・男主視点。
・承太郎が弱っています。
・SPW財団に対する、若干の厳しめ表現あり。
――空条承太郎だって、心の叫びを上げたい時が、きっとあるはず。
園原「とにかくお前は幸せになれ!!」
途中まで承太郎の腕を引っ張って歩くと、逃げないから離せと言われる。……仕方なく解放し、たまについて来てるかどうかと、周囲に人がいないかを確認しながら、学校を出る。
承太郎と一緒にいるところが誰かに見つかったら、次の日俺が晒し者にされてしまう。
自宅に到着した後は、承太郎を座らせて飲み物を用意。これで、ようやく話せる。
「……お前、何か相談したい事があるんじゃねえのか?」
「まだそんな事を言うのか、てめぇ。それよりもお前の方が大事だ。俺の話は後でもできる。……何があった?」
「…………」
「……言いたくないなら、それでもいい。だが、ここから出て行くのは許さない。ベッド貸してやるから、せめて少しでも眠っていけ。……寝てないんだろ?」
「…………何で、分かった?」
「クマができてる。学帽で陰になってて、少し分かりにくいが……まぁ、とにかく寝ろ!今適当にベッド整えるから」
座っていた場所から立ち上がり、承太郎の横を通ってベッドに向かおうとする。……何かに引っ張られて、足を止めた。
承太郎が、俺の制服の裾を掴んでいる。……俺は黙って、こいつの隣に腰を下ろした。
「…………昨日、」
「おう」
「昨日……財団からの要請で――」
「っと、ちょっと待った。……イージス」
「呼んだ?」
「あぁ。……バリア展開。防音付与」
「うん、任せて」
「……そんな事もできるのか」
「内緒話には、もってこいだろ?」
イージスを呼び出し、防音効果のあるバリアを展開する。……それから、ぽつりぽつりと話してくれた事は、承太郎にとってはあまりにも、理不尽な出来事だった。
数日前。承太郎は財団側から、とあるスタンド使いの犯罪者を捕らえるために協力して欲しいと頼まれ、財団の構成員と共に念入りな計画を立てている途中だった。
しかし昨日、事態が急変した。犯罪者の動向を見張っていた構成員達のミスで、その存在が相手側にバレてしまったという。
承太郎の下にその連絡が届いたのは、放課後。自宅に向かう帰り道を歩いている時だった。
こいつは即座に方向転換して、急いで現場に向かったそうだ。……現場に到着した時には既に、犯罪者と構成員達が戦闘に入っていて、重傷者もいた。
幸い、犯罪者自体は承太郎とスタープラチナにとっては敵では無い相手で、無事に勝利を収める。……問題は、この後だ。
「――あんたがもっと早くに来ていたら!彼女はあんな事にならなかった!!もしこれで彼女が死んだらどうするんだ!!」
それは財団の構成員の中で、恋人が重傷を負った男が、承太郎に放った暴言だった。そいつは他の構成員に取り押さえられたが、後に他の構成員達から、承太郎に対する陰口が聞こえたらしい。
到着が遅過ぎる、もっと急いで来い。あんなにあっさり倒せるなら、あいつ1人でもよかった。最強ならこんな被害を出させるな。……等々。
「……それぐらいなら
その悪夢とは……前世で承太郎が失った仲間達皆から、承太郎のせいで自分達が死んだのだと、責められる夢。昨夜はそれを見たせいで、眠れなかったという。
「前世ではそれを見る度に、自分が如何に無力であるかを思い知った。……だから俺は、知っている。
俺は最強のスタンド使いなんかじゃない。スタープラチナは無敵じゃない。
俺に任せておけば後は全て上手くいくだとか、俺なら何の心配もいらないとか、俺なら皆を必ず守ってくれるだとか、そんなの……そんな話は、周りが勝手に言い始めただけだ!
本当に最強なら!本当に無敵なら!俺は前世で守りたい物を全て守れたはずなんだ!!そうじゃなきゃおかしいだろうが!!
なれるものなら――っ、本当に最強に、無敵になれるなら!俺はそうなりたかった!自分の手で大切な物を全て守りたかった!!」
「――――」
……最初の話を聞いて、"その構成員達は自分達のミスの責任をお前に押し付けてるだけだ"とか、"お前のせいじゃない"とか。
それ以外にもいろいろ言葉が思い付いたが、そんな事言ってる場合じゃねぇな、これは。
重い。……あまりにも、重い。
こいつが背負っている――否、周りから背負わされている責任が、重過ぎる!!
(は?ふざけんなよ!?俺の親友に何て物を背負わせてんだ、こら!!)
こんなの、漫画とかアニメとか、二次元の世界ならあり得るだろうが、普通は現実で生きてる人間が背負える物じゃねぇ!
