

「っ、」

 

「いいから、来い。――てめぇに拒否権は無い」

 

 

 珍しく俺から強引にそう言うと、承太郎は――心底安心したかのような、気の抜けた表情。

 何故か、泣きそうな雰囲気を感じる。……それは、あの変死体事件の話を聞いた時。俺が承太郎を心配した時と、同じ顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 






※承太郎とジョルノの愚痴大会(キャラ崩壊注意、愚痴の内容捏造)

「今日もふざけたファンクラブの女共が喧しくて頭が痛かった」

「分かります。ちょっと廊下に出ただけでキャーキャーと無駄に騒ぐ。まるで動物園の猿」

「分かる。学校で気の休まる場所が旧図書館しか無い」

「僕もです。……そして、うるさいのはファンクラブの女子生徒だけじゃありません」

「……まさか、前世の仲間達か?」

「そうです!フーゴもナランチャもミスタもトリッシュも、喧嘩するほど仲が良いのは構いませんが、僕を間に挟まないで欲しい」

「俺のところだとポルナレフと花京院だな。あいつらも俺を間に挟む。そしてクソジジイはニヤニヤするだけで俺を助けてくれない」

「両隣でキャンキャンされるのは嫌ですよね」

「全くだ。普段は女共が喧しいからこそ、あいつらにはちょっとでも静かにして欲しい」

「同感です。しかし嫌っている訳では無いので、怒れない」

「あぁ。……前世で若い頃はよく怒鳴っていたが、今では怒鳴る気力も無い」

「怒鳴っても体力を消費するだけですからね。無駄」

「そうだな。……あいつらの口にガムテープ貼ってやりたい」

「あるある。……耳栓が欲しい」

「あるある。……ずっと黙っていると、"ちゃんと話を聞いているのか"と言われてこっちに矛先が向く」

「あるある。……かといって、言いたい事を言うと口答えされる」

「あるある。……それにしても、」

「ええ、それにしても、」

「――お前本当に話が合うな!?」

「――あなた本当に話が合いますね!?」

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