そう、現実だ。前々世の人間達にとっては"空条承太郎"は漫画の登場人物だが、この世界や、前世の世界の人間にとっては、現実に存在する人間だろ?
それが何故、二次元世界の無敵のヒーローのような扱いをされなきゃいけないんだ?
いくらなんでも、無理があるわ。
今の承太郎は前世の記憶はあるが、17歳の高校生だぞ?精神年齢は40だと本人は言ってるが、おそらく中身が肉体年齢に引きずられているはず。
俺だってそうだ。俺の精神年齢は実は承太郎に近い。だが4部時代の前世と、今世が高校生だから、実際の中身はかなり若くなっていると思う。
という事は?財団の構成員である
(――とどのつまり、最低な大人達)
ただ今、現在進行形で財団に所属する駄目な大人達への好感度が、だだ下がりしております。
……いや、分かってるぜ?財団にはそういう駄目な大人ばかりじゃなくて、この前俺のスタンド使い登録の説明をしてくれた人のように、誠実な大人もいるのだと。
だがしかし。俺の親友がこんなにも傷つけられている事は、紛れもない事実だ。
とはいえ、今はそれどころじゃない。俺の個人的な怒りは二の次だ。心の叫びをぶちまけてから黙り込んでしまった親友に、何か声を掛けてやらなくては。
「……あのな、承――」
「お前の力は、いいよな」
「は、」
「……志人と、イージスの力が――護る力が俺にもあれば、前世で誰も死なずに済んだかもしれない」
――刹那。俺は承太郎の胸ぐらを本気で掴み、叫ぶ。
「――馬鹿野郎!!」
「っ!?」
「てめぇ1人で何でもかんでも背負うんじゃねぇ!!その重荷は周りが勝手にお前に押し付けた物だろうがぁ!!それを……そんな物を!てめぇ自ら背負ってどうすんだよ!!
そんな事してたら――いつか、お前の心が死んでしまうぞ、承太郎……!!」
「――――」
「……志人。少し落ち着いて。バリアが揺らいでいる」
イージスの言葉で我に返り、承太郎の胸ぐらから手を離して心を落ち着かせた。バリアの揺らぎが収まる。……なるほど。俺の精神が不安定だとああなるんだな。不本意だが、勉強になった。
「……承太郎。俺が前に言った事、覚えてるか?自分の力を過信するなって話」
「……あぁ、覚えている。……嬉しかったよ。お前が本気で俺の事を心配してくれて、心底安心した。――お前は、俺の事を過剰に信頼しなかったから」
「……そうか。あれはそういう事だったんだな。お前、俺がひたすら"過信するな"とか"心配してる"って言う度に嬉しそうにしてたから、ちゃんと話を聞いているのかと疑ってたんだぞ」
「それは、悪かったな。……なぁ、志人」
「ん?」
「お前は、俺とスタープラチナの力を知った今でも――俺の事を、普通の人間だと言ってくれるか?」
「そんなの、当たり前だろ。例えどんな力を持っていようがお前は、空条承太郎っていう名前の、普通の人間。
漫画やアニメで活躍しているようなヒーローじゃねぇ。現実の、等身大の人間。できない事があるのが当然な、ただの人間。
――俺は今も、これからも。親友としてお前を信頼するが、二次元のヒーローを相手にするような過剰な信頼は寄せない。……それで良いんだろ?」
「……あぁ――充分だ。ありがとう、志人」
俺が承太郎の意図を察してそう言えば、こいつは嬉しそうに微笑む。……それまで揺らいでいた翡翠の瞳は、既にいつものように輝いていた。
「……今なら、話せそうだな」
「……何を?」
「俺の前世の話だ」
思わず、背筋をピンと伸ばした。
「だが、話をする前に……イージス。そこにあるイルカのぬいぐるみ、取ってくれ」
「あぁ、これかい?はい、どうぞ。……志人の記憶を見たよ。承太郎はこれがお気に入りなんだろう?」
「まぁな。……何か柔らかい物を触ってた方が、落ち着く。……さて、聞いてくれるか?シド」
「もちろんだ。……聞かせてくれ」
……そして語られたのは、空条承太郎の波瀾万丈な人生。
前々世で漫画を見た時とは違い、その登場人物が語る"現実"は、臨場感の溢れる話だった。……リアル過ぎて、たまに泣いてしまうぐらい。
それを見て慌てた承太郎が話すのを止めようとした時は、必死に止めた。
怖かったわけじゃ無いんだよ。お前がいろいろ背負っていく様子が分かって、それが悲しくて思わず泣いたんだよ!なんなら、泣かないてめぇの代わりにもっと泣いてやる!!
お前どんな形でもいいから、とりあえず幸せになってくれ!!